第2章 そうだったのか!
 アツシとヒロミがコンベンション会場に入ったとき、すでに中は満員だった。
ヒロミは部屋に入るとすぐ、彼の顔をじっと見て、唇をほとんど動かさずにいった。
「窓際にいるあのゲームマスターを見てごらんなさい…」
アツシがその方向に顔を向けるやいなや、ヒロミの叱責が飛んだ。
「今は見ちゃだめ!バレバレじゃないの…」
アツシの軽率な振る舞いがヒロミには理解できないし、ヒロミが少しも素振りを見せずに他人を観察できることがアツシには信じられなかった。

女はレーダー探知器である
 女が腹を立てたり、傷ついたりしたとき、他の女はすぐに察知する。
だが男は、目の前で女が涙をこぼしたり、癇癪を起こすか、怒った女に横っつらをはたかれるまで何が怒っているのか分からない。
 哺乳類のメスはみんなそうだが、女は男より遥かに精巧な感覚能力を持っている。
キャラクターを育て、パーティの雰囲気を守る立場上、他人のごくわずかな気持ちや態度の変化に気付く必要があるのだ。
俗に「女の直感」というが、それは相手のようすや行動のちょっとした部分や、微かな変化を見逃さないということなのである。
昔から女の直感は、マスターの裏で悪巧みをする男達をうろたえさせ、数々の陰謀を暴いてきた。

ピロテースときたら、私のコートに付いたハイエルフの髪の毛なら、50メートル離れていても目ざとく発見するのに、レイピアを鞘にしまうときは必ず先端を鞘の柄にぶつけるんだ。


女は後ろにも目が付いている?
 実際に目が付いているわけではないが、確かにそれに近い。
女性は網膜にある状体細胞の種類が多いだけでなく、周辺視野も男より広い。
視野の範囲がほぼ180度に及ぶ女性も珍しくない。
 男の場合、眼球は女より大きいし、長距離を見通す「トンネル視」ができるような脳の造りになっている。
つまり、目の延長線上にあるものなら、遠くでもはっきり正確に見ることができる。
丁度双眼鏡をのぞいているようなものだ。

女は絨毯爆撃がうまく、男は狙撃が得意。


 狩猟者である男は、遠くにいる獲物を追跡するため、注意がそれないようにもっぱら前方が見えるように進化した。
女の視野が広くなったのは、忍び寄る夜這いの男をいち早く見つけるためだ。
だから現代の男は、ルールブックの中にあるたった一行の簡単なルールを苦もなく見つけられるくせに、すぐ手元にあるキャラクターシートに記録した所持品を探しだせない。
 周辺視野は、本物の冒険者が行うような訓練で範囲を広げることができる。
また存続の危機に直面すると、周辺視野が拡大することがある。
かつて、女性参加者の比率が多いとあるコンベンションで痴漢が発生した。
女性たちは誰とでもなく、周囲の男性参加者たちに一斉に疑いの目を向けた。
結局犯人は特定できなかったが、それまで「典型的なトンネル視」だった男性参加者たちは、周囲の女性たちの表情を逐一警戒しながら遊ぶようになった。
いつ痴漢扱いされた警察に突き出されるかもしれないという凄まじい恐怖が、彼らの脳に変化を起こした。
その結果、自分に忍び寄る恐怖をいち早く察知できるように、視野が広くなったのだ。

なぜダガーは消えてなくなるのか
 世界中どこでも、男女の間ではこういう会話が交わされているはずだ。
男は、ルールブックのアイテム表を広げていろいろと買い物をしている。
「ダガーはどこだ?」
「この表の中でしょ」
「さっきから探してるけど、見つからないんだ」
「あるはずよ。このページに見たんだから」
「ないなあ。別のページに書いてあるんじゃないのかい。ここのページのどこを探したって、ダガーはないよ!」
 業を煮やした女は男からルールブックを取り上げると、シャープペンを取り出し、まるで手品のように「ダガー」の欄を丸く囲う。
世間知らずの男(大抵のゲーマーのことだ)なら、これは何かのトリックだと思うだろう。
あるいは、君はルールブックを暗記しているのか?と女をなじる。
だが、武器や鎧、衣服、盾、ダガー、魔法の巻き物、キャラクターシート…本当はみんなあるべき場所にちゃんとある。
ただ男には見えないだけだ。
女は視野の範囲が広いから、一覧表にあるものを一目で見渡せる。
また、武器表のダガーとソードの場所など、規則性のない位置関係をちゃんと覚えていられるのは、エストロゲンというホルモンのおかげだ。
男の場合、アイテム表をのぞき込む時に脳が探しているのは短刀でもシルバーダガーでもなく、単に「ダガー」と書かれた文字だという研究結果もある。
顔の向きが少しでもずれているは、何も見つからない。
だから男は頭をキョロキョロ動かすか、ひょっに顔を近付けてじっと覗き込まない限り、目的のものは目に入らず、したがって「どこを探してもない」ことになってしまう。
 こうした見え方の違いは、ロールプレイにも影を落としている。
大規模サークルの統計によると、ダンジョンの十字路で横方向から奇襲を受ける確率は、女性プレイヤーのほうが低い。
周辺視野が広いので、左右から近付いてくる敵に気付きやすいのだ。
しかし女性は空間能力が男性に比べて未発達なので、戦闘で移動する時に敵の背後に回りきれずにぶつかってしまうことが多い。
 男は手元を見ることが得意でないことを知っておけば、女のストレスはかなり防げるはずだ。
男のほうも、「武器表にあるわ!」と女に言われたら、素直に信じて探すほうが身のためだ。

色目がばれるのはいつも男
 女は周辺視野が広いので、周囲にばれないよう、さりげなく色目を使うことができる。
 男が色目を使ったら大抵女になじられるが、その逆はない。
あるマスターの証言によると、男が同じテーブルに座っている女の身体をジロジロと見るのと同じくらい、あるいはそれ以上の勢いで、女の男の身体を品定めしているという。
女は気付かれないだけだ。
 だから、女が女のキャラクターを演じ、男のキャラクターを色目遣いで交渉しようとすると、大抵の場合うまくいく。
でも、男が女のキャラクターを演じても、気色悪がられるだけだし、女のキャラクターに色目を使おうものなら、即刻たたき出される。
女性のプレイヤーが交渉沙汰に強いのには、ちゃんとした理由があるのだ。

夜の冒険は男にまかせよう
 一般にくらいところで目が利くのは女のほうで、特に赤っぽい色がよく見える。
しかし男は狭い範囲なら遠くまでよく見える。
しかも男は右脳の空間能力が優れており、前後を走る馬車の動き、自分との距離をはっきりとらえることができる。
だから、男は明かりのない夜の宿屋でも、まっすぐ女の部屋に夜這いに行くことができるのだ。
これに対して、敵対するゴブリン共がどこから走ってくるのか分からなくなる、一種の夜盲状態を経験した女性は多い。
だから長距離の冒険に出かける時は、昼間の冒険は女、夜の探検は男に任せるのがよい。
女は暗いところでも細部までよく見えているが、その範囲は左右に広いだけで、前後の距離は短いからだ。

男女混成パーティーでは、昼間のシティアドベンチャーは女、夜のダンジョンは男が担当しよう。


 男の目はもともと遠くを見るようにできている。
だからルールブックの行間を見たり、キャラクターの説明を読む時は、わざわざ目を調整しなくてはならないので、男のほうが目が疲れやすい。
ゲームマスターしている時は特にそうだ。
プレイヤーの目を見る時には、男は目だけでなく顔も動かす必要があるのだ。
だから男のゲームマスターの挙動は、女のゲームマスターに比べてはるかに動きが多いはずだ。
 手元の作業が向いているのは女のほうで、それゆえ精密な作業を長い時間こなすことができる。
しかも狭い範囲での細かい運動ができるような脳の配線になっているので、マスタースクリーンの裏で密かにサイコロを振ったり、キャラクターシートにシナリオ進行などの細かいメモを書くのが苦にならない。

なぜ女には「第六感」があるのか
 中世の時代、「魔力」を持っているといわれて火あぶりになるのは、たいてい女だった。
予言が当たったり、相手の嘘を見抜いたり、動物と話をしたり、隠された真実を暴いたりしたからだ。
現在でもサイバー教皇領では、「試罪の法則」により、男女問わず多くの人間が火あぶりにされているのだが。
 かつて、あるコンベンションでひとつの実験が行われた。
生後1年も経たない赤ん坊を連れてきた夫婦が参加者の中にいた。
そこで、同じ会場にいた数人の女性参加者(全員未婚)にその赤ん坊を見せ、どのような反応をするかを探って見せたのだ。
 すると、ほぼ全ての女の子が、赤ん坊の表情を見て、様々な喜怒哀楽の顔を写し出し始めたのだ。
同じことを男性たちにも行ったのだが、結果は惨々たるものだった。
赤ん坊の顔を見て、喜怒哀楽の表情を自分の顔に写したのはごくわずかで、ほとんどの男は母親の顔のほうをじっと見ていたのである。
男達は口々にこう言った。
「人妻っていいよなぁ」
 また、大抵の女なら、プレイヤー間でキャラクターを作成し、パーティが組まれた時に、10分間も観察すればパーティ間の人間関係のラインを見て取れる。
あの二人はラブラブだ、あっちの二人はウマが合わなくなる。
誰が誰を支配しようとしているか、どのキャラクターが負けず嫌いで、パーティの本当のリーダーは誰なのか分かるのだ。
ところが男はセッションテーブルに座ると、まず背中と出口を確認する。
攻撃がどこからくるか、襲われたらどこから逃げればいいかを考えることが、脳の回路として出来上がっているからだ。
次に、知った顔がいないか、敵になりそうなものがいないか全体を見回し、部屋のレイアウトを認識する。
さらに論理的な頭を働かせ、壊れたプレイヤーや切れたマスターを見つけだす。
その間に、女は会場にいる全員を観察し終えて、誰がどんな人物で、どんな気分でいるかを把握しているのだ。

なぜ男は女に演技できないのか
 一対一のコミュニケーションでは、メッセージのおよそ60〜70パーセントを非言語コミュニケーションが占めているという。
声色は20〜30パーセント。
言葉に至ってはわずか7〜10パーセントにすぎない。
だが、RPGは会話のゲームだ。
わずかの比率の言葉で、それ以外の大半を占めるコミュニケーションを披露していかなければならない。
これはなかなかに大変な作業だ。
こうした情報を、女は優秀な感覚装置で分析する。
しかも左右の脳の間で情報を素早くやり取りできるので、言葉や四角、その他の情報を統合し、解釈する術に長けている。
 面と向かっている時、男が女にうまくロールプレイできないのはそのためだ。
しかし女性読者ならすでにご承知のとおり、女が男にロールプレイして見せるのはさほど難しくない。
男は鈍感だから、言葉やそれ以外の信号が食い違っていても気付かない。
だからセッションの時、女が「さらわれた」振りをしてもばれないのだ。
男が女にロールプレイしようと思ったら、表情を悟られないようテレパシーかメールを使うほうが賢明だ。
それがだめなら部屋の明かりを全部消すか、覆面を付けるか、マスタースクリーンに顔をすっぽりと埋めたほうがいい。

女の耳は地獄耳
 女エルフは男よりも耳が長く、そして鋭い。
特に高音を聞き分けるのが得意だ。
だから夜中に剣と剣がぶつかりあう時、女の脳は素早くそれを感知する。
けれども脳がそういうふうにプログラミングされていない男は、全然夜襲に気付かずに寝ている。
遠くで女の子が泣いていると、泣き声を聞き付けるのは女のほうだが、居場所をつき止めるのは空間能力、方向感覚に優れた男のほうだ。

真夜中、キャンプの中からあえぎ声が漏れている。
女はいらいらするが、男はどこ吹く風で眠ったまま。


 音を分離し、種類分けして、それぞれの音に対して意思決定する能力は、女の脳のほうが長けている。
だからゲームマスターも、プレイヤーも女だらけのセッションテーブルは、意外と周囲に騒音をまき散らさず、常識的な音量でゲームを進めることができる。
でも男は、声色がついていたり、隣でサイコロを振る音が聞こえてしまうと、会話ができない。
男が行動宣言する時は、話をやめろ、サイコロを振らないでくれ、マスタースクリーンを倒せとうるさく指示を出すが、女は気にせず淡々と演技をし始める。

女は行間が読める
 声の大きさや高さの微かな違いを、女は敏感に察知する。
だからマスターの声色の変化から心境をつかむことができる。
男のキャラクターが男の敵相手に熱い台詞を吐いている時、女はよく「そんな声を出さないで!」というが、男にはその意味が皆目分からない。
 音に対する感受性は、女のエルフのほうが男のドワーフの数倍もある。
だからマスターが女のプレイヤーに声を出す時は、声を一オクターブ高くして話しかけるベイビートークが効果的だ。
 鋭い聴力は、いわゆる「女の勘」の重要な部分を占めている。
女は行間を読むのがうまいといわれているのも、この辺りに根拠がある。
だから、TRPGのシステムを作っている時、女にディベロップの作業を任せると、男の数倍もルールの穴や誤字脱字、うまいコンボなどを見つけてくれるはずだ。
事実、あるゲームメーカーが、新作ゲームのディベロップ作業に、お抱えの女性イラストレーターを起用したところ、そのゲームはそのメーカーにあるまじきルールの分かりやすさと読みやすさを持って発売された。
 もっとも男は動物の立てる音を識別して、まねるのがうまい。
この能力は、男の仕事が狩猟だった昔には随分役に立ったはずだが、残念ながら今では怪物の唸り声くらいにしか有り難いものではなくなっている。

男は方向を「聞く」ことができる
 音を聞き分けるのは女のほうが得意だが、男は音の来る方向がよく分かる。
男の脳は、周囲が変わりうるさくても、マスターの声をしっかりと聞き取ることができるのだ。
マスターが女ならば、特に。
男の脳は空間能力に優れているので、マスターの詳細な説明だけで、頭の中に三次元の空間マップを作り出すことができるのだ。

「真っ暗な鍾乳洞の中を君達は進んでいる。
耳元でパチパチと燃える松明の明かりが君達の周囲を照らす。
左右の鍾乳石からは、ぴちゃん、ぴちゃんと水の落ちる音がしている。
足下の音は、君達が石で足下を滑らせないように慎重に歩いていることの証しだ…ブーツがわずかながらギュウギュウときしむその音だ。
しばらく進むと、やがて前方から忌まわしき獣たちの唸り声が響いてくるのが聞こえる…」


 男はこの説明で、耳元、左右、足下、そして前方の音を正確に把握し、どの音が重要でどれが重要でないかを瞬時に判断することができる。
男の脳は立体的な音地図を描き出せるのだ。
この能力のおかげで、男は素早く女プレイヤーを発見したり、嫌な奴から逃げることができる。

それなのに男は人の話が聞けない
 男の子はよく先生や親から、人の話を聞きなさいと怒られる。
特に思春期にさしかかった男の子は、耳の奥にある三半規管が急速に成長を始めるために、一時的に耳がよく聞こえない状態になるのだ。
これは冒険者でも変わらない。
一般に冒険者として形作られるキャラクターは、15歳から18歳くらいの年齢が多い。
男はそのキャラクターに熱中するあまり、周囲の声が一時的に聞こえなくなるのだ。
 だが、もちろん女の声なら別だ。
アメリカ海軍の戦闘機では、コンピューターからのアナウンス音声を男の声から女の声に変えたところ、パイロットの反応が著しく向上した。
電車の自動車内放送で、女性の声を使用しているものが多いのもそのためだ。

男は細部が目に入らない
 ダンジョンからの帰り道、ジョウゼン、トルデク、マイアリー、リダの4人は馬車を走らせていた…手綱を握っているのはクレリックのジョウゼンで、ローグのリダはナビゲーター役を務めている。
ところが、本当は右に曲がらなければならないところを、リダがうっかり左と指示したために、4人は口論になった。
数分間の気まずい沈黙のうちに、不安になったファイターのトルデクが口を開いた。
「おい……大丈夫かい?」
するとリダは、「えぇ、全て順調よ!」と答えた。
 彼女がそう答えたということは、順調には程遠いということだ。
ジョウゼンはダンジョンでのことをあれこれ思い返した。
「ダンジョンで僕は何かまずいことをしたかな?」
この問いに、ウィザードのマイアリーは「その話はしたくないの!」と強い口調で返した。
 ということは、マイアリーは何か怒っていて、リダはダンジョンで手に入った魔法の宝物の話をしたがっている。
だがジョウゼンとトルデクには、自分達が何をしでかしたのか全く分からない。
「教えてくれよ…僕たちが何をした?自分では分からないんだ」
 この手の会話で、男には嘘がない。
本当に何が悪いのか分からないのだ。
リダは言った。
「まだそんなクサイ芝居を続けるつもりなの?でもいいわ、教えてあげる」
 だがジョウゼンは、もちろん演技などしていない(プレイヤーとしての務めを果たしただけだ)。
それどころか、なぜリダとマイアリーが不機嫌なのか、まだとっかかりさえつかめない状態だ。
リダは小さな体で大きく息を吸って、話し始めた。
「あのふしだら女が、ダンジョンの途中からずっとあなたにべったりで、背後を付けていたでしょ。なのにあなたは、彼女を追い払うどころか…宝物まで案内してたじゃない!」
 ジョウゼンは仰天して言葉も出ない。
ふしだら女って誰だ?
背後を付けられていたって?
ジョウゼンもトルデクも何一つ気付いていなかったのだ。
「ふしだら女」(これは女から見た場合の表現で、男に言わせれば彼女は「色っぽい」ということになる)は、パーティーがダンジョンに潜っている間、途中からジョウゼンの跡を追いかけ、攻撃もせずに宝物まで付いていったのに。
だがパーティにいた女達は2人とも、見ていないようでいて、その「ふしだら女」の動向を感知できていたはずだ。
そしてテレパシーさながらの「危ない女警報」を素早く交信して、いざとなったらすぐに攻撃できるような体制を整えていたに違いない。
もちろん、男は全く気付いていないが。
 こういう時男は、本当に知らなかったんだと弁解するだろう。
それもそのはずだ。
ジョウゼンの跡を付けていたのは女のインヴィジブル・ストーカーだったからだ。
男の脳は、細部を見聞きするようにはできていないのだから。

触れ合いの魔力
 相手に触れる。
それは生命を与えることだ。
あなたが自分のキャラクター・シートに触れる回数が多ければ多いほど、そのキャラクターは生き生きとしてくる。
ゲームマスターからキャラクターシートを渡され、能力値を決めたり、装備を決めたりして、ペンでキャラクターシートにいろいろ書き込んでいくうちに、あなたが作り上げるキャラクターはあなたの手やペンでいっぱい触れられて、愛着が沸いてくるようになる。
また、自分のキャラクターとして作り上げて、書き写すことによって、そのキャラクターを「守りたい」という願望も発現するようになる。
 ルールブックに「アーキタイプ」や「テンプレート」などが多数用意されていて、それをキャラクターシートに写すだけ、あるいはコピーするだけで遊べるようなゲームでは、プレイヤーはキャラクターに無茶苦茶をやらせることが多くて、キャラクターやパーティーの利益を考えていないプレイヤーが多いという報告が挙げられている。
もっとひどいのになると、ほとんどのところが作り込まれているプレロールド・キャラクターを、コンベンションでマスターがプレイヤーに提示すると、特に女のプレイヤーは拒絶反応を示すだろう。
たとえ「自分が遊ぶ」キャラクターだとしても、それはプレイヤーの手が触れられていない、ただの人形にすぎないのだから。
女は本能として、現実あるいは非現実の「自分の子供」に惜しみない愛情を注ぎたいと考えるのだ。

女同士のロールプレイでは、男同士に比べて身体接触が4〜6倍も多い。


 ロールプレイングに行き詰まっていた人達を対象にした実験では、男はプレッシャーを受けると、接触を避けて自分だけの世界にこもるという。
ところが女性は、逆に異性に働きかけを始めた。
セックス目的ではなく、親密な触れ合いを求めての行動だ。
よくコンベンションでは、女は「私に触らないで!」というが、男にはその真意がピンとこない。
では今後、男はどうするべきだろう?女相手にポイントを稼ぐには、会話や演技などで精神的な接触をもっと増やすことだ。
また、自分のキャラクターを健全な精神の持ち主にしたければ、キャラクターシートをたくさん手で触れてあげよう。

男は面の皮が厚い
 男の皮膚は女より厚い。
だから、自由に動かしにくい。
軟らかい女の皮膚は、その下にある筋肉の動きに連動してとてもよく動く。
そして、感受性が豊かな女性の表情は、ロールプレイしている時の顔の表現力をさらに豊かにする。
 一方、男の皮膚は固く、厚く作られる。
これは四足歩行時代に、背後からの攻撃に備えていた名残である。
だから、男の顔は皮膚を動かしにくく、ロールプレイしていても、感情を受け取っても、顔の表情を動かしにくい。
触覚に対する男の子の感受性は、思春期までに大半が消えて、過酷な運動に耐えられるようになる。
マスターの鋭いツッコミを防いだり、女プレイヤーからの突き刺すような発現を跳ね返すには、面の皮を厚くする必要があるのだ。

とはいえ、女のプレイヤーに相対した男の場合、皮膚の感受性が全部消えるわけではない。
敏感な部分が一点に集中するだけだ。


 だから、同じ喜怒哀楽でも、男と女では感情の表現に大きな違いが現れる。
皮膚が軟らかくて感受性の高い女の表情のほうが、皮膚が固くて動かしにくい男の表情よりも数倍リアルに見える。
だから、女のロールプレイは言葉や身振り手振りだけではなく、プレイヤーの表情も見てやる必要があるのだ。
男は面の皮が厚いから、演劇の訓練でもしない限り同じことをするのは難しい。
でも心配ご無用。
慣れた男は表情を表せない分、より多くの言葉やサイコロを使ってロールプレイを補おうとするからだ。

ゲームの味わい
 味覚と嗅覚は女のほうが優れている。
だからセッション中に食べるお菓子類は、男より女に揃えさせた方がよい。
女は甘さや砂糖の味に敏感だから、チョコレート中毒は女のほうが断然多い。
セッション中、グレープジュースしか飲まないという女もいる。
しかし、女はおしゃべりに節操がないのと同様に、お菓子選びにも節操がない。
だから、昼食の買い出しに行っている時、女は昼食を選ぶよりもお菓子を選んで悩んでいる時間のほうがはるかに長いのだ。
 一方、男は女よりも甘さを重視しない分、満足感を得るほうを好むので、油ものやビスケットの類いなど、腹にたまりやすいものを多く摂取する。
女の甘さに付いていったのでは、口がベトベトになってロールプレイどころではなくなるからだ。

空中に漂うもの
 女の嗅覚はもともと男より鋭いが、排卵日前後にはさらに鋭敏になる。
男が発するフェロモンやムスクのような、それと分からない微かな体臭も感知できる。
さらに女の脳は、においの信号を解読して男の免疫系の状態も探る。
もし、サークルやコンベンションの会場で、女が部屋に入ったとたんに顔を歪めたら、それは会場に漂う男の体臭で脳が混乱を来している状態なので、すぐに窓を開けて、その女性を窓のそばに案内してあげよう。
 ただし、男に免疫のない女は、このことに気付かないことがある。
「ちょっと臭うかな?」という微かなにおいの元がなんであるか、まだ判別できないのだ。
そういう女は、会場に案内されると、他の女性参加者や女性スタッフの近くに座ろうとする。
女同士が発する特有のオーラや視覚を感じ取り、そばにいることで安心感を得るのだ。

男の「魅力」は、ゲーマーである場合、女には嫌われる。



女は「神秘」がお好き
 人間は進化をする間に、生き延びる上で必要な能力や感覚をたくさん身に付けてきた。
魔法とか神業、女の直感と呼ばれる不思議な現象も、科学的な検証など行われないまま「必然の設定」としてRPGの世界にどんどん盛り込まれている。
 魔法を使ったかどで火あぶりにされたのは、ほとんどが女だった。
しかし彼女たちは、ボディランゲージの微妙なニュアンスや、声の調子といった感覚刺激に気付きやすかっただけだ。
生物学的な違いを知らなかった男達が、魔女よばわりして断罪したのだ。
 また女は、動物の感情や態度も鋭く読み取る。
だから、ゲームマスターが隠している伏線や、対立するプレイヤーの秘めた目的などは、女に察知されやすい。
相手の会話の微妙な変化、表情の微かな緩みなどを察知して、このマスターが何を考えているか、次にこのキャラクターがどう動くか、女はそれを察知する。
しかし男には、内心困っている女の様子など想像も付かない。
女はゴブリンの相談に乗ってやることができるが、男は女の見ていないところでゴブリンの上に乗って殺る。
 現代の女性たちもまた、その優れた知覚能力とうまく折り合いを付けられず、占星術や心理術、タロット占い、茶柱などに頼っている。
神秘的な感覚を好む女性プレイヤーは、タロットを使うゲームを好んだり、心霊術師や夢占い師といった神秘的な能力を使えるキャラクターを遊ぶことを好む。
もっとも顕著な例はホラーRPGである。
未知の神秘、闇に潜む恐怖など、実際には体験したくない事柄でも、RPGでならプレイヤーへの被害が比較的少なく、かつ女は好奇心が強くて血に強いため、男が思っている以上に女のプレイヤーが多い。
だから、女をRPGに誘う時は、ありきたりのファンタジーだけではなく、魔法やストーリーテリングにシステム的な工夫を凝らした、神秘的な好奇心をくすぐるシステムを選ぶと面白がってくれるだろう。
これが男なら、ありきたりでも何でも、敵をバッタバッタと切り倒すシナリオにすればみんな喜んでくれるのだが。

それでも女は仮想と現実の区別が付きにくい
 女の感覚が抜群に鋭いわけではなく、相対的に男の感覚が鈍いのである。
女は高度に知覚情報が飛び交う世界に生きている。
女同士では、お互いの言葉や声、ボディランゲージを理解して、相手の要求を理解することができるから、当然男にも同じことを要求する。
だが残念なことに、それは無理な話である。
自分が何を望み、どう発言したいか、黙っていても男が察してくれると信じているから、思い通りにならないとき、女は男をなじる。
とにかく男は相手の気持ちを読むのが下手だ。
でも落胆することはない。
言葉以外のメッセージや声の調子に対する感受性は、訓練次第で向上する。
 そんな女にももちろん欠点はある。
RPGはもちろん空想のゲームである。
空想のゲームだが、女の脳は空想と現実の区別をうまく付けることができないのだ。
高度な知覚情報を有していながら、その情報を一元で処理しようとするために、ゲームの空想上で起こっていることを現実で起こっているものとして判断しやすい。
 ゲームが現代ものなら特にそうだ。
あるマスターが、ヒーロー達の移動手段として飛行船を提供した。
飛行船の名前を聞かれたので、マスターは冗談混じりに「ヒンデンブルク」といった。
途端に、テーブルに座っていた女プレイヤーの血相が変わった。
「なんて名前なの!ヒンデンブルクって火災で墜落するのよ!私こんな飛行船に乗りたくないわ!」
マスターは困った。
例え大気圏突入しても、ヒーローは傷ひとつ付かないゲームなのに。
 もし、男が盗賊のキャラクターを演じ、ダガーを光らせてニヤリと演技したら、女はそのキャラクターではなく、プレイヤーに恐怖するだろう。
同様に、ストーキング技能を駆使して敵の後を追いかけるレンジャーを演じた男は、家に帰る時まで女に警戒されるのを覚悟しておいたほうがいい。
 RPGは空想のゲームだが、そのための知識や能力は現実のものを必要とする。
これが問題をさらに厄介にしているのだ。

何より重要なこと
 男と女が生物学的に違うように、男のRPGと女のRPGも本能的に異なる。
男には男の、女には女のRPGの遊び方や世界がある。
男は女の遊び方がどうしても理解できないし、女も男がどうして粗暴な動きしかできないのかが分からない。
それぞれの遊び方はセッションやロールプレイに彩りを添えるものではあるが、その本質は受け入れがたい。
 くり返しになるが、現在のRPGはそのほとんどを男が作っている。
だから、デザインされたシステムは男の世界の中で、男の本能を満たすためのものなのだ。
男にはルールや遊び方は理解できても、女には理解できない考え方がどこかにある。
男は男が作ったシステムに容易に馴染み、すぐに遊ぶことができるようになる。
だが女はそうはいかない。
女のRPGの世界を、何とかして男の世界に併せて遊ばなければならないからだ。
例えば、女プレイヤーが女エルフのキャラクターを強要されたり、ビキニアーマーを着た女戦士を遊ばされるのが、こういった「男性化」の象徴だ。
女は男のRPGに付いていくために、男なら労せずしてやってのけてしまうことを、アレコレと手段を考えてこなさなければならない。
こうして、男のRPGで遊ぶ女には「ものの分別」がなくなってしまう。
 逆に、もし女がRPGをデザインしたとしたら、男はロールプレイに四苦八苦することになるはずだ。
男が武器とサイコロで片付けてしまうことを、女はロールプレイで解決しようとする。
おしゃべりがヘタで、感情表現に乏しい男は、女のRPGに付いていけず、孤立感を覚えることになるだろう。

男は支配や征服のはけ口としてRPGを遊ぶ。
女はとにかくおしゃべりしたいためにRPGを遊ぶ。


 では、男の考えるRPGと女の考えるRPGが分かり合える日は来るのだろうか?
おそらくない。
だが心配はいらない。
男のRPGにも、女のRPGにも、それぞれ長所はあるのだ。
古来から男女がくっつくのが必然のように、男のRPG観と女のRPG観もくっつけて、互いに補い合えばいいのだ。





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