監督 ヴァヒド・ハリロジッチ Vahid HALILHODZIC

かつて仏像彫刻家の西村公朝氏が荒れ果てた愛宕念仏寺の住職に就任する際、氏の私淑する清水寺の貫主は、「良い寺ほど少し悪くしても批判されるが、それだけ傷んだ寺ならば、草一本むしっても、石一つ動かしてもおまえは復興者だ」と語り励ましたという。学ぶところの多い話だが、もちろんパリはそんなに甘くない。

ボスニア・ヘルツェゴビナ出身の名将のキャリアは、驚きに満ちたものだ。選手時代は86-87シーズンにPSGでプレーし、ナントでは得点王に輝いたこともあるアタッカーだった。引退後指導者の道に進み、モロッコでラジャ・カサブランカをアフリカチャンピオンに押し上げた後、98年に2部の下位に低迷していたリールの監督に就任。知的な采配による堅固な組織サッカーで、00-01シーズンに1部昇格を果たし、その年を3位で終了してクラブをチャンピオンズリーグ出場に導く快挙を成し遂げた。今季、経営難にあえぐPSGが、低予算の中でも確固たるチーム作りの実績があるハリロジッチをレンヌから招聘した狙いは、悲しいほどによく分かる。

就任早々非情とも思える大鉈も振るい、厳格で一徹なイメージを裏付けたが、コメントにさりげなくジョークを差し挟む余裕も見せるなどなかなか懐が深い。開幕以来目まぐるしくフォーメーションと選手のポジションを変更し、チームの形を模索しているが、前任のように「単なる思いつきでは?」などという疑念を一切抱かせない揺るぎない風格はさすがである。

<スタッフ> アシスタントコーチ
GKコーチ
フィジカルコーチ
ブルーノ・バロンシェリ、ブバカール・サール
ドミニク・レクレルク
シリル・モワン、ウアリ・アンリ


<チーム>

1 リオネル・レティジ Lionel LETIZI

GK 1973/5/28 フランス 187cm86kg
93−96 ニース
96−00 メス
リーグ屈指の安定感を誇りながら、度重なる負傷に苦しむガラスの守護神。昨季初戦でオセールのシセと衝突して以来コンディションの不調が続いているが、今シーズン前、リヨンのクペとのトレードのオファーをフロントが直ちに断ったように、パリはその完全な復調を待ち続けている。

16 ジェローム・アロンゾ Jerome ALONZO

GK 1972/11/20 フランス 186cm83kg
93-95 ニース
95-97 マルセイユ
97-01 サンテチエンヌ
彼がキスするゴールポストには、やはり小さな神様がいるのだろうか。正GKが怪我がちなため、試合当日に出番が回ってくるなどということはざらであるが、逆境にこそ奇跡のプレーを連発する第2GKの生ける伝説。しかし何と言ってもその真骨頂は試合の後、会見でのトークで発揮されるのである。

30 モアメド・ベナムー Mohamed BENHAMOU

GK 1979/12/17 フランス 175cm72kg アルジェリア代表
モモという愛称で呼ばれる身長175センチの小さなGKは、パリのアルジェリア移民の家庭の出身で、パリ・レッドスターからPSGの下部組織に移った。今季新たな第3GKとしてプロ契約を結んだばかり。体格のハンディはたゆまぬ筋力トレーニングでカバーする頑張りやさんだ。敏捷さと左足には密かに自信を持っている。

2 ガブリエル・ハインツェ(エインセ) Gabriel HEINZE

DF 1978/4/19 
アルゼンチン 178cm78kg アルゼンチン代表
97-98 ニューウェルス・オールドボーイズ
98-99 バジャドリー(スポルティング・リスボン)
99-01 バジャドリー
シーズン前には有名クラブからのオファーに揺れたが、何があってもその闘志は変わらない。労をいとわぬタフなディフェンス、気迫のこもったタックル、SBで起用されれば遮二無二左サイドを駆け上がる姿には、ある種初期衝動的なすがすがしさを感じる。これでもう少し精度が上がればなのだが、楽しげに彼の名をコールするサポーターにとっては大したことではないのだろう。ピッチでの姿とは裏腹に、普段は内気な人だというから人間は分からない。>>

3 ファン・パブロ・ソリン Juan Pablo SORIN

DF 1976/5/5 アルゼンチン 173cm68kg アルゼンチン代表
94-95 アルヘンティノス・ジュニオルズ
95-96 ユベントス
96-00 リーベルプレート
00-02 クルゼイロ
02-03 ラツィオ
02-03 バルセロナ
そのキャリアにおいて数々のビッグクラブを渡り歩き、タイトルを獲得してきたが、彼はまだ何も満足してはいない。勇猛果敢な攻め上がりとタイトなマンマークで知られるこの左サイドバックは読書家としても有名で、情熱とインテリジェンスとキャプテンシーを併せ持つ選手である。ただのヘヴィ・メタルのおニイちゃんではないのだ。

5 ベルナール・メンディ Bernard Mendy

DF 1981/8/20 フランス 180cm77kg フランスユース代表
98-00 カーン
00-02 PSG
02-03 ボルトン・ワンダラーズ(レンタル)
彼について最初に思い出す映像は、01年のワールドユース大会のもの。アルゼンチンのドミンゲスを骨折させた後、自暴自棄同然のプレーで退場する姿は悲しい光景だった。あれから2年、レンタルからパリに戻った彼は、左右どちらもこなせるサイドバックとして成長を見せている。強力なロングシュートなど、キック力も魅力。

12 タラル・エルカルクーリ Talal EL KARKOURI

DF 1976/7/8 モロッコ 186cm78kg モロッコ代表
94-00 ラジャ・カサブランカ
00-01 PSG
01   アリス・サロニカ
01-03 PSG
03   サンダーランド(レンタル)
メンディと同じく今季イングランドからレンタルバック。時に度が過ぎたディフェンスで手に汗握る場面もなくはないのだが、攻撃の起点として良いセンスを持っている。ギャンガン戦では右SBも務め、「任されれば嫌がらずにやるけど、186cmもあるSBなんてそう見かけないよね」。4バック全員CBが本職という不思議な試合だった。

13 エリク・キュビリエ Eric CUBILIER

DF 1979/5/9 フランス 181cm75kg
99-01 ニース
01-03 モナコ
ニースの下部組織出身の右サイドバックは、昨季はエル・ファキリにポジションを奪われ出場機会に恵まれなかった。新天地を求めてパリにレンタル移籍し、頑張っているとは思うのだが、ペナルティエリア内での勝負弱さは大問題である。一層の奮起が望まれる。

15 パウロ・セザール Arruda Parente PAULO CESAR

DF 1978/8/26 ブラジル 176cm75kg ブラジル代表
95-96 ナシオナル・サンパウロ
96 フラメンゴ、97フルミネンセ
98 ビトーリア/ブラジル
99 ボタフォゴ、バスコ・デ・ガマ
00 ナシオナル・サンパウロ
00-02 フルミネンセ
卓越したテクニック、攻撃力とともに、そのむら気はブラジル人選手の証。実際シーズン前には、監督は彼のコンスタンシーを疑っていた。しかし、パリ残留を願い出た後キャンプで頑張りを見せ、一定の評価を得るのに成功したようだ。チームが人員を縮小した今季、複数のポジションで質の高いプレーができるのは強み。
(冬の移籍市場でサントスにレンタル移籍)

24 ジョゼ・ピエールファンファン Jose Karl PIERRE-FANFAN

DF 1975/7/26 フランス 189cm86kg
97-01 ランス
01-03 モナコ
アンティル諸島出身の頑健なセンターバック。かつてランスで一緒だったデウーと共に堅固な壁を築いている。その味わい深い風貌には、思わず生年月日を確認し直してしまった。モナコではキャプテンを務めたこともあるそうだが、怪我で控えに回った昨季は、チームの快進撃を喜びながらも自分自身に無力感を抱いていたという。パリでは悔いのないシーズンを送ってもらいたいと思う。

27 ジャン=ミシェル・バディアーヌ Jean-Michel BADIANE

DF 1983/5/9 フランス 182cm72kg
今季CFAから上がってきた若手の1人で、たくましいフィジカルを持つ有望なDFとのこと。しかしただちょっと、性格がおとなしいらしい。下部組織のコーチ陣は、「もっと自己主張しないと」と気を揉んでいる。

6 フレデリク・デウー Frederic DEHU

DF 1972/10/24 フランス 187cm80kg
89-99 ランス
99-00 バルセロナ
序盤戦の大量失点を見かねた監督は、窮余の策として、DHを務めていた今季のキャプテンをCBにコンバートした。経験豊かなカバーリングとそつのない繋ぎで、新しいDFラインはおおむね良好に機能している。責任感の強い模範的な選手であり、ベテランと呼ばれる年齢になった昨今は、かつての衝動的な面も幾分影をひそめた。若手の信頼も厚い良きキャプテンである。

10 ブランコ・ボスコヴィッチ Branko BOSKOVIC

MF 1980/6/21 セルビア・モンテネグロ 185cm75kg セルビア・モンテネグロ代表
-02 レッドスター・ベオグラード
ヤキン解雇の直後に新10番獲得の報を聞き、イソイソと代表の試合を見て目にしたのは、デンジャラスなクロス、CKを蹴りまくるフォトジェニックな若者の姿だった。申し分のないテクニックを持ち、パウレタにパスを出すという重責を担いつつ、移籍後の数試合で早くもその左足でパルクを魅了した。元々はトップ下の選手であり、慣れない左サイドのポジションとフランスリーグのスタイルに戸惑いも見せているが、ここが正念場である。目標はサヴィチェヴィッチだそうだ。

18 セリム・ベンアシュール Selim BENACHOUR

MF 1981/10/8 チュニジア 170cm73kg チュニジア代表
00-01 PSG
01-02 マルティーグ(レンタル)
02-03 トロワ(レンタル)
パリ育ちの小さなゲームメイカーが、6ヶ月のレンタルからPSGに復帰した。開幕前には次のレンタル先を探すよう言い渡されたが、いくつかあったオファーを拒んでパリでのポジション獲得に賭けている。今季初先発したギャンガン戦では、ボスコヴィッチの退場後、素晴らしい活躍でパウレタのお褒めをもらった。サポーターにも人気がある選手。

19  ロリク・サナ(カナ) Lorik CANA

MF 1983/7/27 アルバニア 185cm77kg アルバニア代表
02-03 PSG
メーテルリンクの“青い鳥”は「大切なものは身近にある」という教訓くさい話だが、このコソヴォ出身の若きアルバニア代表は、まさにパリにとっての青い鳥だった。恵まれた体格に東欧らしいテクニックを兼ね備え、トップ下からストッパーまでこなすオールマイティーな選手。今季はCFAでも務めたボランチで起用されて能力を存分に発揮している。「初先発の試合でも大してプレッシャーはなかったし、トップチームとCFAのレベルの違いを知りたかった。大いに楽しみながらね」。度胸も破格。2003年アルバニア最優秀選手。

20 ウーゴ・レアル Hugo LEAL RIBEIRO

MF 1980/5/21 ポルトガル 179cm78kg ポルトガル代表
96-97 アルベルカ
97-99 ベンフィカ
99-01 アトレチコ・マドリー
度重なる怪我と不可解な判定。PSGでの過去2シーズンは、不運の連続という他はなかった。今季は監督の構想から外れ、出場機会には恵まれていない。繊細なテクニックを持ち、DHとしての守備的貢献よりはゲームメイクを得意とする選手だが、彼にとっての最大の不幸は、もしかするとその資質を活かせるリーグはここではないのかもしれない、ということではないだろうか。

21 ロマン・ロッキ Romain ROCCHI

MF 1981/10/2 フランス 183cm75kg
01-02 カンヌ
若手がしのぎを削るボランチのポジションでレギュラーを目指す。中盤での守備を得意とし、わずかな出場機会を目にした限りでは、意欲あふれるプレー振りが印象に残っている。プレーの参考にしているのはユベントスのタッキナルディらしい。「彼はめったに試合でしくじらないからね」。ちょっと、微妙な感じだ。

23 モデスト・エムバミ Modeste M'BAMI

MF 1982/10/9 カメルーン 172cm67kg カメルーン代表
99-00 ディナモ・ドゥアラ
00-03 スダン
オフシーズンのDH獲得が暗礁に乗り上げたパリフロントが彼にコンタクトした時、彼はまさにイングランドのクラブと契約するところだった。00年オリンピックの優勝メンバーであり、コンフェデレーションズカップでも注目を集めた期待の若手。時に簡単にボールを失う場面もあるが、テクニックと展開力に優れ、シュート力もある。ちなみに、彼が契約しかけていたクラブというのはウォルバーハンプトン。申し訳なかった。>>

8 ヘイナウド Da Cruz Oliveira REINALDO

FW 1979/3/14 ブラジル 187cm77kg
99-01 フラメンゴ
01-02 サンパウロ
レンタル先のブラジルでゴールを量産し存在感を示したが、PSGの一員としてリーグでプレーするのはこれが初めて。周囲のいぶかしげな視線をよそに、シーズン折り返しまで6ゴール2アシストを記録。ある意味ブラジルらしい、意外性のストライカーである。どことなく不敵なたたずまい、好きな選手はロマーリオということでドキドキしたが、幸いその憧憬はピッチ内に限定されているようだ。もしかすると、凄い大物なのかもしれない。

9 ペドロ・パウレタ Pedro PAULETA

FW 1973/4/28 ポルトガル 180cm78kg ポルトガル代表
97-98 サラマンカ
98-00 デポルティボ・ラコルーニャ
00-03 ボルドー
ただゴールを決めるために磨きぬいたテクニックとセンスで、ボルドーでの3季で65ゴールを挙げたリーグ得点王。かつて自身もFWだったハリロジッチが三顧の礼でパリに迎え、最大級の賛辞を惜しまない選手である。序盤は前線で孤立しがちだったが、渡せば何とかしてくれる決定力は頼もしい限り。ゴールゲッターながら9.5番的な仕事も得意だ。相手ゴールを見据える目は常に冷静だが、ふがいない試合展開では、ピッチで味方選手を叱り飛ばす熱い面も持っている。

11 ファブリス・フィオレズ Fabrice FIORESE

FW 1975/7/26 フランス 177cm71kg
91-97 リヨン
97-02 ギャンガン
前線にボールが渡らなかった序盤戦、パウレタのゴールのほとんどをアシストしていたのがこの人。華麗さはなくとも、彼は自分のなすべきことを知っている。90分間献身的に右サイドを走り、クロスを入れ、重要な場面でゴールも決める。骨のある選手だ。チームのムードメイクにも一役買う存在で、レンタルでパリに来てから、今では副主将の候補に名前が挙がるまでに出世した。

25 アリウーヌ・トゥーレ Alioune TOURE

FW 1978/9/9 フランス 170cm65kg
96-01 ナント
01-02 マンチェスター・シティ
昨季、どうにも攻撃がこんがらがり煮詰まった試合終了間際に、交代でピッチに入るやシンプルにサイドを突っ走る姿には、案外こういうのが効く時もある、ということをつくづく実感したものである。武器はそのスピードで、昨季のナント戦では、DFの背後に飛び出して素晴らしいゴールを決めた。このナントのスタジアムで、彼は5季で3点しか挙げることができなかったのだ。

26 バーソロミュー・オグベチェ Bartholomew OGBECHE

FW 1984/10/1 フランス 179cm79kg ナイジェリア代表
PSG下部組織の星であり、トップチームデビュー後の活躍で注目を集めた期待の若手。ここ最近は怪我が多く、今季はなかなかそのプレーを見る機会がない。目を見張るスピードで相手ゴール前まで一気に駆け上がるが、そこから1対1でGKにしてやられてしまう場面もままあるのは、さすがに若さというものだろうが、その将来性は疑いようがない。言動を見ると、素顔もしっかりした若者のようである。
(冬の移籍市場でバスティアにレンタル移籍)

+後の選手も追ってUpいたします。