デジタル写真全盛の今、モノクロ写真は危機的状況に置かれている。
写真用のモノクロフィルムやモノクロ印画紙は製造停止に追い込まれ、フィルムや印画紙用の写真向け薬品の種類もあっと言う間に少なくなった。
モノクロ写真製品から撤退する写真メーカーも出てきている中で、モノクロ写真の存亡が問われている。
モノクロ写真自体の良さをどう表現するかが難しいところで、デジタル写真と比較する上での数値的な評価や解り易いアドバンテージが存在せず、しかも手間がかかるイメージを持たれてしまっては、何ともしがたいのが現状だ…。
しかし、実はまだまだ数値化できる、見た目にもはっきり分かるデジタル写真に対するアドバンテージがモノクロ写真にはある。それは粒状性だ。
コピーフィルムの軟調現像による超々々々微粒子フィルムからのきめこまやかなモノクロプリントは決してデジタルプリントでは太刀打ちできないのだ。
かつて私はこの超々々々微粒子現像による写真作品創りを手がけていた事がある。フィルムはフジのコピーフィルム[ HR-U135 ]を好んで使っていた。粒状性は写真向け35mm版フィルムから大全紙でプリントしても無粒子に近く、2倍紙でプリントしても粒子が目立つ事はほとんど無い。そのため遠くの背景に写っている標識の細かい文字も、ピントさえ合っていれば楽々と読むことが出来るほどである。
この驚異的な粒状性と引き換えにコントラストが低下して、プリントするのに困難を伴うが、それをクリアーして焼きあがったプリントのリアリティーは、驚愕モノである。
ここであえてこの超々々々微粒子現像のノウハウを一部明かしておこう。
フジのコピーフィルム[ HR-U135 ]使用の場合、撮影感度はISO 1.5、現像時間はD76の1:3希釈で20℃8分である。ただし、撮影条件によってばらつく事があり、またシビアな現像液温管理も要求されるので、各自試してみて欲しい。
ちなみにプリント時はとても困難を伴う。基本は多階調マルチグレード印画紙を使用し、フィルターを複合的に使用することでコントラストを稼ぎ出す事になる。階調が印画紙より少し狭くなるためだ。
私がこの困難なプリントをモノにするには、約三年の月日を必要とした事も付け加えておく…。