おやま事務所だより
子供を狙う悪質な事件が多発する中、小さな子供を持つ親が安心して働くことができず、最終的には退職を余儀なくされるなどということが起こりうる事態になっています。そのような状況をふまえ、企業は、育児や子供の送迎のために勤務時間を短縮したり、在宅勤務を拡大したりする等の努力を始めています。企業側は、優秀な人材を確保する新たな方法として、従業員に「仕事と家庭」を両立できる職場環境の提供をしていく傾向になりつつあります。
政府による育児支援策として、法律では3歳未満の子供を持つ労働者のいる企業に対して勤務時間短縮等の措置を義務付けていますが、企業としてこの期間を小学校3年生修了時までに拡大している企業があります。また、平成17年4月の「育児・介護休業法」改正により「子の看護休暇制度の導入」が新設されましたが、法律の規定では子供が病気や怪我の場合にのみ利用できる制度となっています。そこで、これを病気や怪我のときだけでなく、学校等の行事でも気軽に休暇を取得できるように、年10日を育児休暇として取得できる制度として導入している企業もあります。また別の企業では、労働基準法では出産の6週間前から取得可能となっている産前休暇について、妊娠初期の段階から取得できるようにする企業も出てきています。さらに、給与等の手当の面でも、共働き家庭の増加により配偶者手当が活かされなくなってきており、これを思い切って廃止し、子供への手当を増額する企業もあります。
たとえどんなによい制度を創設しても、ただ導入するだけでは意味がありません。職場や上司の認識を高めるための指導等も併せて行わなければ、従業員に対して、企業が本気で育児支援に取り組んでいることが伝わりにくいでしょう。
企業が子育て支援に力を入れる背景には、年功序列に代わる成果主義型の人事制度の広がりが考えられます。つまり、育児等の時期には、育児等をしない従業員と賃金の格差が生ずるのを認める、代わりに、勤務時間の短縮や在宅勤務等の働き方の多様化を求める声が高まっているということです。少子高齢化や団塊世代の一斉退職の時代を迎え、人手不足が予想されている将来を考え、今後は女性がますます企業の貴重な戦力になるだろうという思惑が重なり、企業の育児支援制度導入に拍車をかけているようです。
社会保険庁は、国民年金に加入していない人を減らすため、住民基本台帳ネットワークの情報を本格的に活用する方針を進めています。これは、住基ネットの氏名、生年月日等の個人情報を基に、毎年34歳の人の年金加入状況を総点検し、未加入者に対して加入を促すことを目的としています。
なぜ「34歳」を対象としているのかというと、年金の最低加入期間である25年要件を満たすためです。年金を受給するには、最低加入期間として25年が必要とされています。ですから、加入期間がたとえば24年11カ月だった場合、たった1カ月足りないだけなのですが、年金は1円も受給できないこととなっています。したがって、60歳に到達するまでに25年間の年金加入期間を満たすには、35歳がぎりぎりの年齢となるというわけです。
そういった実情を請けて、今国会に提出される社会保険庁改革関連法案に住基ネットの活用を盛り込み、来年度から着手することとしているようです。
これまでの対策
政府はこれまでにも、若年層に対し「学生納付特例」や「若年者納付猶予制度」等を設け、年金未納を減らすための措置を行ってきています。しかし、若年層の納付率は低く、平成16年度の納付率が63.6%であるのに対し、年齢階層別でみると、40歳未満の納付率はこれ以下となっており、20歳台前半では49.6%と、50%を切っているのが現状です。
また、全体の年金の納付率も決して高いとはいえません。こういった状況にかんがみ、現在でも、経済的な理由等で保険料を納めるのが困難な場合には、申請により保険料が全額免除または半額免除となる制度がありますが、平成18年7月からは新たに1/4免除、3/4免除の新しい割合も加えられます。
厚生年金未加入事業所への対応
4月から社会保険庁は、厚生年金と中小企業の会社員らが加入することになっている政府管掌健康保険に加入していない企業や個人を、強制的に加入させる措置を強化する方針です。強制加入は、社会保険庁の文書や個別訪問による加入の呼びかけに応じない事業者に対して行われており、現在は従業員20人以上の事業所がその対象となっていますが、これが15人以上の従業員がいる事業所等へと拡大されます。具体的には、未加入の事業所に対して事前に立入検査を行う日を通知し、従業員名簿の提出を促し、職権で加入手続きを進めます。そして、もし強制加入させた事業所が保険料の納付を拒否した場合は、銀行口座などを差し押さえるなどの方法で保険料を払わせるとしています。
厚生年金と政管健保はすべての法人事業所と5人以上の従業員がいる個人事業所に加入義務があります。しかし、事業主が保険料の半額を負担することを嫌い、加入手続きを怠ったり、違法に脱退する事業主が途絶えず今回の対応となったようです。
会社への通勤手段は人により様々です。電車通勤の方やマイカー通勤の方、自転車や徒歩での方もおられるでしょう。例えば、事前に電車で通勤すると届け出た者が、会社に偽って自転車で通勤していました。そのことが判明した場合、会社側は支給した通勤手当の返還を求めることはできるのでしょうか。
−通勤手当とは−
通勤手当は通勤にかかる費用を、会社が現金または定期券などの現物で社員に支給する制度です。本来通勤にかかる費用は労働者が負担すべきものですが、社員の福利厚生の一環として住所や通勤経路の届出を求めたうえで、合理的な経路による費用を賃金の一部として支給する会社が多くなっています。
−返還は−
通勤手当は賃金なので、通勤に使ったかどうかにかかわらず受け取ることができるとの見方もありますが、実際にかかる費用を支給する仕組みなので、使っていないならば返還しなくてはならないとの見方が大勢です。
本来払わなくてもよい通勤手当を払うことになれば、「会社に経済的損害を与えてはならない」という労働契約上の信義則に違反します。また、自転車通勤なのにあたかも電車などを利用しているように装えば、通勤経路の虚偽申告になります。
−返還の範囲と処分−
今回のように会社が社員の不正な行為により過払いとなった賃金の返還請求をする場合は、民法上の不当利得返還請求権に基づいて行うことになります。したがって、労基法上では賃金の支払い請求権は2年(退職金5年)で消滅しますが、民法上の時効に従うこととなり、過去10年以内の不正受給分までさかのぼって返還請求することができることになります。
加えて懲戒処分として、賃金の減給処分をすることが考えられますし、また、降格、出勤停止などの処分をすることも考えられます。
−通勤災害でも−
通勤手当の不正受給は会社の処分の対象になるだけではありません。万が一、届出と違う経路での通勤途上に交通事故に遭遇した場合、労災保険上の通勤災害として認められない可能性もあります。それは、通勤災害による給付の対象が合理的経路の途上での事故などに限定されており、届出と違う経路での通勤が、合理的経路であったとはみなされない可能性があるからです。
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