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第57回正倉院展速報

 

 2005年10月29日(土)、正倉院展に行ってきました。クレセント(長岡良子先生のファンサイト)のオフとしてでしたが、途中からやはり一人の世界に入りましたねー。

 このコーナーでは、この時の「私の趣味にのみ立脚した」レポートを書きます(^^;


 この日は正倉院展の会期初日ということで、混雑が心配だったのですが、前夜から続く雨が幸い(?)したのか、むしろ(正倉院展としては)すいていると言ってもいいほどでした。学生の団体とぶつかるとたまらないので(態度と言うより人数)、土曜はかえって良いかも。

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 客層で目立ったのは、年配の方、それもご夫婦らしいカップルです。そして大半の場合、ダンナさんが嬉しそうに展示品の解説をしています。なかなかに微笑ましい光景で、これからの高齢化社会を象徴しているようでしたが、これが時々間違っているんですよね(^^;
 いえ、それにツッコミを入れるほど私は野暮じゃないです。二人にとって大切なのは、正確な知識じゃなくて、楽しい時間を過ごすことなんですから。

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 余談ついでにもう一つ。いくら雨でもちょっと寂しくない?昔の正倉院展のイメージからは考えにくい状況です。以前なら、事前にチケットを買っておかないと現地で2回行列することになり、大変だったものです。
 実は今回、チケットはヤフオクで入手しました。出品者が多いこともあってさほど高騰することもなく、ペアで600〜700円くらいで6枚入手できました。ところが当日、近鉄奈良駅の改札口を出たところでチケットを発売しており、それも当日価格(1000円)ではなく前売り価格(900円)でした。会期の終わりならともかく、初日ですよ!
 もしかして、人気がなくなってきているのでしょうか?

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 さて、そんなことより宝物です。

 もっとも、美術工芸に(というより芸術全般に)疎い私には、モノの善し悪しは正直分かりません。ただ、1200年の時を越えたとは思えない宝物の保存状況の良さにはいつも驚愕しますし、工芸品の気の遠くなるような精緻さに感銘し、それを実現し独占した律令国家権力の強大さを実感します

 素人目にも一際目立つのが、展示No.7「木画紫檀棊局」です。今回の目玉は、おそらくこの碁盤でしょう。確かに、とても千年以上前のものとは思えません。碁石をセットするためのちょっとした仕掛け(引き出し)も高級です。一緒に展示されている碁石がまた精緻に作られていて、指紋をつけるのも勿体ないです。
 そういえば、犀角に彩色を施した如意=孫の手(展示No.58)の展示されている前で、年配の方々が「こんなの使えない」と言い合っていました。

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 私が毎回楽しみにしているのが、文書です。

 戸籍にせよ紙背に書かれた東大寺の古文書にせよ、千数百年年前の肉筆です。工芸品以上に、現存していることが奇跡的です。それが目の前にあるのは、やはり素晴らしいの一語です。

 今回、特にオススメしたい文書は2つあります。

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 まずは、展示No.35「続々修正倉院古文書第三十五帙第三巻(紙充帳)」です。 文書そのものは、経師に対して支給された料紙の枚数を記録した帳簿(天平11〜17年)なのですが、注目は"色"です。
 というのも、この文書には、いろいろな色(青・赤・黄など)の顔料による書き入れがあるのです。強調なのか抹消なのか、黒墨で書かれた本文の上を、まるで蛍光マーカーでなぞったようになっているのです。
 また、もとの空白部分に、顔料で文を書いている箇所まであります。
 顔料なんてかなり貴重品だと思うんですが、写経所回りではけっこう気軽に使える物だったようです。
 それにしても、マークするならともかく顔料で文書くとは…。まるで、鉛筆を忘れてメーカーでノートをとる生徒みたいで、笑えます。こいつ、あとで上司に見つかって こっぴどく叱られたんじゃないでしょうかね。

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 もう一つは、展示No.31「続修正倉院古文書第五巻(御野国本簀郡栗栖太里戸籍)」です。
 もちろん、戸籍そのものがすでに素晴らしいものです。この戸籍は大宝2年(702)のもので、おそらく年期のある文書としては日本最古のものの一つですし…。
 ただ、今回私がウケたのは、戸籍そのものではなく、そこへの書き込みです。
 通常、戸籍には紙背文書があります。というか、保存年限(令の規定は30年)を越えて廃棄された戸籍が東大寺に下げ渡され、裏白紙(^^;として活用され、それが東大寺に残り、のちにそれをもとの戸籍に復元したものが、現在に伝えられている戸籍なのです。
 もっとも、その復元に結構間違えがあり、専門家によって色々とチャックされています。ですから、目の前にある戸籍をそのまま信じるのは危ないんです。

 そんなわけで、展示されている戸籍に紙背文書があるのは見慣れていますが、今回見た戸籍は、表(というかウラというか)の戸籍の面にも、バンバン書き込みがなされていたのです。つまり、戸籍のウラを使って書類を書き、それも不要となって捨てられたあと、その戸籍面(本来の表)の行間の隙間の空白をメモなどに利用しているのです。
 しかも、展示されている最初の方はまだきちんとした再利用なのですが、しだいにいい加減になっていき、紙の下方で書き込みが(書ききれなくて)カーブしたり、さらには文字の練習(習書)までしているのです。

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 当時の文書をじっくり見ていると、文字の乱れやいい加減さ、丁寧さ、書き込みの筆の走りなどを感じることができます。また、どんな字を練習しているのかも面白いし、喜んで色々な色を使っていたり、紙の表まで使っていたり、そういう一つ一つに、線数百年前の人の、感覚というか、考えたことが、空想ではなく目の前にある。私はこれが大好きなんです

 残念だったのは、せっかく買った図録なのに、御野国戸籍の表への書き込みのところは写真がおさめられていません。うーん、つまらん。カラーマーカーの方は写真がありますが…。

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 あと、布製のお面とか、巨大な象牙とか、トナカイの角とか、サイの角の杯とか、なかなか目立つものもあって楽しかったですね。

 また、同じチケットで常設展にも入れます。お天気が悪かったこともあって常設の方も見てみましたが、さすがになかなかのものが揃っています。何気なく国宝があったり…。

 いま、中国の青銅器の特別展示も行われています。これも見れます。なかなかお得かも。


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