第5章 空間能力

地図がパーティーを引き裂く
 シルヴィア、ラバルト、ロウィーナ、ミュラー、セフィスの5人は、魔人サモイレンコの拠点のひとつといわれる遺跡までやってきた。
パーティーの代表はミュラーで、シルヴィアがマッパーを務めていた。
話し合って決めたわけではないけれど、この役回りはいつも一緒だ。
ミュラーは男の例に漏れず、冒険の場に入ると人が変わる。
 プレイテーブルの上では、シルヴィアのプレイヤーが方眼紙の上で必至に遺跡の地図を描いていた。
地図はこれまた例に漏れず、下から上に進んで書き上げていくものだ。
パーティーの先導であるミュラーのプレイヤーが十字路で「右に曲がろう」と言った。
すると、シルヴィアのプレイヤーは、マッピングした方眼紙を丸ごと左に90度傾け、曲がった先が上を向くように書いていった。
そして曲がり角に差しかかると、地図も回転させる。
もちろんシルヴィアは方眼紙に何を書き込んだのか分かっている。
ただ、自分達が進んでいる方向と、地図の方角を一致させないと、しっくりこないのだ。
ピンクやグリーンのカラーペンで宝物や遭遇を書き込んだ遺跡の地図は、どんどん大きくなっていった。
パーティーが入り口を真っ直ぐ進んでいればよかったのだが、あいにくこの時は曲がりくねって地図上で下の方向に進んでいた。
シルヴィアはまたしても方眼紙を回転させる。
しばらく黙りこくっていたラバルトが、たまりかねて言った。
「おいおい、そんなことしなくてもフツーに右に書けばいいじゃないか?」
「でも、向かっている方向に一致させないと…」
シルヴィアは弱々しく答える。
「それじゃ文字が読めなくなっちゃうよ?」
「でもね、ミュラー。進んでる方向に地図の向きを合わせておけば、私たちがまっすく進んでいる気分になって、どこをどう歩いているか迷わなくて済むじゃない!」
シルヴィアも少しカチンときた。
「だったら、テーブルの中央でソレをやってくれないか?君の席のところで地図をぐるぐるまわされていたんじゃ、逆に迷っちゃうよ。とにかく僕たちは今はどこにいるんだ?」
「どうすればいいか、バッチリ教えてあげる!」
シルヴィアは激怒して、地図の書かれた方眼紙をミュラーに押しつけた。
「他人任せにしないで、自分で作るの!」
 この手の言いあいを、あなたもしたことはないだろうか?人種を問わず、男と女が古来よりくりかえしてきたらしい喧嘩だ。
今日もセッションのどこかで、地図の書き方を巡って男と女の争いは続いている。

それって性差別?
 地図を読んで理解するには、空間能力が必要になる。
これは男が最も得意とする能力のひとつで、脳をスキャンすると、右脳の前のほうに拠点があることが分かる。
戦闘者である男が、標的の早さや動き、距離を見定め、獲物に追いつくにはどれくらいの早さで走らねばならないか、意思や槍を使って獲物をしとめる時にどれくらいの力が必要か計算するために、大昔から磨きをかけてきた能力だ。
これは空想上でも変わらない。
むしろ、プレイヤーが実際に動く必要はないし、移動速度のルールなどが整備されているシステムでは、この能力はより有効に働いてくる。
キャラクターに設定されている固定値を使って計算すればいいだけの話だからだ。
女の脳では、空間能力は左右両方にあるもののの、男ほど場所がはっきりしていない。
空間能力に長けている女は、全体の1割いるかいないかである。

9割の女は、空想上でも空間能力に限度がある。


 生物学的に優れている能力や技能のせいで、男に明らかに有利なシステムやクラスや技能があるという話をすると、性差別だと言われるかもしれない。
だがご安心を。
女が得意とする分野もちゃんとある。

空間能力とは?
 対象物の形や大きさ、空間に占める割合、動き、配置などを思い浮かべること、それが空間能力だ。
さらには、立体物を回転させたり、障害を回避しながら進んだり、立体的にものを眺めるといったことも加わる。
標的の動きを見極めて、攻撃の仕方を定めるのが本来の目的だ。
 RPGでの空間能力は、キャラクターが未知の敵との遭遇に出くわした時、その未知の敵がパーティーに向かってどう立ちはだかっているのか、キャラクターが立っているか、しゃがんでいるのか、敵が自分の前にいるのか、後ろにいるのか、距離はどれくらいなのか…などに影響している。
 空間能力を計るのに簡単な方法は、タクティカルコンバットだ。
四角形あるいは六角形に区切った升目を印刷した紙の上で、キャラクターの位置を表すコマやミニチュアを置く。
そのフィールド上で、ゲーム上での例えば1メートルの移動を1マスと決め、もしキャラクターが10メートル移動したいとするなら、そのキャラクターを示すコマを10マス移動させる。
これなら、キャラクターや敵の位置関係を明確にすることができる。
 女の脳では、脳の中に、空間能力を管理する特定の領域がないために、女に空間を扱う仕事をやらせるとうまくできない。
ほとんどの女はそういう作業を楽しいと思わないし、クラスや技能を選ぶ時も、例えば竜騎兵や翼族など、空間能力が求められるようなものは避ける。
先程のタクティカルコンバットの例だと、キャラクターが移動する時に、自分の移動能力は知っていても、マスと距離の関係をうまく把握できないことが多く、実際にコマを移動させる時には「うーん…このくらい?」という感じで移動させることが少なくないはずだ。
 男の脳は空間能力の中心がはっきりしているので、空間能力を活用する作業が得意だし、クラスや技能もその手のもの、例えば戦士や軽業師といったようなものを好む。
問題を解決する時も、男は脳のこの部分を使っている。
タクティカルコンバットを例に取れば、男はマップシート上のコマが今歩いて何マス、走って何マス移動できるのか、自分がどこを向いているのか、敵がどこにいてどれくらい離れているのかなどが、瞬時にそして正確に分かり、適切な判断を下すことができる。
女の空間能力が優秀でないのは、怪物を追いかけたり、遠く離れたダンジョンから家に帰り着いたりすることが、本来の職務内容になかったからだ。
そのため地図やチャートを読むのが不得意なのである。

女の空間能力が劣っているのは、王子様以外を追いかけたことがないから。



なぜ男は進む方角が分かるのか
 空間能力が優れている男は、頭の中で地図を回転させ、どっちに進めば良いか判断できる。
しかもその情報を蓄積しておけるので、後でもとの場所に戻ってくる時は、もう地図を見なくても良い。
南に向かって探索している時でも、ダンジョンのマップを北向きに固定したまま読むことができる。
しかも地図を頭に入れて、それをたどることもできるし、速度や距離を適切に判断して方向を変えることもできる。
男は明かりのない洞窟に入った時、北を正確に言い当てる。
遠くまで冒険をしていった男は、そうやって町の方角を見つけないと生きて帰れなかったからだ。

男はパーティー内で自分の立ち位置が分からなくても、北の方角だけは分かる。


 広い会場のコンベンションでは、飲み物を買いに行った男達が迷うことなく自分の席に戻ってくる。
昼食の買い出しに行った女達は、帰り道を求めて男達に方角を盛んに聞く光景が見られる。
コミケ会場でも、途方に暮れた女達が自分のお目当てのサークルが見つからずに、カタログ片手に右往左往している。
コンベンションの帰り道には、女は後から付いてくる男達になかなか気付かない。

なぜ男の子はコンベンションにたむろするのか
 RPGがある世界どこの国でも、コンベンションは空間能力を試す若い男の子たちでいっぱいだ。
ルールブックを見ながらキャラクターの作成をする実験では、男性被験者の多くがうまくやれたのに、女性被験者は余り多くの人はできなかった。
ただし男の場合、左目をふさぐと作業能率が落ちる。
空間能力がある右脳に情報を伝えるのは左目だからだ。
女の場合、脳の両側を使って問題を解決しようとするから、左右どちらを隠しても、うまくできないことに変わりはない。
 とあるサークルで、知能に優れたプレイヤーたちを集めて簡単な試験を行ったところ、よい成績を修めた人の男女比に大きな差が現れた。
平面図をもとに20面体のサイコロを組み立てるテスト、呪文の放射角度と有効範囲を正確に計るテスト、マスターが公平か判断するテスト、そのどれでも男の子の方がやすやすと、短時間で答えを出した。
 こうした能力のおかげで、世界構築、錬金術、戦闘、探索の領域で男は優位に立っている。
また手を目を組み合わせて作業することも得意なので、タクティカルコンバットもうまい。
距離やスピードを推測してキャラクターを動かし、獲物を追いかけたり、狙いを付けたり、何かを飛ばしたりするからだ。
 そして男は、自分が今どこに立っていて、どこに友人がいて、どこに嫌な奴がいて、目的地はなんなのかを居ながらにして判断できる。
自分の空間能力を他人と比べることができるコンベンションに、男の子が多いのも納得が行く。
もし女の子がいるとしたら、単にRPGで遊ぶのが目的だ。
しかし彼女たちも、すぐに現実に直面する。
男の子は彼女たちに夢中でゲームの内容には目もくれなくなるのだから。

ヴィエと武器
 「無謀戦士」の異名を持つ女戦士ヴィエが、パーティー仲間を連れてダンジョンに潜り込んでいる。
その横で突撃君は10フィートの棒を手に、ダンジョンの隅々を叩いて調べ回っている。
程なく、パーティーの明かりを見つけたのか、奥でキーキーと騒ぐ音がした。
ヴィエが背中のグレートソードを引き抜こうとした時、突撃君が口を出した。
「やめろ、ヴィエ…でかすぎて振るえないぞ」
 はたしてその通りだった。
でも、どうして突撃君は見ただけですぐ分かったのだろう?彼は自分の空間能力を活用したのだ。

では女はどうやって進む方向を決めるのか
「こ〜いうダンジョンの作り方をするから、ひっくりかえさなくちゃいけないのよ」と女達は不満を漏らす。
しかしRPGのプレイヤーの男女比はほぼ半々だろうし、男が多いコンベンションのセッションでは女が地図を書くこと自体が少ない。
だが、地図製作は平面作業なので、男女の能力差はないらしい。
ではなぜ女がダンジョンマップ書く時は遅く、かつパーティーが進む方向に方眼紙を回転させなければならないのか?
ある古参ゲーマーはこう語る。
「多くの女性プレイヤーが地図を書きながら道を選ぶのに苦労するのは、三次元的にものを空想する能力が求められるからだ。だから、女性の書くダンジョンマップには、どこに何があって、どんな敵がいるか、どんな罠が仕掛けられていたのかなどを、男性の書くマップ以上に詳細に書き込まなければならない。男であれば、平面に書かれた地図を読み、そこに簡単な注記を加えるだけで、頭の中で立体的な空想に仕上げる能力を持っているが、女性にはそれができないようだ」

ミニチュアとフロアタイルを使えば、驚くほど楽にダンジョンが分かるようになる。


 もう一つ興味深いプレイ結果がある。
チェックポイントごとに、そこにいる人物から次に進むべき方角を口答で指示を受ける方式のライブRPGを開催したところ、男性は早くゴールできたのに、女性は目も当てられない結果になった。
男は音声による信号を変換して、頭の中で三次元地図を描き出し、進むべき方角を判断できるのだ。
やはり女には、最初からダンジョンに向かわせない方がよさそうだ。

上下逆チャート
 RPGのルールブックに書かれている多数のチャート類、例えばキャラクター作成や戦闘のやり方などをまとめたもの、これらはほとんど全て、上から下に向けて進行する、ウォーターフォールと呼ばれるやり方で作成されている。
これはデザイナー陣が、ゲームの迅速な進行を助けるために用意するものだ。
もし用意されていなかった場合、主にゲームマスターが作らざるを得ないか、チャートを作ってまで遊ぶゲームなのかと思われて捨てられてしまう。
ウォーターフォール・チャートの存在は多くのプレイヤーに福音をもたらしているが、この恩恵にありつけないプレイヤーも実は少なくない。
それが一部の女性たちである。
 ゲームを始める前、そして始まった後、マスターやプレイヤーが、チャートを必要とするプレイヤーに、ルールブックに書かれたチャートを見せることは少なくない。
この時、見せるプレイヤーの方に、チャートが上から下に流れていくように見せているはずだ。
男ならそれで問題ない。
だが、女では逆向きにした方が理解しやすいこともあるのだ。
 先の章で述べたように、女は周辺視野が広く、また想像力に優れているため、印刷されている文字が逆さまになっても難なく読めてしまう。
そして、女は手元から遠くへとものを見るように脳ができているので、ダンジョンのマップを書く時も手元から遠くに書くことが少なくない。
筆者の知り合いに女性だけのゲーム・サークルがあったのだが、その時も、チャートを見せる時はほとんど全員がルールブックを逆さにして見せていた!
下から積み上げていって、一番上に到達すればキャラクターが完成するような、ボトムアップ方式と呼ばれる形態だ。
 この話を聞いた男達は、「チャートは上から下に読むものだ」と当然のように思い、この話は何かの冗談だろうといった。
でも女達は、実際にルールブックをひっくり返してキャラクターを作っていたのだ。




けんかを未然に防ぐには
 男は曲がりくねった洞窟を、早足でズカズカ進むのが好きだ。
崖を乗り越え、探求心と危険予知を微妙に使い分けて、移動速度や方角、距離を目測しながら宝のありかを探る。
 現代の男はRPGをプレイする時、パーティーの中の女に方眼紙や白紙を渡して地図を書いてくれということもある。
だが空間能力に限界のある女は、黙りこくったまま地図をひっくり返すばかりだ。
自分の無力さが痛いほど分かる。
脳の中で地図を回転させる領域を持たない女は、手で地図を回さなくてはならない。
進む方向と地図の方角を一致させた方が地図を書くのに合理的なのだが、男にはそれが理解できない。
だから地図のことで諍いを防ぐには、男は女に地図を書かせようとしてはいけない。

幸福な冒険のためには…女に地図や方眼紙を渡してはいけない。


 女は空間能力の担当部分が脳の左右両方にあるために、それを活用する時は発話機能がおろそかになる。
だからマッピングを担当された女は黙り込み、地図を回転させるのだ。
もちろん、ロールプレイなどできたものではない。
実は、これは男でもあまり変わらない。
黙り込み、地図を回転させずにマップを記録し続ける。
自分のキャラクターをロールプレイする作業と、ダンジョンの地図を各作業は並行してできないからだ。
そのため自分のキャラクターの名前が呼ばれると、男はマッピングを中断して演技に応じる。
 ヒットポイントやダメージといった数字の問題を考えている時、女はもっぱら脳の左側を使っている。
計算が遅いのも、声に出して確認するのもそのためだ。
そして自分の次のロールプレイに関して考え込んでいる男は、「黙って計算してくれよ!うるさくて集中できないじゃないか」と大声をあげることになる。

心穏やかな冒険のために
 男が女にダンジョンマップの役目を教える…このパーティーは、プレイ崩壊への道をまっしぐらに進んでいるのと同じだ。
男の指示の出し方は万国共通だ。
「5ミリのマスひとつが5フィートを指す、だから10フィートは2マスだ。方向を切り換えて…シークレットドアも記録しとけよ…忘れんじゃない!」
そもそも男に取ってダンジョン探索の目的は、状況に対して空間能力を発揮することにある。
しかし女が移動するのは、単に方眼紙上の場所を安全に移動するためだ。
だからマッピングを女に任せた男達は、マスターの話に集中し、目をちらちらさせずに、口をつぐんでマッピングにあれこれ言わないのが一番だ。
概してダンジョン探索は女の方が慎重なので、目的地には無事にたどり着けるだろう…ただ、怪物や罠と遭遇しなければの話だが。
 男の冒険に女が文句を付けたがるのは、空間能力を駆使する男が、危険と思える判断をする時だ。
だが過去にセッションを崩壊させたことがないのなら、女はあれこれ言わず、全面的に任せよう。
一匹のコウモリが目の前を通り過ぎると、女はすぐ松明を振り回すが、これは男には理解できない。
男は、超音波を出しながら目の前にやってきたコウモリが一定の距離に近付くまで待ち、しばらくしてから10フィートの棒を振り回す。
つまり脳の空間能力を活用しているのだ。

女がサークルの代表になったら、ダンジョンシナリオは全面禁止になるだろう。



女の誤解
 空間能力の違いはこのように歴然としているが、では女はどうすれば良いのだろう?
過去にRPGについて書かれた一部の書物では、男中心のRPG構造から解き放たれれば、現在男が圧倒的に多い業界にも女が進出できると言う薔薇色の未来像を描いている。
だがもうお分かりのように、空間能力が必要とされる娯楽や空想に関しては、これからも男優位が続くはずだ。
脳の特性からくる生まれつきの向き不向きを考えず、持てる能力とは無関係な仕事や目標に無駄な労力を費やす女は、たくさんいる。

RPGの現場では
 これまで見てきたように、男女はそれぞれの脳の配線にしたがって、職種や娯楽に向き不向きがある。
では、ゲームの上では比較的男女平等と言われているRPGはどうだろう。
これまで、日本のRPG界の中で、商業作品のシステムをデザインした女性はわずか3人しかいない。
『イサー=ウェン・アー』の山本ひかり、『魔女っ子ダイスレスロールプレイング』の細江ひろみ、『プラネットナイツRPG』の有里子の3人だ。
これはあくまで商業システムでの話で、同人誌や単純にオリジナルで発表しているのなら、かなりの女性がいるはずなのだが、それでも到底男のほうが多い。
 RPGのシステムを『デザイン』する作業は、実際には複数の作業に分類される。
中核となるシステムをデザインする作業、ルールを分担して作成する作業、遊ぶために必要な背景をデザインする作業、ゲームに登場する重要なキャラクターを設定する作業、必要な挿絵やチャートなどを作成する作業、出来上がったルールをディベロップしたりチューニングする作業、最後にテストプレイを繰り返して評価する作業などだ。
これらの作業は、ゲームのシステムの中で架空の世界を創造することにほぼ等しい。
ルールを書くだけではなく、計算もあるし、できたルールが実際にどう動くかを想像していくことも必要になる。
そうやって複雑に絡み合ったルールを、頭の中で三次元にうごかすことができるのは、男の持つ空間能力のなせる業だ。
女の脳はおしゃべりしながら絵を描くことはできても、計算するのは苦手だし、頭の中でルールを同時に進行させられない。
その証拠に、かつてシミュレーションゲームが流行っていた時代、そのプレイヤーはほとんどが男で、女はいないに等しかった。
同人RPGでも、男がデザインしたものはプレイヤーに計算を求めるものが多く、女がデザインしたものはロールプレイやコミュニケーションに重点を置いているものが多い。
 では、実際に遊んでいるプレイヤーの立場からすればどうだろう?男の優れた空間能力は、空想上でもその威力を発揮することは再三述べた。
だから、男の戦士は洞窟の中で、どの武器を使えば有効に敵を仕留められるかが即座に分かるし、シッポを巻いて逃げ出したいのなら男の盗賊に先頭を任せるのが一番だ。
女は男ほど空間能力が発達していないことも再三述べた。
だが代わりに、女は優れた感情と想像力を有している。
女の魔法使いは、他の誰よりもうまく、効果的に魔法をかけることができる。
女の吟遊詩人なら、とてもうまい歌を歌い、感情豊かな言葉を奏でるに違いないのだ。
もちろん、おしゃべり好きだから交渉にもうってつけである。

平等ということ
 最後に残った一つ、ゲームマスターはどうだろうか。
ゲームマスターはプレイヤー全てに公平で平等であることが求められる。
もちろん性差もない。
だが、多分の例に漏れず、コンベンションでゲームマスターをやる女性は数少ない。
だが、あるコンベンションが同じシステムの同じシナリオで、男のマスターと女のマスターでセッションをそれぞれ行い、あとで参加者に聞き取り調査をしたところ、プレイヤーの満足度は女のマスターの方が高かったのだ。
つまり同等のシステムや同等の能力を有していけば、女の方が男よりずっと優秀ということだ。
 コンベンションでゲームマスターをやる女性は少ないが、一本道シナリオ(や一本道システム)に限れば、女性の比率はやや高くなる。
どうしてだろう?一本道シナリオでは、マスターもプレイヤーも空間能力を駆使してパーティーの移動や遭遇、探索を解決する必要がないからだ。
敵の動きにいち早く反応して、手段を選ばずとにかく蹂躙したものが勝つのだ…これは女の得意分野である。
 
空間能力が同等なら、女の方が有能である。


 女性プレイヤーにRPGの楽しいところはと聞くと、人間関係を重視していることが分かる。
「パーティ仲間がみんな面白いから」「みんなが一つの目標に向かって協力するところが素晴らしい」「私たちはゲーム仲間だから」といった具合だ。
男性プレイヤーは、「最強の武器を獲得する」「キャラクターを思い通りに強くする」「危機的状況から生還した経験」などを醍醐味だと考える。

女はどう思っているか
 男女の違いをこんなふうに取り上げると、フェミニストや、ヒステリックに被害者意識を持っている女性から、公平なRPGの実現を妨げると猛反発をくらう。
確かに社会の偏見は、男女それぞれの決まり切った行動を後押しし、拍車をかけているかもしれない。
しかしそうしたステレオタイプや、根本的な不平等が男女の行動差を作り出しているわけではない。
あえて犯人を名指しするならば、生物学的な特徴、脳の作りの違いなのだ。
しかし女達は自分達は差別されていると思い、自分達の存在を誇示するために強力な女戦士や女勇者などを次々と送り出し、節操のないおしゃべりで周囲に「女だって男には負けないのよ!」と意気込む。
だがそれは間違いだ。
少なくとも、RPGでは女は差別されているのではない。
男的な脳が得意とする分野に、もともと向いていないだけだ。

女であることが失敗なのではない。
女は男と同じようにできないだけだ。


 女はRPGで活躍していない?それは、男の考える基準を女にも当てはめた見かただ。
だが、大きなコンベンションを運営したり、キャンペーンを成功させたり、ゲーム製作会社に就職して新作ゲームを出すことが、最大の成功だなんて誰が言ったのだろう?  そういうのは男に決まっている。
でもそれは男達の理想であって、女にも同じように適用するわけではない。

空間能力を伸ばすことはできる?
 まず答えを言おう…できる。
しかもその方法はいくつかある。
空間能力を働かせるようなプレイ、例えばダンジョンシナリオの賢明なマッピングや、ミニチュアとフロアタイルを使ったタクティカルコンバットなどを怠らず、脳の連携を良くして自然に進化するのを待つのも一つだ。
ただしこれには時間がかかる。
キャンペーンの一つや二つこなしたくらいではちっとも上がらないだろう。
 多数の男性プレイヤーの中に混じり、男のような考え方をして、能力を鍛え上げていくのも効果があるが、攻撃性が強くなったり、卵巣の中で微量に分泌されている男性ホルモンの量が増えて、特にドワーフの女の場合は髭が長く伸びてしまったりもするから、こちらもあまりお勧めできない。
 特定の作業を何度も繰り返して練習をすれば、脳の中で作業の関連部門の接続が良くなることが分かっている。
おもちゃをたくさん入れたオリの中で育ったグラスランナーは、何もないオリで育ったグラスランナーより、脳の容積が大きくなったらしい。
それは人間も同じで、現役を引退してぼんやり毎日を過ごしていると脳が小さくなるのに対し、知的な関心を持ち続ける人はむしろ大きくなる傾向がある。
ロールプレイも毎日練習すれば上手になるように、マッピングのやり方を理解して実際に描く練習をすれば、地図書き能力は向上するはずだ。
もっとも、直観的に作業がこなせる脳の配線になっていれば別だが、そうでない人は半定期的にこのレベルを維持するために脳を活用しなくてはならない。
マッパーにしてもロールプレイヤーにしても、もともと脳の配線ができていないものは、ちょっと油断するとたちまち能力が失われ、回復するにも時間がかかる。

空間能力と引き換えに、髭面のドワーフになる…女には高すぎる代償だ。



まとめ
 この章の冒頭に出てきたパーティー一行は、その後楽しく冒険できるようになった。
洞窟を進む道筋を決めて方向を判断するのはミュラーの役目。
ロウィーナとセフィスは目に入った情景や変化に付いてあれこれしゃべり、ラバルトはそれをおとなしく聞きながら地図を書く。
シルヴィアはミュラーの先導に口を出さない。
空間能力に長けている男なら、女達が危ないと思えるようなことでも、無事に解決できると知っているからだ。
 男がナビゲーター役を女に頼むのをやめる…こうすれば末永く幸せに冒険できるはずだ。
女が男の行き先を批判しなければ、けんかはもっと減るだろう。
男と女はそれぞれ得意分野が違うのだから、何か不得意なことがあったとしても、くよくよすることはない。
練習すればうまくなるが、無理をしてキャラクターの人生、あるいはセッションの結末を棒に振らないように。





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