《オノレ…オノレ……オノレェェェッッ!!!》
 殺気が一気に増幅し、先刻よりも強力な衝撃波が無数に放たれる。
「ムキになっちゃって…見苦しいねぇ」
 蓮は再びブーメランを構えるが、しかし薫が右手でそれを制した。
「薫?」
「お前だけにいい格好はさせられん」
 微かに笑うと、薫はゆっくりと刀を抜く。そして《気》を込めて振り上げた。
「《風神》…」
 刀身が風を纏い、振り下ろすと同時に竜巻となって突き抜ける。放たれた衝撃波はいとも容易く風の奔流に飲み込まれていった。
 しかし、幾つかの衝撃波は運良く竜巻を逃れ――ミドリを標的に降り注いだ。ミドリの悲鳴が爆音の中に飲み込まれてゆく。
 獣が勝ち誇った声で叫んだ。
《ハハハハハ! ザマヲ見ロ! モウ女ハ殺シテシマッタゾ!!》
 しかしその笑いも長くは続かなかった。
 爆風が晴れたそこに――トンファーを十字に構えた震が立っていたからだ。勿論ミドリはその背に庇われて、傷ひとつ無かった。
《………!!!》
「しゃらくせぇ…。この程度の力で神たぁ、おこがましいにも程があるぜ」
 震は獣を鋭く睨みつけたまま、不敵に口の端を吊り上げた。
「――燃えちまいなァッ!! 《業火》!」
 片手に持ったトンファーが真一文字を描いた刹那、そこから燃え盛る炎が生じ、気合と共に撃ち出されたそれは容赦なく鍵神を直撃した。あまりの熱と痛みに獣が絶叫する。
《グアアアアッ!!!!》
 苦しみ悶えながら向き直り、睨み付けたその先にあるものを見て、獣は驚愕に目を見開いた。
 そこにあったのは――真っ直ぐにこちらを見据えて弓を構え、今まさに矢を放たんとする怜緒の姿。
《ヤ、ヤメロォッ!!》
「もう――終わりだよ」
 閃光の矢が放たれた。
 先ほどのそれとは比べ物にならない程のまばゆい輝きが、鍵神の身体を貫いた。
《グワアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!》
 断末魔の悲鳴がこだまする。怜緒は静かに目を閉じた。
「…今度は君が眠る番だよ」
《馬 鹿 ナッ…馬 鹿 ナァーーーッ》
 貫かれた部位から光を溢れさせながら、鍵神の身体が霧散していく。その姿が完全に溶けて消えたかと思った瞬間、五人は邪気の晴れた神社の境内に立っていた。