第1章 同じ種なのにここまでちがう?

偉大なる進化の過程
 男と女は違う。
どちらかが優れている、劣っているということではなく、ただ違う。
両者に共通しているのは、種が同じということだけ。
好きなゲームも違えば、世界観もルールも違う。
誰もが知っている事実だが、あえて認める人は、特に男性ではほとんどいない。
しかし真実は動かしがたい。
その証拠を見てみよう。
 ゲームサークルの活動では、仲間に入った男女の約半数が離脱する。
最初のうちは幾らか仲がよかったサークル仲間でも、長続きしないで終わってしまうのだ。
ゲーム歴や信条、サイコロの色に関係なく、サークルのどこでも、男と女はお互いの意見や行動、態度、プレイスタイルをめぐって言い争っている。

誰が見ても明らかなこと
 まず最初に、とても簡単で重要なこと…ゲーマーの男女の装備の違いについて考えてみよう。
 男は大きなカバンにルールブックとサイコロとミニチュア、それに可能ならばノートパソコンをいっぱい詰め込み、そのカバンにはキャラクター系のキーホルダーが付いている。
よれよれのジーンズをはき、大きなペットボトルを携え、頭にはバンダナを巻いている。
そして騎士や聖戦士といった、位の高いキャラクターを遊びたがる。
 一方、女は全く化粧をしていないか、下手な化粧をしてコンベンションに現れる。
髪の毛は簡単にまとめてあるか、単に伸ばしているだけのどちらかだ。
そして茶髪は少ない。
多くの女は自分のことを「俺」または「僕」と呼ぶ。
特にかわいい女の子が好きだ。
カバンの中には、今日食べるはずのないお菓子や、買ったはいいが使っていない化粧品が入っている。
さらに、イラストを書くための筆記用具も多い。
小さいダイス入れの袋には、透明な樹脂で作られたサイコロやキラキラと光るラメが入ったサイコロがたっぷり詰まっている。
 男がコンベンションにいく時、目的はおそらくひとつしかない。
一方女にとって、コンベンションは社交ラウンジであり、自己防衛の場でもある。
お互い見ず知らずで入った者どうしが、変える時には親友や生涯の友になっていたりする。
でも、もし男が「おい、ゲイリー。俺は今日コンベンションにいくけど、一緒にどうだい?」などといったら、たちまち噂になるにちがいない。
 また、男はRPGのルールブックを独占して、シーンが終わるとすぐページをめくりたがるが、女は平気でそのまま観察している。
自分のロールプレイや謎解きで行き詰まった時、男はガムをかんだり、いきなり他のテーブルを観察しに出かけるが、女は何も言わずにトイレに出かける。
 女は男のどんなところに不満を覚えるか。
鈍感、のんき、人の話を聞かない、優しくない、話をしてくれない、キャラクターへの愛が足りない、パーティーの人間関係を大事にしない、交渉は二の次で戦闘ばかりしたがる、広げた風呂敷をたたまない。
 では男は女のどんなところにイライラするか。
ルールを使うのがへた、チャートを見落とす、ダンジョンの地図を上下さかさまにしないと読めない、無駄なおしゃべりが多すぎる、先制攻撃したくても自分から提案しない、戦闘が済んだ後死体を片付けておかない。
 男は捜し物を見つけられないくせに、キャラクターシートのアイテム欄はアイウエオ順に記入する。
女はルールの記述がどこにあっても探しだせるくせに、シナリオ達成への最短ルートを見つけられない。
男は、男のほうが分別があると思っており、女は、女のほうが分別があると思っている。

ダンジョンでランタンの油がなくなったとき、補充する男の割合は?
不明。
そんな実例にお目にかかったことがないから。


 女は、混雑したコンベンションに一歩入っただけで、そこにいる男全員の印象を言える。
ヒットポイントゲージが瀕死を示していても気付かないが、そのくせ会場の片隅に生理的に気に入らない男が転がっていたら、50メートル先からでも分かる。
男は、チャートだけでキャラクター作成を難なくやってのけるのに、女のクリトリスを見つけられない。
 ダンジョンに潜って道に迷ったとき、女ならすぐ隊列を止めて周囲に道を尋ねるだろう。
だが男にしてみれば、それは自分の探索能力のなさを周囲に見せびらかしているに等しい。
だから、たとえゲームマスターにあきれられても、その辺を空しく何時間でも歩き回って、「ほほう、ここを通ってもあそこに出られるのか」とか、「だいたいこのあたりなんだが」「このスライムの死体は見覚えがあるぞ!」などと口走る。

男と女は役割が違う
 男と女が異なる進化をしてきたのは、その必要があったからだ。
男は狩りをして、女は木の実や果実をとった。
男は守り、女は育てた。
それを続けた結果、両者の身体の脳は、全く別ものになった。
 男女の身体は、それぞれの役割に合わせて発達していった。
大抵の男は女より背が高く、力も強くなった。
そして脳のほうも、役割に応じて進化していった。
 こうして何百年もの間に、男と女の脳は違う方向に進化していった。
その結果、情報の処理の仕方まで変わってきた。
いまや男と女では、考え方はもちろん、理解の仕方、ルール処理の順位、ロールプレイのしかた、行動、サイコロの振り方までことごとくちがう。
 その事実に見て見ぬふりをしていると、あなたのRPGに対する考え方は悩みと混乱が支配し、幻滅ばかりすることだろう。

私たちの思考や行動を決めるのは、RPGを初めて遊ぶときに教えられた脳の配線と、ホルモンの働きである。


男の陰謀か?
 1995年頃から、RPGでの男女差の固定観念を打ち破ろうとする運動が盛んになった。
ゲームの上での政治や宗教、アーキタイプなどのシステムは、女性を抑圧し、優秀な女性が世に出ることを妨げようとする男性側の陰謀であり、男は女を支配下に置くためにゲームをデザインするというのが、そうした活動の主張だった。
 たしかに歴史を振り返ってみれば、そんな風に見えなくもない。
日本のRPGの過去20年の歴史の中で、プロとしてRPGをデザインした女性は片手で余るほどしか出ていない。
多くのRPGは、シミュレーションゲームの流れを受けて、男のためにデザインされ、男達が遊び続けてきた。
残念ながら、この流れは現在でも根本的には変わっていない。
さらに、現在では明確に男女の違いを差別化してテンプレートを提示しているゲームも少なくない。
 女は圧倒的な人数差によるプレッシャーの中で、男のゲームを男と同じように遊ばなければならなかった。
そのため、女達は女達で集まって、男の作ったゲームを女に合うように、システムやシナリオを変更したり、あるいは自分達でシステムを作って、女達が喜ぶような遊びかたをしていった。
 もし男と女が全く同質ならば、なぜ男だけが圧倒的な優位に立ち、RPGを支配できたのだろう?ここでも、脳の働きを探ることで答えが出てくる。
私たちは判で押したように同じではない。
キャラクターの能力を発揮するチャンスは平等に与えられるべきだが、男と女では、本来持っている能力が完全に同じではないのだ。
男女平等はルールやマナーの問題だが、同質かどうかは科学の問題である。

男女平等はルールやマナーの話、男女の本質的な違いはルールの次元である。


先世代の経験は役にたたない
 あなたがD&Dや同時代のゲームからRPGを始めたなら、おそらくあなたのゲームプレイは、古代から続いてきた男女の役割分担をそのまま踏襲しているはずだ。
その行動パターンはそれぞれの先輩から学んだものだし、その先輩たちもルールブックに書いてあるやり方を模倣していた。
こんな具合にさかのぼっていけば、役割がはっきり分かれていた洞穴の時代に行きつく。
 だが、その役割分担が消えてしまった現在、D&D世代の経験は全く役に立たない。
キャラクターの役割を明確に分担していたクラス制度から、キャラクター各人の技量を明確にするスキル制度が発展し、それからさらにキャラクターとプレイヤーに焦点を絞り込むシーン制度など、新しい要素が大量に導入されてきたことを計算に入れると、D&D世代が役に立たない率は70パーセントを超えるのではないだろうか。
21世紀という新しい世代に、精神的に満ち足りたロールプレイング・ゲームを楽しむには、今までと違うルールを学ぶ必要がある。
だが、それは『新しいルール』という意味ではない。
世の中には新しいルールだけを追い求めて賛美する方向が見られるが、それこそメーカーの思うツボなのだ。

しょせん人間も動物なのだ
 人間も動物だと断言されると、大抵の人は難色を示すだろう。
しかし、私たちの身体の96パーセントは、ブタやウマと同じなのである。
人間にしかできないことは、ものを考えて、ロールプレイの計画を立てることくらいだ。
 また、どんな動物も本能を持っていて、それが行動を支配している。
これに異論を唱える人は余りいない。
本能的な行動は分かりやすい。
ファイターは殴り、ウィザードは呪文をぶつけ、プリーストは祈り、シーフは盗む。
しかしこれらは知的行動ではないため、人間はなかなか自分達に置き換えて考えられない。
プレイヤーが最初にすること、名前を付けて、能力値のサイコロを振る、これが本能だということすら忘れてしまっている。
 しかし、人間の男女に刷り込まれている本能には何等変わりがない。
すなわち、男は狩りをして獲物を追い、女は子孫を産み育てて守るということだ。
この本能がRPGでもしっかり生かされていることに、我々は気付いていないことが多い。
男のプレイヤーは強腕な戦士を遊びたがり、自分の力を誇示するのにひたすらサイコロを振りたがる。
一方、女のプレイヤーはキャラクター作成をわが子のように慈しみ、キャラクターをわが子のようにかわいがる。
もしこの事実を証明したければ、男のプレイヤーが担当する戦士から活躍の場を取り上げたり、女のプレイヤーのキャラクターシートを汚してみるといい。
いずれも非常に不快になるはずだ。
 善し悪しに関係なく、祖先から受け継いだ行動がキャラクターたちに引き継がれるという点では、人間もエルフも変わらない。
新しい技能を身に付ければ、本能によってそれがキャラクターにも伝わるはずだ。
迷路をうまく通り抜けられるハーフリングと、迷ってしまうハーフリングをグループ分けして、賢いハーフリングとそうでないハーフリングの家系を何世代にもわたって作ることができる。
私たち人間も動物であることに変わりなく、ただ何百年という進化によって野性的な衝動が洗練されていっただけである。
そのことを承知しておけば、自分の欲求や衝動を理解するのもたやすいし、自分自身や他人をもっと楽な気持ちで受け入れられる。
真の妄想に通じる道は、どうやらそこにありそうだ。



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