□未曾有の大颱風につれて襲来せる高潮の為に、わが大阪の西部海岸寄
りは眼もあてられない惨害を蒙つた、これと同じ風水害は記録的に遡
ると、二百六十年前の寛文十年八月廿三日の大風による大津浪で、四
貫島九條辺りが一たまりもなく激浪にさらはれ、家屋人畜の死傷が夥
かつた、其後宝永四年十月四日の地震につれて海嘯が起り、木津川口
より二十丈の大潮が襲来して、橋々は流され、道頓堀川まで無数の船
が押流され打上げられたといふから、今回と同じ惨状であつただらう
と想像が 出来る、次は安政元年六月十三日と十一月四日の二度の地
震のために矢張り津浪 が起り、西大阪は前同様の憂目を繰返してゐ
る、この時の記録を見ると、当時の大 阪としてはとても大被害であ
つた。
□こういふ風に記録は繰返すものであることを牢記せねばなるまい、無
論今回の惨禍を慮つて将来再び繰返すことのないやうに防備も出来る
であらうが、忘れつぽい市民には、この災害日を記念するために年々
に追悼記念を催す必要がある、又将来への備忘として残るやうな記録
を作つて置く必要があると考へ、急遽この特輯号を編んだ次第である、
現在では珍らしくはないが、幾年か経た後にはきつと思ひ出の種とな
り、又世の注意を喚起することと信ずる。
□今回の災害地域はかなり拡く亘つてゐるが、被害の中心は近畿である
ため、又「上方」の使命として近畿、所謂上方地方だけの記録を纏め
たのである、尚精確な記事を要するため、大阪朝日、大阪毎日両新聞
記事より適宜抄録して編輯したのである。
□十月号は他の特輯号であつたのを臨時変更したので、発行が遅延して
申訳がない、 その代り十一月号は矢継早やに発行して日遅れを取戻
したいと目下努力中である。
□十一月号は「上方敵討号」といふ今日までに纏められてゐない、上方
地方に行は れた敵討事件を網羅させた珍らしい特輯号である、次号
を御期待されたい。
(南木生)
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