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リヴァイアサン(レヴィアタン) Leviathan

◆地獄の海軍提督
リヴァイアサン(レヴィアタン)は海の大悪魔です。ルシファーの側近のひとりで、嫉妬もしくは詐欺をつかさどり、海軍の大提督を務めます。陸の怪物ベヒモスと対で語られることが多く、身体は非常に巨大で、5キロメートルから10キロメートルほどの長さがあると言うからちょっとした島ぐらいの大きさです。いつもは海の底で静かに暮らしていますが、しばしば思い出したように大暴れしては、地上に甚大な被害をもたらします。
啓蒙家トマス・ホッブスの著書にも、そのものずばり「リヴァイアサン」というものがあって、そこからこの海獣の名を知った人も多いのではないでしょうか。
「彼」の性別はよく分かっていません。ベヒモスと対で語られ、そのベヒモスは雄なのでリヴァイアサンは雌になるという説もあれば、もともとこの海獣は雌雄ひとつがいだったのだけど、その力を恐れた神が雌を殺したので、いまは雄しか残っていないという説もあって、要するによく分からないのです。ゲームや小説などでは「雄」説を採る人が多いようです。


◆イスラエルの神
彼の名はヘブライ語で「水の怪物」を意味する言葉もしくは「集まって群れをなすもの」を意味する言葉から来ていると言われています。
もともとは古代バビロニアの至高神ティアマトか、イスラエル人の信仰する蛇神ネフシュタンNefushtanに由来すると考えられ、旧約聖書「レヴィ記」に登場する祭司民族レヴィ人もこの神の子孫であるとされました。つまり「十戒」で有名な預言者モーセやその兄アーロンたちのご先祖様というわけです。しかし、絶対神ヤハウェとの覇権争いに敗北し、悪魔の地位に貶められ、その身体はインド洋に沈められました。


◆聖書に見るリヴァイアサン
リヴァイアサンの名前は旧約聖書の「ヨブ記」の中に見ることができます。大いなる神によって5日目に作られた存在であり、「最後の審判」の日に兄弟分のベヒモスとともに人々の糧食となることが宿命づけられています。
本来はベヒモスも海に棲む存在だったようなのですが、二人の身体があまりに巨大で、同時に海へ入ると水がすべてあふれ出しそうになったので、仕方なくベヒモスだけを地上に挙げ、レヴィアタンを海に残したのだそうです。
旧約聖書には計4カ所ほど、このリヴァイアサンの記述が出てきますが、特に「ヨブ記」の第41章はほぼ全文がこの怪物の説明に充てられ、彼がいかに力強く、他を圧倒する存在であるかを表しています。ちょっと長いですが後半部分を引用してみましょう。

「その歯の回りは恐ろしい。
その背は並んだ盾、一つ一つぴったりついて、風もその間を通らない。
そのくしゃみはいなずまを放ち、その目は暁のまぶたのようだ。
その口からは、たいまつが燃え出し、火花を散らす。
その鼻からは煙が出て、煮え立つかまや、燃える葦のようだ。
その行きは炭火を起こし、その口から炎が出る。
その首には力が宿り、その前には恐れが踊る。
その肉のひだはくっつき合い、その身にしっかりついて、動かない。
その心臓は石のように堅く、臼の下石のように堅い。
それが起きあがると、力ある者もおじけづき、ぎょっとしてとまどう。
それを剣で襲っても、ききめがなく、槍も投げ槍も矢じりもききめがない。
それは鉄をわらのように、青銅を腐った木のようにみなす。
火もそれを逃げさせることができず、石投げの石も、それにはわらのようになる。
こん棒もわらのようにみなし、投げ槍のうなる音をあざ笑う。
その下腹は鋭い土器のかけら、それは打穀機のように泥の上に身を伸ばす。
それは深みを釜のように沸き立たせ、海を香油をかき混ぜるなべのようにする。
その通ったあとは輝き、深い縁は白髪のように思われる。
地の上には、これと似たものはなく、恐れを知らないものとして作られた。
それは、すべて高いものを見おろし、それは、すべての誇り高い獣の王である」

(旧約聖書・ヨブ記41章)

この記述を見る限りでは、どうもこの怪物はワニをイメージしたのではないかと思われます。一説にはエジプトを寓したものとも言われていて、ワニはそこに棲む代表的な動物だったので、このようなワニ型の怪物を作り出すことで、ユダヤ人にとってのエジプトが、いかに脅威で恐ろしい存在であるかを示そうとしたのだとも考えられています。


◆中世のリヴァイアサン
キリスト教にとってリヴァイアサンは許されざる悪魔のひとつです。もともとは神に作られた怪物ですし、その意味では決して神に叛逆するような存在ではなかったハズなのですが、ワニ→蛇というイメージから、アダムとイブを堕落させた蛇と同一視されるようになり、次第に悪魔への道を転がり落ちるようになります。キリスト教と何かとぶつかることの多かったユダヤ教の、重要な「獣」であるという部分も関係しているのかも知れません。中世には、ルシファーやベルゼブブと並ぶ大悪魔としての地位を確立し、七つの大罪のひとつ「嫉妬」をつかさどるようになって、人々の間で恐れられるようになります。
哲学者トマス・ホッブスは、この海獣に「強い国家」の姿を重ね合わせ、国家や宗教、社会に関する主張を、その名もずばり「リヴァイアサン」という本にまとめました。
詩人で画家だったウィリアム・ブレイクの描いたリヴァイアサンは、大海蛇の姿で描かれており、人間の内部で抗争する「悪」の象徴です。「もっとも深い地獄にそびえ、天のアーチに達する二本の柱」のひとつ(もうひとつは陸獣ベヒモス)であり、驕りのすべてをつかさどるともされています。
このブレイクのリヴァイアサンは、ゲームなどに強い影響を与えていて、今はリヴァイアサンといえばこうした海蛇タイプが主流になっています。



■亜種・別名など
レヴィヤタン





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