AOS栽培ガイド

Copyright by American Orchid Society (AOS)

Translated by Mariko Hayashi-Herron, Jun Maeda
and the Members Of NiftyServe Orchid Forum


目次
カタセツム/Catasetum (Ctsm.)
カトレア/Cattleya (C.)
シンビジューム/Cymbidium (Cym.)
デンドロビューム/Dendrobium (Den.)
リカステ/Lycaste (Lyc.)
マスデバリア・ドラクラ/Masdevallia (Masd.)・Dracula (Drac.)
オドントグロッサム/Odontoglossum (Odm.)
オンシジュームと
中高温性近縁種
/Oncidium (Onc.) etc.
パフィオペディルム/Paphiopedilum (Paph.)
ファレノプシス/Phalaenopsis (Phal.)
スタンホーペア/Stanhopea (Stan.)
バンダ類/Vanda(V.) etc.
ページ作成者よりの謝辞

蘭の沼への誘いに戻る]

カタセツム/Catasetum (Ctsm.)

 カタセツムは、 おもしろい仕組みを持ったロウ質の花をつけます。花には触角があり、これに触れた昆虫の背中に向けて、バネじかけで花粉塊を発射します。粘着板によってしっかりと昆虫に貼りついた花粉塊は、他の花へと運ばれ、受粉が行われます。カタセツム類はほとんどが落葉性で、生長期と休眠期がはっきりわかれています。近縁種には、キクノケス(Cycnoches)やモルモデス(Mormodes)があり、これらの栽培もカタセツムに準じます。

光線
 強光線を好むランで、生長期の初め頃は比較的弱光線にも耐えますが、バルブが完成して肥大してくる時期(完熟期)には、とくに強光線にあててがっちりと育てましょう。
 普通、カトレアと同レベルから、バンダと同じくらいのレベルの日照が適当で、家庭ではレースのカーテンなどで軽く遮光した南か西向き、または直射の東向きの窓辺で育てます。温室では、25〜50%の遮光をします。

温度
 暑い、熱帯地方低地が自生地で、夏の雨季に生長します。生長期の適温は、日中80〜100F(27〜37℃)夜間60〜65F(15〜18℃)ですが、休眠期に入ったら、日中70〜85F(21〜30℃)、夜間55F(13℃)に下げます。

水やり
 がっちりと太ったバルブを作り、良い花を咲かせるには、水やりがとても重要です。短い生長期間中に、休眠期を乗り越えるためや、開花に必要だけの水分をバルブに貯蔵しなければなりませんので、葉が生長している間は十分水を与えることが大切です。バルブが完熟期に入ると、徐々に水やりを減らし、葉が黄色くなって落葉したら、次の新芽が出るまで完全に水を絶ちます。株が著しく衰弱するようなら少し水を与えますが、多すぎるとバルブが腐り、枯れてしまうこともあるので、慎重にします。

肥料
 充実したバルブを育てるには肥料が不可欠で、バーク植えの場合、生長期には高窒素肥料(30-10-10等)を2週間おきに与えるか、規定の半分の濃度に薄めたものを毎週やります。肥料も水と同じように、バルブが成熟するにしたがって少しずつ減らしていきますが、花つきを良くするには、春咲きのものを除いて、秋に高リン酸肥料(10-30-20等)に替えてやると良いでしょう。

植え替え
 新芽の出るころが、植え替えの適期です。これは品種によって異なりますが、普通は春にあたり、この時期なら根もどんどん伸びるので、植え傷みが少なくて済みます。
 カタセツムの根は旺盛で、生長期には水分や養分を多量に含むことのできるコンポストを好みます。このため、小粒のバークが使われることが多く、中粒のバークは大株仕立てにのみ使います。また、水ゴケも多量の養分や水分を含むことが出来るので、よく用いられます。休眠期には、反対に多湿によってバルブが腐るのを防ぐことが大切で、この時期には株を鉢から抜いてしまう方法もとられます。
 ヘゴ付けもできますが、この方法は休眠期に株が腐るおそれはなくなるものの、生長期の水やりが大変になるようです。
 株分けをする時は、旺盛な成株サイズのバルブなら、一本づつに分けて植えても、次のバルブから咲いてくれます。

 夏には、葉ダニがつきやすいものです。湿度を上げたり、ダニ用の殺虫剤を使って、予防や駆除に努めましょう。

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カトレア/Cattleya(C.)

 カトレアは最もポピュラーなランのひとつで、カトレア類には、カトレア(Cattleya)だけではなく、ブラサボラ(Brassavola)、レリア(Laelia)、ソフロニティス(Sophronitis)、ブロートニア(Broughtonia)などと、これらの人工交配属が含まれています。これらは、それぞれさまざまな花色をしているものの、栽培方法はどれも似通っています。カトレアは、他のランの栽培を説明する上でもよく基準にされ、『カトレアと同じ環境で』(grow as for cattleyas;cattleya condition)などという表記が、よく見られます。ここでは、最も一般的なスタンダード種のカトレアの栽培を紹介します。
 他のポピュラーなランと同じく、カトレアも着生植物ですので、根を地面に下ろして生育しているのではなく、木の幹や枝に貼りついて生えています。雨が降っては乾きを繰り返す樹上の環境に適応しているため乾燥に強く、貯水器官として、偽球茎(pseudobulb=バルブ)や、スポンジの様に水分を吸収するベラーメン層がある太い根を持っています。着性ランの根は、水だけでなく空気も必要としますので、他の植物のようにいつも根が濡れていては、根腐れを起こします。水やりと水やりの合間に根が乾くように、水はけや空気の流通の良いコンポストを使って植え込まれるのはこのためで、水不足よりもむしろ水やりのしすぎに気をつけることが大切です。

光線
 光線はカトレアの生育や開花にとって、重要な条件のひとつです。明るい光線を好み、日中の高温時を除いて、直射日光にも耐えます。
 家庭では、東や西向き、またはレースのカーテン越しの南向きの窓辺が適当で、温室では30〜50%の遮光をします(光量3000〜5000 foot-candles)。適当な光線があたっている株の葉は、明るい緑色(grass-green=芝生色)をしていますが、濃緑色なら光線不足といえます。

温度
 適温は夜間55〜60F(13〜15℃)、日中70〜85F(23〜26℃)くらいですが、小苗はこれより夜温を5〜10F(5℃)ほど高くします。成株は、日中と夜間の気温差が10〜20F(5〜10℃)ほどあるのが良く、一日中同じでは花がつきにくくなるようです。
 遮光を強めにし、湿度を高めて通風を良くすれば、95F(35℃)の高温に耐えるものもあります。

水やり
 成株では根腐れを起さないように、水やりの合間に根を乾かすようにしますが、水やりの頻度は鉢のタイプやサイズ、コンポストの種類、温度、日照などの色々な条件に左右されますので、残念ながら一概にはいえません。また、生長期でバルブや葉を伸ばしている株は、休眠期の株よりも多くの水分を必要とします。鉢内がどれだけ乾いたかを測るには、同サイズで同じコンポストの乾いた鉢と持ち比べてみたり、コンポストに削りたての鉛筆を挿しこみ、木の部分の濡れ具合をみたりします。水やりをした方がいいのかどうか疑問が残る時は、2〜3日待ってからにした方が安全です。
 小苗は安定した水分を必要としますので、からからに乾かないように水やりの回数を多くします。50F(10℃)以下の水や軟水器(塩=ナトリウムイオンを使用するもの)を通した水は根を傷めるので、使わない方が無難です。水分の補給を十分にするためには根に灌水するだけではなく、空気中の水分(湿度)を高めてやることも大切です。

湿度
 カトレアは、50〜80%の湿度を好みます。
 家庭では、砂利を敷いたトレーに鉢が浸からない程の水を張り、その上に並べて湿度を補いましょう。霧吹きもいいのですが、濡れたままにすると病気が出やすくなりますので、朝だけにしましょう。温室では床面に打ち水してやりますが、水が気化(蒸発)することで湿度を高めるだけでなく、気温を低くする効果もあります。通風も大切で、空気の流れを良くすることによって株が早く乾くため、病気にかかりにくくなりますし、葉の温度も下がりますので、強光線によって葉焼けすることも少なくなります。湿度の高い時や低温時にはとくに病気が出やすいので、通風をよくして予防に努めましょう。

肥料
 カトレアには定期的な施肥が望まれ、バーク植えの場合は高窒素肥料(30-10-10等)を与えます。4〜6回に一度ほど、高リン酸肥料(10-30-20等、bloom booster)に替えてやると、さらに生長や花つきが良くなると言われます。施肥の頻度は、生長期には二週間毎、休眠期には一か月毎くらいが適当ですが、規定の濃度の半分に薄めたものを、水やりの度に与えても構いません。
 1か月に一度は、鉢内をすすぐようにたっぷりと水をやり、余分な肥料分などがコンポストにたまるのを防いでやりましょう。

植え替え
 株が大きくなってバルブが鉢からはみ出しそうになった時や、コンポストが傷んで水はけが悪くなった時は植え替えが必要で、普通2〜3年おきくらいに行います。
 植え替えの適期は、新しい根が出る直前、花が終わってすぐ、または春です。一般に、成株のカトレアには中粒サイズのコンポストを、小苗には小粒サイズを使います。複茎種のランですから、一番古いバルブを鉢の縁に寄せ、新芽の出る方向を広くあけて植えつけます。葡匐茎の下側が少しコンポストに埋まるくらいが適当な深さで、株がぐらつく様なら、支柱を立ててやりましょう。
 普通、バルブが6本以下の株は分けずに一回り大きい鉢に植え替え、株分けする時はバルブ3〜5本づつの開花サイズに分けましょう。

カトレア類の主な属:カッコ内は略号です。
ブラサボラ:Brassavola(B.)
ブロートニア:Broughtonia(Bro.)
カトレア:Cattleya(C.)
レリア:Laelia(L.)
ソフロニティス:Sophronitis(Soph.)

主な人工交配属:C=Cattleya; B=Brassavola; S=Sophronitis; L=Laelia
ブラソカトレア:Brassocattleya(Bc.)=B × C
ブラソレリオカトレア:Brassolaeliocattleya(Blc.)=B × L × C
レリオカトレア:Laeliocattleya(Lc.)=L × C
ポティナラ:Potinara(Pot.)=C × S × L × B
ソフロカトレア:Sophrocattleya(Sc.)=S × C
ソフロレリオカトレア:Sophrolaeliocattleya(Slc.)=S × C × L


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シンビジューム/Cymbidium(Cym.)

 シンビジュームは、切り花や春のコサージュなどに用いられ、 大型の美しい花が広く愛されています。シンビジュームには大きく分けて、大型種(スタンダード種)と小型種(ミニチュア種)の二つのタイプがありますが、暑さの厳しい地域では、耐暑性があり、比較的高温でも花芽がつく小型種をお勧めします。

光線
 アジアの冷涼で日照に恵まれた地方が原産地ですので、葉焼けしない限りなるべく強光線にあてることが、生育を良くするためのポイントです。
日差しが一番きつい昼下がりに軽い日陰になるようなところに置くか、20%位の遮光をします。高温によって、花芽がつかなくなることもありますので、暑い時は葉水をしたり、遮光を強めたり(50%位まで)、通風を良くしたりして、なるべく涼しくしてやりましょう。カリフォルニア沿岸地方などの冷涼な地域では、直射日光で育てます。
 種類にもよりますが、一般に葉は黄緑色か明るい緑色をしているのが良く、濃緑色のものは光線不足と言えます。冬つぼみがついている時は、もう少し遮光するようにしましょう。

温度
 シンビジュームの開花は温度によって左右され、大型種の生長適温は75〜85F(24〜30℃)位ですが、夏の終わりから秋にかけて(8〜10月)夜間の温度が50〜60F(10〜15℃)に下がらないと、花芽がつきません。冬期の適温は、日中65〜75F(18〜24℃)、夜間45〜55F(7〜13℃)で、つぼみがついている間は、なるべく気温の変化を避け、55〜75F(13〜24℃)を保ちます。小型種は大型種よりも気温が5〜10F(3〜5℃)高くても、よく咲きます。
 シンビジュームのほとんどは軽い霜にあたっても枯れませんが、気温が40F(5℃)以下の時は、できるだけ屋内に取り込み、日当たりがよく、温度があまり高くならない場所に置きます。温暖地では、一年中屋外で栽培できます。

水やり
 半地生性のランですから、乾くのを嫌います。水分を多く必要とする春から夏の生長期には、乾かないように頻繁に水をやり、バルブが完成する夏の終わり頃からは減らします。冬の間は、少し湿っている程度に保ちましょう。花は、濡らさないようにします。

湿度
 夏の間はほとんどのところで、屋外の湿度で十分ですので、問題ありません。極度に乾燥する地域の場合、温室では床面に散水するか、気化冷却装置(パッド・アンド・ファン方式等)を使って加湿し、屋外では葉水をやります(霧吹き)。冬の間(とくに、つぼみがついている時)は、40〜60%の湿度を保ちますが、低温期にはボトリチス病(花に汚い斑点が出る)などが発生しやすくなりますので、通風にも気を配りましょう。

肥料
 シンビジュームをよく咲かせるためには、適切な種類の肥料を適切な時期に与えることが大切です。バーク植えの場合、生長期(春から晩夏)には高窒素肥料(30-10-10等)を与えます。バルブが完成する晩夏からは、施肥を中止するか、花つきを良くするために花芽が出るまで、高リン酸肥料(10-30-20等,bloombooster)に替えます。
 春から秋にかけての生長期には1〜2週間おき、冬の間はバランスの良い肥料を一か月おきくらいに与えるのが適当です。

植え替え
 シンビジュームの植え替え適期は、花が終わった直後(たいていは春)で、普通2年おきくらいに行うのが適当です。株分けする場合は、葉のついたバルブ3〜4本以上が開花サイズで、葉の落ちたバルブ(バックバルブ)はつけたままでも構いませんし、切り取ってふやすこともできます。コンポストは、保水性の高いもの(中粒のバークにピートモスやパーライトを混ぜたものなど)を選び、バルブと根の境めが、コンポストに1.5〜2.5cm埋まるくらいの深さに植えます。複茎種のランですから、新芽が伸びてくる方向を広くあけて、一番古いバルブを鉢の縁につけるように植えましょう。
 コンポストが傷んできた時は、根腐れをおこしますので、なるべく早く植え替えることが大切です。

バックバルブのふやし方
 一本ずつに分けたバックバルブを、ピートモス(または小粒のバークに砂を混ぜたもの)に半分くらい埋まるように並べ、暖かい日陰に置きます。出た芽が少し大きくなって発根したら普通に植えますが、3年くらいで開花サイズになります。


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デンドロビューム/Dendrobium(Den.)

 デンドロビュームには千数百種の原種があり、これらはアジアからオーストラリアにかけての蒸し暑いジャングルから冷涼な高山地帯までの、さまざまな環境にみられます。このためデンドロビュームは系統(タイプ)別に分けられ、それぞれ異なった栽培法が必要です。花もたった一日でしおれてしまうものから、数週間ももつものまでさまざまですし、はっきり分かれた生長期と休眠期を持つタイプも多く、この場合は水やりや温度を時期に合わせて変えてやります。
 ここでは、まず一般的なデンドロビュームの栽培を述べ、後でタイプ別の栽培も紹介しますので、参考にして下さい。

光線
 デンドロビュームは、光線を好むランです。家庭ではレースのカーテン越しの南か西向き、または直射の東向きの窓辺に置きます。温室では50〜75%の遮光をして、明るい光線にあてましょう。とくにバルブが完成して太ってくる時期(完熟期)には、なるべく強光線にあててがっちりと育てます。休眠期には、やや弱めの光線でも構いません。

温度
 デンドロビュームの適温はタイプによって大きく異なりますので、なるべく原産地の温度に合わせます。ほとんどのものは中温(日中65〜95F、夜間45〜60F)で育ちますが、例外は下に紹介します。休眠期に低めの夜温を必要とするタイプも多くあります。

水やり
 生長期はコンポストが乾き始めたころが水やりの適期ですが、タイプによっては休眠期に乾燥させる必要があります。湿度は40〜60%が最適で、低い時は朝に霧ふきをして、補ってやりましょう。

肥料
 バークはほとんど肥料分を含んでいませんので、定期的な施肥が望まれます。生長期の株には高窒素肥料(30-10-10等)を与え、休眠期に入ったら減らします。花芽ができる頃は、花つきをよくするために高リン酸肥料(10-30-20等)に替えてもいいでしょう。高温、強光線下で生長している株には、施肥の回数を多めにします。

植え替え
 デンドロビュームは、小さめの鉢に植えることがポイントです。大きすぎる鉢に植えるとコンポストが乾きにくくなって早く傷み、株の生育も悪くなります。デンドロビュームは頻繁な植え替えを嫌いますし、つまってバルブを出すのですぐ鉢からあふれませんから、コンポストが傷んでいなければ3年おきくらいに植え替える程度にします。植え替えの適期は新芽から発根するころで普通は春にあたります。ただし、この時気温が55F(13℃)以下であれば、暖かくなるまで待ちます。休眠期などに植え替えてしまうと、数カ月も根が出ませんので、株を枯らしてしまうこともあります。
 コンポストはバーク+軽石、ヘゴ、水ゴケなど、保水性が高く、しかも水はけが良いものを選びます。鉢から抜いた株は古いコンポストや腐った根をていねいに取り除いて、白い健康な根だけを残します。この残した根の大きさに合わせて鉢を選びますので、もとの鉢より小さいものに植えることもあります。
 株分けする時は、バルブ3〜4本に新芽がついているくらいの大きさが適当です。複茎種のランですから、新芽が伸びてくる方向をなるべく広くあけて植えつけましょう。小型種はヘゴやコルク板につけることもできますし、下垂するものや背が高くなって倒れやすいものは、鉢のまま吊してやるといいでしょう。

タイプ別栽培

callista系 (カリスタ系)
 肥大したバルブを持つものが多く、下垂する花茎をつけます。

  1. 原種:aggregatum, chrysotoxum, densiflorum, farmeri, thyrsiflorumなど
     夏期は中〜高温(60〜90F)、中光線(カトレア程度)で育て、水やり施肥とも、普通にします。冬期は低めの温度(夜間50F/10℃位)、中光線で育て、水やりはバルブがシワだらけにならない位まで控え、肥料もやりません。

spatulata系 (スパチュラタ系)
 大型のものが多く、バルブは数年間常緑で、花もちの良い花を夏または年数回つけます。アンテロープ・タイプとも呼ばれます。

  1. 原種:antennatum, canaliculatum, discolor, gouldii, johannis, lineale(veratrifolium), stratiotes, strebloceras, taurinum
     一年中、中〜強光線、中高温(夜間55〜60F/13〜15℃、日中65〜90F/18〜33℃)で育てます。休眠期はありませんが、冬の間乾かしぎみにすると比較的低温にも耐えます。

dendrobium系 (デンドロビューム系)
 下垂する棒状のバルブ(ケーン)全体に葉のつくものが多く、2〜5輪の花をつける花茎が、落葉したケーンの上部の節から出ます。この系統は、栽培方法の異なる二つのグループにわかれています。

  1. 原種:chrysanthum, friedricksianum, nobile, wardianum
     生長期は夏で、新芽が発根してからケーンの頂上の葉(とめ葉)が出るまで中〜高温で育て、水やり施肥ともたっぷりとします。天葉が出てからは、強光線にあて、夜温を下げ(40〜50F/5〜10℃)、水やりは絶つか少しだけにして、施肥もやめます(放置すれば良いわけです)。
  2. 原種:anosmum, crassinode, falconeri, fimbriatum, findlayanum, heterocarpum (aureum), loddigesii, moniliforme, parishii, primulinum, transparens
     グループ1と同様に栽培しますが、冬期の夜温は55F(13℃)位にします。落葉性のものは、冬期の水やりはいりません。

latouria系 (ラトウリア系)
 バルブの上部に大きな肉厚の葉を持ち、多くが直立する花茎に黄緑色の花をつ けます。

  1. 原種:atroviolaceum, macrophyllum, spectabileなど
     アンテロープ・タイプ(spatulata系)に準じますが、冬の休眠期にはアンテロープ・タイプよりも低温で、乾かしぎみにします。

formosae(nigrohirsutae)系 (フォーモサム、ニグロヒルスタ系)
 バルブは棒状(ケーン)で、葉鞘から黒い毛を生じます。バルブの肥大が目立つものも多いようです。花は白色のものが多く、花径10cmに達するものもあり、一花茎2〜3輪が、ケーン上部の節から出ます。

  1. 原種:bellatulum, dearii, draconis, formosum, infundibulum, lowii, lyonii, margaritaceum, sanderae, schuetzii
     一年中、中〜低温(夜間50〜60F/10〜15℃、日中85F/30℃以下)で育て、生長期の水やり、施肥は普通にします。バルブが完成したら短期間水やりを控えて休眠させ、次の新芽が伸び始めるまで、少し湿っている程度に保ちます。

phalaenanthe系 (ファレナンセ系)
 デンファレ・タイプです。バルブは数年間常緑で細長く伸び、花茎はバルブの頂部から出ます。花期は普通秋ですが、年2回咲くこともあります(栽培参照)。

  1. 原種:affine, bigibbum (phlaenopsis), dicuphum, williamsianum
     一年中、中〜高温(夜間60F/15℃)、中〜低光線で育て、新芽から発根したら水やり、施肥ともたっぷりとしますが、バルブが完成したら減らします。バルブ完成後、低温で乾かしぎみにして3〜4週間ほど休眠させ、再び春〜夏の生長期と同じ様に育てると、またバルブが完成して、春に咲くことがあります。このタイプのデンドロビュームは、休眠させる時以外はファレノプシスと同じ環境で良く育ちます。冬の間低温環境に置きたい時は、春になって新芽が出るまで水を絶ちますが、株はこの場合落葉性になります。

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リカステ/Lycaste(Lyc.)

 リカステ属は、大きな美しい三角形の花をつけることで知られ、花はロウ質で長く持ちます。株も特徴のある形をしていて、卵型のバルブの上に、幅広でひだのある葉がついています。リカステは、栽培方法が異なる二つのタイプに分けられ、ひとつは葉のついたバルブから咲く常緑性のスキンネリ(skinneri)タイプで、もうひとつは葉の落ちたバルブから咲く落葉性のアロマチカ(aromatica)タイプです。人工交配属のアングロカステ(Angulocaste=Lycaste×Anguloa)の栽培は、その品種の交配に使われた、リカステ側の親に準じます。

光線
 適当な光線量はタイプによって異なり、落葉種はカトレアと同じ位の光量を好みますが(遮光50〜70%位/光量2000〜4000foot-candles)、バルブが太ってくる完熟期には、強めの光線にあててがっちりと育てます。常緑種は、これより弱めの光線を好み、遮光60〜80%が適当です(1500〜2000foot-candles)。

温度
 常緑種は安定した温度を好み、高温を嫌いますので、夜間52〜58F(11〜15℃)、日中65〜78F(20〜26℃)が最適です。落葉種は夏期は95F(35℃)、冬の休眠期には夜温50F(10℃)くらいまでの広範囲の温度に耐えます。

水やり
 葉やバルブが育つ生長期(普通夏)には多くの水やりが必要で、コンポストが乾き始めたころに、たっぷり与えます。落葉種は葉が落ちている時期、乾かしたままにしますが、常緑種はバルブ完成後、生長期よりも多少乾かしぎみくらいに水を与えます。水はなるべく朝に与え、病気を予防するために早く乾くようにしますが、新芽や葉は腐りやすいので、水をかけない様にしましょう。

湿度
 リカステは40〜70%の湿度を好みますが、落葉種は休眠期間中、これより湿度が低めでも差し支えありません。病気を予防するために、通風にも気をつけましょう。

肥料
 生長期には、十分な施肥が望まれます。バーク植えの場合、生長期には高窒素肥料(30-10-10等)を二週間おきに与えますが、新しいバルブが育つ時期(普通夏)には、窒素分の多い置き肥を併用するのもいいでしょう。秋になってバルブが完成し太ってくると、施肥を減らすか、または花つきをよくするための高リン酸肥料(10-30-20等=bloombooster)に替えましょう。

植え替え
 植え替えの適期は新芽の出るころで、たいていは春にあたります。コンポストは小粒サイズがよく用いられ、バークとパーライトを3:1の割合で混ぜたものは、水はけもよく最適です。株分けする時は、バルブを最低2本つけるようにしましょう。リカステは複茎種のランですから、新芽が伸びてくる方向をなるべく広くあけて植えつけましょう。植え替えは、2年おきくらいにするのがいいでしょう。


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マスデバリア・ドラクラ/
Masdevallia (Masd.)・Dracula (Drac.)

 マスデバリア属には約350の原種が含まれ、そのほとんどが中南米山岳地帯の雲霧林に自生しています。雲霧林は名前の通り、始終雲や霧に覆われていて、熱帯地方でも標高が高いために、冷涼なところです。湿度が高いために、いたるところがコケに覆われていて、多くのマスデバリアは樹木や岩などについたコケに根を下ろしています。特異な色、形、サイズのセパル(蕚片)を持つマスデバリアの花は、人をひきつける魅力を持っています。高湿度と冷涼な気候を好むため、涼しい沿岸地方(アメリカ北西部沿岸地方=Pacific Northwestなど)が栽培 に最適です。近縁種のドラクラの栽培も、マスデバリアに準じます。

光線
 マスデバリアは弱光線を好むといわれますが、強めの光線にあてたほうが良い花が咲くようです。シダ類が好むような低光線(400〜1000foot-candles )でも生育しますが、開花させるにはパフィオペディルムやファレノプシスと同じ位の光量(1000〜1500foot-candles)が適当で、環境を涼しく保つことができれば、さらに強い光線(2500foot-candles位まで)にも耐えます(温室では、70〜85% の遮光をします) 。家庭では、東向き、またはカーテン越しの南向きの窓辺に置きますが、人工光線(蛍光灯40w4本)でもよく育ちます。冷涼地なら、夏期屋外の日陰で栽培することもできます。

温度
 マスデバリアは低中温を好み、長時間高温が続くと生育が鈍り、しまいには枯れてしまいます。夜間50F〜55F(10〜13℃)、日中60〜75F(15〜24℃) が最適ですので、気化冷却装置(パッド・アンド・ファン方式など)や加湿器を使って、できるだけこの環境に近づけるようにします。80F(27℃)以上の高温はなるべく避け、暑い時は湿度を高めたり通風を良くして、少しでも株を冷やしてやりましょう。高温時には、夜間涼しくすることで、日中のストレスをある程度やわらげることができます。
 最近では、低地産中高温種と高地産低温種のマスデバリアをかけ合わせた交配種が、たくさん作られています。これらの多くは中温にも耐えますので、普通の低温種マスデバリアには暖かすぎるところでも、栽培が可能です。ただし、あまりにも暑すぎるところには向いていません。

水やり
 貯水器官を持たないマスデバリアにとって、水やりは非常に大切で、コンポストがカラカラに乾くのは良くありません。根が乾いた直後が水やりの適期ですが、水はけさえよければ、常時湿っていても差し支えありません。

湿度
 雲霧林が自生地ですから、高い湿度を好みます。60〜80%なら最適ですが、家庭で湿度不足の時は霧吹きをしたり(朝のみ)、砂利を敷いたトレーに鉢が浸からない程度の水を張り、その上に鉢を並べるなどの工夫をして、湿度を上げてやりましょう。温室では床面に散水して湿度を上げたり、気化装置を使って加湿冷却してやりましょう。夏期、屋外で栽培する場合は、ベンチの下にミスト装置を取りつけて、湿度不足を防ぐ方がいいでしょう。

肥料
 生長期には定期的な施肥が望まれますが、マスデバリアは濃い肥料を嫌いますので、規定の半分以下の濃度に薄めて使いましょう。バーク植えの場合は高窒素肥料(30-10-10等)を月二度ほど与えますが、他のコンポストの場合はバランスの良い20-20-20配合等を使いましょう。天候が悪く、曇った日が続くような時は、月一回で十分です。開花期が近付いたら花つきを良くするために、高リン酸肥料(10-30-20=bloombooster)に替えるのもよいでしょう。最低一か月に一度は、鉢内をすすぐようにたっぷりと水やりをして、余分な肥料分がコンポストにたまるのを防いでやりましょう。

植え替え
 植え替えの適期は、冬、早春、夏暑くなる前、新しい根が出る時などですが、暑い時に根を傷めると暑さ負けして枯れることもありますから、暑くなる前に根が回復しているように、早めにしましょう。マスデバリアの根はあまり丈夫ではありませんので、できれば毎年、または二年おきで、コンポストが傷む前に必ず植え替えるようにしましょう。
 コンポストは、保水性が高く粒の細かいものが適当で、プラスチック鉢には小粒のバークやヘゴ(粉砕したもの)がよく用いられます。水ゴケもよく用いられる植え込み材料のひとつで、株の回復を図る時や子苗には最適とされています。マスデバリアは複茎種のランですから、普通新芽側を広くあけて植えつけますが、株の周囲からたくさん新芽が出ているものは、鉢の中央に植えましょう。


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オドントグロッサム/Odontoglossum(Odm.)

 中南米の高地原産のオドントグロッサム類は冷涼地でよく育ち、コロンビア原産のミルトニア(Miltonia;正確には、Miltoniopsis)やオドントグロッサムの美しい花は、広く愛されています。近縁のオドントニア(Odontonia)、オドンチアダ(Odontioda)、ブィルステケアラ(Vuylstekeara)などの人工交配属の栽培も、オドントグロッサムに準じます。

光線
 明るい光線を好みますので、家庭では直射の東向き、またはカーテン越しの南向きの窓辺が最適ですが、西日はほとんどの地域で暑過ぎるので避けます。温室では、50〜80%の遮光をします(光量2000〜5000foot-candles)。ミルトニア栽培家の中には、葉がピンクを帯びるほどの強い光線が良いとする方もいます。夏の高温時は、涼しくしてやるために、強めに遮光します。

温度
 とても暑がりますので、年間を通じて、日中は75〜80F(24〜27℃)以下、夜間は55〜58F(13〜15℃)が適温です。湿度、通風が適当で、夜間涼しく保つことが出来れば、これ以上でも短期間は耐えます。一般にミルトニアは温かめの夜温を(55〜60F/13〜15℃)、オドントグロッサムは低めの夜温を(50〜55F/10〜13℃)好むようです。小苗は、夜間暖かめにしてやりましょう。

水やり
 水はたっぷり与えますが、水はけが非常に大切です。コンポストが乾き始めたころが水やりの適期で、生長期はいつもほどよく湿っているように、休眠期は花茎をつけていない限り、多少乾かしぎみにします。ミルトニアの葉に蛇腹のようなシワが寄るのは、水不足や湿度不足が原因ですが、ひどい時には他種にもこの症状が出ます(根腐れの時も同じ症状が出ますので気をつけて下さい)。水やりの頻度はだいたい2日から7日に一度で、天候、鉢のタイプやサイズ、コンポストの種類などによって、加減しましょう。

湿度
 適度の湿度(40〜80%)と通風は重要です。家庭では、砂利を敷いたトレーに鉢が浸からないほどの水を張り、その上に並べて湿度を補ってやりましょう。霧吹きも良いのですが、長時間濡れたままにすると病気にかかりやすくなりますので、朝だけにしましょう。温室では、冷却以外に加湿効果もある、気化冷却方法(パッド・アンド・ファン方式など)は最適で、暖地での栽培には特にお勧めします。床面への散水やミスト噴霧装置も、同様の効果があります。

肥料
 生長期には、定期的な施肥が望まれます。バーク植えのものは高窒素肥料(30-10-10等)を月二度与えますが、ヘゴ、コルク板付けの株や、他のコンポストに植えた株には、バランスの良い同配合肥料(20-20-20等)を使いましょう。天候が悪く、曇り空が続く時などは、月一回の施肥で十分です。花茎が出るころから、花付きを良くするために、高リン酸肥料(10-30-20等=bloombooster )に替える栽培家もいます。一か月に一度は、鉢内をすすぐようにたっぷり水やりして、余分な肥料分がコンポストにたまるのを防いでやりましょう。

植え替え
 新芽がバルブの根元から出る時期が植え替えの適期で、たいてい春か秋にあたります。鉢一杯にしっかりと根が廻っている方が生育が良いので、余り大きな鉢に植え替えるのを避け、株が1〜2年間成長できる程度の大きさのものを使いましょう。コンポストは小粒で、とくに水はけの良いものを選びます。
いつも湿った状態にあるオドントグロッサムのコンポストは早く傷みますので、毎年、または2年おきに植え替えてやりましょう。


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オンシジュームと中高温性近縁種/
Oncidium(Onc.) etc.

 オンシジュームには、薄葉種(thin-leaved oncidium)、厚葉種(mule-ear oncidium)、剣葉種(equitant oncidium)などの、いろいろなタイプがあり、自生地も、厳しい高温乾燥地から温暖地までと、変化に富んでいます。
 オンシジューム類は、低温を好むオドントグロッサムの近縁にあたり、両者をかけ合わせた交配種も多く作られています。これらの交配種やオンシジューム近縁種は、栽培適温によって低温種と中高温種に分けられていますが、栽培もこれに従って変える必要がありますので、どのような環境を好むのか、お尋ねになってからお求めになることをお勧めします。ここでは、中高温性オンシジューム(warm-growing oncidium)、アスパシア(Aspasia)、ブラシア(Brassia)、ブラジル産ミルトニア(Brazilian Miltonia)や、これらの交配種が含まれる、中高温種の栽培を紹介します(低温種の方はオドントグロッサム類を参照してください)。

光線
 種類によって、明るい光線を好むものから、ほぼ直射日光を好むものまで、さまざまです。多くは数時間の日光が当たるところで生育しますが、肉厚の葉を持つ厚葉種や剣葉種などは、強めの光線を好みます。家庭では、東、南、または西向きの窓辺に置くとよいでしょう。温室では、種類によって20%〜60%の遮光をします(光量2000〜6000foot-candles)。ほとんどのものは人工光線でも栽培が可能で、蛍光灯(40W4本)を葉の15〜25cmほど上に取りつけます。ナトリウム灯(high-pressure sodium-vapor lamp)やハロゲン灯(metal-halide lamp)は、非常に明るいので、近付けて栽培する必要はありません。

温度
 ほとんどが中高温性で、夜間55〜60F(13〜15℃)、日中80〜85F(27〜30F)が適温です。通風を良くして湿度を高めてやると、95〜100F(35〜37℃)の高温にも耐えます。

水やり
 水やりの頻度は種類によって異なり、肉厚の葉や太い根を持つものは、薄い葉や細い根を持つものよりも、乾かして育てます。水やりは鉢底から流れ出るようにたっぷりと与え、コンポストが最低半分乾くまで、次の水やりを控えます。天候、鉢のタイプやサイズ、コンポストの種類、品種などによって加減しますが、だいたい2日から10日に一度くらいで、葉や花茎を伸ばしていないものは、水やりを少なめにします。休眠期があるものも多く、休眠中は乾かしぎみにします。

湿度
 30%〜60%の湿度が最適で、他のランほど湿度を必要としないものが多いようです。家庭では砂利を敷いたトレーに鉢が浸からない程の水を張り、その上に並べて湿度を補いましょう。霧吹きも良いのですが、朝だけにして、厚葉種は避けましょう。温室では、湿度不足になることはほとんどありません。

肥料
 生長中の株には、定期的な施肥が望まれます。バーク植えのものには高窒素肥料(30-10-10等)を二週間おきに与えますが、ヘゴ、コルク板付けや他のコンポストに植えた株には、同配合肥料(20-20-20等)を使います。天候が悪く、曇り空が続くような時は、月一回で十分です。開花期が近付くころは、花つきを良くするために、高リン酸肥料(10-30-20等)に替えるのもいいでしょう。

植え替え
 新芽が根元から出るころが植え替えの適期で、たいていは春にあたります。ほとんどの場合、細い根をもつ品種には小粒、太い根のものには中〜大粒のコンポストを使います。剣葉種や厚葉種などの、肉厚の葉や太い根をもつ種類は、ヘゴやコルク板に付けても、大粒のコンポストで鉢植えにしても、どちらも良く育ちます。


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パフィオペディルム/Paphiopedilum(Paph.)

 パフィオペディルムは、花の形からslipper orchids(スリッパーオーキッド)とも呼ばれ、極東やインドネシアが原産地です。ほとんどが半地生種で、ジャングルの地表や岩の割れめに積もった落ち葉などに生えていますが、数種は着生種で、木の幹や枝に貼りついて生育しています。栽培容易なランで、温室や窓辺だけでなく、人工光線でも良く育ちます。

光線
 パフィオペディルムは、他のランほど光線を必要としません。日陰を好みますので、家庭では、薄いカーテンのかかった南向き窓の近く、または東か西向きの窓辺に置くと良いでしょう。温室では、70〜85%の強い遮光が必要です(光量1000〜1500foot-candles)。比較的暗いところでも生育するので、ベンチの下にも置かれますが、水がかかりやすく、また通風も余り良くありませんので、軟腐病などに注意が必要です。人工光線でも良く育ち、40Wの蛍光灯2本または4本下に、近付けて置きます。

温度
 適温は、種類によって異なります。パフィオペディルムは、二つのグループに分けられることが多く、ひとつは中高温性の斑入り葉種で、もうひとつは低温性の緑葉種です。斑入り葉種は夜間60〜65F(15〜18℃)、日中75〜85F(24〜30℃)以上、緑葉種は夜間50〜60F(10〜15℃)、日中70〜80F(21〜27℃)が適温ですが、どちらも同じ環境で育てて良く咲かせている方も多い様です。時には、40F(5℃)の低温や95F(35℃)の高温にも耐えます。低温の時は、軟腐病などの病気が出やすくなるので、湿度を低めに保ち、長時間葉を濡れたままにしない様にします。高温の時は、葉焼けしないように遮光を強め、湿度を上げて通風を良くします。

水やり
 バルブがありませんので、葉が貯水器官になっていますが、乾くのは好みません。コンポストはいつも適度に湿っているのが良く、びしょびしょやカラカラは良くありません。コンポストの表面が乾いたころが水やりの適期で、だいたい週に1〜2回程度です。

湿度
 40〜50%の湿度が最適です。家庭では、砂利を敷いたトレーに鉢が浸からない程の水を張り、その上に並べて湿度を補いましょう。乾燥地では霧吹きも良いのですが、濡れたままでは病気が出やすくなるので、朝だけにします。温室で湿度不足になることは、まずありませんが、暑い地方では床面に散水したり気化冷却装置を使って、湿度を補います。湿度が高い時は、病気が出やすいので、特に通風を良くしてやりましょう。

肥料
 定期的な施肥が望ましいのですが、デリケートな根を肥料焼けさせないように、やり過ぎに気をつけます。バーク植えのものには、高窒素肥料(30-10-10等)を与えます。暖かい生長期には、規定の半分の濃度に薄めたものを2週間毎に与えるか、4分の1に薄めたものを水やりの都度与えますが、低温期には生長が鈍りますので、月1回の施肥で十分です。吸収されずに余った肥料はコンポストにたまり、そのままにしておくと根を傷めます。最低でも1か月に1度は、肥料を含まない水を鉢内をすすぐようにたっぷりと与え、たまった肥料分などを洗い流してやりましょう。

植え替え
 植え替えは2年おき、またはコンポストが傷んできた時にします。小苗は、毎年植え替えた方がいいでしょう。コンポストは色々なものが使われますが、保水性が高く、しかも水はけがよいことが条件です。一般には小粒や中粒のバークにパーライト、荒砂、水ゴケ等を混ぜたものがよく用いられます。鉢は小さめのもの(普通の大きさの株なら直径10〜15cm)を選び、株の周囲からつぎつぎと新芽が出るので、鉢の中央に植えつけましょう。株分けする時は、芽数が3〜5本になるように丁寧に引き離すか、ナイフで切ります。もっと細かく分けても育ちますが、花付きが悪くなることがあります。

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ファレノプシス/Phalaenopsis(Phal.)

 ファレノプシス(胡蝶蘭)は、家庭で栽培するのにもっとも適したランで、温室栽培家にも好まれているランです。近縁属のドリティス(Doritis)や、これらの属間交雑であるドリテノプシス(Doritaenopsis)の栽培もファレノプシスと同様に行います。

光線
 ファレノプシスの採光は容易です。日光が少なくあるいはまったく当たらない明るい窓辺(明るい日陰)で容易に生育します。家庭では東向きの窓辺が理想的ですが、直射日光が当たらない南向きや西向きの窓辺でも生育可能です。高緯度地方で、冬、どんよりと曇っているような時期には、南面の直射日光が必要な場合もあります。人工光線があれば理想的です。通常は4本の40W蛍光管を使う蛍光灯を、葉面より20〜30cm上で、自然の日照時間に合わせて12ないし16時間点灯させます。温室では強い遮光が必要で、75%ないし85%が最適です。葉面の約30cm上に手をもってきて、葉面に陰が見えない程度です。

温度
 通常は夜間温度が60F(16℃)以上で、日中の温度範囲が75-85F(24〜30℃)あるいはそれ以上の温度で栽培します。高温で栽培しますと生育が速くなりますが、同時に高い湿度と風通しがよくないといけません。最高温は90-95F(33〜35℃)です。花茎を出させるには、秋に数週間、夜間温度が55F(13℃)まで下がることが望ましいです。つぼみが開きかける時に温度が急に変わりますとつぼみが落ちてしまうこともあります。

水やり
 ファレノプシスには水やりは特に大切です。葉以外に貯水器官を持っていませんので、完全に乾かしてはいけません。たっぷりと水をやって、鉢がほとんど乾ききるまで次の水やりは控えます。乾燥した気候の夏の暑い時期であれば、1日おき、冷涼な地方の冬であれば10日ごとに相当します。水やりは午前中に行い、日暮れまでには葉が乾いているようにして、葉が腐敗するのを防ぎます。

湿度
 湿度の管理はファレノプシスには大切で、50%ないし80%の範囲にあることが望ましいのです。家庭(屋内)では小石(砂利)を敷いたトレイに鉢が浸からないように水を張りその上に鉢を乗せます。乾燥気候のところや、乾燥した日が続いたら午前中だけに霧吹きを行います。株を一ヶ所に集めると植物が蒸散する水分を保つことにより湿度が高められます。温室のような湿度の高い環境では、細菌やカビによる病気を予防するために、湿度の高い空気がつねに動いているようにしなければなりません。繰り返しますが、葉にかかった水はできるだけ速く乾くようにしないといけません。夕方までには必ず乾いていることが大切です。

肥料
 肥料は定期的に与えます。特に暖かい気候で、植物が成長しているときにはそうします。暖かくて湿度が十分にある条件では高窒素肥料(30-10-10等)を月に2回与えるのが適当です。花をつけるには高リン酸肥料(10-30-20等)を与えると開花が促進されます。栽培家によっては水やりごとに4倍に希釈した肥料を与える人もいますが、これは暖かくて湿度が十分にある気候ではもっとも望ましいやり方です。冷涼で曇りがちの気候では肥料は月に一回にします。

植え替え
 植え替えの適期は春に花が終わった後で、鉢の中央に植えます。ファレノプシスは、バーク、ヘゴ、各種の軽石、水苔の単用あるいはこれらを混ぜた植え込み材料のような、水はけのよいものに植えないといけません。植え替えは普通1年ないし2年おきに行います。成株は中粒サイズのコンポストを用います。成株になると、同じ大きさの鉢で何年も作れますが、コンポストは傷みますので通例では2年ごとに新しくする必要があります。べとっとしたコンポストになりますと根が腐敗します。小苗は成長が速いので毎年植え替えが必要で、小粒サイズのコンポストを用います。

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スタンホーペア/Stanhopea(Stan.)

 スタンホーペアは複雑で入り組んだ奇花をつけ、花に集まってくる昆虫のための“通路”を持っているものから、特殊な液体をためたバケツ状の容器を持つものまでいろいろな受粉のしくみを持っています。ほとんどのものがバスケットの底から花芽をつきだし、垂れ下がって花をつけますので、株は吊りバスケットやそれに類したものに植え付けなければなりません。花には強い香りがあり、短命ですが、年間を通して何回も花をつけることもあります。
 近縁のパフィニア属(Paphinia)とペリステリア属(Peristeria)は、それぞれ他の近縁のものよりも低温と高温の環境で育ちます。これらは上向きに花をつけます。

光線
 明るくなければなりませんが、葉焼けしないように、直射日光を遮光します。室内の西や南からの日光には少し遮光をして、東の日光なら遮光しません。温室では25%ないし50%の遮光をします。垂れ下がって花をつけますので、たいていの場合は吊り下げて栽培します。このことによって、よりいっそう光源に近いものになります。光量は、ほぼカトレヤ類に準じまして、3,000フートキャンドル(約3万ルクス)がベストです。

温度
 これらの種類は中温で栽培します。冬の温度は夜間に52〜60F(11〜16℃)で、日中温度が68〜75F(20〜24℃)になるようにします。高温には短期間なら耐えられますが、その場合、通風を強め、湿度と遮光を増やさなければなりません。夜間に涼しい温度になることが花芽の形成を促進するようです。多くは夏に開花します。夏には屋外におければ理想的です。

水やり
 大きなバルブにし、良い花を咲かせるには水やりを十分にすることが大切です。ほとんどの栽培家は株を通気性のよいコンポストで植え付け、頻繁に水やりします。夏場は2−5日毎、冬場は4−10日毎が目安です。特に高温時の水やりは大切です。根を乾燥させてしまうと、葉先から茶色く枯れてきます。冬場には水やりの回数を減らすことができますが、これらの種類は決して乾かし切ってはいけません。

湿度
 湿度は40%ないし75%を保つようにします。特に高温の場合には湿度を高めに保つ必要があります。湿度が低いと葉ダニなどの害虫がつきやすくなります。頻繁に霧吹きをすることで虫害を避けることができますが、葉が長時間濡れていますと黒点病などの原因ともなります。霧吹きと同時に通風を良くして葉が早く乾くようにしましょう。

肥料
 肥料は定期的に与えます。多くの栽培家は規定の濃度より希釈したものを毎週もしくは隔週に与えています。バークで植え付けている場合は30-10-10の高窒素肥料と20-20-20のバランス肥料を交互に与えます。通常夏の開花期には高リン酸肥料(10-30-20等)を与えます。オスマンダ根に植え付けた株では、肥料をそれほど頻繁に与える必要はありません。

植え替え
 植え替えは夏に開花が終わった直後に行うのがベストです。この種のランは一年中生長しているからです。冬に生長を止める株であれば春に植え替えます。大きな株ほど開花がいいので株わけせず、一回りずつ大きなバスケットに植え替えて徐々に大株に作ります。中粒のバーク(しばしば水苔を混ぜます)か、オスマンダ根のような通気がよくしかも保水性の高い植え込み材料がベストのようです。コンポストがすき間からこぼれてしまわないように、バスケットには株を植え込む前にコケを並べておきます。このことによって下垂性の花茎がバスケットの底から出て来ることができるようになります。植え込み材料はあらかじめ十分に湿らせておいて、植え替え後に根が極度に乾燥してしまわないようにします。生長の盛んな株なら3年毎に植え替えが必要です。

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バンダ類/Vanda(V.) etc.

 バンダ類(アスコセンダ属(Ascocenda)、バンダ属(Vanda)、アスコセントラム属(Ascocentrum)などを含むいろいろな種類のランの一群を総称してこう呼んでいます)は、高温と日光を好むランで非常に多彩な花をつけます。熱帯アジア地方が原産で、暖かい気候では容易に育てることができ、ラスハウス(遮光ネットで覆った生育室)などのような明るい日陰の屋外で栽培します。冬寒い地方では、夏には屋外で、冬には屋内の日光の入る窓辺で生育させます。また、一年中温室で育てる場合もあります。

光線
 バンダ類のランでは日照量が開花に重要なカギとなっています。バンダには3つのタイプがあります。広葉系(ストラップ系/strap-leaf)、半棒状系(セミテリート系/semi-terete)、それに棒状系(テリート/terete系)です。広葉系は広い帯状の葉をもっていますが、棒状系は丸い、鉛筆状の葉をもっています。半棒状系はこれら2つのタイプの交配種で、中間形をしています。棒状系は直射日光が必要で、強光下の環境でもっともよく生育します。温暖で明るい光線の得られる環境では、どのタイプのバンダでも栽培することができます。温暖な時には、戸外で広葉系と半棒状系は(特に夏の正午前後には)少し遮光し、適温より低温になると室内の明るい南向きの窓辺で育てます。どんよりした冬の続く気候では、広葉系(またはアスコセンダ)を栽培してみてください。温室では25%ないし35%の遮光をし、冬の天候がどんよりしている場合は、遮光量を減らします。葉の色はミディアム・グリーンになっているのが適当で、ダーク・グリーンになっていてはいけません。

温度
 ほとんどのバンダ類は暖かい温度環境でなければなりません。冬の夜間最低温度が55F(13℃)以上であるようにしてください。風が強くなければ、短期間寒い状態に耐えることができます。最適温度は夜間に60F(16℃)で、日中の最高温度が95F(35℃)です。温度が高ければそれだけ生育が速いのですが、それにはそれに見あって湿度を高めたり、通気を良くし、水やりと肥料を増やすことが必要です。生育を最良にするには、日中暖かく湿度が高くなければなりません。

水やり
 生育中はバンダ類は水がたくさん必要ですが、すぐにかわくようにしなければなりません。このためと、よく広がる根をもつために、ほとんどの場合は木製のバスケットに植え付けたり、目の荒い植え込み材料で鉢植えします。暖かくて日光の十分にある環境では、毎日水やりすることが必要で、乾燥していたり、暑い気候の時には一日に数回霧吹きなどで葉水を行う必要があります。冬や曇りがちの天候では水やりを控え目にしますが、植物体がしなびてしまわないように気をつけます。

湿度
 80%が理想的です。熱帯ではこれは容易に達成できますが、ほとんどの生育環境では、晴れた日が続く場合には霧吹きで葉水を行う必要があります。温室では床に打ち水をしたり、蒸発熱を奪うタイプのクーラーを使うことで容易に達成できます。室内で生育させる場合は、小石をトレイに敷きつめて、そこに小石が一杯に浸かってしまわない程度に水を注いだ上に置きます。夜までに乾かないようならシリンジしてはいけません。通風は十分になければなりません。

肥料
暖かい時には、バランスのとれた(20-20-20)の肥料を規定の濃度で週一回与えるか、規定の4倍の濃度に薄めたものを水やりがわりに与えます。寒冷もしくは曇りがちの天候の時には、肥料は2週ないし4週間に一度与えます。開花を促進するためには3回に1回の施肥の時に高リン酸肥料(10-30-20等)を用います。園芸用ビタミンB1剤を使用するのもよいでしょう。その場合は月に一度与えます。

植え替え
 植え替えは春に行います。木製バスケットに植え込んだものはそれほど頻繁に植え替える必要はありません。植え込み材料が壊れてしまった場合に植え替えます。古いバスケットのまま、水の中に漬け、気根が緑色になって柔らかくなるようにします。柔らかくなったら、株と古いバスケットのまま、根を古いバスケットに巻きつけ、新しい大きめのバスケットの中に入れます。鉢植えの場合は、今の鉢よりも少しだけ大きい鉢に、鉢の中央に植え付けます。バークや、ヘゴ、木炭等の荒い植え込み材料を使い、根の周りに詰めます。植え替え後は新しい根が出始めるまでは湿度の高い日陰におきますが、根は乾かしぎみにします。深植えしてはいけません。

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ページ作成者よりの謝辞

 AOS栽培テキストの原本の転載を許可して下さったアメリカ蘭協会(AOS)に感謝すると共に、テキストの英訳にあたられたMariko Hayashi Herron様、前田純様、Nifty-ServeのFGARDENの蘭会議室のみなさんに感謝致します。


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