ランは栽培が困難で作りにくいと思われているようですが、 実はさほど難しいわけではなく、栽培の方法が他の植物とは違っているものの、一度コツを飲み込みますと意外と作りやすいものです。ここではアメリカにお住まいの初心者の方々のために洋ラン栽培の基本を紹介しますが、詳しいことは日本語の洋ラン関係の本を参照して下さい。ただし、日本とアメリカでは気候(日照、気温、湿度など)はもちろんのこと、家庭内の環境や栽培方法(植え込み材料、肥料等)がいくぶん違いますので、それを考慮して下さい。このガイドは、アメリカ在住の日本人愛蘭家のためにご用意しましたが、日本にお住まいの皆様にも参考にして頂ければ幸いです。
- 温度、光線、水やり、通風と湿度
- 肥料
- 植え替え、植え替えの具体例、植え替え後の管理
- コンポストの種類
- 鉢について
ランは形状、自生環境、適温、好む日照など、色々な性質によって分けられていますが、次のような分け方があり、どれもが栽培方法に大きくかかわってきます。
ランには普通の植物のように地面に根を下ろしている地生ラン(terrestrial orchid)と、木の枝や幹に根ではりついている着生ラン(epiphytic orchid)とがあります。
カトレア、ファレノプシス、バンダ、デンドロビュームなど、栽培されている洋ランの多くは着生ランです。これらは、樹上で雨に濡れては乾く環境に適応しているため、栽培でも水やりと水やりの合間に根を乾かせて、根にも空気が行きわたるように栽培します。着生ランは、ベラーメン層という、水分をスポンジのように吸収する組織のある太い根や、肥大した偽球茎(pseudobulb=バルブ)などを持っていますので乾燥に強く、水不足よりもむしろ水やりのしすぎに気をつけます。
地生ランには、シンビジュームやパフィオペディルムがあります。これらは地面に生えていますが、土よりも地表にたまった落葉などに生えていることが多いので、根はいつも程よく湿っているのが良く、水はけも大切です。
ランには、一本の茎が新しい葉をつけながら、上へ上へと伸びる単茎種(monopodial orchid)と、葡匐茎(rhizome)から次々と新しいバルブを出しながら横へと伸びる複茎種(sympodial orchid)があります。
バンダ、ファレノプシス、日本産のフウランなどは単茎種のランで、一本の茎が次々と葉を出しながら上へ上へと伸びます。単茎種は普通の株分けはできませんが、ときに子株を出しますので、これを切り取ってふやすことが出来ます。子株はkeiki(キーキ)と呼ばれ、ハワイ語で「赤ちゃん」という意味です。株は子株が出ない限り、横へとは広がりませんので、鉢やバスケットの中央に植えます。
シンビジューム、カトレア、デンドロビューム、オンシジュームなどは複茎種のランで、葡複茎(ほふくけい)と呼ばれる表面を這う茎から、葉(バルブ)を出しながら横に伸びます。複茎種のランを鉢植えにしますと、株はだんだん横へ広がり、いずれ鉢からあふれてはみ出してきます。このため、バルブがすぐに鉢いっぱいにならないように、新しい芽がバルブの根元から出てくる方向をなるべく広くあけ、一番古いバルブを鉢の縁につけるようにして植えつけます。新しく伸びている芽、またはバルブをリードバルブ(lead)、古いバルブをバックバルブ(backbulb)と呼びます。パフィオペディルムは一見単茎種のランのようですが複茎種のランで、パフィオペディルムのバルブは、アメリカではgrowth(グロウス)と呼びます。複茎種のランは葡複茎を切り離すことによって株分けをすることができますが、あまり小さく分けることを避け、切り離す株の一つ一つに新芽(リードバルブ)がついているように分けた方が、失敗が少なくてすみます。
ランは、いつも伸びているのではありません。他の多年生植物のように、新しい芽や葉が出てこれが伸びた後、次の芽が出るまで少し休みます。ラン栽培では、新芽や葉が伸びている間のことを生長期(growth period)、株が休んでいる間のことを休眠期(rest period)といいます。ランによっては、生長期の終わり頃にその年伸びた茎(バルブ)が充実して太ってくる時期があり、これを完熟期、または充実期(maturing period)と呼びます。 休眠期は、長いものも注意しないとわからないほど短いものがあり、ランによっては、休眠期に落葉するものもあります。ランの種類によっては、これらの時期に合わせて水やりや肥料の与え方を変える必要もありますので、くわしくは種類ごとの栽培ガイドを参照して下さい。
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アメリカのランのカタログをみると、ランは好む温度と光線量によって分けられていることが多く、気にいった品種が自分の栽培環境に合うかどうかの目安になります。光線量は強光線、中光線、弱光線に、適温は高温、中温、低温に分けられています。例をあげますと、バンダは強光線高温性、カトレアは中光線中温性のランですが、これらはあくまで理想的な環境を表すもので、ある程度ならこれより劣る環境でも十分育ち、開花します。
普通、最適とされる冬の夜間の最低気温によって高温種、中温種、低温種に分けられています。
たいていのアメリカの家庭では冬期暖房が入りますので、夜間でも60〜70F/15〜21℃の室温があり、ファレノプシスなどの中高温性のランには適当なのですが、中温性のカトレアなどには少し高過ぎるようです。ランは、夜間の気温が日中よりも10〜20F(5〜10℃) 位下がらないと、日中光合成によって作られた糖分が開花のために蓄積されずに代謝で使われてしまうため、花が咲かなくなることもあります。最高最低温度計で測ってみて、栽培したいランにとって高すぎるようなら、夜間に温度が下がるように工夫しましょう。一番簡単なのは、なるべく窓の近くの涼しいところにランを置くことですが、近くに暖房の吹出口があれば閉めましょう(窓ガラスに葉が触れると凍ることもあるので、気をつけましょう)。夜間だけ、サーモスタットのセッティングを下げるのもいいでしょう。夜間だけではなく、光合成が鈍る曇りや雨の日も、蓄わえた糖分を無駄遣いしないように、気温を低めに保ちます。
夏は、暑くなり過ぎないように気をつけます。洋ランは熱帯が自生地のものが多いので、暑いのを好むと思われがちですが、多くは標高の高い山岳地帯に自生していますので、人が快適と思うような気温を好むものが多いのです。暑い時は、ストレスを和らげるために、湿度を高めたり通風をよくしてやりますが、屋外では葉にさっと水をかけて、涼しくしてやります(葉水、またはシリンジと呼びます)。家庭でエアコンが入る時は、空気が乾燥しやすいので、できれば加湿器を使いましょう。
また、季節による温度の変化によって開花が左右されるランもありますので、種類別の栽培方法を参照して、適当な管理をして下さい。
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ランは、光線から生活に必要なエネルギーを得ています。種類によって必要とする光量は異なり、多すぎると葉焼けしますし、不足すると花がつかなくなることもあります。一般にランは好む光線量によって強光線種、中光線種、弱光線種に分けられ、これに従って適当な遮光をします。
遮光方法としては、寒冷紗(Shade Cloth/30%や50%など色々な遮光値のものがあります)、化粧または曇りガラス、レースなどの薄手のカーテンやガーゼ等、屋外では木漏れ日のあたる木陰に置く、などがありますが、家庭では身近にあるものも利用することもできます。例えば、網戸用の網は一枚で約10%の遮光効果があるといわれますし、梱包につかうバブルラップ(クッキーの箱などに入っている、空気の入ったプラスチックシート="プチプチ")は化粧ガラスのように、光線を乱反射させて和らげる効果の他にも、冬期窓ガラスに葉が触れて凍るのを防ぐ効果もあります。春先など、急に日差しが強まって葉焼けしそうな時は、プレゼントのラッピングなどに使う大型のTissue paper(または半紙など)を窓ガラスに貼りつけて、急をしのぐことができます。
ランが咲かなくなる一番の原因は、光線不足だといわれます。植物は、光線を光合成で糖分などのエネルギー物質に変え、そのエネルギーを使って生長開花するのですから、光量が不足すると生育が鈍ります。ランは比較的強い光線を好む植物ですので、弱光線を好むランでも、まったくの日陰においては咲きません。最良の光線は、高温をともわない東からの日光、または適当な遮光をした南からの日光で、葉焼けしないぎりぎりの強光線にあてるのが理想的だといわれます。
適当な光線があたっているかどうかは、ライトメーター(light meter / photometer)を利用して測ることもできます。園芸用のライトメーターはラン園や園芸店で求めます(写真用のものはより正確 ですが、高価です)。ライトメーターで測ると、光量はfoot-candle(フットキャンドル)で表示されます。1foot-candleは、一本のろうそくの光を1フィート(約25cm)離れたところに置いた場合の光量で、11ルクスに相当します。こういった計器で光量を測るのはひとつの目安になりますが、同じ場所でも日光の光量は季節、時間帯、天候などによって絶えず変化していますので、一度だけでなく、たびたび測る必要があります。
ランは受ける光線量に順応しようとして色々な変化を示しますので、適当な光線があたっているかは、ラン自体を観察することによってもわかります。
一般に、健康なランの葉は、芝生色と呼ばれる明るい緑色に見えます。これは、虹と同じ色を含む目に見える光線のうち、緑の光以外をランが吸収して光合成などに使い、使わない緑の光が反射されて、私たちの目に入るからです。
光線不足になると、ランは普通は使わない黄色の光も使うようになり、黄色光も吸収されてしまうために、葉は濃い緑色に見えるようになります。反対に光線過多になりますと、普通は吸収して使う紫外線を、ちょうど人が日焼けするように、色素を作って逃がそうとするために、葉はこの色素のせいで赤味(赤紫)がかって見えます。もっと光線過多になりますと、葉緑素が破壊されるために、葉が黄色くなってきます。また、急激に葉の温度が上りすぎると、葉の組織が破壊されてしまいます(葉焼け)。
ただし、健康な葉の色は種類によって違うこともありますので、これは目安と考えて下さい。例えば、ファレノプシスではもともと赤味がかった葉を持っているものもありますし、ブラジル産ミルトニアでは黄色がかっているのが、コロンビア産ミルトニアでは白っぽい緑色が、健康な葉の色です。このような場合は、もとの色ではなく、色の変化に注意しましょう。
色だけでなく、葉のつやも光線によって変化します。適当な光線があたっているランの葉は適度のつやを持っていますが、光線不足になると、なるべく光線を反射しないように、葉のつやがなくなります。反対に、光線過多の場合は反射を高め、蒸散によって過度の水分が失われるのを抑えるために、葉はロウでも塗ったように、硬くつるつるになります。
光線過多の症状には他に、葉が小さく硬くなる、バンダでは葉が中線からきつく二つに折れる、などがあります。光線不足では、花が咲かない、軟弱になる、バルブや葉が前より小さくなる、バルブが太らない、新芽がまっすぐ上に伸びない、弱い芽がたくさん出る、バンダでは葉と葉の間が間延びする、などがあります。
葉焼けは、葉の温度が上がり過ぎることによって起こる、火傷のようなものです。葉を触れてみて熱くなっているようでしたら、葉焼けを起こす可能性がありますので、遮光を強めたり通風をよくしたり湿度を高めるなどして、防いでやりましょう。葉焼けは夏よりもむしろ春先に起こりやすいもので、冬の間に弱い光線に慣れてしまった葉が、急に強まった日差しにあたった時などに起こります。また、冬に雪が積もった後も光線がきつくなり、葉焼けしやすくなります。葉焼けをしてしまった葉は、焼けた部分が黒く乾いて見苦しくなりますが、植物にとって葉は大切なエネルギー工場ですから、腐って来ない限り、なるべくつけておきましょう。
季節の変わり目には光線のあたる位置や強さも変わりますので、とくに注意して、適当な光線があたるように、置き場所をかえたり遮光を加減してやりましょう。ただし、急激な変化は禁物で、徐々にならすようにしましょう(暖かくなって屋外へ出す時も同じです)。
多くのランは人工光線でも栽培することが可能で、一般に蛍光灯が使われます。20Wのものは光線が弱過ぎますので、40Wの蛍光管4本を点灯した下に、ランを並べます。光線は、蛍光管の端よりも中央の方が、近付けたほうが離して置くよりも強くなりますので、強光線を好むランは蛍光管の中央の下になるべく近付けて置きます。
日長が季節によって変化することで花芽ができるランも多いので、点灯する時間は屋外の日照時間に合わせて変えます。一般に、屋外より2時間ほど長く点灯されることが多いようで、タイマーをセットしておくと、つけ忘れや消し忘れが無いので便利です。肉眼ではわかりにくいのですが、蛍光管は使っているうちにだんだん光線が弱まってきますので、なるべく2年おきくらいに取り替えた方が良いでしょう。
蛍光灯のほかに、ハロゲン灯(metal halide bulb)やナトリウム灯(sodium-vapor bulb)も使われます。これらは非常に明るいので、バンダなどの強光線を必要とするランも栽培可能になりますが、高熱を発しますし、専門家による配線が必要なことも多いので、あまり一般的ではありません。
温室ではあまり問題になりませんが、家庭で栽培する時は、夜間点灯する部屋にランを置くことを避けましょう。ランにも休息が必要ですし、夜遅くまで灯りがついていると、ランは季節を感じることが出来なくなり、咲かなくなってしまうこともあります。
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ランは、種類によって乾燥を好むものや安定した水分を好むものがあり、それぞれの水やりの頻度は異なります。また、季節によって水の与え方を変えなければならないランもあります。ほとんどの着生ランは水やりと水やりの合間に根を適度に乾かせてやりますが、地生ランは安定した水分を好むものが多いので、適度に湿った状態を保ちます。例外もあり、着生ランでも雲霧林と呼ばれる標高が高く、たえず霧や雲で覆われている環境に自生するマスデバリアやオドントグロッサムなどは、比較的安定した水分を必要とします。
慣れるまでは、水やりは案外難しいものです。水やりの頻度はランの種類、季節、天候、湿度、鉢のサイズや種類、コンポストの種類、株の生長速度などによって変わります。水やりの時期が来たかどうかわからない時は、同じコンポストを入れた乾いた鉢と重さを持ち比べてみたり、削りたての鉛筆をコンポストに挿し込み、木の部分の濡れ具合を見たりして測ります。それでも疑問が残る場合は、むしろやらない方が良いともいえます。これは、渇き過ぎのランは水をやることで回復しますが、水やりしすぎて根腐れしたものは新しい根が出るまで回復しないために枯れてしまうこともあるからです。ランは乾燥に強いのですから、かわいがりすぎて水をやり過ぎないように気をつけましょう。
ちゃんと水をやっているのに葉がだんだん薄くなってきたり、バルブや葉がシワだらけになって脱水症状を示してくる時は、水のやりすぎ、または傷んだコンポストが原因で、根腐れしている可能性があります。初心者の多くは、この症状を水不足だと思って、水やりをふやしてしまうので、余計に悪くなることが多いようです。このような時は、株を鉢から抜いて、根を調べましょう。健康な根は白く堅いのですが、腐った根は黒くなり、ふやけて柔らかくなっています。根腐れしているようなら、古いコンポストや腐った根を取り除いて、植え替えます(植え替えの項を参照して下さい)。
それぞれのランが好む水やりの頻度は違いますが、水の与え方はどのランにも共通しています。ポイントは、鉢底から勢いよく流れ出るほどたっぷりやることと、水はけを良くすることです。水やりには、水分を補う効果のほかに、鉢内に新鮮な空気をとり込む効果や、鉢内にたまった老廃物、余分な肥料、水分に含まれている鉱物などを洗い流す効果があります。少し湿るくらいに水を与えたのでは、これらの効果は満足に得られませんので、あふれるほどたっぷりの水を与えた後、よく水を切るようにしましょう。家庭では、受け皿の上で、あふれないようにこわごわ水やりをするよりも、面倒でもキッチンのシンクや風呂場などに運んで、たっぷり水をやりましょう。
ランの根は空気を好みますので、いつもびしょびしょに濡れていては、根腐れを起こします。しっとりと湿っていて、空気が通ることが大切です。ランは空気をよく通す植え込み材料(コンポスト)に植えますから、水を良くきるようにすれば、水やりをしすぎたり、古くなって傷んだコンポストに入れたままにしない限り、根を健康に保つことが出来ます。水はけを良くするためには、けっして他の植物のように、水のたまる受け皿に置いてはいけません。
家具などが濡れて傷む場合は、砂利などを敷いたトレーや受け皿に置き、鉢が水につからないように気をつけます。また、同サイズの鉢を受け皿に逆さまに置き、その上にランをのせてもいいでしょう。増えすぎた受け皿の水は、たいていのスーパーマーケットにある料理用の大型のスポイト(turkey baster)で随時吸い取ると便利です。
株が長時間濡れたままになっていますと、病気が出る可能性が高くなります(病気を引き起こすカビの胞子は、濡れてから約4時間で菌糸を伸ばし始めるという報告があります)。早く乾くように、水やりはなるべく晴れの日の朝にするようにしましょう。忙しくて朝にできない時は、なるべく早く乾くように、通風をよくします。ファレノプシスやパフィオペディルムなどは、葉の合わさる中央に水がたまりやすいので、夕方になっても乾いていない時は、ティッシュなどで作ったこよりで水を吸い取ってやりましょう。
水質もランにとっては大事です。ほとんどのランは自生地では雨水などの空気中の水分によって育ちますから、塩分や鉱物をほとんど含まない水を好みます。植物の根は、浸透圧を利用して水分を吸収していますので、鉱物や塩分を多く含む水を与えると、根の内部より外の方が濃度が高くなって、根が水を吸えなくなり、ひどい時は根が傷んでしまいます(ナメクジに塩をかけた時のような現象が起こります)。
余分な肥料分を洗い流したり、薄い肥料を与えたり、生長が鈍る時に施肥を減らすのはこのためです。同様に、極端な硬水や岩塩を使用する軟水器(water softener)からの水も使わないようにします(このような場合は、室温以上の雨水や雪どけ水を使いましょう)。
また、ランに水をやる時はなるべく冷たい水を避け、室温以上の水を与えましょう。根が冷えると吸収が衰えますし、あまり冷たい水が葉にかかると傷むこともあります。冬はくみ置きした水、または湯を混ぜたぬるい水をやり、高温種のランにはとくに気をつけましょう。
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ランは、湿度と通風を好む植物です。夏の間、屋外に置かれているランは、極度に乾燥する地域を除いて、湿度も通風も問題ありませんが、屋内や温室においたものは、加湿したり、ファンなどを使って通風を良くする必要があります。
ランの大半は、50%以上の湿度を必要とします。とくに、暖房中は室内の湿度が砂漠なみに下がりますので、加湿が必要です。ランの数が少ない時は、トレーに砂利を敷き、鉢が浸からないくらいの水を張った上に鉢を並べることで、湿度をある程度高めることが出来ます。霧を吹いてやるのもまたひとつの方法なのですが、少しの間しか効果が続きませんし、濡れたままにすると病気が出やすくなる欠点があります。しかし、極寒期で静電気がパチパチと出るような時は、これらの方法で十分な湿度を望むことは、非常に困難になります。
湿度が低いと株のみずみずしさがなくなり、花が早くしおれたり、つぼみが落ちたりすることもあります。十分に加湿するためには加湿器(humidifier)の使用をお勧めします。大型の気化式(evaporative-type)のものは最適で、夏エアコン中に起こる湿度不足にも使うことが出来ますし、空気を冷やす効果もあるために、比較的低温を好むランの栽培にも役に立ちます。また、適度の湿度はランだけではなく、人の身体にとっても良いものです。
通風には、新鮮な空気を供給する、空気を攪拌し部屋の気温を均一にする、葉を乾かすことで病気を予防する、コンポストの乾きを早める、葉や根の温度を下げるなどの効果があり、どれもランにとって大切なことです。通風を良くするには、天候が良い時期は窓を開けるだけでいいのですが、天候が悪く、窓を閉め切る時は、扇風機などを使います。あまり強い風が当たるのは良くありませんので、葉がゆっくりと揺れるくらいにゆるく首振にセットして、離れたところに置きます。アメリカの家庭によくあるカサブランカ・タイプの天井扇風機は、ゆっくりと空気を攪拌するので最適です(回転の向きを変えることができるものは、空気が床から天井へ向けて流れるようにセットします)。
たまには窓を開けて、新鮮な空気を入れてやるのも大切なのですが、急激な温度変化にあうとつぼみが落ちたりしますので、離れたところの窓を少しだけ開けましょう。
せっかく通風をよくしても、株が混みすぎていると、効果が半減してしまいます。株と株との間隔は、葉と葉がかるく触れあうくらいにあけるようにしましょう。
ランは天然ガスやエチレンガスに敏感で、これらにあたるといっぺんに花がしおれますし、ひどい時には株が枯れることもあります。家庭で使うガスはもちろんのこと、果物が熟す時にもエチレンガスが出ますので、バナナやりんごなどの果物をランのそばに置かないようにしましょう。
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洋ランの施肥のポイントは、薄いものを頻繁にやることです。濃いものをやると根を傷めることになりますから、ラベルに書かれている規定の一番薄い希釈、またはそれ以下を使います(普通1ガロン=3.8リットルの水に、小さじ4分の1〜半分ほど入れます)。薄いものならすぐ吸収されて、コンポストにたまりにくいので、生長期には2週間おきに与えます。更に倍に薄めたものを水やりのつど、または毎週与えても構いません。休眠期や冬には、吸収が弱まりますので、減らしたり、中止したりします(非常に暑い時も同じです)。
アメリカでは置き肥はあまり使用されず、主に液肥を使います。また、微生物によって分解されて効果が現れるまで長時間かかるといわれる有機肥料は、頻繁に植え替えする洋ランには不向きとする栽培家も多く、あまり使われていません。
植物の肥料には、窒素(N)、リン酸(P)、とカリウム(K)を含む三要素といわれるものがあり、肥料のラベルには必ずこれらの配合割合が表記されていますが、最初の番号は窒素、二番目はリン酸、三番目はカリウムを表します。使用するコンポストや季節によって、これらの三要素の配合が異なる肥料を用いますが、一般にアメリカでランに使われる肥料には、次のようなものがあります。
30-10-10、20〜10-10、10-5-5などの窒素分(最初の数字)を多く含む肥料です。分解が早いバーク用で、主に生長期に使われます。アメリカで、一般にラン用肥料(orchid fertilizer)と呼ばれるものはこれですが、バーク植え以外のランには使用しません。
20-20-20、10-10-10、5-9-7などで、三要素をバランスよく含んでいます。レッドバーク、水ゴケなどの分解の遅いコンポスト、またはバスケット植えやヘゴ付けの株などに用います。
10-30-20、3-12-6など、リン酸とカリウムを多く含むもので、花つきを良くするために、開花期が近付いたころや生長期に他の肥料と交代で使われます。
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洋ランの根は空気を好むために、植え込みには土を使わずにバーク、水ゴケ、ヘゴなどの色々な種類の植え込み材料を用います。これらの植え込み材料のことをまとめてコンポスト(compost)と呼びます(アメリカではpotting medium/ポッティングミディアム、またはmedium/ミディアムと呼ぶことの方が一般的ですが、サイズのミディアムとまぎらわしいので、ここでは日本でも使われている『コンポスト』と呼びます)。ラン栽培には植え替えが欠かせないもので、コンポストが傷んできたり、株が鉢からあふれてくる時は、植え替えをする必要があります。
ランのコンポストの多くは有機質(organic)ですから、使っている間にだんだん微生物などによって分解されて、腐ってきたり、ぽろぽろと崩れてきたりします(break down)。分解が進みますと崩れた破片がコンポストの隙間にたまるため、通気性が悪くなって根が呼吸できなくなります。また、コンポストに肥料、老廃物、鉱物、塩分などがたまると、無機質で腐らないものでも、根を傷める原因になります。更に、株は年々大きくなりますから、それに見合った鉢に植え替えないと、鉢からあふれて新芽がはみ出してきます。
植え替えはていねいにしても、ある程度根を傷めることになりますから、株が 早く回復するように、新しい根が伸びてくる時期にします。時期を間違えると枯らしてしまうこともありますから、気をつけてください。反対に、時期さえあっていれば、少々荒っぽくしても、すぐ回復します。
株を観察していると、緑色の根の先端が出てくるのがわかります。この時期は植え替えに適していますが、新しい根は折れやすく、短い時に折ってしまうと、次の発根期まで枝根が伸びません。このため、植え替えは根が長くならないうちに(1センチ以下)急いでしましょう。
最適な植え替え時期は新しい根が出る直前なのですが、同じ種類のランでも株によって発根する時期が違うこともありますので、わかりにくいのが欠点です。株ごとに、いつ発根するものか書き留めておくと、次の植え替えの時に便利です(発根する時期は、毎年ほぼ同じです)。発根する時が開花期にあたるものは、根を傷めるとつぼみが落ちることがありますから、植え替えを待ち、開花後、根が12〜15センチ伸びた頃に行います。これくらいまで伸びた根は、折れても枝根が出ます。
暑さを嫌うランは根を傷めると暑さ負けしやすいので、暑い時期までに根が十分回復するように、早春や秋に植え替えます。また、根腐れしたものは、そのままにしておくと余計にひどくなりますので、できるだけ早く植え替えます。新しく入手したものは、株が植え替えられてからどれくらいたっているかわかりませんし、なじみのないコンポストに植えられていることもありますから、適当な時期になるべく早く植え替えましょう。
植え替える時は、大きすぎる鉢に植えると根が乾きにくくなり、生長がよくありませんので、複茎種では株が2年くらい成長できる大きさの鉢を選びます(たいていの場合は、5センチほど直径が大きいものになります)。ファレノプシスなどの単茎種のものは、一回り大きい鉢にします。どんなランにも、大きすぎる鉢よりも小さめの鉢を選ぶようにしましょう。
ランの種類によって株の伸び方が違いますから、株を鉢に植える位置も違います。横に伸びる複茎種は、一番古いバックバルブを鉢の縁につけるようにして、新芽の出てくる側になるべく広いスペースをあけて植えます(中央に植えると、バルブがすぐ鉢にいっぱいになってしまいます)。上へと伸びる単茎種は、子株が出ない限り鉢からはみ出ることはありませんので、中央に植えます。また、深く植えることは避け、複茎種は葡複茎が半分ほど埋まるくらいに、単茎種は一番古い葉の下から出ている根が埋まるくらいにします。株を植えつける位置を決める時は、これらのことを考慮して下さい。
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最も一般的なバークやミックスコンポストを使った植え方を紹介します。他のコンポストでもだいたいは同じ要領で行いますが、水ゴケ植えは日本のランの本を参照して下さい。
植え替える株は前日に水をやって、根を湿らせておきます(水分の補給、湿った根の方が折れにくい)。また、バークや水ゴケなどのコンポストも、水を加えて湿らせておきます。
植え替える前に、道具をそろえます。 新聞紙、はさみ、太めの棒、ナイフ、ガスライターまたはバーナー、歯ブラシ、ラベル、かなづち、鉢、コンポスト、鉢かけ(砂利や 発泡スチロールの破片も可)、鉛筆またはマーカー、支柱(竹等)、ひも、ゴミ箱などが必要です。
まず新聞紙を広げ、捨ててしまわないようにラベルを鉢から抜いて、安全な場所に置きます(うっかりして古いコンポストと一緒に捨ててしまうこともあります)。
株を、鉢から抜きます。プラスチック鉢なら、まわりを手で押して、根がはずれやすいようにしてから抜きます。どうしても抜けない時は、ナイフを縁に沿って入れ、根をはがします。素焼き鉢は、根が鉢にくっついて抜けにくいので、思いきって鉢をかなづちでたたいて割り、根を破片からはがしましょう。
コンポストを取り除きます。根のつけ根部分からは取りにくいのですが、一番腐りやすく大事なところですから、とくにていねいに取りましょう。バーク植えなら、株を持って軽く振ると落ちやすくなりますが、パフィオペディルムは根が少ないので、根を折らないように気をつけましょう。コンポストを除いたら、根を水ですすいできれいにします。古いコンポストは捨て、再使用しません。
根を調べます。健康な根は白くて固いのですが、腐った根は黒ずんでふやけています(さわってみると分かります)。腐った根の方が多い時は、コンポストが適当でなかったり水やりをしすぎた可能性があるので、気をつけましょう。腐った根は切り捨て、健康な根はなるべく残しますが、長くて折れやすいようなら15センチくらいの長さに切ります。
根の始末が済んだら、株の方を処理します。黄色くなった葉や枯れた葉、古い花茎などを切り取り、カトレアなどの葉鞘(バルブの皮)は、カイガラムシなどの害虫の隠れ場所になりますので、竹の皮のように茶色く乾いていれば、なるべくはがし取ります。なかなかとれない時は、濡らすとはがれやすくなります。株はよく観察して、カイガラムシなどがついていれば、歯ブラシで軽くこすって取ります。
株のサイズを見ながら、鉢を選びます。根が長すぎて適当なサイズの鉢に入らない時は鉢を大きくせずに、根の方を切ります。コンポストの表面から根がはみ出ても、差し支えありません。鉢が決まったら、水はけをよくするために、鉢底に鉢かけ、発泡スチロールの破片、砂利などを3分の1〜4分の1ほど入れ、この上にコンポストを山型に一握り入れます。
根をコンポストの上に広げながら適当な位置に株を入れ、根のまわりにも更にコンポストを入れます。根の間にもコンポストが入るように、時々棒でつつきながらしっかりとつめ、両手の親指でコンポストを押すようにして落ちつかせます(小さい鉢で棒が入らないときは、鉛筆の消しゴム側を使いましょう)。ファレノプシスなどの太い根を持つものには棒を使わず、時々テーブルなどに鉢を打ちつけて、コンポストを落ちつかせます。
株がぐらつくようなら支柱を立て、ラベルを戻します。ラベルが傷んでいたり、字が薄くなっている時は新しく作ります。植え替えた株は一度水やりをして、コンポストを落ちつかせます(この時、水に園芸用ビタミンB1剤を加えると、根の回復が早いといわれます)。次の株にとりかかる前に、古いコンポストや鉢、切り取った根などを新聞紙で包んで捨てます。使った道具はライターやバーナーの炎をあてて消毒し、手も洗いましょう。
バスケット植えやコルクやヘゴ付けのランは、普通の植え替えができません。バスケット植えのバンダなどは、しばらくぬるま湯につけて根を柔らかくした後、根をバスケットに巻きつけ、古いバスケットごと新しい大きなバスケットに入れます。コルクやヘゴ付けのものは、そのまま大きい板にくくりつけます。
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いくらていねいに植え替えても、根はある程度傷みます。回復するまでは吸収も弱まりますので、普段と同じように水やりをしたり肥料を与えてしまうと、余計に根を傷めることになります。このため、植え替えの済んだ株は発根するまで、コンポストを乾かしぎみに管理して、施肥もやめます。カトレアなどの乾燥に強いランの場合は、2週間ほど水を絶つこともあります。しばらくは水分不足気味になるわけですから、ストレスを和らげるために日陰の湿度の高いところにおきます。 時々さっと霧ふきして、水分を補ってやるのもいいでしょう。発根したら、徐々にもとの環境に戻します。根腐れしたりして弱った株は回復に時間がかかりますので、鉢ごとビニールの袋に入れて、日陰に置いてもいいでしょう。
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コンポストには色々な種類のものがあり、ランの種類や栽培環境によって使い分けますが、どのコンポストにも長所と短所があります。大切なのはどのコンポストを使うかということではなく、いったん決めたコンポストになじみ、それを用いた栽培を覚えることです。しょっちゅうコンポストを変えると、それにしたがって水やりの回数や施肥の仕方を変えなければなりませんし、株もコンポストになじめないので、かえってうまく行きません。また、同じ種類のランには使用するコンポストをなるべく統一しておかないと鉢ごとに乾き方が違って来ますので、水やりがややこしくなって失敗します。
coarse grade/大粒サイズ
粒の大きさ=0.5〜1インチ(1.5〜2.5cm)
バンダ、大株のファレノプシスなど、根がとくに空気を好むものに。
medium grade/中粒サイズ
粒の大きさ=0.25〜0.5インチ(6mm〜1.5cm)
一番よく用いられるサイズで、ほとんどの着生ランに使われます。
fine grade/小粒サイズ
粒の大きさ=0.15〜0.25インチ(3mm〜6mm)
小苗の着生ラン、水分を好むランや根の細いランに(マスデバリア、パフィオペディルム、ミルトニアなど)
硬くて、粒の大きさがそろっているものが、上質のバークです。柔らかいものは早く傷みますし、粒の大きさがそろっていないと空気の入る隙間が出来ませんので、どちらも根を傷める可能性が高くなります。時間があれば、バークは処理して使う方が良い結果が出ます。バークの処理の仕方は、次の通りです。
バークは大きなバケツなどにあけ、上から熱湯をかぶるくらいに注ぎ、このまま2〜3日おきます(アクが気になるようなら水を替えますが、しなくても差し支えありません)。2〜3日たったら、浮かんでいるバークをすくい取り、底に沈んだものは傷みやすいので捨てます(熱湯を使わずに、殺虫剤や殺菌剤を入れた水を使用する栽培家もいます)。
バークは、水を切って使います。すぐに使わないのなら、プラスチックの容器に入れておきますが、一度に沢山処理して保存しておくと便利です(使う前に一度水をかけましょう)。
バークの短所は、肥料分をほとんど含まないことと分解が早いことです。バークは水に触れると分解が始まり、しまいにポロポロと崩れてきます。この崩れたものが空気の入る隙間にたまってくると、通気が悪くなって根が腐りますので、中粒のものでは2〜3年おき、小粒は毎年植え替えが必要です。バークなどの有機質を分解する微生物は窒素を消費しますから、分解が早いバークに植えた株には補ってやらないと、窒素不足になります。バーク植えのランに高窒素肥料を使うのは、このためです。
バークは水やりの後短時間で表面が乾き、すぐまた水やりが必要なように見えます。しかし、表面が乾いていても、中は湿っていることもありますから、水やりは慣れるまで気をつけて、やりすぎないようにしましょう。
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アメリカでは、素焼き鉢よりもプラスチック鉢が多く使われ、ほとんどのランはプラスチック鉢にバーク植えでよく育ちます。ただし、水やりしすぎて根を腐らせてしまうことが多い方、水ゴケを使う時、または大株には、素焼き鉢を使う方が良いかもしれません。
プラスチック鉢は受け皿がついたものや鉢底の穴が少ない化粧鉢を避け、普通アザレア鉢(azarea pot)と呼ばれるものを使います。アザレア鉢は一般の鉢より浅く(深さが直径の3分の2)、底穴も大きくあいていますので、水はけや空気の流通がすぐれています。アザレア鉢は、ラン専門店以外ではあまり売られていませんが、たいていの草花などを作っている温室に自家用としてありますから、わけてもらいましょう。安価ですから、病気をうつすことが無いようになるべく再使用しません。
バンダなどの、とくに空気を好む根をもつランは、バスケット/木枠(wooden basket)にもよく植えられています。木枠にはコンポストを入れることも、まったく何も入れないこともあります。バスケット植えは根の生長がいいのですが、乾きやすいので水やりが頻繁に必要です。小型のランで根が空気を好むものは、ヘゴ板やコルク板に着生させて育てることもあります。最初あまり乾くと発根が悪いので、根と板の間に水ゴケを少しはさみます。バスケット植えもヘゴ、コルク板付けも、バランスの良い肥料を薄めに与えます。
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どのランが育てやすいかは、環境によって異なります。もちろん、どこで栽培しても作りにくいランもあるのですが、たいていのポピュラーなランは、比較的強健で作りやすいからこそ、よく栽培されているわけです。したがって、どれが簡単かというのは、環境に合っているかどうかということで決まってきます。
フロリダで栽培しやすいランが、ニューヨークでも作り易いわけではありませんし、また、同じ所であっても、置き場所の条件(温室か家庭の窓際か、日光がよくあたるかあたらないか、等)によって、難易度が変わります。比較的低温を好む、シンビジュームやノビル系デンドロビュームは、日本では簡単だと言われますが、これらは屋外でも栽培可能な、カリフォルニア沿岸地帯などを除いて、冬に暖房するアメリカの一般家庭内では、育てやすいランではありません。
自分の栽培環境を知ることは非常に大切で、栽培環境がわかれば、それにあったランを選ぶことができます。環境に合わないランを作っても、咲かないのではつまりませんから、最高最低温度計や湿度計などを用意して、ランを置こうと思う場所の環境を調べてみましょう。ラン作りに慣れたら、栽培したいランに合わせて環境を変えるようにしますが、最初は環境に合わせてランを選ぶようにした方が無難です。一般に、アメリカの家庭には、中高温を好み弱光線に耐えるファレノプシスや斑入り葉種のパフィオペディルムが適しているといわれます。日光がよくあたる窓辺では、小型のカトレアもいいでしょう。
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近くにラン専門店がある場合は、実物を見ながら店の人に相談してランを求めるのが一番いいのですが、無い場合は通信販売で求めます。アメリカは通信販売が盛んで、多くのラン園が通信販売を行っていますから、カタログを送ってもらいます。カタログによっては、説明文だけで写真が一枚もなく、初心者には、いったいどんな花なのか想像もつかないこともありますので、なるべく写真入りのカタログから求める方が安心です。
ランが凍る恐れのある極寒期を除いて、注文してから、だいたい1〜2週間で届きます。また、あちこちで開かれるラン展にも、多くの業者が店を出します。AOSの会報のAOS Bulletin(月刊)には、カタログを発行しているラン業者の広告がたくさん出ています。また、AOSでは全米ラン業者リストの入ったアルマナックも発行しています。
ラン栽培に慣れるまでは、小さい苗よりも、耐久力のある成株(開花株)を求めましょう。カタログに用いられている表記には、次のようなものがあります。
BS(blooming size/ブルーミングサイズ):
開花サイズ; 一般に次の開花シーズンに咲く見込みの株です。
NBS(near blooming size/ニアーブルーミングサイズ):
開花サイズに近いもので、だいたい1〜2年以内に咲く見込みの株です。
In Bud/In sheath(イン バッド/イン シース):
つぼみ(bud)や、花さや(sheath)がついている株で、すぐ咲くので楽しみですが、割高になっています。ファレノプシスの場合は花茎つき(In spike)が同じものに該当します。
Seedling(シードリング):
種から育てた株(実生株)のことで、どんな花になるのか咲くまでわかりませんが、たいていは予想が書かれています。同じ親から出ても、株はそれぞれ違いますので、自分しか持っていない株を育てるわけで楽しみですが、どれもよい花が咲くとは限りません。もっとも、予想以上のすばらしい花が咲く可能性もあります。
Mericlone(メリクロン):
生長点培養繁殖法(メリクロン法)で増殖された株で、原則として親株と同じ花が咲きます。普通良い花をつける選別株のみがメリクロンされますが、一度に多数の株を得ることが出来るため、あまり高価ではありません。Meristem(メリステム)と呼ばれることもあります。
Stem-prop(ステム・プロップ):
Stem-propagation(ステム プロパゲーション)の略で、ファレノプシスの花茎にある生長点から培養した苗のことで、原則的にメリクロンと同じです。ただし、メリクロンほど多数の苗がとれませんので、比較的高価になっています。
Division(ディヴィジョン):
オリジナルの株を株分けしたもので、一般に高価です。
Pot size(ポットサイズ):
株が植えられている鉢のサイズ(直径)で、インチ表記になっています。たいていのランは5〜6インチ(12.5〜15cm)くらいから開花サイズになりますが、ミニ種は3インチサイズ(7.5cm)で咲くものも多くあります。
Leaf span(リーフスパン):
ファレノプシスやパフィオペディルムは、左右に出ている2枚の葉の端から端までの長さで取り引きされることも多く、Leaf span(リーフ・スパン)何インチと表記されます。
Community pot(コミュニティーポット):
コンポット苗で、小さい苗を寄せ植えにしたものですが、管理が難しいので上達してから求めます。
Flask(フラスク):
フラスコで培養された苗のことで、コンポット苗よりもまだ小さいものです。これも初心者向きではありません。
Species(スピーシー):
原種のことです。
Hybrid(ハイブリッド):
交配種のことです。
Natural Hybrid(ナチュラル・ハイブリッド):
自然交配種のことです。
Mounted/on slab(マウンテッド/オン スラブ):
鉢植えの株ではなく、コルク板やヘゴに着生させたものです。高い湿度と頻繁な水やりが必要ですので、少し栽培に慣れてからのほうが無難です。
業者によって、ランを鉢植えのまま(in-pot shipping/イン ポット シッピング)送ってくるところと、鉢から抜いて根をむき出しにしたもの(bare-root plant/ベアー ルート プラント)を送ってくるところがありますが、慣れるまでは、なるべく鉢植えを求める方がいいでしょう。
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ランには、ほとんどの場合、名前の書かれたラベルがついています。ランには数えきれないほどの原種(数万種ともいわれます)と、これらの交配種がありますから、ラベルがついていないと、いったいどのランかわからなくなってしまいます。名前がわからないと、どのような環境で栽培するものか調べることもできません。
また、いくらすばらしい花が咲いても、ラベルのない株は、はっきりとそれとわかる原種を除いて、受賞することもできなくなります。ラベルは、なくさないように大切に扱い、ラベルのない株はなるべく買わないようにしましょう。血統書などと違って、ランのラベルは自分で書けばいいのですから、破損したり、字が薄れて読みにくくなったら、面倒でも新しいものに代えましょう。
ランの交配種は、その名前と使われた交配親などを、英国王立園芸協会(RoyalHorticultural Society=RHS)に登録することになっています。登録された交配種は、すべてサンダーズ・リスト(Sander's Complete List of Orchid Hybrids=Sander's List)にまとめられますので、品種名がわかれば、どのような交配親が使われたものか、原種までさかのぼって調べることが出来ます。
ランのラベルを見ると色々なことがわかりますが、例を挙げて紹介します。
Slc. Jewel Box 'Dark Waters' AM/AOS
ラベルの最初に書かれているのは属名(Slc.)で、大文字で書き始めます。正確にはイタリック体で書くのですが、面倒なので普通体で書かれる事が多いようです。また、長いものは、このように略号で書きます。
次に書かれているのは種名で(Jewel Box)、原種の場合は小文字(正確にはイタリック体を用います)で、交配種は大文字(イタリック体は用いません)で、書き始めます。
種名の後に書かれている、シングル・クオテーションマーク(' ')に入った名前 (この場合は'Dark Waters')は個体名で、AM/AOSは入賞記号と審査団体です。
上のラベルの場合、属名はSlc.=Sophrolaeliocattleya(ソフロレリオカトレア)ですから、ソフロニティスとレリアとカトレアをかけ合わせたものだとわかります。この3種の属の組み合わせは、どのような過程を通っても、ソフロレリオカトレアになります。つまり、次の交配はすべて、ソフロレリオカトレアになるわけです。
このランの種名は、Jewel Box(ジュエルボックス)で、大文字で書き始められていますから、交配種だとわかります。Jewel Boxは、ソフロレリオカトレア・アンザック(Slc.Anzac = 交配種)とカトレア・オーランティアカ(C.aurantiaca = 原種)が、かけ合わされたものです。
'Dark Waters'(ダークウォーターズ)は個体名で、このJewel Boxが交配された時に育った多くの苗のうち、とくにすぐれていた個体(一株)につけられた名前です。同品種でも、同じ親から生まれた子供がそれぞれ違うように、株によって色々な花が咲くわけですから、求める時は個体名まで確認しないと、まったく違う花が咲くこともあります。Slc. Jewel Boxには、'Dark Waters'のほかにも'Beverly'や'Scheherazade'などの有名個体があります。
AM/AOSは入賞記号で、'Dark Waters'がAOS(アメリカ蘭協会)の審査を受けて、AM賞(Award of Merit)を受けたことを示します。同個体が賞を受ければ、その個体の分け株やメリクロン株にも賞が引き継がれますが、花の善し悪しは栽培環境で決まることが多いので、いつも賞に値するほどの良い花が咲くとは限りません。また、入賞した個体でも、再度それ以上の賞に挑戦することもできますし、賞を受けていないものでも、美しいものがたくさんあります。
個体に与えられる賞には、FCC(First Class Certificate;90点以上、金賞と同じ)、AM(Award of Merit;80〜89点、銀賞と同じ)、HCC(Highly Commended Certificate; 70〜79点、銅賞と同じ)などがあります。ランの審査団体には、AOS(アメリカ蘭協会)、RHS(英国王立園芸協会)、JOGA(日本洋蘭農業協同組合)などがあります。
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自分で丹精したランが花茎やつぼみをつけてくれるのは、本当に嬉しいものです。せっかくついた花芽を美しく咲かせるために、次のことに注意してください。
ランのつぼみはとてもデリケートで、急に環境が変わったりすると、落ちてしまうこともあります。開花するまでは安定した環境を保ち、高温、直射日光、冷たい風、乾燥した空気などに、なるべくあてないようにしましょう。また、つぼみの時に置き場所を変えることも、避けましょう。
ランの花は大きく重いものも多いので、花茎が伸びてきたら、支柱を立ててやりましょう。ただし、あまりきつくしばっては伸びることが出来ませんので、ゆるくしておきます。ひもは柔らかいものを選び、花茎を傷めるおそれのあるワイヤーは避けましょう。花の支柱には、造花の茎にする緑色のワイヤーが目立たなくて最適ですから、手芸店などで求めましょう。支柱を立てておくと、移動する時などに誤って花茎を折ってしまうことも少なくなります。
ランの花は、ひまわりの花のように、光源の方を向いて、横向きに咲きます。つぼみや花茎のついた株をむやみに移動すると、花茎がねじれたりして、きれいに咲かなくなることもあります。水やりなどのために移動する時は、必ず同じ方向を向けて、栽培場所に戻すようにしましょう。
花茎やつぼみを伸ばしている株は、水分を多めに必要としますので、頻繁にチェックしてやりましょう。水不足になると、つぼみが落ちることもあります。
ランの花はつぼみの時に切り花にすると、それ以上開かなくなりますので(ディサは例外で、切り花にしても開花します)、必ず完全に開いてから切りましょう。また、十分発色するまで時間がかかる花もありますから、開花後2〜3日してから、切るのがいいでしょう。ランの香りは残念ながら、切り花にすると失われてしまいます。香りも楽しみたい時は、切らないでおきましょう。カトレアやファレノプシスなどは切り花にしても長時間持ちますが、ミルトニアは切り花にするとすぐにしおれてしまいますので、鉢植えで楽しみましょう。
花は、湿度が高く、低温の方が長持ちします(ただし、適当な通風がないとカビにおかされて、汚くなることもあります)。高温で低湿度の居間などで鑑賞する時は、夜間だけでも栽培場所に戻してやるほうが長持ちします。
花には、透明な蜜がついていることがありますが、正常ですので気にすることはありません。 ただ、時にこれが固まって、花弁が開かなくなることがあります。このような場合は、かるく霧ふきして洗い流してやりましょう(このような場合以外は、花を濡らさないようにします)。,
しおれた花は、カビや細菌の温床になりますから、早めに摘み取りましょう。普通、カトレアなどはシース(花さや)や花茎も、しおれた花といっしょに切り取ります。ファレノプシスのように、種類によっては同じ花茎から再び開花するものもありますので、花茎は黄色くなって枯れてこない限り、つけておいてもいいでしょう。ファレノプシスの花茎は、花が済んだ後、基部から三番目の節の上まで切り戻しておくと、また咲くことがあります(次の年の花茎が出るまでに、古い花茎を取り除きます)。ただし、あまり小さい株は弱りますので、再開花させてはいけません。
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ランは、比較的病気や害虫に強いものです。
害虫や病気は、弱った株や環境が悪い時に出やすくなりますので、なるべく良い環境で元気な株を育てることが、一番の予防方法です(とくに通風は病気の予防に非常に大事です)。また、早期発見することで、被害を最小限にとどめることが出来ますから、株は定期的にチェックしましょう。早期発見すれば、薬剤に頼らなくても済むことがあります。とくに家庭内では、いくら安全性の高いものであっても、できる限り農薬の使用は避けたいものです。ここでは、薬剤を用いない方法を紹介しますが、どうしても薬剤が必要な時は、説明書をよく読んで、規定通りに使いましょう。
カイガラムシ(Scales)やワタムシ(Mealybugs)は、歯ブラシでこすり取りますが、アルコールをしみ込ませた綿棒で、ふき取る方法もあります。カトレアなどの葉鞘(バルブの皮)は、害虫の格好のかくれ場所になりますから、乾いていたらできるだけはがし取りましょう(新芽を傷めないように、気をつけてはがして下さい)。
ハダニ(Spider Mites)は、やっかいな害虫ですが、水を嫌いますので、湿度を高めて予防し、ハダニの発生しやすい高温期には、ハダニのつきやすい葉裏を、頻繁に勢いよく洗い流してやりましょう。
食用油(サラダオイルなど)と食器洗い用の洗剤を混ぜたものは、カイガラムシやワタムシなどの害虫駆除の農薬代わりに使えます。
1カップのオイルと大さじ一杯の洗剤をよく混ぜ合わせます。これを1カップのぬるま湯に小さじ1〜2.5杯ほど溶かしたものを、噴霧器または霧吹きに入れ、株全体にまんべんなく散布します(とくに葉裏はていねいにします)。そのまま一時間おいた後、水で洗い流します。次々と新しい卵がかえることもありますので、7〜10日おきに2〜3回くり返します。人畜無害ですが、乱用は避けましょう。
ランの一番恐ろしい病気は、ビールス(ウィルス)によって起こるビールス病(バイラス病とも呼ばれます)で、残念ながら今のところ有効な薬がありません。かかった株は全体に元気がなくなり、葉に黒や黄色のしま模様が現れたり、花が奇形したりします(怪しい株の葉を切取って送れば、検査してくれるところもあります)。
趣味家の場合は隔離施設がありませんから、他の健康な株にうつるのを防ぐために、かかった株は破棄、または焼却するしか方法がありません(フランスの有名なラン園では、ビールス病にかかった希少個体が隔離温室に入れられて、治療法が見つかる日を待っているそうです)。
ビールス病には有効な治療法がありませんので、予防に努めることしかできません。この病気は、汁を吸う害虫や器具などによってうつりますが、株分けに器具を使うことが少ないパフィオペディルムにあまり見られないことから、害虫よりも、むしろ器具によってうつることの方が多いとも考えられています。
植え替えや株分けに使うはさみやナイフはもとより、花切りばさみや鉢などからもうつる可能性がありますから、これらは別の株に使用する前に、必ず消毒しましょう。また、コンポストは傷んでいなくても、 別株に再使用しないようにしましょう。素焼き鉢は、オーブンで熱処理したり、 塩素系漂白剤(ブリーチ)を入れた水(濃度10%)に一晩つけて消毒します。支柱やプラスチック鉢も、漂白剤で消毒できますが、 できれば再使用しない方が無難です。手も洗うようにしましょう。
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一昔まで、限られた人々だけのものであったランも、人工培養などの技術が進み、一般の草花のように身近なものになってきています。家庭の暖房が整っているアメリカでは、温室がなくても、すばらしい栽培をされている方が沢山いらっしゃいます。ランは難しいというイメージがありますが、一度環境に合ったものをお試しになってみて下さい。きっと、ラン栽培がけっして困難でないことにお気付きになることでしょう。
一人でも多くの方々にランの魅力を知っていただけることを、心から願っています。
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初心者ガイドを作成され、転載を快く許可して頂いたMariko Hayashi Herron様に感謝致します。
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