「プロデュースする」ということ

行政マンはプロデューサーでなければならないと最近よく言われるのですが,「皆さんプロデュースするとはどのようなことなのか, 言葉で確認されたことがありますか。ソフト事業の企画を実施するとき,どういう流れを辿るのか確認されたことがありますか」 というときにその話をさせていただいております。細かく言うときりが無いのですが,大きくは3つの技術が必要となります。

先ず,コミュニケーション技術です。次は編集・加工技術です。調査をしたり,行政施策として取り入れなければいけないこと, 取り入れたいこと,または取り入れた住民の意見を編集・加工して,実施計画の中に落とし込みます。 実施計画も,いつまでに誰が何をやるのかというところまで考えておきます。 次に行政の立場の場合ですが,実行する段階におきまして,その計画が動いていく実施サポートをする技術です。 以上の「コミュニケーション」技術,「編集・加工」技術,「実施サポート」技術,という3つの技術を勉強することによって, 成果を導いていけるのです。これが十分でなければ,「これをやれば観光客が増えるよな。 これをやれば雇用創出ができるよな」という末端のアイディアフラッシュの議論に終始することになります。 このような議論が沖縄でも多いように思います。私もいつもそういう場面でこの話をさせていただいております。

結果のフィードバック

ある県の観光都市で直面して,なるほどと感じたことがあるのですが, 先日国頭村で事業が始まる前にまったく同じことを真っ向から言われまして,しみじみ実感しました。 かつては観光地の王様と言われた所の観光客が激減したために,市町村は一生懸命になって住民の意見も取り入れながら 観光振興策を作らなければならない。そこで,住民の意見を取り入れるために ワークショップ形式を用いて観光政策を考えられたのです。

このワークショップは,観光地ですので,住民の方は,旅館の女将さんやおみやげ店のご主人のように, 普段仕事を持たれている方が,忙しい時間に仕事を抜けて出て来られるのです。 そのような皆さんが,1年間のワークショップでレポートをまとめて作られ,市役所に提出されました。 住民の皆さんは,翌年実施してもらえるものと楽しみにしておられたのです。 そうしましたら,市から「来年度もう一度ワークショップをやりましょう」と言われたのです。 住民の皆さんは2年目まではと思い,去年の続きのようなことをされました。

すると3年目になって,また市が「ワークショップで計画を作りましょう。考えましょう」と言われたのです。 市民の皆さんは「前に考えたことは,どうなっているのですか。 いつになったら実施されるのですか」と,火が付いたように怒りました。 「報告書にまとめられて配られたのはわかっているが,あの冊子はどういう過程を辿って, どこにどう話が収められているのか説明してほしい」という大問題が起こったのです。

そこは私がよくお伺いしている市役所でしたので,騒ぎが鎮火した頃に「実際のところどうなのですか」と聞きましたら, まったくフィードバックされていなかったのです。ワークショップをして冊子にまとめるということが, 事業の完成になっていたのです。それが正しいと思っていたと市の方も言っておられて,市民の怒りに直面して改められました。 住民が少しでも関わったものについては,必ず何らかのフィードバックをし、納得されることが大切なのです。

国頭村に第1回目に行きました時のことです。初対面でまだ仕事の打合せすら行っていない段階でしたが, コンサルへのクレームから始まりました。「自分たちを散々ヒアリングだと言って駆り出しておいて, 結果がどうなったか1回も聞いたことが無い」と言うのです。「報告書すら配られたことが無い」ということも聞きました。 それで,その対応策を事業に組み込むことにしました。

事業主体側の皆さんは,どうしても成功させなければならないと気負われるのですが,何が成果なのか, 何をもって成果というのか,ということを最初に明確にしなければなりません。 観光振興の事業を行った場合,必ずしも観光客が450万人から500万人になることだけが成果ではないと思うのです。 地域にしくみを作ったことも成果かもしれません。サービスを向上する努力をして,その成果があったことも成果かもしれません。 何が成果なのか,最初のすり合わせをすることも必要なのです。

フィードバックするときに,必ずしも定数,定量的なものだけを成果とするのではなくて, 例え少しでも現象に何か変化が起こったということも成果として認識していただきたいと常日頃感じております。 テレビ番組で「世界ウルルン滞在記」というのがありますが,町おこしはあれに似ていると色々な方, 大学の先生でもおっしゃいます。地域に住んでいる皆さんにとっては,感動が一番のエネルギーなのです。 これは成功した,やって良かったと思えることが無いと,住民の皆さんが元気になりません。 結果的に地域も元気になっていきませんし,地域にストレスが溜まっていくと感じています。

観光振興のための「しくみ」作り

3つのテーマのうちの「観光」についてお話させていただきます。これも地域の皆さんにお話させていただいていますが, いつも観光のお話や打ち合わせをしますと,「こんなことやったらいいよね,あんなことやったらいいよね」と, アイディアフラッシュから始まります。次に「やっぱり航空運賃が高いから,宿泊施設が少ないから,海が……」 と陳情めいた話になります。

どういう考え方に基づいて観光振興を拡げていきたいのか,何を成果にやりたいのか,ということが大切です。 例えば沖縄の場合でしたら,ホスピタリティー(もてなしの心)とか,癒しとか,伝統文化などを来た人に伝えたい, 体験して癒される気分になっていただきたいということになると思います。それが観光における哲学だと思います。 けれども哲学だけを全うしようと思うと,ボランティアになってしまいます。必ずもう一方の側面には, 何か狙っている成果があるはずなのです。

沖縄の場合もそうですが,殆どの地域の場合,それは経済波及効果なのです。哲学と経済波及効果を両輪で睨んでいくと, 必ずしも観光誘客キャンペーン,観光イベントだけが観光振興策の柱になるということにはならないと思います。 これは沖縄だけの話ではありません。日本全国,観光振興策というと,総じてイベントかキャンペーンから話が始まります。 「ではキャンペーン費用を投下して,その費用対効果は何を目的としておられますか」という切り込みを 私たちはよくさせていただいております。そこで明快な答えがあればいいのですが、 口ごもられることが私の経験では多かったようです。

それでは何をすればいいのかと言いますと,先ず受皿のしくみを作ることが先だと考えます。 全国の様々な観光関係の会議に参加させていただきましたが,会議には,飛行機のようにキャリアの皆さん, 旅行会社のエージェントの皆さん,私たちのような企画会社の者の三者が招かれることが多いのですが, よく次のような会話が交わされます。

キャリアの皆さんは,「我々は輸送が仕事ですから,運ぶ先があればいくらでも運びますよ」。 エージェントの皆さんは,「受皿さえ作っていただければ,いくらでもそこに送客しますよ」。 企画会社は,「地域の皆さんにその気がおありであるならば,いくらでも企画はお出しますよ」と言います。 しかし,日本全国の現場を見ますと,なかなかその受皿のしくみ作りが進んでいないのが実情です。

その原因ですが,何もやっていない地域は無いと思います。3,300市町村の中で,3分の2の市町村は, 何らかの交流策を講じていらっしゃると思います。けれども,予算がつかなくなっても, また受託コンサルが来なくなっても継続される「しくみ」が残ったかというと,必ずしもそうでは無いようです。 事業予算がついている期間内は非常に元気なのですが,事務局をやってくれていたコンサルが来なくなったら, たちまち何をやっていいかわからない。軍資金が無くなったら,たちまち動けないという, 予算の切れ目が事業の切れ目という状況になっていることがとても多いように思います。

あとはニーズはあるのですが,コミュニケーションがうまくいっていないので,何をやればいいのか, 何をやってほしいのか,どこの誰に何ができるのか,ということが整理されて, それが行動計画に変わっていっていないところに原因があるのではないかと感じています。


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