シューベルト
シューベルトは、音楽史上欠かせない音楽家ではあるが、私にとってはつい素通りしてしまいがちな音楽家である。結構有名な曲も耳にしていない。たとえば歌曲集の「白鳥の歌」全曲など。
☆器楽作品集 「シューベルティアーデ」 History Box 2003年10月26日購入
CD1 交響曲第8番ハ長調 カラヤン/VPO 1946
交響曲第7番「未完成」 メンゲルベルク コンセルトヘボウ 1939
CD2 交響曲第5番、第6番 ビーチャム/LPO 1938,1944
CD3 ピアノソナタ D850, D959 シュナーベル 1939,1937
CD4 ピアノソナタ D960, 楽興の時 D780 シュナーベル 1939,1937
CD5 即興曲 D899,D935 フィッシャー 1938
CD6 「さすらい人」幻想曲 D760 カーゾン 1949
ピアノ三重奏曲 D898 ルービンシュタイン(p)、ハイフェッツ(Vn)、フォイアマン(Vc) 1941
CD7 弦楽四重奏曲 D810「死と乙女」、D112 ブッシュ四重奏団 1936,1938
CD8 ピアノ三重奏曲 D929 オボーリン(p),オイストラフ(Vn),クヌシェヴィツキー(Vc) 1947
ヴァイオリンと弦楽オーケストラのためのロンド D438 テミアンカ(Vn)と彼のオーケストラ 1937
CD9 弦楽四重奏曲 D87 クァルヴェ四重奏団 1937
弦楽四重奏団 D804 コーリッシュ四重奏団 1934
弦楽四重奏団 D703 「四重奏断章」 ブダペスト弦楽四重奏団 1937
CD10 ヴァイオリンソナタ D574 クライスラー(Vn)、ラフマニノフ(p) 1928
ピアノ五重奏曲「鱒」 D667 シュナーベル(p),プロ・アルテ四重奏団、ホブデイ(Cb) 1935
◆HISTORYから出ているシューベルトの器楽曲集10枚組が990円。SCHUBERTIADEと題するもので録音は1930年代から1940年代のSP時代の復刻。名前だけは知っているがFMで聞いたくらいでまともに演奏録音を聞いたことがないシュナーベルやフィッシャー、ブッシュ四重奏団などの歴史的な録音がすべて。税込みでも1枚100円強。中から数枚つまみ聴きをした。未完成はメンゲルベルクの指揮。意外にもテンポの崩しやポルタメント奏法などは耳につかず、雄渾、逞しい演奏。録音も結構聞きやすい、と思っていたら、第二楽章の途中で録音復刻がメロメロの部分あり、残念。大ハ長調は、カラヤン/VPOの1946年の録音。この年以降、連合軍に演奏禁止を言い渡されたのだという。電車の中で明瞭に聞けなかったがシュナーベルの21番のソナタはすばらしい演奏ではないか。ハイフェッツとルービンシュタイン、オイストラフとオボーリンの各トリオなど聞き物は多い。
◆シューベルティアーデにはこれまでのシューベルト敬遠を払拭するような演奏が記録されていた。エドウィン・フィッシャーの即興曲集を聴いたところ、有名なフィッシャーの音抜けはところどころあったが、これまでケンプでもツィメルマンでも聴きとおすことが多少苦痛であったこの曲集を大変面白く楽しんで聞けた。録音は1930年代というのに、演奏を鑑賞するには問題なく、特にスケールのきらめくような奏法やまさにシューベルト的な楽想に関心させられた。フィッシャーの解釈や奏法はまったく古めかしいという感じはなく、音楽に勢いと逞しさがある。音楽が有機的に生きている。そう、メンゲルベルクの未完成もそうだったが、なよなよした弱弱しいシューベルトのイメージはここにはなく、男性的で意志的な音楽家像がそこにはある。シュナーベルの21番は、電車内で聴いたときより感心はしなかったが、これも雄雄しい音楽になっている。古い録音はどうせ演奏も音もメロメロでマニアックな好事家アイテムだと思っていたが、先日久しぶりに聞いて感心したフルトヴェングラーのバイロイトの第九にしても、ワルターのフィガロにしても音色的な正確さ、美しさは味わえないにしても音楽の質の高さは分かる。音質的な貧しさが、かえって聴く者の想像力を解放しているという側面はあるのだろうが。
◆ところで、ダイナミックレンジも帯域も狭くS/N比も悪い歴史的録音の演奏になぜ感激するのか。仮説1:当時録音を残せ、かつ今に伝えられているような演奏家は、実力と運に恵まれており、それこそ「クラシック」であるから。仮説2:自分自身の幼少時からの音楽鑑賞歴が、これらの録音と大差のない電蓄、ラジオ、テレビで覆われているため、そこから懐かしさを感じ、純粋に音楽から得る感動にプラスアルファが加わっている。仮説3:どんなにハイフィデリティを追求したオーディオでも、生演奏とは格段の差があり、むしろ帯域の狭いSP的な音質によってこそ、音楽情報が伝わりやすいのかも知れない。むしろ今のCDには余計な情報が入りすぎているのかも知れない。
昨日は聞けなかったが、一昨日は、ビーチャムのシューベルトの交響曲第5番と第6番を聞いた。針音がする音質だったが、当時の人々はこのような端正な演奏を聴いていたのだと感慨深かった。多分楽譜を参照しながら詳細に聴けば、ダイナミックや表情付け、楽器法など必ずしも忠実ではないのかも知れないが、オーケストラ演奏でも先入観とは大分印象が違う。そういえば、「運命」の初録音とされるニキシュ/BPOだって非常にすっきりしたスタイリッシュな演奏だそうだし、マーラーやR.シュトラウスの演奏も快速で粘らなかったらしい。19世紀末のロマン派的な誇張の多い主観的な演奏だけが大手を振っていたわけではなかったのだなあ。
◆ちょうど「シューベルティアーデ」に録音している1930年代を中心とする大家の多くは、演奏様式的にこの新即物主義とその直前の表現主義(後期ロマン派)が共存していた時代に属する。ただ、表現主義の末裔の典型であるメンゲルベルクの未完成が意外なほどすっきりしたフォルムを提示しているのは意外だった。
カラヤンの「ザ・グレート」の第一楽章を聴いたが、1946年という戦禍やナチズムの傷も癒えないこの時期のドキュメントとしては貴重な記録である。それを抜きにしてこの演奏を聞くと、後年のカラヤンの特徴のひとつの付点リズムの甘さ(レガート)が少々気になる。その一方で(楽譜通りかどうかは疑問だが)ところどころに意志的なクレッシェンドが現れ、印象に残る。付点の奏法を別にして全体としてはスッキリした引き締まった音楽になっている
☆歌曲集 「美しき水車屋の娘」
○ヴンダーリッヒ(T) LP。
非常に瑞々しい歌声である。またスタイルも端正でよどみがない。題名だが、水車屋とは要するに水車を用いて製粉を行う業者のことで、その主人の娘へのある徒弟の片想い。
☆歌曲集 「冬の旅」
○F=ディースカウ(Br)、ブレンデル(p)
シューベルト歌唱と演奏の両大家の共演だが、感心できない出来映えである。声の衰えが明らかであるし、ブレンデルのピアノ伴奏も冴えない。両名とも曲への共感が感じられないのは不思議だ。元々曲想が厭世的で深刻な内容なのだから、そのように演奏することも可能なのだろうが、たとえ曲想がそうであっても生気なくダルに演奏されては音楽は訴える力を失う。不思議なものだ。
☆歌曲集 「冬の旅」
○パツァーク(T) デムス(p) LP。
元々シューベルトの歌曲は譜面上は、テノールもしくはハイバリトン用に書かれているものが多いという。パツァークは、ワルター指揮ヴィーンフィルの歴史的演奏マーラー「大地の歌」のテノールを歌ったことで名前の残っている歌手である。某評論家いわく「厭世的」。
この冬の旅は原調通りに歌った珍しい例だ。この録音時はすでに声は衰えていたのだろうが、私にとってこの曲の道案内だった音盤であり、記憶の上では悪い演奏ではなかった。デムスは須坂に来演したときに生で聴いた。テクニックはつらいものがあるが、彼が持っている音楽は間違いなく本物だという気がした。崩れているが中身が詰まっている。なお、このLPのデムスはとりたてて下手なところは耳につかない。
☆歌曲集 「冬の旅」
○ハンス・ホッター(B-Br)、ハンス・ドコウピル(p)
ブックオフに、正規盤ではないが、クラシック名曲シリーズが大量に入庫しており、ハンス・ホッターの日本ライヴの「冬の旅」が置いてあり購入した(懐かしいオーマンディの「展覧会の絵」もあった)。
帰宅後、今日はシューベルトの誕生日であることを家人に告げて、聞き始めた。ホッターの声を聞いた子ども達は「格好のいい声だね」と感想を語ったのには驚いた。「ヴァーグナーの『ニーベルングの指環』というヒーローが沢山出てくる『オペラ』で、一番偉い神様の役を歌うのを得意とした人なんだよ」と答えておいた。ただ、聞きつづけるのはつらい。少年時代からあまりにも何回もテナーのユリウス・パツァークの「冬の旅」を聞いて来た者にとって、バスバリトンの時に割鐘のような威嚇する野太い声は、孤独な弱弱しい旅人のイメージではない。まさに、「ジークフリート」で神々の王ヴォータンが扮する「さすらい人」の歌だ。2005.1.31購入。
☆ピアノソナタ 第21番、さすらい人幻想曲
○ブレンデル(p)
ブレンデルも生演奏を聞いたピアニストの一人だ。2001年だったか、横浜でハイドンとモーツァルトのソナタ、メインにベートーヴェンのディアベリ変奏曲というプログラムだった。誠実な演奏だった。
なお、ソナタの第1楽章、第2主題を聞くと、「鉄腕アトム」の主題歌のフレーズの一部をいつも思い出す。
☆アルペジオーネ・ソナタ D.821
○ロストロポーヴィチ(Vc)、ブリテン(p)<1968>
アルペジオーネという今は消滅してしまった楽器のために書かれたソナタ。現在はチェロで代用されるが、音域的にハイポジションを多用しなくてはならないため難曲だという。壮年のロストロポーヴィチがイギリスの作曲家ブリテンのピアノと共演。表情濃く歌っている。(シューマン 5つの民謡風の小品 Op.102、ドビュッシー チェロ・ソナタと併録)
☆即興曲集作品90,142全曲
○ツィメルマン(p)
ツィメルマンは1994年だったか、長野県の岡谷市で聞いた。プログラムはシマノフスキ、ショパン、ドビュッシーだった。その音と技巧の鮮やかさに度肝を抜かれた。ピアノの音色の何と美しいことか。このCDからはそのときの感動は蘇らない。
☆即興曲集作品90-2,4
○ホロヴィッツ(p) ベートーヴェンの悲愴、月光、熱情のCDの余白に入れられたもの。彼のシューベルトは比較的珍しいのではないか?
☆弦楽五重奏曲
○アルバン・ベルク四重奏団、シフ(Vc)
シューベルト晩年の傑作とされているが、茫洋としていてその真価はつかめないでいる。
☆弦楽四重奏曲 「死と乙女」「ロザムンデ」
○アルバン・ベルク四重奏団
アルバン・ベルククァルテットも生演奏を聞いたことがある。学生時代小遣いを工面して宮城県民会館の相当舞台に近い席を取り、聞き入った。ベルクの「抒情組曲」には歯が立たなかった。その他のプログラムは何だったか。アンコールにモーツァルトのニ短調のメヌエットをサービスしてくれた。当代一の四重奏団を生で聞けて幸福だった。
☆ピアノ五重奏曲「ます」
○ホルショフスキー(p) ブダペスト四重奏団 レヴァイン(Cb) モーツァルトのクラリネット五重奏曲とのカップリング。老大家ホルショフシキーと往年の名カルテットの組み合わせが魅力的である。
☆交響曲第8番「未完成」,第9番
○ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
凡庸というありがたくないそしりの多いハイティンクではあるが、私見ではあたりはずれのない充実した音楽を作る名指揮者だと思う。このCDもフィリップスの廉価盤で1975年の録音だが、非常に楷書的で着実な模範的な演奏だと思う。 シューベルトのフォルテッシモが威圧的でないのがよい。
☆交響曲第8番「未完成」
○ライナー/シカゴ響 ベートーヴェンの第5番とのカップリング(伝統的な)。ベートーヴェンは凄まじいほどの集中力だが、この未完成は取りたてて辛口でもない。
☆交響曲第8番「未完成」
○バーンスタイン/ニューヨークフィル LP。 これもベートーヴェンの第5番とのカップリング。大味な演奏。
このバーンスタインのLPこそ、自分で初めて買ったもの(といっても、弟が買って来てくれたものだが)。もし、これがカラヤン/BPOのものだったらその後のリスナー歴も多少変わったものになっていただろうと思う。この後買ったのは、ワルターの「英雄」だった。CBSのベストクラシック100が自分の指針になったのだから。
最近中古CDを入手。印象はあまり変わらない。
☆交響曲第9番
○セル/クリーブランド(EMI セラフィム盤)。最晩年のセルの録音の一つだが、残念ながら音質がもう一つ。強奏で音が歪む。マスターテープの問題だとも言われている。(同時期のブラームスの二重協奏曲も歪みあり。またギレリスとのベートーヴェンの協奏曲全集も音質に関してあまり芳しい噂は聞かない。有名なドヴォルザークはどうなのか、天邪鬼にも未聴)
☆交響曲第5番、第8番
○ワルター/コロンビア響、ニューヨークフィル LP。第8番「未完成」は私が少年時代には決定盤扱いされていたもの。
☆白水社/ドイツグラモフォン シューベルト歌曲集
○F=ディースカウ(Br)、ムーア(p) LP。著名曲はほとんど聴くことができるが、連作歌曲集は残念ながら全曲ではない。
☆「シューベルティアーデ」
○デムス(p) 即興曲集、楽興の時から数曲。珍しいクッペルヴィーザー・ワルツが含まれる。作品90-3にはデムス作詩の詩がつけられてテノールが歌っている。デムスが長野県の須坂市に来演したときに会場で求めた。妻がCDにサインをもらい握手をした。メインはベートヴェンのNo.32のソナタだった。
☆ピアノソナタ変ロ長調D960,楽興の時D780、即興曲集作品90,142、ピアノソナタ イ長調D664
○ケンプ(p) 政治学者 丸山真男が大変好んだというケンプのシューベルト。その弟子中野雄も推薦。辛口の内田光子もケンプを評価とのこと。ケンプのベートーヴェンは愛好しているが、シューベルトは未だ分からない。
☆「ロザムンデ」の音楽より 序曲、間奏曲など
○モントゥー指揮ヴィーンフィルハーモニー ロザムンデの間奏曲は、まだ小学生時代、偶然にラジカセに録音されており、幾度となく聞いた曲。非常に懐かしい。
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