第4章 話すこと、聞くこと
 アルハンドラとクラスクは、これからコンベンションに出かけるところだ。
アルハンドラは今日ゲームマスターをする予定なので、システム選択にことのほか気を使っている。
D&Dのプレイヤーズ・ハンドブックと、ソード・ワールドRPG完全版を両手に掲げた彼女は、世の全ての男を震撼させる質問をクラスクに放った。
「ねぇ、今日のマスターはD&Dとソードワールド、どっちがいいと思う?」
 さぁ、面倒なことになったぞ。
クラスクの背中を冷や汗が走る。
何しろ、彼はD&Dもソードワールドも同じくらい好きで、しかも今日のアルハンドラの気分を知っているわけではないのだから。
「…うーん、そ、そうだ…おま、おまえが好きなほうでいいんじゃないか…」
はっきりしない答えに、アルハンドラはいらだつ。
「お願いよ、クラスク。D&Dとソードワールドのどっちがいいの?」
クラスクはたまらず、「ソ、ソードワールド!」
と口からでまかせに言った。
でもアルハンドラは容赦ない。
「あら、どうしてD&Dじゃいけないの?D&Dじゃプレイヤーが集まらないのね?この前のセッションでウォーター・エレメンタルに散々にやられたから、あなた根に持ってるんでしょ?」
 クラスクは肩をいからせて少し荒れ声になる。
「お、俺の意見を聞くつもりがないんだったら、最初から聞かなきゃいいだぁ!」
せっかくアドバイスしてやったのに、感謝ひとつされないなんて。
 アルハンドラの問いかけは、女の典型的なな話し方のひとつだ。
どっちのシステムでマスターするか、彼女のこころはもうきまっていて、今さら他人の意見など聞き入れるつもりはない。
ただ、それでいいと言う最終確認がほしいだけなのだ。
この章では、そんな男と女のコミュニケーションについて見ていこう。

「D&D、それともソードワールド?」と聞かれたら
 女性に「D&D、それともソードワールド?」と聞かれたら、男は絶対にどちらかを答えてはいけない。
代わりにこう聞き返すのだ。
「君はもう決めてるの?」
大抵の男は二者択一で答えると思っているから、意外な対応に女はどぎまぎする。
「えっ、えぇ…私としてはソードワールドがいいかなと…」
不安そうな口調だが、気持ちはすでにソードワールドで決まっている。
「どうしてソードワールドのほうがいいと思ったんだい?」とさらに問いかけてみよう。
「だってプレイヤーも多いし、ルール教えるのも簡単だし…」といった答えが返ってきたら、ものの分かった男ならすかさずこう言うだろう。
「それでいいじゃないか!いい選択だね。今日のマスクリングはうまくいくと思うよ」
これで2人はコンベンションで気兼ねなく楽しめるというわけだ。

なぜ男は演技が下手なのか
 男は女に比べて、話が下手だ。
しかも演技も下手だ。
これは何千年も前から分かっている事実である。
女の子は男の子よりも、最初にしゃべり始める時期が早い。
3歳くらいになると、女の子は男の子の2倍近い語彙を身に付けているし、大人とも普通に会話ができる。
 ロールプレイを専門にする療法士のところには、男のプレイヤーたちが押しかける。
訴えることはみんな同じで、「他のプレイヤー、特に女よりもうまく演技できるようになりたい」の一言に尽きる。
セッションテーブルの中に、一人女性のプレイヤーが混じっていると、この傾向は特に顕著になる。
というのも、女性のプレイヤーが、パーティーのリーダーよりも先にしゃべってしまうからだ。
パーティーのリーダーの男戦士に、酒場の主人が「この頃実入りはどうだ?」と尋ねると、回復役の女クレリックが「冒険帰りで、ホクホクですわ(はぁと)」と答えるのだ。

パーティーの中では、男の代わりに女プレイヤー、または女キャラクターが口を開くことが多い。


 男が会話するときは左脳しか使っていない。
ただし、左脳の中にそれを専門に担当する部分があるわけではない。
男がしゃべるときの脳をスキャンすると、左半球全体が活発になっているだけで、中枢となる部分はいくら探しても見つからない。
そのため、男は話すことが余り得意ではないのである。
さらに、男は「一つずつ」しかできない。
だから、「演技」して「話す」ことはできても、「演技しながら話す」「空想しながら話す」ことは難しいのだ。
 男は発音や話し方も明瞭ではない。
「あー、うー、」といった音が言葉の間に挟まるし、話を最後まで言い切らずに口ごもることも多い。
声色も女の子が大体5種類を使い分けるのに対し、男の子の声は3種類しかない。
セッションで女の子のロールプレイを聞いている時は、そのことだけに気を取られているので、「脱げ」「踊れ」ぐらいしか言えない。
 一方女にとっては、RPGのシステムやルールが単におしゃべりの道具にすぎない。
だからストーリーが複雑なシティアドベンチャーより、敵もあらすじもお馴染みのダンジョンが丁度いいのである。
 ティーンエイジャーの女プレイヤーに、昨日のセッションについて尋ねれば、他のプレイヤーたちがどんな服装で、誰が何をいったとか、シナリオがどうだったなど、事細かに話すだろう。
男プレイヤーに同じ質問をしても「あぁ…面白かったよ」で終わりだ。
 タロットカードやフレーバーカードなど、プレイに何らかのカードを使うシステムでは、「キャラクターの考える思い」や「イメージに浮かんだ説話」などがよく書き込まれている。
男達が言葉でなかなか表現できないことを、デザイナーもよく分かっているのだ。
カードを使うのは苦ではない男も、そこから何かを導き出そうとすると、はたと困ってしまう。

だから男は、あらかじめ言葉がたくさん書き込まれていて、 書き込むスペースの少ないキャラクターシートやアーキタイプを選ぶ。


 だが思い出してほしい。
もともと男は意思疎通ではなく、狩りを第一の役目として進化してきたことを。
狩りをする時は、言葉以外の合図でやり取りするし、時には物音一つたてず、獲物を何時間も見張らなくてはならない。
現代の男達も連れ添ってRPGに出かけるが、キャラクター同士がお互い一言も口を利かないまま、ボティラングージとままならないロールプレイだけでセッションを終わらせることもある。
気の合う仲間とサイコロを振り合うのは楽しいに決まっている。
ただ、わざわざ言葉に出していう必要を感じないだけだ。
しかし、もし女同士が黙りこくっていたら、二人の間に重大な問題か、腹の探り合いが発生していることを意味する。
男達の舌が滑らかになるのは、区分けのはっきりした脳の中で、コミュニケーション担当部分の仕切りが外れた時…つまりセッション後の打ち上げの時ぐらいだ。

なぜ女はおしゃべりが好きなのか
 女の脳では、話すことはもっぱら左脳の前部と、右脳の小さな領域で行われている。
左右両方を使っているために、女は話をするのがうまいし、話すのが楽しいからたくさんしゃべる。
また発話をコントロールする部分が決まっているので、脳のそれ以外の場所を使って、しゃべりながら同時にいろんなことを進行できる。
 だから、女は演技しながら会話したり、平然と状況説明をしながら、マスタースクリーンの裏ではプレイヤーに何をしでかしてやろうかといった企みができる。
 女の子は脳の発話ゾーンがはっきり決まっているおかげで、RPGのルールを習得するのも楽だし、速い。
お約束の文法や会話のケリの付け方、収録したリブレイの文章起こしの速度なども女の子のほうが上である。
事実、RPGのリプレイ同人誌を作っているのは女の、または女の比率が高いサークルのほうが多い。
インターネットの掲示板でも、女のほうが語りかけてくるような長めの文章をよく書いている。
 RPGは建て前は男女平等ということになってはいるか、言葉に関しては、最初から女性支配になっているのだ。
左脳は右半身の働きをコントロールしている。
だから左利きよりも右利きのほうが多いし、手書きの文字は男より女のほうが読みやすい。
男が記入したキャラクターシートは雑然として読みにくいが、女の書いたキャラクターシートは誰が見ても綺麗に見える。
女の脳は、話すだけでなく書くほうでも得意なように配線されている。

なぜ女はしゃべらずにいられないか
 男の脳は機能ごとの区分けがはっきりしていて、情報を分類し、保存する能力に優れている。
難題続きだった冒険の終わりには、今日何かあったかを整理して、けじめを付けることができる。
女はそれができず、うっとおしい男の記録がいつまでも頭の中をぐるぐると回り続ける。

男の頭はルールに索引を付けて整理できるが、 女の頭はひたすらルールをかきまわすだけ。


 そのため女が厄介ごとを振りはらうには、それについてしゃべって問題点を認知するしかない。
だから今日の冒険で起こったことを女が話すのは、結論や解決策を見つけるためではなく、憂さを晴らしてすっきりするのが目的なのだ。
 さらにもう一つ重要な点がある。
女はおしゃべりしながら何かをすることができるが、逆に何かをするにはおしゃべりをしないとうまく働かないのである。
もし、女に「黙ってキャラクターを作れ」と言ったら、彼女にはそれは拷問に近い。
能力値のサイコローつ振る度に、ひとことふたこと言葉を発しないと、うまくサイコロが回ってくれなくなる。

女はおしゃべりが恋人
 女たちはセッション前にルールを読んでいるあいだも、大抵おしゃべりしている。
話題は昨日のテレビのこと、男のこと、自分のキャラクターの描写やセッションでの要望など様々だ。
男女取り混ぜたグループでRPGをしていると、大抵男が女のおしゃべりを黙りこくって聞いている羽目になる。
男は話を間くか、ロールプレイをするかのどちらかしかできず、なぜ女が両方やれるのか理解できない。
その上女は、みんなでこうして集まるのは楽しい時間を過ごして、シナリオの達成を共有するためだと思っている。
マスターや他のプレイヤーの話を間いて、サイコロを振るだけでは不満なのだ。
 そして休憩が入る度、男は話の展開やNPCの関係について女を質問責めにする。
プレイヤーの感情を表す微妙なボディラングージを読み取れないからだ。
女はもともと、他の女や子供たちと過ごす時開が長いから、円満な人付き合いを保つために相手と気持ちを通わせる技術を磨いている。
女にとって、おしゃべりの意義ははっきりしている。
人間関係を作り上げ、友人を増やすことだ。
だが男には、話すことは単なる事実の伝達でしかない。

男は自問自答する
 敵と戦い、パーティーを守り、問題を解決するべく進化してきた男達。
彼らは恐怖や不安を面に出すことなど許されない。
夜哨や斥候などの厄介ごとを相談されると、男は「俺に任せろ」とか「後で考えてみる」と答える。
嘘ではない。
自分の登場シーンでないときに、無表情な顔でじっと考えを巡らせるのだ。
そして答えが見つかって始めて、男の顔は正気を取り戻し、解決策を人に伝えようと口を開く。
 女は外部とコミュニケーションをとるのに言葉を使うが、男の言語能力はそこまで発達していない。
そのため男はもっぱら頭の中で話をする。
セッションテーブルの端に座ってボーッとしている男の脳をスキャンしてみると、自分と会話しているのが分かるだろう。
時たま、無意識に口から言葉が漏れることもある。
だが女には、男はシナリオに退屈しているか、パーティープレイをサボっているようにしか見えない。
そこで話しかけたり、ロールプレイの機会を与えようとして、時には男を怒らせる結果になる。
ご存じの通り、男は一度に一つのことしかできないのだ。

女は声に出して考える
 セッションの後、ある男性プレイヤーが言った。
「何か問題が起こったり、冒険の行程を考えている時の女の子には、ホントいらいらします。何しろあらゆる可能性や選択し、関係する事柄、やるべきこと、お買い物、目的地にいる怪物などを全部口にしてるんですから。気が散って何も手につきません!」
 女は、話すことがすなわち表現なのだ。
もともとそのように脳ができているし、それが女の強みでもある。
男だったら、五つか六つ用件を書いたリストを握って、「今日は任務がいくつもあるんだ」と言い残して冒険に出かけてしまうところを、女は全項目を適当な順番で並べ、それぞれに伴う選択肢や可能性についても全部しゃべる。
「えーと…能力値を振って、種族を決めて、クラスを決めて、技能を選んでもらわなくちゃ。あ、そうそう、種族ごとに特殊能力があるわよ。まずそれを覚えておいてね。それから特技を決めて、ヒットポイントを計算して、攻撃値とかを計算して、装備を買って、ついでに…」
だから女はおしゃべりだと男に非難されてしまう。

声に出して考える危険性と聞かれたら
 声に出していろいろ考えをしゃべることを、女は親しさの表れだと考えているが、男はそう思わない。
女に問題点を並べ立てられると、男は解決役を任されたと思って不穏になったり、訝しがりだしたり、あれこれ指示を出そうとする。
RPGのプレイでは、考えを全鄭声にする女は思考が散漫で、パーティーの目論見をばらし、自制心が弱く、キャラクターよりも知性が低い印象を与える。
だからパーティーで男に一目置かれたいなら、なるべく頭の中で考えを練って、結論だけ言うようにする。
また、問題解決の取り組み方が男女で違うことを知っておこう。
女が男に相談する時は、解決策を求めているわけではないし、相談された男が黙りこくっても、シナリオがつまらないわけではないのだ。

女がしゃべると、男はびびる
 おしゃべりを通じて人間関係を作り上げることを、女の脳は最優先している。
女は一日に男の数千倍の言葉を楽々としゃべり、さらに言葉にならない声や音をン千回、顔の表情や頭の動きといったボディランゲージも大量に出している。
全部合わせると、男では太刀打ちできない量の「コトバ」を発してメッセージを伝えているのだ。

ゲームマスターが言った。
「いつだったか、妻に半年間話しかけなかったことがあるんです。彼女のおしゃべりに口を挟みたくなかったもので」


 では男はどうだろう。
1セッション中、単語は少なく、声を出す回数も少なく、ボティランゲージはたったの数回である。
 この違いは、一日のセッションを終えた後での夕食の席で明らかになる。
男はその日のセッションで言葉を使い果たしているので、これ以上コミュニケーションをとるつもりがなく、テーブルの食事をゆっくり楽しみたい。
いっぽう女は、一日をどうプレイしたかで変わってくる。
昼間他のプレイヤーと散々しゃべっていながら、まだまだしゃべる力が残っている!その結果、打ち上げの席でどういう会話が交わされるかと言うと…  男2人は尋問を受けているように感じて、いらだちを覚える。
自分が求めているのは「心静かな夕食」なのに。
だが女プレイヤーといさかいになるのは避けたいから、矛先を変えて「君の方はどうだった?」と質問する。
 すると待ってましたとばかりに、女はしゃべる、しゃべる、しゃべる。
今日のセッションの様子を一つ残らず、ひたすら詳しく。
「今日はねぇ…最初は退屈だったわ。宿屋の主人はどこのマスターと変わらない書き割りだったし、依頼内容も魔術師からダンジョンの奥にある薬草をとってくるありきたりのものだったし。結局、私自分のロールプレイで何とか花を添えることにしたの。でなきゃ、あんな暗いダンジョンでひたすらマッピングするだけじゃない。男はみんな薬草目指して突き進むだけで、途中の宝石なんかお構いなしだったわ。それにしてもみんな逃げ足だけは速いのね、オークの群れに出くわした途端に火起こし棒で煙に巻いておさらば。戦闘は多かったけど、流血したのは最後の戦闘だけじゃない。その戦闘も、あのヘボ魔法使いが魔法の矢を外して薬草を燃やしちゃったし…」
 こうして女は、コミュニケーションを続けるためにひたすらしゃべる。
話を聞かされる男は思う。
どうして口を閉じて、静かにしてくれないんだろう。
ごちゃごちゃした話を聞いていると、死にたくなる!
「俺が欲しいのは、一時の静けさなんだ!」
これは洋の東西を問わず、男の切なる叫びに違いない。
男は狩人だ。
目的を求めて一日中走り回っていた。
だからゲームを終えて夕食にありついたら、自分の食卓をただじっと見つめていたい。
しかしそれをやると、一緒に遊んでいた女は無視されていると思って、厄介なことになる。

男が女の顔をぼんやり眺めていないと、女は無視されていると思い込む。


 女がしゃべる目的は、しゃべるために他ならない。
それなのに男は、解決策を求められていると思ってしまう。
分析好きな脳が、女の話を遮るのだ。
 女は男を無視して、話を続ける。
ここから得られる教訓はただ一つ。

自分の中にあるコミュニケーション欲望をこなすために話しているとき、 女は口を挾まれることも、解決策を教えてもらうことも望んではいない。


 これは男にとって朗報である。
ただ聞くだけで、何の反応しなくていいのだから。
しゃべり終えた女は、胸のつかえが取れて満足するし、じっと聞いていた男の株も上がる。
こうして楽しかった一日が過ぎていく。
 キャラクターやロールプレイのよしなし事について喋るのは、女のストレス解消法だ。
女にとって話すことは、絆を深める手段であり、心の支えなのだ。
だからキャラクターの演技シーンを引き伸ばすのも、他のプレイヤーの描写を執拗に聞いてくるのも、圧倒的に女が多い。
RPGのプレイヤーに、学校の演劇部にかかわっていた女性が多いのも、しゃべる手段の表れのひとつだ。

女はしゃべることで自分の活躍するシーンを引き伸ばそうとする。
男はロールプレイしようとして、自分の活躍するシーンを縮めてしまう。



男の話し方
 男の話す言葉は短く、論理的な構造がしっかりしている。
例えば「殺す」「切る」「殴る」「掘る」「撃つ」など。
単刀直入に話が始まり、要点を押さえて、結論をはっきり述べるので、何かいいたいのか、何を望んでいるのか分かりやすい。
しかし一度にたくさんの話題を出すと、男は混乱する。
だから敵ボスの大男を説得したり、納得して死んでもらうためには、女は一度に具体的な話をひとつだ け出すことが肝要だ。
例えば「イヤ」「嫌い」「痴漢」「変態」「短小包茎」などをひとつずつ。

男と話すときの大原則。
簡潔に!
一度にひとつのことしか考えさせてはいけない。


 男女が一緒にいるセッションテーブルで行動を宣言するときも、男寄りの話し方をすれば男女共に理解してくれる。
女ならではのマルチトラック方式で話をすると、特にゲームマスターの男がついてこられなくなり、プレイヤーの宣言が理解できなくなってしまう。

女はマルチトラック
 女の脳は左右の連絡が非常に良く、発話を担当する区域もはっきりしているおかげで、いくつもの話題を同時に、時にはたったひとつの文章で語ることができる。
男のプレイヤーが3・4人、ほぼ同時に連うことを発言しても、女のゲームマスターなら難なく対処してしまう。
しかも女同士の会話ではだれもがそれをやり、しかも発言を聞き落とさない。
 会話が終わった時点で、どういう宣言が出たか、何か起こったか、どんな結果になったのか女はすべて理解している。
だが一度にひとつの話題しか処理できない男には、このマルチトラックにとてもついていけない。
女プレイヤーたちの会話に加わった男ゲームマスターは、すぐに混乱してしまう。

男盗賊は入り組んだ裏路地でも、A地点からB地点まで的確に移動できる。
だが、同時にいろんな歌を歌い合っている女吟遊詩人の聞に放り込むと、彼は完全に道に迷う。



男と話すときのコツ
 男は自分のやっていることを遮られると、競争心に萌え、攻撃的になる。
だから男を冒険的にさせるには、彼が話している時に口を挟んでやるといい。
女は自然とそういうことができる。
女は直観的な能力に優れているので、男がひとつずつ話していることにピンとひらめいて、すぐに話に割り込むことができる。
だから、冒険の途中でパーティーが行き詰まっている時、男をアクティブにさせたければ、男が話している途中でガンガン横槍を入れてやろう。
男が「話の腰を折るな!」と反応すればしめたもの。
あとは男に分かりやすく、単刀直入に能動的にしてあげよう。

とはいえ、男は同時に話したり聞いたりできないのだから、ゲームマスターがイベントシーンで話している時は、好きなようにしゃべらせてあげよう。



どうして男は大言壮語するのか
 言語専門の中枢を持たない男は、少ない言葉で情報をやり取りしなければならない。
そこで男の脳は、左脳の前と後ろの方に、語彙をつかさどる部分が発達した。
女の脳では、語彙の領域が左右両方にあるものの、あまり能力は高くない。
そのため言葉の定義や意味に重きをおかず、声の抑揚で意味を伝え、ボディラングージに情感を込める。
 一方男にとっては言葉の意味がとても重要で、定義やルールを振りかざして相手より優位に立とうとする。
男の一言は、女の一言の数倍の重みがあると考える人は少なくない。
言葉は他人と競い合うための手段であり、定義は一種の競争手段なのだ。
「…あの傭兵の話は要点がぼやけているし、核心にも触れていないから、意図するところが分からない」と一人の男が言い出すと、すかさず別の男が「つまりゴミだな」と口をはさむ。
最初の男の言わんとするところをはっきりさせる、いわば「ロールプレイ援護」だ。
征服欲の強い男なら、同じテーブルに座っている女プレイヤーに対しても一言で自分の言葉を伝え、立場を高めようとするに違いない。

女の言葉はごほうび
 女は集団への参加意識をはっきり伝え、仮想の人間関係を作るために言葉を使う。
だから言葉は相手へのごほうびである。
好感を持っているプレイヤー、その人のロールプレイに興味を持っていて、親密になりたいと思っている相手、そして母性本能をくすぐられるNPCなどには、女はたくさん話しかける。
当然逆もあるわけで、罰を与えたい、あんたなんかRPG仲間じゃないと知らしめたいとき、女は相手を黙殺する。
そんなだんまり攻撃や、「もう二度と口を利くもんですか!」という脅し文句は、男にとって冗談抜きに脅威である。

たくさん話しかけてくる女は、あなたのキャラクターに好意を抱いている。
プレイヤーに話しかけてもらえなくなったら、嫌われたと思ったほうがいい。



男をうまく動かすには
 物事を遠回しにして相手に伝えるのがうまい女達は、「〜できる」という言い方を良く用いる。
「今夜奇襲できる?」
「説得させられるかしら?」
「クリティカルにしてくれない?」

しかし男は女の問い掛けを文字通りに受け止めるので、「ロールプレイできる?」という質問は、「ロールプレイする能力を持っているか?」と聞こえる。
「〜できる」という質問は、能力の有無を問われていることになるから、当然男は論理的にイエスと答えるハメになるだろう。
奇襲できる、説得する能力はあ る…ただし、実行に移すという約束はしていない。
しかし男にしてみれば、うまく操られ、「イエス」という答えを誘導されてという感覚は否めない。
 男を確実に動かすには、「〜してくれる」という言い方の方が良い。
「突入してくれる?」と聞けば、実行する確約が問われているので、「イエス」か「ノー」をはっきりさぜるを得ない。
男にしてみれば、女から言われたら間違いなく「イエス」としか答えないだろうが。

女は多彩、男は能面
 女は話を間いている時、短い時間の間に複数の表情を使い分けながら、相手の感情を受け止め、投げ返している。
つまり表情は、話した相手の感情を写し出す鏡なのだ。
だから女プレイヤーの会話を間く時には、声だけじゃなく顔をしっかりと見て、表情を受け取る必要がある。
 また女は、相手の声の調子とボディランゲージで、語られていることの真意を汲み取る。
どんなに熱意や気合いのこもったロールプレイでも、言葉や表情が伴っていなければ、女はそれを本物とは見なさないのだ。
だから、女プレイヤーにしっかりと物事を伝えたい時には、たとえ下手でも声の調子やボディラングージを併用して、言葉の補助をするようにしよう。
 一方、本能の戦士である男は、本心を悟られないように、どうしても無表情になる。
試しにセッション中、何度か(特にマスターがプレイヤーを驚かせた時に)テーブルに座っている男達を見回してみるといい。
声は上げていても、その顔に表情の変化はほとんどみられないはずだ。
男は無表情を保つことで、状況をコントロールしているという実感を味わう。
もちろん、だからといって感情まで抜け落ちているというわけではない、ただ顔に出さないだけだ。
男は言葉で全てを伝えようとする分、顔などに表情を出さないが、これはマスターをする時には大いに役立つ。
逆に、女のマスターは、自分のプロットの裏にある考えがどうしても表情に出てしまいがちなので、注意して観察するとシナリオの裏を悟られてしまうこともある。

ぶりっ子声
 高いピッチで歌うように出す声の効果を、女ゲーマーなら誰でも知っている。
高い声は女性ホルモンが盛んに分泌されていることの表れであり、幼児っぽく聞こえるために、大抵の男に「守ってやらなきゃ」という気を起こさせる。
そして、本能的に話を聞いてあげようとする気になってくるのだ。
 コンベンションなどで、スタッフが案内をする時、男の声は拡声器を使わないとなかなか奥まで届いてくれない。
でも、女のスタッフの声は、拡声器を使わなくてもみんなが聞いてくれる。
コンベンションの参加者のほとんどが男だからだ。
同じことはマスターにも言える。
女のマスターのいるテーブルは、プレイヤーたちが真剣に話を聞くようになるので、パーティーが脱線したりプレイやーが暴走したりする確率が圧倒的に低くなるのだ…もっとも、女だからとなめられてしまう危険はあるのだが。

それでも男が女と話したがるのは
 RPGのプレイの場では、プレイヤーの男女差に圧倒的な差がある。
もちろん男のほうが圧倒的に多いのだ。
会員制のサークルでも、多種多様の人が訪れるコンベンションでも、男のほうが圧倒的に多い。
とはいえ、女のプレイ人口が少ないということではない。
女は女同士、仲間内でサークルを作って遊んでいる。
ただ表に出てこないだけなのだ。
その理由はいくらでも見つかる。
男性恐怖症だったり、親に異性との付き合いを禁じられていたり、男ばかりのコンベンションのアノ鬱蒼とした雰囲気に馴染めなかったりといろいろだ。
そして、これまでに述べてきた「男女のコミュニケーションの違い」も重要なファクターであることに違いない。
 そして、男は本能で生きる動物だし、女は直感を働かせる生き物だ。
両者がすぐに打ち解けないのは当然だろう。
唯一の共通点があるとすれば、「RPGで遊ぶ」ということだけだ!
 男だらけのコンベンションの中に、女が一人入ってくると、男達は本能でその女を見る。
そして、本能でその女になにがしかの方法で近付こうとする。
そうしている間に、女は直感を働かせ、セーフな男と危険な雄を見分け、なるべく安全な場所−基本的には出口の近く−に座ろうとする。
 さて、男女入り交じったセッションでは、運良く女プレイヤーにありついた男プレイヤーたちの間で、壮絶な心理戦が展開されることになる。
いかに他の男寄りも早く、そして多く、女プレイヤーと会話を交わせるか。
普段親兄弟以外の異性とあまり話をしない男なら、セッションで異性と話せるのは至福の喜びに違いない。
だから、テーブルに座った男達は、ルールやゲームのことはもちろん、簡単なプライベートから他愛のない日常に至るまで、考えられる言葉の全てを使って女プレイヤーと会話しようとする。
 なぜか。
男性プレイヤーは、女性プレイヤーと会話することによって、精神的にセックスしているからだ。
男がうまく話しかければ、女が「ごほうび」として言葉を返してくれる。
そのやり取りをくりかえすことによって、男達は精神的に快楽を得ようとしているのだ。
 コンベンション慣れしていたり、男との会話が上手な女は、こうした男達からの精神的な欲求をうまくコントロールする術を身に付けていて、自分が嫌いなタイプの男でない限り均等に返し言葉を与えることができる。
これがうまくできないと、女は一人の男の言葉に付いていってしまう危険がある。
それは「言葉のセックス」ではなく、単に男が言葉のマスターベーションしているだけだ。

ゲームは相手が必要だが、マスターベーションは一人でできる。


 男女の会話が、男同士の会話より楽しいのは誰が見ても明らかだ…男女の話し方には明らかな違いがあるにもかかわらず。
だが、その違いがあるからこそ、男と女はすれ違い、そして新しい楽しい会話があるのかもしれない。



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