関東以南の低地でクール系の蘭を育てている方は、いかにしてクール環境を作るで、頭を悩ませます。私もそんな一人でして、過去に、他のページで書いているように、色々な試みをしてきました。不幸にも、一年間USAで過ごさないといけなくなった関係で、クール系の蘭を育てられなくなり、クール環境の為に整えたシステムは一時中断していました。しかし、帰国して、再度、仕切りなおしを考えていた年の世界蘭展の季節に、クール専用のワーディアンケースを作っている所があると聞きました。ドームでも展示をしていたのですが、値段を聞いて、とても庶民の手に入るものでは無いと、即座に諦めました。どう考えても、中古のストッカーの方が安いし、新たにワーディアンケースを買って、窓用クーラーを買って組み合わせてもお釣りが出ると考えたからです。イソップに出てくる狐と同じ心境で、手に届かない所にあるブドウは酸っぱいに決まってると思っていました。しかし、不在中、北海道でディサを預かって頂いていた、さる高名なお方に、「あれは良い」と御聞きしてからは、しばらく、銀行通帳の残高とのにらめっこが続きました。そして、結局、清水の舞台から飛び降りてしまいました(^^;)。
この手のシステムは、クール環境に興味のある方なら、誰でも興味を示すのではないでしょうか。しかし、買ってみてどうかというのは、購入前には意外とわからないものです。したがって、人柱が必要となるわけです。ネットワークは、情報を共有してこそ、その価値を発揮するわけで、自分の得た情報は、同じクールを目指す方と共有するべきと思い、このページを立ち上げています。なお、アミール・プロジェクトとの交渉により、リンクを張るということで、送料と照度計をおまけして頂きましたが(製品の値引きは無理のようでした)、わたしは、この製品の宣伝をしなければならない、なんのしがらみもありませんので、ここに書かれている事は、あくまで、個人的な感想として読んで頂いて問題ありません。
私が購入時の各パーツの値段は後に載せますが、モデルは、フルサイズとハーフサイズで、集合住宅暮らしの私は、無条件にハーフサイズとなります。あとは、オプションやヒーターがついたものと、基本システムだけのものがありますが、当然、余計なものは金欠病の私には不要ですから、基本システムを注文。しかし、いまどき超音波加湿器という代物は、家電製品を置いているところから消えてしまっていますので(管理が悪くて水が汚染してしまうと、空気がすぐに汚染されて病気の元になるからです)、すこし高め(\6800)のこれも注文しました。MORITA ML-200Sですが、意外とスリムに作られていて、ケースの中に置くにはとても適している加湿器と思いました。決断してメールを入れましたが、折り悪く、蘭展が重なる時期でしたので、すこしレスポンスは遅かったですが、メールと先方からの電話で話は進み、到着日が決定しました。
簡易組み立て式ということで、各パーツに分かれて到着します。移動キャスター付きの底板、天井、左右側板、窓用クーラー(MORITA MAC-181W)がすでにセットされた背面板、前面ドア、それに、蛍光灯ユニット(底面板とセット)、棚類をまとめた箱。これだけが送られて来ます。
各パーツはとにかく、重いです。マニュアルにも二人以上で作業するように書かれていますが、一人で作業する場合は、ある程度力のある男性で、腰に障害の無い方で無ければ、まず無理でしょう。女性一人だと不可能と思ってください。まずは底面板を置いて、場所決めをします。キャスターが着いているので、平面に置くのであれば、作ってから移動が可能です。私は、片方を窓際のステップに置くつもりで、固定足を引っ込めようとしました。マニュアルにはありませんが、固定足を短くする場合、ストッパーは付いていませんので、引っ込めすぎると、底のアルミに穴が開きます。私は、これに気付くのが遅くて、新品なのに、底板を凹めてしまいました。割れ目が出来ているのが心配で、シリコンゴムでコーティングして修繕しなければなりませんでした。これは、マニュアルの目立つところに記載するか、一定以上で確実に止まるようにストッパーをつけるべきでしょう(よろしく>鈴木さん)。
次に、一番重い背面板をセットします。じつは、背面と側面を入れ替えることが
できればと思いましたが、長さが違うので無理のようでした。背面板はクーラーが付いており、かなり重く、背面板の上に立ててから、つっかえ棒(これも、同梱されている)をしておきます。
あとは、マニュアルに書かれている順序で組み立てるだけ。側面を、底板にはめる時も、重いので大変です。内部のセパレーターは、この製品の売りです。植物を置いたままでも、慎重にやれば高さを変えることができます。花芽が伸びて先がつかえて来た時には、棚を動かすか、上面の網棚を外してしまうこともできます。蛍光灯の場所の自由度も高く、植物の状況に合わせて容易に動かせます。このあたりの工夫は、蘭栽培家の意見、ノウハウが十分生かされているとおもいました。最初は、不必要なシステムと思いましたが、現物を手にしてみると、かなり使いやすそうです。また、防水にもかなり気を使っています。蛍光灯ユニットは、上部からの水には100%耐えるように作ってますし、蛍光管の接点にもゴムが使われて、水による漏電や接触不良が極力起こらないような工夫が見られます。
前面ドアをつければ完成ですが、この前面ドアは、重いですが容易に外すことができます。冷やさない時には、ドアを外して置いたほうが使いやすく、たぶんそのために脱着可能にしてあるのではないかと思いました。とにかく、アルミで出来ているとはいえ、二重ガラスにしているのでどれもこれも重い訳です。ですから、このケースを置く場所を考えるとき、床が確実に抜けない、ということも考えておく必要があります。ちなみに、ハーフサイズで約95kgとのことです。完成して、稼働させてみました。電源も、ブレーカーが落ちない所から取るなどの注意をしましょう。動作確認だけですから、クーラーの能力や、乾燥具合、冷房具合は、別のページに書く予定です。
タイマー動作は、すこしややこしくなっています。基本的に、15分単位でオンオフできる24時間型タイマーを2機搭載しています。片方は、昼温度と夜温度の時間設定用、片方は蛍光灯の時間設定用です。サーモスタットは、昼温度用と夜温度用の2つかあり、タイマーがオンの時には昼温度用のサーモが作動、オフの時には夜温度用のサーモが作働します。つまり、2レベルの温度が設定できて、その時間を15分単位で設定できるという仕組みです。蛍光灯のタイマー設定は取り立てて言うこともありませんが、温度上限設定というのがあって、その温度を超えた時には、熱源である蛍光灯はすべて切れるようになっています。最初、蛍光灯がつかないので焦ったのですが、このサーモ設定が低くセットされていたためと、後から気付きました。又、電源周波数が60Hzにセットされていました。関東などの50Hzエリアで使う場合には、再セットが必要でした。 とにかく重くて大変でしたが、無事に組み立てることは出来ました。組み立てている時にも思いましたが、かなり色々なところに細かい工夫が見られます。クーラーを実際に稼働させてみると、問題点が見つかるのかもしれませんが、組み立て直後の感想は、蘭栽培家の意見を十分に取り入れて作られたケースだと言うことです。あとは、各パーツの耐久性という問題がありますが、このあたりはつかってゆくうちに明らかになるでしょう。
外観も悪くありませんので、インテリア的な使用法も可能です。クール室はすでに持っているが、リビングや応接室に蘭を飾りたくても、温度が高く湿度の低いところに置くわけにはいかないと思っている、裕福な方には、ぜひ御勧めしたいです。私のように、人を招くスペースどころか、自分の住むスペースも蘭に浸食されている人の場合にも、可動性セパレーターのおかげで、意外と有効にスペースを使えそうですので良いかもしれません。でも、十分に場所があり、あまり外見にこだわらないのであれば、新しい密閉性の良い大き目のワーディアンケースを物色して、クーラーを設置するのが良いとおもいます。
散々、高いと言い続けてきましたが、ここで各パーツの値段を検討してみます。まず、「ハーフサイズ本体:\250000」。二重ガラスで出来た密閉性の良いケースです。安くは無いですが、コストパフォーマンスが悪いとも言い切れません。「コントロールボックス:\79000」、自作できれば、おそらく半額以下に、抑える事が可能でしょう。ただ、それだけの手間と知識があるかどうかと、一つのユニットとしてまとめるのは、結構大変かもしれません。「スライド棚3ヶ:\24000(単価\8000)」、引出しに使われているスライド部分の流用ですから、原価はさしてかかっていないのだと思いますが、アイデア料が含まれていると考えるべきなのかも。「棚網7ヶ:\8400(単価\1200)」、これは高いとはいえないかも知れません。台所用品に使われている似たようなものでも、結構な値段してますから。「蛍光灯ユニット6ヶ:\27600(単価\4600)」2〜3000円で、蛍光灯ユニットは売ってますが、防水関連のアイデアを考えるとリーズナブルな値段かもしれません。「内気扇:\6800」、園芸用のファンは高いですが、現実問題として、1000円以下のジャンク品で十分事足ります。「水よけプレート:\800、エンド網:\1000」、無くても大丈夫ですが、高いものでもありませんから・・・。
以上を考えると、極端に利益を上乗せしていると言う訳でも無いように思われました。個々の値段を考えると、総計であの値段は止むを得ないのかもしれません。と、理屈では分かるのですが、それで懐の隙間風は納まらないので困ったものです。これでも、高くは無かったと思える日が来るかどうかは、いずれレポートしたいと思います。
このシステム、ばら売りしてくれるのかどうかは確認は取っていませんが、少しでもバーツを自作して経費節減したいのであれば、コントロールユニットと、蛍光灯、内気扇は削る事が可能と思います。昼と夜の温度差をつけるのを諦めて、市販の逆サーモ(クーラーを作働させるので、十分な容量が必要)を使用し(手動で昼と夜に温度設定を変えるという手段はありますが)、蛍光灯はユニットのみで\2000前後で売られているものに、針金で金具をつけ(安定して取り付けるのには、ちょっと注意が必要)、上面に防水のためのカバーをとりつけます。もちろん、最上段のものには、カバーは不要です。内部の棚関連のパーツは削るのはお勧めとは言い難いのですが、最下段は別の網などで流用するようにして、3段にするのを2段にするという手はあります。最下段を自作するのであれば、水よけプレートは不要となります。コントロールユニットは、PICなどのマイクロコンピュータを扱いなれている人でしたら、もっとコンパクトで同じ機能もしくはそれ以上の機能を有するものを作れると思います。追加する自作分パーツの費用は別とすると、最低\273000まで節減できます。これだったら、買っても良いと思われる方も出るのでは無いでしょうか。もちろん、自作、改造は自己責任の上でという事になるのは、どこの世界でも同じですから、注意して作業しましょう。失敗して、ガラスでも割ろうものなら、何のための経費節減だったのか分からなくなりますから(^^;)。