おやま事務所だより
2005年4月号
・通勤災害制度の対象を拡大
・残業代未払い問題
・会社を退職した方が創業する場合の助成金 |
厚生労働省が労働政策審議会に諮問していた労働安全衛生法等の改正案について、おおむね妥当とする答申がなされました。厚生労働省では、この答申に沿って改正法案を今国会に提出し、早ければ平成18年4月1日より施行されることになります。
◆現行の通勤災害の保護範囲
通勤災害の保護制度は、労働者が通勤途中に負傷した場合に、業務上災害に準じた措置を労災保険から行うことを目的としています。通勤の定義として「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」と定められ、具体的には、自宅などの「住居」から会社、工場などの「就業の場所」へ向かう行為、または就業の場所から住居へ帰る行為であること等が要件となります。
◆複数就業者の事業場間の移動
始業前や終業後に、別の会社でアルバイトなどをしている社員(いわゆる複数就業者)が、アルバイト先から会社へ直接向かう途中、あるいは終業後にアルバイト先に直接向かう途中の災害は、現行の制度では「住居と終業の場所との間」にはならないため、通勤災害の保護の対象外とされています。
しかし、ワークシェアリングの推進や社員の副業を解禁する企業が増えてきていること等に伴い、複数の企業で就業する者が増加しつつあるという現状があり、複数就業者の事業場間移動についても、通勤災害の保護の対象とすることが適当であるという提言がなされました。
最初の会社から次の会社への移動は、次の会社への出勤行為にあたるため、この途中で生じた災害については、次の会社の労災保険を適用するという処理になりそうです。なお、会社が兼業を禁止しているか否かについては関係なく、通勤災害として保護されることになると考えられます。
◆単身赴任者の赴任先と帰省先の移動
単身赴任者が週末などに家族の住んでいる自宅に戻る間に災害が生じた場合、行政解釈としては、会社から直接、家族の住む自宅へ帰る場合や、その自宅から直接会社に出勤する場合については、原則として通勤災害として認められています。
しかし、単身赴任先のアパート等から家族の住む自宅に帰る「住居間移動」については、通勤の定義にある「住居」と「就業の場所」との往復行為とは認められていません。
実態として、単身赴任者が家族の住む自宅に帰省する場合、帰省の準備のために一度、単身赴任先のアパート等に戻ってから自宅に戻ることが多いという現状があり、単身赴任先の住居を「就業の場所」とみなして通勤災害として保護すべきという提案もあわせてなされています。
“人材派遣会社S社が2年間の未払い残業代など計約2億8,000万円を支払った”、“家電量販店大手のB社が社員を管理職扱いし、残業代1億2,700万円の不払いで社長ら書類送検”など、最近の新聞等でも多くの残業代未払い問題が取り上げられています。
◆労働基準監督署の調査
労働基準法や労働安全衛生法などの法令違反の発見と、その違反事項の是正を目的に、労働基準監督署の労働基準監督官が事業場へ立ち入り調査を行っています。
この調査で特にチェックされる項目として、時間外・休日労働協定の提出、割増賃金の適正な支払い、就業規則の作成・届出、労働条件の書面による明示、定期健康診断の実施、18歳未満労働者の年齢証明の備えつけ等があります。
労働基準監督官には、事業場への立ち入り権限や帳簿書類の提出を求める権限、使用者および労働者に対して尋問を行う権限があります。
労働基準法等については、法令違反をしたからといってすぐに罰則を科されるということはほとんどありません。法令違反が、深刻で重大な問題を引き起こさないうちに、労働基準監督署が監督を行い、調査、是正を求めるという監督制度となっています。
◆適正な残業代の支払い
労働基準監督署の調査で残業代の未払い等が発覚すると、過去2年間さかのぼって支払うことはもちろん、予想外の出費で会社の経営にも悪影響を及ぼしかねません。また、会社が大きくなればなるほど、新聞等に取り上げられ、会社の社会的信用が失墜し、その回復には多大な労力が必要となってしまいます。
出勤簿やタイムカードが実態どおりに記録されているか、割増賃金の計算であれば、時間外労働が1.25倍、休日労働が1.35倍、深夜労働が0.25倍の法定以上で計算され、給与締めごとに適正に支払われているか、36協定(時間外・休日労働に関する協定書)は毎年提出されているか等を再度確認し、いつ調査が入っても証明できるよう、日頃から整備しておくことが重要です。
労働基準監督署の調査は、無作為・定期的に対象になる場合もありますが、社員からの「情報提供・申告」による場合も多くあります。労働の対価としての給与は、社員から見ても、わかりやすい給与体系にしておくことが大切なポイントです。
創業時は、何かと資金が必要となります。創業を考えていても、創業にかかる資金を考えるとなかなか一歩を踏み出せないこともあるかと思います。金融機関等で資金を調達する場合と異なり、助成金は“返還する必要のないお金”です。失業者の自立を積極的に支援しようという趣旨で、厚生労働省が行っている助成金事業の1つとして「受給資格者創業支援助成金」があります。
助成金の申請にあたっては、創業計画書を作成し、公共職業安定所長の認定を受けることが必要となります。兼業や副業としての創業は認められませんが、自分が代表者となって本気で創業を考えておられる方は、一度検討されてみてはいかがでしょうか。
◆受給資格者創業支援助成金とは
雇用保険の受給資格者自らが創業し、創業後1年以内に雇用保険の適用事業の事業主となった場合に、その事業主に対して創業に要した費用の一部について助成することにより、失業者の自立を積極的に支援しようとするものです。
◆支給対象となる事業主
○雇用保険の支給要件期間が5年以上ある受給資格者であること
○法人の設立日または個人の事業開始日以後、3カ月以上事業を行っていること
○法人の設立日または個人の事業開始日以後、1年以内に、継続して雇用する労働者を雇い入れ、雇用保険の適用事業の事業主となっていること
※ 法人の設立日または個人の事業開始日の前日までに、創業計画の認定を受けることが要件となっています。
◆支給される額
法人等の設立日から3カ月以内に支払った対象創業経費の1/3(上限200万円)が支給されます。ここでいう対象創業経費とは次のとおりです。
○創業に関する事業計画作成費(経営コンサルタント等の相談費用等)
○雇用管理改善事業費(労働者の募集・採用に要した費用等)
○設備・運営費(事業所の賃借料、設備・機械・備品等の購入費等)
○知識・技能習得費(資格取得費用、講習・研修会の受講費用等)
上記の額については、前の会社の離職日後から第1回の支給申請までの間に支払いが完了していることが要件となりますので、注意が必要です。
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