第6章 思考、態度、感情

災害の発生しやすいところ
 アーチボルト、フィリス、グイズノー、レジィナ、パラサ、スイフリーの一行は、歩いて未盗掘の洞窟に向かっていた。
地図によると、2日くらいで着くはずの場所だ。
だが5日以上たっても、それらしいところが見えてこない。
アーチボルトはムスッとしたまま先頭を歩いている。
3回目に街道の分岐点が見えてきたときには、さすがの仲間たちも身体の力が抜けた。
フィリス「ねぇ、あの山を右に回避するんじゃないの?近くの村で聞いてみようよ」
アーチボルト「いや、大丈夫だ…この辺に間違いない」
レジィナ「でももう洞窟の情報は知れ渡っているわ。3日も遅れてるのよ。場所を聞いた方がいいって!」
アーチボルト「俺は迷ってない!そういうなら、君が洞窟を見つけるか?」
フィリス「洞窟捜しなんかしたくない…ただ、一晩中同じところをぐるぐる回るのはごめんだって言いたいの!」
アーチボルト「よし、分かった。それじゃみんな、町に帰ろう!」
 こういう会話は誰しも覚えがあるだろう。
信頼するパーティーリーダーが、道に迷っただけで突如ジャガーノートに変身するのが、女には理解できない。
冒険仲間でも、通り掛かった村でも、誰かに道を聞けば済む話なのに、一体どうしたって言うの?道が分からないことを、なぜ認められないの? 女は過ちを認めることをいとわない。
なぜなら女にとって、過ちを認めることは相手との信頼関係を築き、つながりを深める一つの形だから。
しかし男は違う。
自分の過ちを認めた男は、セッションが終了した後のゲームマスターの自白だけだ。

どうしてJGCは何年も運営が改善されていないのか?
人に運営方法を聞かなかったから。



知覚の違い
 同じRPGの世界でキャラクターを動かしていても、男と女では見方がまるで違う。
男は、まるでジグソーパズルのピースをはめていくように、頭の中に写る対象物やその関係を空間内の位置で捕らえている。
これに対して女はもっと大きく広い視野で物事をとらえ、しかも細部もちゃんと見ている。
ただしパズルのピース一つ一つや、お互いの関係は、想像空間内の絶対的な位置ではなく、相対的に把握している。
   男の意識は、結果を出す、目標を殲滅する、地位や権力を手に入れる、競争相手を打ち負かす、「核心を突く」ことが軸になっている。
女の意識は、コミュニケーション、協力、調和、愛、共有、人間関係に光が当たっている。
この違いはまさに水と油で、男と女が一つ屋根の下で遊んでいること自体、驚きと言わざるを得ない。

男の子はモノが好き、女の子はヒトが好き
 女の子の脳は人間や人の顔に、男の子の脳は物体やその形に反応しやすい。
キャラクターを作成した直後から1時間以内のプレイヤーを調べると、例外なく一つの事実が明らかになる。
男のプレイヤーはものに、女のプレイヤーはキャラクターに興味を示すのだ。

女プレイヤーは関係と協力を、男プレイヤーは力と地位を欲しがる。


 ゲームサークルでも、新しく入ってきた女の子はすぐに歓迎されて、女の子同士すぐに名前を覚えるが、新入りの男の子に対して、男の子たちは最初関心を示さず、使えそうな奴だと分かったところで序列関係に組み込む。
一日いっしょに遊んだくせに、男の子たちは新入りのプレイヤーの名前も知らなかったりするが、遊び仲間として有能かどうかはちゃんと判断している。
女の子は知らない子でも歓迎し、受け入れて、ハンディキャップや障害を持つプレイヤーに対して優しく接するが、男の子は仲間外れにしたり、いじめたりする。
 グループSNEのゲームが好きなプレイヤーが多いサークルの中に、FEARのゲームが好きな女の子が入ると、男達は懸命にFEAR独特のシステム構造を理解しようとするが、逆にFEAR好きなプレイヤーの中にSNE好きな男が入ろうとすると、すぐに「使えないヤツ」として放置されるのである。
 男の子は物体とその仕組みに、女の子は人間とその関係に興味を持つ。
ゲーマー夫婦でも結婚当時の思い出を語る時、女は厳粛な式と出席者のことを、男は「独身最期のバカプレイ」について話すだろう。

男の子は競い合い、女の子は協力し合う
 女の子のゲームサークルをはたから見ていても、誰がリーダーなのか分からない。
女の子がおしゃべりするのは、結び付きの強い弱いを示すためであり、一人一人が秘密を共有する親友を持っている。
だからみんなの上に立とうとする子、例えばサークルの代表者になってみんなを動かそうとする女性は、「何様だと思ってるの」「偉ぶっちゃって」と言われて仲間外れになる。
 これに対して男の子のサークルは階層がキチンとできていて、断定的、命令的な話し方、身振りからリーダーが誰なのか一目瞭然だ。
男の子サークルでは権力と地位が不可欠で、それを手に入れるには優れた技能や知識を持つか、他のメンバーに断固としてしてものを言えるか、よそ者を撃退する力がなければならない。
 女の子はゲームマスターや友人たちと友好関係を築きたがるが、男の子はマスターに反抗したがる。
世界の仕組みを空間的に探るのが好きで、パーティーを自発的に組んだりはしない。

ゲーマーの男と女が求めるもの
 最近実施された調査で、ゲーマー男女に、自分はどんなゲーマーになりたいかという理想像を、形容詞をたくさん並べたリストから選んでもらった。
 男性回答者に多かった答え。
「大胆な、競争に勝てる、レベルが高い、声が大きい、威厳がある、他人を圧倒できる、有能な、支配力のある、断固とした、賞賛される、クリティカルの多い、ダイス目が高い、実際的な」。
 女性回答者が選んだ答え。
「暖かい、愛される、寛大な、思いやりのある、注目される、ファンブルの少ない、ロールプレイがうまい、おしゃべりが上手な、発想が豊かな、笑顔の作れる、魅力的な、友好的な、惜しみない、色じかけのできる」。
またゲーマーの人生でどういうことを重視するかという質問に対して、女は誰かの役に立つこと、自分を明るくすることと答えたのに対し、男は名声、権力、支配することを重視した。
やはりここでも、男はものを、女は関係を重んじていることが分かる。
これも脳の配線の違いだろう。

感情のみなもと
 MRIで脳をスキャンしてみると、男の感情は右脳の2か所の領域に集中しているのに対し、女の感情領域は左右両方の脳に広く分布していることが分かる。
 男の場合、感情の中心が右脳にある。
つまり、脳の他の働きとはある程度独立して機能しているということだ。
 例えば戦闘をしている時、男は感情を高ぶらせることなく、論理や言葉を使ってキャラクターを操り(左脳)、立体的な思考で勝利を目指す(右脳の前部)ことができる。
感情だけ小さな部屋で独立していると考えれば良い。
左右の脳をつなぐ脳梁も細いので、感情は他の働きと連動しにくいのだ。
だから、男の戦闘は感情を面に出さず、ただ冷徹に残酷にことをしても、その時の顔の表情はほとんど変わらない。
 しかし女の感情は左右の脳に広く分布していて、他の機能とも連動している。
だからロールプレイをする時は必ず顔の表情がついてくるし、議論の時感情的になりやすい。
男はなかなかそうならないし、もし感情が激しくなりそうだったら、議論そのものをやめてしまう。
パーティー内でこれからどうするかの話が白熱してなかなかシナリオが進まなくなったら、プレイヤーのひとりかゲームマスターがセッションを離れてしまう。
こうして男は感情的になることを避ける。
言い替えれば、取り乱した状態を面に出さなくて済むのだ。
女の感情は、脳の他の働きと同時にスイッチが入る。
だから壊れたビキニアーマーを交換している時に涙を流すことができる。
男に取ってアーマー交換は、問題解決能力のテストみたいなものだから、たとえ土砂降りの雨の中、ゴブリン一匹通らない街道で、予備の鎧まで使い物になっていないことが分かり、おまけに前回の冒険で魔法のソードを交易所に預けたまま取り返していないことを思い出しても、一粒の涙もこぼれない。

男は感情が高ぶると攻撃的になるが、女はなりふり構わず「話し合う」ことを望む。


 男の脳は機能毎の区分けがはっきりしているため、感情への処し方は下等な動物レベルでしかなく、いってみれば敵を反射的に攻撃するオーガー並だという。
しかし女は感情的になっても、顔の表情、身振り手振り、多彩な話し方を使って話を続けようとする。
男はいざ感情への回路がつながると、突然大鬼になってわめき散らし、攻撃的になるのだ。
女は関係を、男は仕事を大切にする  RPGの進化というスクリーンの中では、プレイヤー一人一人はチリの一片にもならない存在だ。
男と女はふつうの社会で何十万年もの間決まった役割で生活してきて、脳の回路もそれに合うように発達してきた。
しかしプレイヤーの中では、その回路が逆に人間関係をややこしくし、誤解を生み出している。
 男は役割と経験点で、女は人間関係でプレイヤーとしての価値を決めたがる。
今までは食べ物を調達し、問題を解決するのが男であり、それが生き残るための最重要問題だった。
女は巣を守り、次世代を確実に残すことが努めだった。
RPGの価値観調査でも、システムや世代に関係なく男の7〜8割は、RPGで一番大切なのは与えられた役割をキチンとこなす「仕事」だと答えている。
女の7〜8割はキャラクター間の関係を一番大切に思っていた。

人間関係に悩みがある女は演技に集中できないし、ロールプレイに行き詰まっている男はパーティーの雰囲気にまで気が回らない。


 ストレスやプレッシャーを感じている女は、苦労している自分を慰めるために他のプレイヤーや女同士で話をしたがる。
だが男にしてみれば、それは問題解決プロセスの障害でしかない。
女はおしゃべりして、注目してもらいたいのに、男はセッションテーブルに座ったまま、じぶんのキャラクターシートを静かに見つめていたいのだ。
女からみれば、そんな男は薄情で無関心に写るし、男に取っては訳知り顔でうっとおしい存在になる。
 こうした感じ方の違いは、脳の構造や優先順位の違いなのだ。
だから女はキャラクターやパーティーについて、私との関係を大事に思っていないのねと愚痴る。
まさにその通り。
この違いを理解しておけば、お互い無用のプレッシャーから開放されるし、相手の振る舞いを容赦なく攻撃しなくても済む。

なぜ男は「何かしたがる」のか
 男の脳は、対象とその関係、空間的な関連、働きを評価・理解して、問題を解決するように作られている。
つまり人生で直面する課題に対して、「どう処理するか?」と反応するプログラムが組み込まれていて、その「処理する」という行動基準を全てに当てはめようとする。
もっとも、パーティーへの貢献を示した欲しいとリーダーに言われた男は何をしたか…ルールブックを広げた。
彼にとっては、ルールを見せることがパーティー、いやセッションプレイヤーたちへの貢献だったのだ。
それでも誰かが不満な顔をしていたので、男はポテトチップの袋を広げてテーブルに置いた。
まだ効果がなさそうなので、男はマスターをトイレに連れて行った。
 女は腹が立つとセッションにいる周囲の人間にひたすら話しかけて思いをぶちまけるが、男は腹を立てると鉛筆やサイコロをいじくったり、ルールブックを注視して誤植を見つけようとする。
もちろん、マスターへの暴言はお手のものだ。

男は女への協力の証しとして、キャラクター作りを手伝い、ルールを丹念に教え、戦闘の見せ場を作ってあげた。
だが女は男を捨てた…男がちっとも活躍しなかったから。


 女は愛やロマンスに夢を託すが、男はダメージの出る魔法や大きな武器、宝物、名声に夢を描く。
男が好きなのは、自分が操作して空間能力を試せる、つまり「何かする」モノばかりだ。

なぜ男女は別れるのか
 男には、女に与えたいという本能的な欲求がある。
自分の努力が女に評価されてこそ、成功したと言えるのだ。
だから女がゲームで満足したなら、男も満足する。
女が満足しないと、男は与え方が十分でないと思って挫折感を覚える。
だから男はよく「お姫様を幸せになんかできっこない」と同性のプレイヤーにこぼす。
そして、自分の与えるもの、たとえばプレイヤーのロールプレイやマスターのシナリオなどで、満足してくれる女との間に、新しい関係を求めるのだ。

でも女プレイヤーが男プレイヤーを捨てるのは、男の与えるものに不満だからではない。
男のものをもらっても、精神的に満たされないからだ。


 女が欲しいのは愛、ロールプレイ、そして会話だ。
でも男は、自分は成功していること、女に十分に必要なものを与えていることを、女にはっきり言ってもらいたい。
だがそのためには、男はすぐに答えを求める猪突猛進の戦士にならないで、ロマンチックに言葉を伝える吟遊詩人を演じた方がいいだろう。

男は間違えることが大嫌い
 男は間違えることが大嫌いだ。
その理由を探るには、男のそんな態度がどこからきているか考える必要がある。
男は女の数倍、ルールブックをよく読み込んでいる。
それこそ文字通り穴が開くまでルールをよく読み込んで、文章の矛盾や誤植、うまいルールの使い方や効率よくダメージをたたき出せるコンボの組み方などを編み出していく。
そしてもう一つ、男は女ほど柔軟にものを考えるようにはできていない。
だから、ルールはルールとして堅固に守ろうとする。
自分がルールを間違えるのも、他人がルールを間違えてしまうのも許さないことも少なくない。
「ルールはゲームマスターが掌握する」というのがRPGの一般的な考えだが、一方で「ルールあってのゲームマスターだ」という考えも、男を中心に根強く残っている。
 だから、男はRPGでルールを使う時、内心胸がざわつき、不安でたまらない。
はたして自分が覚えたルールは正しいんだろうか?ルールの覚え方や使い方を間違って、恥をかいたりしないだろうか?そして、さっきの発言や今の行動はパーティーの理に適っているだろうか?今度の攻撃は命中するだろうか?失敗して、恥をかいたりしないだろうか?男は表情の抜け落ちた能面のような顔で、何度もルールを読み直す。
絶対に成功させなければならない…他のプレイヤーたちをがっかりさせることになるから。
強くならなければ。

男にとって失敗とは、敗北に他ならない。


 失敗したと思われたくない気持ちを百万年抱き続けた結果、男は脳の中にそれをプログラミングしてしまった。
大抵の女は知らないが、もし男が一人でマスターベーションして妄想に困ったら、素直に本やビデオに頼るはずだ。
しかし女がいれば話は別だ。
男は自分のことを、「自分の女で妄想していてもイクことができなかった」ことで敗北者のように思ってしまう。
「手伝ってあげるわよ」という女の言葉は、男には「あんたばかじゃない…ひとりでイケないわけ?」と聞こえる。
「このルールが分からないの…マスターを呼びましょう」と言われると、「この役立たず…いいわよ、他の男に教えてもらうから」と聞こえる。
男が「ごめんなさい」と言えないのも、理由は同じだ。
謝るのは自分が悪いと認めることであり、悪いと認めることは敗北なのだ。
 では女はどうすればいいだろう?問題点を話し合う時、男が間違っていると思わせないことだ。
誕生日にシステムの正誤表を贈っても、「俺はまだ駄目な男なのか」と解釈してしまうのが男なのだから。

男は批判されることを嫌う。
だから初心者の女と付き合いたがる。



男は男同士で群れたがる
 原始時代の男達は、自分より大きくて強い獲物をしとめるために、狩猟チームを編成していた。
優れた空間能力でフットボールさながらのフォーメーションを作り上げ、ボディランゲージを駆使して、狩猟戦略を実行に移したのだ。
 現代のRPG男達は、自分達の存在を互いに確認し合うために、男達同士で立ち話をしている。
コンベンションの集合場所、例えば駅などで、ベンチがあるのに座らず、カバンを肩にかけたまま、数人で輪を囲むように立ち話をする。
メンバーはほとんど男で、空想上の怪物を「狩る」準備のために集まるのだ。
女はというと男の雰囲気に近寄りがたいので、数人でベンチに座っておしゃべりをする。
 集団で「狩り」をしたいという強い衝動は男の脳に染み込んでいて、一朝一夕に消せるものではない。
だから男達は駅やコンベシンョンに集まり、空想の狩猟活動について冗談を飛ばしたり、自慢話をひとしきりする。
そして家に帰ったら、一人静かにパソコンのモニターを眺めたがる。

女たちは座って会話したがる。
自分達の話を人に聞いてほしいから。
男たちは立って会話したがる。
自分達の話を人に知られたくないから。



男はアドバイスが大嫌い
 男は自力で問題が解決できると感じていたいし、ロールプレイ以外で他人と話し合うことは相手に負担をかけると考えている。
だから、自分よりよい解決策を出してくれそうな時以外は、マスターにさえも悩みを打ち明けない。

男が女にアドバイスされると、男は逆上する。
それがルールのことならなおさらだ。



そのくせ男は解決策を出したがる
 男の頭脳は論理的で、問題解決に向いている。
コンベンションの会場に足を踏み入れた男は、まず部屋をざっと見回す。
そして机の位置がずれているので直すべきところ、キチンと整列させなければならない椅子などを目ざとく見つけ、会場内のセッションテーブルのレイアウトにまで改善策を考える。
 問題解決マシンである男の脳は、休むことを知らない。
激しい戦闘でヒットポイントが1になっても、こうすればダメージがもっとよく入るし、コンボが綺麗に決まるのに、と考えている。

女がロールプレイについて話すのは、ストレス軽減策にすぎない。
聞いてもらいたいだけで、解消してほしいとは思っていないのだ。


 女が話し始めると、男は話をしょっちゅう遮って解決策を提示する。
脳がそういう作りになっているし、解決策があった方が女の気が楽になると思うから、どうしても口を出してしまうのだ。
だが女はただしゃべりたいだけなので、彼の提案を無視する。
無視された男は、自分が間抜けなことをいったと思うか、女の悩みは自分のせいではないかと邪推する。
しかし女は「答え」がほしいわけではない。
ただロールプレイに付き合ってくれる相手が欲しいだけだ。

女はストレスでしゃべる
 ストレスがたまったり、強い重圧を受けた時、男の脳は、空間能力や論理といった基本機能が活発になる。
女のほうは言語機能が盛んになって、止めどなくしゃべりだす。
ストレスがたまればたまるほど、女はしゃべって、しゃべって、しゃべり続ける。
一緒に遊んでいる他のプレイヤーたちを相手に、頭の中を事細かに説明し、過ぎてしまったことにも綿密な検討を加える。
 女であること、少数派であること、他のプレイヤーからの期待、自分のキャラクターをキチンと演じられるか?という重圧、マスターの発言、自分の行動を他のプレイヤーが抑圧するなどなど、その全てがストレスの蓄積になる。
そうやってしゃべることで心を落ち着かせ、気晴らしをしているわけで、ロールプレイの答えを探しているわけではない。
話し振りには脈絡がなく、一度に複数の問題を並行させて、いずれの話にも解決案が出ないことだってしょっちゅうある。

女性のRPGプレイヤーに演劇部出身の人間が多いのは、 おしゃべりにサイコロを付け加えるだけで遊べるから。


 女のそういう話を聞かされるのは、男には苦痛だ。
というのも、問題解決の役回りを期待されていると思うからだ。
男はただしゃべるということができない。
具体的な行動宣言をせずにはいられないのである!
だから女の話を遮っては、「要するにどういうことなんだ?」と聞く…「要するに」とまとめようとせず、ただ耳を傾けることが本当は重要なのだが。
ぜひ男が学ぶべきは、相づちを打ったり、身振りを交えてひたすら聞き役に回ることだ。
伝えるべき行動宣言があるときしか口を開かない男にとっては、発想の一大転換だろう。

女が興奮して演技している時、解決案を提示したり、感情を踏みにじるようなことをいってはいけない…演技を受け入れているという素振りを前面に押し出すことだ。


 自分の提案を女プレイヤーに拒否された男が次にやるのは、「そんなの関係ねぇ」「大袈裟に考え過ぎだ」「忘れろ」「大したことじゃないだろ」と言って、女の宣言を過小評価することだ。
そんな言葉を聞いたが最期、女は逆上する。
壁を蹴ったり、自分の持ち物を地面に叩き付けたりして。

男はストレスで黙る
 女は頭の外側で、男は頭の内側でしゃべっている。
発話のための決まった領域を持たない男にとっては、その方がものを考えるに都合がよい。
だから女が誰か他の人に向かってしゃべるのに対し、男は自分自身に話しかけている。
 プレッシャーやストレスを受けた男が、黙りこくってしまうのもそのためだ。
パーティーのリーダー役として舵取りをしなければならない男がダンジョンで迷ってしまったり、プレイヤーにシナリオをかき回されて収拾が付かなくなってしまった男ゲームマスターがその典型だ。
問題を解決し、答えを見出だすのに右脳を働かせなくてはならず、その間左脳はお留守になる。
なんと言っても「一度にひとつ」のことしかできないのだから。
考えるのとしゃべるのを同時にはできない。
 しかし女からみると、その沈黙が恐ろしい。
「ねぇちょっと、なんか行動宣言してよ。そんなに悶々としてないでさぁ」と、思考中の男達を促すのは、他ならぬ自分が話すとすっきりするからだ。
しかし男達は、宣言の糸口が見つかるまで一人にしてもらいたい。
ましてや他人に相談するのは、自分の手の内を見せてしまうことになるので、もってのほかなのだ。
 男女入り交じった一つのセッションテーブルを遠くから見ると、その違いがくっきりと分かる。
男は皆、行動宣言する時以外は静かに考え事をしている。
それも手元のルールブックやキャラクターシートをじっと見つめて。
顔を上げているのは、しゃべっている女プレイヤーとテーブル全体を見渡すゲームマスターくらいだ。

男は行動を宣言するために、ひとり静かな時間を作る。
誰かが後を追いかけても、蹴り落とされるのがオチだ。



空間能力を使って悩みを解決
 テーブルに座ってキャラクターシートを眺めることだけが、考えるポーズではない。
ルールブックやチャートを広げる、メモを取る、キャラクターのイラストを描く、サイコロを振るのも、男には考える手段なのだ。
仲間の期待と言う重圧に苦しむ男は、下手でもなんでもいいからロールプレイしてそれに答えようとする。
ルールを使って戦闘することでもそれに近いことができる。
特にタクティカルコンバットは右脳の方をよく使う戦闘だ。
空間能力を働かせることで、同じ右脳を使って行う行動宣言の決定もスピードアップさせているのだ。

男の口を開かせるには
 システムの東西を問わず、男プレイヤーのだんまりはマスターの悩みの種だ。
女だったら、テーブルにつくなり一切合切、ゲームが始まる前から関係ないことまでしゃべるのに。
男は「何かをする」用にプログラミングされているから、発言させるコツもここにある。
キャラクター作成でも、ルールの説明でも、模擬戦でもなんでもいいから、一緒に「何かやる」のだ。
男は自然とおしゃべりになるだろう。
 男はまじまじと目をのぞきこまれるのが嫌い。
でもマスターはそうしたくてたまらない。
 何か活動をしていれば、相手とあまり目を合わせなくてもすもから気が楽だ。
それこそ、妄想のためにじっと目を閉じていたとしても。
男は一度に一つのことしかできないから、しゃべっているときは手がお留守になるが、それでもよしとしよう。
この作戦はだんまりしているゲームマスターにも使える…ただしマスタースクリーンの裏でサイコロを振っている音がするときは、危ないから話しかけないように。

ストレスがたまると
 男は緊張が極限に達すると、飲み物をあおり、セッション部屋の外に逃げ出す。
女は煮詰まってくるとチョコレートをドカ食いし、トイレに逃げ込む。
重圧を受けている女、例えばパーティーのリーダーやゲームマスターのときは何も考えずにしゃべり、男は何も考えずに行動を宣言する。
だから酒場でいざこざを起こすのは9割が男で、教会の世話になるのは9割が女なのだ。
 男と女がどちらもプレッシャーに苦しんでいるときは、何とかしようとすればするほど、ロールプレイの地雷原に足を踏み入れることになる。
女はイライラするとしゃべりたくなるが、その分別のない言葉の津波に、男はなす術もなく、自分のイライラが募るばかりだ。
男の気持ちを楽にしてやろうと、女が発言するよう促すのは最悪の試みだ。
男は発言の機会をさらに失い、自分の殻に閉じ籠ってしまうだろう。
女はストレスがたまるとしゃべりたくなる。
そんなとき男は、「ゲームとは関係ない」などといわず、ただ聞いてあげよう。

男がセッションの上で考えにふけりはじめると、女は見捨てられた、役に立っていないと感じて、さらに分別なくしゃべりはじめる。



殻に閉じこもる男たち
 ストレスを感じた男と女の反応はこんなに違うのに、RPGではそのことがほとんど理解されていない。
ストレスが溜まりにたまっていたり、重要な局面を打開しなければならないとき、男は他人を完全にシャットアウトする。
脳の中で、感情をコントロールする部分との連絡を絶ち、口を利かなくなって、ひたすら自分のキャラクターの役目、それも感情を使わない行動宣言に専心する。
 完全シャットアウト状態に入った男は、女にとって恐ろしい存在だ。
というのも、女はめったなことで他人を拒絶しないからだ。
そうなるのは、傷つけられたり虐待を受けた、嘘を付かれたときなど、よほどの場合に限られる。
女は何とかして男の口を開かせようと画策するが、男は拒否するだろう。
その時男は、自分の問題解決能力、ロールプレイ能力が信用されていないのだと感じる。
 男は男で、女が傷ついて黙り込むと、一人にさせてやろうと一旦セッションを中断して一服に出かけたり、多数の書き込みで汚れたキャラクターシートの掃除を始める。
男がシャットアウト状態になったら、放っておけばいずれ元気になる。
だが女は違う。
女が沈黙したら、それは何かよからぬ事が起ころうとしている前兆であり、男は黙って聞かなければならないのだ。

なぜ男は、感情的になった女に手こずるのか
 女は感情で生きる動物である。
ロールプレイが紅潮に達して、感情が高ぶった女は涙をボロボロ流し、激しい身振り手振りで、ありとあらゆる形容詞を使ってキャラクターを表現しようとする。
こういうときの女は、子どものように接してもらいたいし、話に耳を傾けてほしいのだ。
それなのに男は、自分のロールプレイの基準で女の行動を解釈するから、「節操のない過剰な演技」として逆に引いてしまう事も少なくない。
 ここでも男は、自分のテンションを乱されたくないから、アドバイスをすることに懸命になって、あれこれ問い質したり、取り乱すなといってしまう。
「泣くのをやめてくれないか?君は大袈裟すぎる。ただクリティカル一発くらっただけじゃないか!と呆れた表情で諭すのだ。
 こういうとき男は、女に対して先輩のように接している。
RPGを教わってサイコロを振り始めたときから、男は自分のサークル仲間や先輩をお手本にして、誰に対しても先輩然としてふるまってきた。
感情を面に出すのは女にとってコミュニケーションの一手段なので、たとえ取り乱してもすぐ元に戻るし、忘れるのも早い。
しかし男は、女のために解決策を見つけてやる責任、例えば敵を殲滅したり負傷を治療するような責任を感じている。
もし思い付かなければ、自分が無能だということになる。
だから女が感情的になると、男は呆れるのだ。
いくら空想上の話とはいえ、女プレイヤーが本当に泣き出してしまったら、手が付けられなくなる。
そのことも男にとっては脅威である。

ロールクライング・ゲーム
 女は現実でも空想上でも、男よりよく泣く。
泣くヴァリエーションにもいろいろあって、普通の泣くときやうれし泣き、むせび泣き、夜泣きなど様々だ。
男の場合、特に人前ではめったなことで泣かないように進化してきたし、社会もそう仕向けている。
戦闘中にモーニングスターの一撃を受け、痛打表で肺がつぶれて痛みに耐えきれず地面に転がると、パーティーのリーダーは目を三角にして怒鳴るだろう。
「立ち上がれ!肺の一つくらい気にするな!俺なんか足だ!」  しかしロールプレイ指向のシステムで育ってきたプレイヤーたちは、いつでもどこでも泣いてよいことになっている。
女やゲームマスターの前でも、シナリオのドラマティックな結末に感動したときも涙を流す。
森の奥深くで、トレントたちに囲まれながら、男同士抱き合いながら泣いても許される。
むしろ、ことあるごとに「心の内をさらけ出して」いないと、冷淡だとか、セッションに協力していないと見られてしまう。
女のほうは、脳の中の感情中枢がいろいろな部分と連絡しているから、世代に関係なくありとあらゆる状況で感情を高ぶらせ、涙をこぼすことができる。

男でも泣くことはある。
だがそれは、女が泣こうとした時に限られる。



外で食事をする
 女にとって外食は、人間関係を築き、発展させて、ゲームの面白かった点を話し合ったり、友人との付き合いを深める手段である。
男にとって外食は、食事にありつくための一方法にすぎない。
料理や買い物、皿洗いをしなくてもよいから、ありがたい方法である。
サークルやコンベンションが終わった後、男達は単なる食事の手段として、レストランやファーストフードに足を運ぶ。
話はそのついでにすぎない。
女は、レストランに付くまでの間、そして注文した料理が手元に運ばれてくるまでの間をコミュニケーションの時間として有効に活用する。
ゲームであれほどしゃべったのに、まだしゃべりたりないかのように、他のプレイヤーといっぱい話を持ち掛けていく。
そして食事をする時、女達はお互いを名前で呼んで親しさを増そうとするが、男は他の男と親密になることを重視しない。
 勘定を払う時、女達は携帯電話を引っ張りだして、いくら払えばいいか一人ずつ計算する。
男達は、最初に名乗りを上げた一人がまとめて払うから、後で消費税抜きでいいから個別に渡してくれというに違いない。
そうやって、一瞬でも脚光を浴びたいのだ。

女にとって、セッション終了の合図は、おしゃべりの対象をキャラクターからプレイヤーに切り換える合図。



キャラクターメイキング−それは女の喜び、男の恐怖
 おしゃべりとキャラクターメイキングは女にとって同じものだ…どちらも想像力をかきたてられるし、何時間もダラダラと続く。
キャラクターメイキングは女にとって自己表現法であり、空想のモデリング作業である。
 だが男がそういうメイキングに突き合わされるはめになったら、20分で脳の血管が切れてしまうだろう。
女はキャラクター作成のチャートをうまく読めるように脳の配線ができていないし、困った時はすぐに隣の男に聞いてくる。
能力値を決めるためのサイコロを振るまではいいが、ヒットポイントや命中ボーナスなどの副能力値を決める計算は苦手だ。
そして女は空想能力や感覚能力に優れているので、作り上げられたキャラクターから様々なものを想像する。
するのはいいが、それにも時間が掛かるし、「キャラクターを完成させる」ための時間を長くしてしまう。
最後の悩みの種はショッピングだ。
アイテム表の中からアレコレ自分の持ち物を選んでいくのは、実際のショッピングと同様の手間と時間を要する。
 それでも男がキャラクターメイキングにやる気を起こすのは、目標と予定がはっきり定まっているからだ。
能力値を決め、クラスを決め、技能を決め、装備を決め、できる限り早くキャラクターを完成させる…それが男の目標なのである。

女がキャラクターを作り始めて20分すると、周囲の男は脳の血管が切れる。


 女がキャラクターのクラスをどれがいいか悩み、そのたびに男に意見を求めた揚げ句、結局男が女の選んだクラスにあわせることになる。
女がいろんな技能を選びたがるのは、情緒や感情の幅が広い女の脳に見合った行動だ…選んだクラスや技能の違いが、そのまま気分の違いを写し出す。
しかしそれに突き合わされる男は、次第に不安と不満が高まってくる。
男達はパッパとキャラクターを完成させたのに、女達はささいな技能で悩んだり、男なら簡単にできる計算に時間がかかってイライラさせられるからだ。
 女に自分でキャラクターメイキングを手早くさせるには、どこでどんなサイコロを振ればいいか、どんなキャラクターが必要か、どういう基準でクラスや技能を選べばいいかを明確に示してやることだ。
はっきりした目的さえ与えられれば、女は驚くべき熱心さでキャラクターメイキングに邁進するだろう。
幸か不幸か、近年発売されているシステムには、サンプルの完成済みキャラクターが多数用意されているものが少なくない。
これを選ばせれば、もっと簡単になり、男達はダイス振りに、女達は空想作りに専念できるというわけだ。

女心をくすぐるほめかた
 新しいキャラクターを作った女が、「どう?」と男に尋ねる。
帰ってくる答えは大抵「いいんじゃない」
これでは女は喜ばない。
得点をかせぐには、女がするように答えること…とにかく細かいところをほめるのだ。

細部をほめると聞くと嫌な顔をする男もいるが、思い切って試してみる事をお勧めする。
女性受けがよくなること請け合いだ。


たとえば「それ、いいねぇ!技能も見せてよ…その交渉技能、君にぴったりだ。イラストは描いた?その首のイヤリングのコーディネートもいいし、素敵な絵が描けてるね」
こう言われて、悪い気がする女はいない。





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