【Miniで行く】英国カントリードライブ

第5話 静かなることを知る二つの川

ウィンチェスター市内を流れるイッチェン川

 たちがウィンチェスターの街を訪れたのには,観光以外に別の意味がありました。それは,この地を流れるテスト(Test)川とイッチェン(Itchen)川という二つの川を,実際にこの目で見るためです。ここは,英国フライフィッシングの発祥の地と称され,また,釣り人であるならば一度は聞いたことがあるだろう,釣りのバイブル,「釣魚大全」の著者,アイザック・ウォルトン(Izaak Walton)がその晩年を過ごしたのも,この地でありました。

英国人の精神

 「釣魚大全」。原題を「The Compleat Angler or Contemplative Man's Recreation.」 といいます。つまり,「完璧なる釣り人―瞑想する人のレクリエーション」ということです。17世紀中ごろに書かれたこの本は,釣りに関する実用書でありながら,現在まで増版を重ねられ,多くの人々に読み継がれています。ちなみに,「スポーツ」という言葉は,この本で初めて使われたと言われています。その内容は,釣りの師と弟子による対話形式のお話の中に,釣りの技術向上,釣った魚の料理法などが,当時の人々の生活とともにえがかれたものです。
 また,その書の最後には,「静かなることに努めよ(Study to be quiet.)」と結ばれています。この言葉は,もともと聖書から来る言葉ですが,英国人の釣りに対する姿勢が見事に詰め込まれた言葉のような気がします。この言葉の意味の受けとめ方は人それぞれでしょうが,僕は,後の19世紀中ごろの米国のナチュラリスト,ヘンリー・ソローが「森の生活」の中でえがいた,心穏やかに暮らすことの意義,人と自然との対話の大切さ,貨幣経済にとりつかれた人間の愚かさへの警鐘といったところに,その精神的な共通点を見ることができると思います。
 そして僕は,そのような自然や人生に対する思想を生み育てた,英国人のアイデンティティーというものに深い感銘を受けるのです。

ウィンチェスターからテスト川へ

ウィンチェスターの街を抜けB3049を走る

 それはそうと,僕たちはウィンチェスターの街を出て,平原を西に5キロほどに走り,ストックブリッジ(Stockbridge)という小さな田舎町に来ました。ここは,街の中をテスト川の支流が流れ,本流も村の外れに見ることができます。
 イギリスの街の中はどこにも小さな水の流れがあり,人々の生活に潤いを与えているようでした。

ストックブリッジという小さな田舎町(テスト川の支流)

町外れの悠々と流れるテスト川本流

 テスト川もイッチェン川も幅は七,八メートル。深さも50センチほどの小さな流れですが,釣り人にとっては,こたえられない,どこもフライフィッシングのポイントに最適な流れです。しかし,英国の川は個人の所有となっていることが多く,釣りをしようとするには所有者からの特別な許可が必要となります。また,所有者は,リバーキーパーという釣り場としての川の管理を職業とする専門家を雇い,河川の保全に当たっているのです。だからこそ,このような自然性に満ちた,ばらしい川面と自然環境が守られているわけなのです。
 ここで僕は,釣りをするのは次の機会とすることにして,今回は,流れの中を悠々と泳ぐ鱒や,この美しい川の流れを楽しむことにしました。ウォルトンも言っているように「魚を釣ることが釣りではない」のです。

テスト川の流れる平原

英国南西部ドライブスナップ集

 英国人なら,リタイア後は静かに暮らしたいと願う,英国南西部のスナップ集です。


バーチャルドライブ(モンクトンクーム編)


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小さな村で道草を―モンクトンクームにて―

 僕らのMiniは,ウィンチェスターからバース(Bath)へと走ります。バースの手前,小高い丘の中腹に,可愛いらしい村を見つけ,何とはなしに,街道から外れて,足を運んでしまいました。モンクトンクーム(Monkton Combe)というその村は,小さい村でありながら学校や教会などがあって,これも一つのカントリーライフを楽しむための保養地なのか,こんな田舎に似合わず,一軒のパブがありました。ここでイギリスに来て初めて,僕たちの口に合った食事をゆっくりと楽しむことができました。

丘の上に小さな村を見つけてやって来ました(既に横道を走っている)

左手には学校が

小さなパブには,学生やカントリーウォークを楽しむ人々が集っていました

 僕たちがパブに入ると,最初,店のおばあさんはびっくりした様子でした。それもそうです。こんな田舎に立ち寄る東洋人など,いるはずもないでしょう。それでもメニューの内容を親切に教えてくれました。
 古い建物らしく窓が少なく,ちょっと薄暗い店内でしたが,僕たちは,しばしのんびりとした雰囲気を楽しむことができました。

【英国トピック】C

パブの飲み方                                        

 最も英国らしい庶民の文化,それがパブなのです。僕はパブの飲み方が大好きです。

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ちょっと寄り道中のMini君


 次回は,世界遺産の都市・バースについてをお送りいたします。

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