第4節 洞窟の令嬢話しかける                        

−「15日の間、ここに続けて来ていただけませんか」

1858年

  2月13日

  (土曜日)

 洞窟で、若く美しい令嬢を見かけて、二日後。

 午後、ベルナデッタは、ルルドの教会の告解所で、助任司祭ポミアン神父に、ルルドの方言で「私は婦人の形をした白いものを見た」と告げた。 LRJのP58

ベルナデッタの肖像画

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 ポミアン神父は、ベルナデッタに別に質問をしなかった。しかし、子供の言う事は、真実のように思えた。特に彼が心を打たれたのは、「風の音のように」と言った言葉だった。ポミアン神父は、新約聖書使徒行伝の第二章に出てくる、聖霊降臨の風の音のことを思い出していた。

 夕方、ポミアン神父は、アルジュレスの道を歩いていた。ルルドの主任司祭ペラマール神父に会って、このことについて全部打ち明けた。主任司祭は「もう少し待ってみよう」と言っただけで、別の話に移った。

LRJのP59

 ローランタンの「ベルナデッタ」和訳版(ミルサン、五十嵐茂雄共訳 ドンボスコ社)による。

 以下、このサイトはこの文献をベースにしている。

 略語はLRJとする。

第二回目の

ご出現

2月14日

(日曜日)

  しかし、噂は広がってしまった。

 ルルドでは、ヌベールの修道会が、一つの施設を経営している。この施設には、老人ホームのような病院のような一部分があって、そのほかに学校がある。この学校には月謝を納めている子供たちのクラスと、無月謝の貧しい子供たちのクラスがある。トワネットとジャンヌが、ここの友達にしゃべってしまったのである。

 日曜日のミサの後で、彼女らは怖いもの見たさで、ベルナデッタの見たものを、私たちも見に行こう、と言い出した。

 母のルイーズは「絶対にだめだ」と言う。しかし、思い直して「お父さんに聞いてごらん」と言った。仕事に出ていたフランソワも「だめだ」と言ったが、父の雇い主が「ロザリオを持っているきれいな婦人というのだから、これは別に悪いものじゃないだろう」と女の子たちの味方をした。それで父のフランソアも折れた。    

 LRJのP60 

 
 女の子たちは、2月11日の時と同じ道を歩いて、ポン・ビュー橋まで行ったが、水路を渡らないために水車小屋の道へは行かないで、山の道を歩いて洞窟の上に着いた。

 ベルナデッタは、ポケットから安物のロザリオを出し、ひざまずいて祈った。ベルナデツタがロザリオの二連目を唱え始めたときに、急に顔つきが変わった。いる!ロザリオを手に持って、こっちを見ている。」 しかし、友達には何も見えない。

 ベルナデッタは、友達のマリ・ヒローが自分に渡す聖水の小さなビンを手にとって、現れたものの方へ向けて、ふりかけた。そして「もしあなたが神様からのものなら、どうぞここにいてください。そうでなければお帰り下さい」と言った。後にベルナデッタ自身が言っている。

 「私が聖水をふりかければかけるほど、あの方は微笑んでいました。

LRJのP61

 友達は怖くなって、一斉に逃げ出した。やがて、散歩をしていた男がやって来た。彼はサビの水車小屋のおやじニコロ◆◆で、ヘルナデッタを連れて帰ろうとした。ニコロは非常な力持ちで、小麦粉の袋を平気で投げる腕力の持ち主だったが、こんな小さな女の子を、いくら引っ張ろうとしても、動かせなかった。

彼は、この少女の青い顔と、その頬に浮かぶ微笑を見て、本当にびっくりしてしまった。一体、この女の子は、どうしてこんなに重いのか、あるいは自分自身の力がなくなってしまったのかと。

 やっとのことで、ベルナデッタを引っ張ることができて、水車小屋まで連れて来た。

LRJのP63

 ルルドでは、このことが大評判になってしまった。

「山の道」・・・地図参照

◆◆「ニコロ」・・・・・ベルナデッタ本人を除けば、このニコロが、聖母ご出現に伴う奇跡の証人の第一号であろう。

 ローランタンの著書の P41に、ニコロの写真がある。

2月17日

(水曜日)

 ルルドに「ミエ」という、五十歳ぐらいの金持ちの夫人がいた。この夫人は時々、ベルナデッタの母ルイーズ・スビルーを、自分の家で働かせたことがあった。

  ミエ夫人

 ミエ夫人は、洞窟のことに興味を持っていた。そして、マッサビエーユの洞窟に現れるのは、前年に大変信心深い死に方をしたエリザ・ラタピーの霊ではないかと思った。

 ミエ夫人は、まずこれをハッキリさせないといけないと思った。それで、ミエ夫人は牢獄跡の家(カショー)に行って、自分の望みを伝えた。そして「明日朝早く、まだ明るくならないうちに、ベルナデッタと一緒に洞窟に行く」と告げた。

LRJのP66

註◆・・・ミエ夫人

(ローランタン「Vie de

Bernadette racontee

a tous」P.50 の写真による)

写真の下には、「ミエ夫人は風変わりで豪奢な衣装を好んだ。」という説明がある。

第三回目の

ご出現

2月18日

(木曜日)

 朝五時、ミエ夫人はカショーの前に立った。彼女の家に裁縫に来る若い女性アントワネットと一緒である。ベルナデッタはまだ寝ていたが、起こされてしまった。

 アントワネットはお父さんが役場に勤めているので、その父から借りたペンと紙などの筆記用具を持っている。最初の二回の出現についての、ベルナデッタの単純な話を信用することが出来ないので、洞くつに現れる人に、名前を書いてもらおうと、思っているのだ。

 ロザリオの祈りが始まった途端に、ベルナデッタは小さい声で「いるよ!」と言った。ロザリオの祈りが終わると、アントワネットは書き物道具をベルナデッタに渡した。ベルナデッタは、洞窟のところまで進んで行った。ベルナデッタは、その令嬢にペンと紙を渡そうとした。ベルナデッタは大きな声で頼んだ。「どうぞお名前を書いてください」

 Boulet aoue era bouentat de mettre voste noum

 per escouriout ? ◆1

  (Voulez-vouz avoir  la bonte de metrre votre nom

 par ecrit ?)

 あれ(その令嬢)はその穴から降りてきて、ベルナデッタに近づいた。しかし、紙には何も書いてくれない。またミエ夫人やアントワネットには、何も見えなかった。

LRJのP68

 あれ(令嬢)は、「その必要はありません」と言った。

  Aquero a repondu en souriant :  ◆2

 −N'ey pas necessari

 (Ce n'est pas necessaire !    BVPのP.48

それからこの令嬢は自分でもルルドの方言を使って、「お願いですが、ここへは十五日間続けてきてくれませんか」◆4と、非常に丁寧な頼み方をした。

 ベルナデッタは、約束した。洞窟に現れた令嬢もまた、一つの約束で答えた。〔HP運営者私訳〕

 また、令嬢は私が約束するのは、あなたをこの世ではなく、あの世において幸せにすることですとも言った。

〔ミルサン・五十嵐茂雄訳〕 ◆5

LRJのP318

 Pas en ce monde ! Mme Milhet qui a si bien su batir

 sa fortune terrestre en est tout interdite.「この世ではなく」この世で、とても巧みに財産を築き上げたミエ夫人は、狼狽した。

 Comme c'est etrange 何と奇妙な事だろうか。 Le mystere de cette enfant la penetre.あの子の(体験した)神秘が伝わってくるのだ。Mais les impressions vives prennent toujours chez elle la forme d'une decision patique et materielle.ところで彼女(ミエ夫人)はいつも、鮮烈な印象は実際的で具体的な形にすることに、決めていた。《Je vais bien m'arranger en attendant,pour qu'elle soit moins malheureuse, cette petite.》 『私は、この子(=ベルナデッタ)がこれ以上不幸にならないように、手はずを整えてあげよう』 ◆6

 ベルナデッタはこの不思議な令嬢のことを長い間「あれ」◆7と言った。この18日に初めて「あれ」の優しいきれいな声を耳にした。それでベルナデッタは何も考えないで、ただ心が勧められるままに、約束してしまったのだ。勿論、ベルナデッタには、「あれ」がエリザではないということは、すぐ分かった。

 すると、ミエ夫人は「もしかすると、聖マリアかも知れない」と帰り道で言った。しかし、そう言われても、ベルナデッタは黙っているだけだった。

 Elle rentre,contente de sa reussite.彼女はその好結果に満足して帰った。Elle informe Louise de sa decision : −Je me charge de votre fille.Je la prends moi.彼女(ミエ夫人)は彼女の決心を(ベルナデッタの母)ルイーズに伝えた。それは「私はあなたの娘の面倒を見ましょう。私の家に連れてきましょう」という決心であった。 ◆6

1 緑色の欧文は、ルルドの方言である。

 黒色は、標準フランス語。BVPのP.46による

直訳「恐縮ですが、あなたのお名前をこの紙に書いて頂けないでしょうか」

,7

あれ」・・・ルルドの方言で「アケロ」AQUERO

BVPのP.48によると、「あれは、en souriant

微笑んで、答えた。『その必要はありません』

 

 

・・・BVPのP.49

 日本語訳版のほうには、書かれていない。

この箇所は、HP運営者が訳出した。

◆4,5 原語を掲げておきます

ルルド方言

    Boulet aoue la gracia de bie aci penden quinze dias ?

フランス語訳(ローランタンによる)

  Voulez-vous avoir la grace de venir ici pendent quinze jours ?

      「どうか、15日の間ずっと、ここに来るという、ご厚情を賜れないでしょうか」

      ⇒ 「どうか、15日の間ずっと、ここに来て頂けませんか」

      ”grace”には、「厚意、親切」という意味の他、「神の恩寵」という意味があるほどである。 ( HP運営者の拙ない直訳)

 Bernadette a promis, et l'appparition a 

 repondu, elle aussi, par une promesse.

    BVPのP.49

 ベルナデッタは、約束した。洞窟に現れた令嬢もまた、一つの約束で答えた。     〔HP運営者私訳〕

ルルド方言

    Nou proumeti pas deb he urousa en este

  mounde, mes en aoute.

フランス語訳(ローランタンによる)

 Je ne vous promets pas de vous rendre heureuse  en ce monde, mais dans l'autre.

BVPのP.49

 私はあなたにこの世での幸福を与える事を約束しない。しかし、あの世での(幸福は約束する)。        〔HP運営者の直訳〕

ルルドの方言は、ローランタンの

"Bernadette vous

parle" P49による

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