その電話は突然かかってきた。
金融屋 :「ここにお宅が昔に借りた借用証があるんやけど」
電話を受けた相談者は、瞬間、自らの過去が頭をよぎった。
隣県の金貸し?
自身、少なからずすねに傷はあるし、
一時ブラブラしていた弟にはもっとある。
自分には返していない借金はないと思うが、
弟が自分の名前を使ってることも考えられるし。
彼は有名企業に勤めているため、できるだけ話は大きくしたくない
という気持ちが自然と働くのも無理もない。
ましてや定年も視野に入ってきた。
ここで相談を受ける。
私 「まずはその借用証を送ってもらいましょう。」
事実かどうか極めて疑わしいが、
相談者のことも考えると大胆な対応も取りづらい。
FAXで送られてきた「借用証」はお世辞にも
借用証とはいえないお粗末なものだった。
金額と署名のみ。しかも署名は明らかに他人のもの。
相談者 「あんな借用証は覚えがないんですが」
金融屋 「そんなこと通ると思とんのか!」
「会社まで回収にいくど!」
心のどこかにひっかかりがあると強く出れない。
それに会社のことを出されると万が一のことを考えてしまう。
当然です。その気持ちは非常にわかります。
ここで大上段に
「勤め先への訪問は貸金規制法第○条で禁止されて・・・」
などと相談者に主張してもらうのは火に油になりかねない。
ド素人のアドバイスだ。
時は「ヤミ金」がまだマスコミを賑わすずっと前。
相手は金融屋というよりヤクザ丸出し。何より法の埒外だ。
この後、数回催促とも脅しともいえる電話が続いた。
しつこい。
いよいよ腰をすえて取り組まないといけない。
まず、この借金は架空である可能性が高いことを確認して、
相談者には意を決してもらい、怖がることなく、
対等に話してもらうようアドバイスをした。
金融屋 「どうや」
相談者 「何度も言うけど借りた覚えはない」
金融屋 「何眠たいこと言う・※△〜○・・・」
相談者 「こんなありもしない借金の請求なんて「詐欺」と違うの?」
金融屋 「
何!」
相談者 「いま知り合いの法律家に相談しているところです」
金融屋 「好きなようにせんかい!」
「会社まで行ったらあ!」
以来電話は止んだ。
しかし、相談者は最後の捨てゼリフが頭から離れない。
その立場にないものが簡単なことは言えないが、辛い日々だと思う。
ただ時間がたつのを待つしかない。
相談者はこう言う
「今回のことは何が発端かわからないけど、
自分の蒔いた種に等しい、仕方がない」
幸い、その金融屋は勤め先には来ていない。
正直綱渡りだったかもしれません。当然相談者の立場、相手の出方、
事案が発展する可能性などを考慮して対応しましたが、こればかり
はひとつ間違えれば全く違った結果になってたかもしれません。
近接都道府県の金融屋でしたので来ようと思えば来れたはずです。
でも相談者がとした対応をとったことで、事態が悪化せずに解決
したのではないかと、本当によかったと思います。
この金融屋は一応、貸金業と名乗っていたので、貸金業規制法の対象
となります。暴力的な態度は威迫する行為として違法です。が、
それ以前に架空の借用証で返済を要求する行為は、刑法犯の私文書偽
造、詐欺、恐喝未遂が成立すると思われ、刑事の面からの追及もでき
たと思います。
ただ、当時「ヤミ金」はまだ話題になっておらず、警察は民事不介入
をたてに動かなかった可能性が高いです。こんなときに少しでも当局
に動いてもらうよう、行政書士は警察への告訴状、監督官庁への通告
書を作成、提出することで被害者の救済に協力しております。
金融業者の理不尽な要求には、
・できないことは堂々と断る
・独りで抱え込まない
・逃げない
法律家の助けがあればと思ったときは、遠慮なく弁護士や行政書士
の事務所へお越しください。
大西行政書士事務所 大西 勝一
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