「化け物…消えたね」
「邪気も感じられない」
「景色も平和そのものだぜ」
 五人は顔を見合わせた。完全に、危機は去ったのだ。
「ってことは……初勝利、だな!」
 多少遅まきながら、怜緒達に勝利の喜びが沸き起こってくる。
「あの、皆さん。ありがとうございました」
 ミドリは一同に深く礼をし、次いで怜緒個人に向き直るとその手を取った。
「…ミドリは、決して貴方の事を忘れません…!」
 頬を染めるミドリに、怜緒は石になった蓮の方を気にしつつもはにかんだ様子で笑った。
「さぁて、そろそろ現実に帰るか! おい、約束は覚えてるよな?」
「明日の6時に東京タワー、だろう? 忘れてはいないぞ」
 よもや言い出しっぺが忘れてはいないだろうな、と話を振られ正気に返った蓮は、やけに明るい調子で「もちのロンよ!」と繰り返す。薫はもう怒る気にもならないのか苦笑するだけにとどまった。
「じゃな、ミドリちゃん。困ったことがあったらいつでもおにーさん達を呼びなさい」
「はい」
 すっかり調子を取り戻した蓮の言葉に、ミドリは素直に微笑んだ。
「じゃあ、皆さん――お元気で、さようなら!」
 そう言ってミドリが一礼したその映像を最後に、夢は終わった。



「…おやおや。夢が終わるようですよ」
 白い装束の男が肩を竦めた。
「そのようだな…引き上げるか」
 黒い装束の男が受ける。
「しっかし見事に演じきりましたねぇ」
 立ち上がった男の黒装束を一瞥し、白装束は楽しげに笑った。
「実に見事な道化ぶり。貴方にこんな演技力があったとは」
「フン…」
「いや…むしろ驚くべきはそこではないかな」
 白装束の男は考えるような仕草を見せた。
「――貴方に道化を演じてまで救いたいものがあっただなんて…ねぇ」
 からかうような言葉の響きに、しかし黒装束は返事もしない。
「わからないでもないですけどねぇ」
 返事が無いのを肯定と受け取ったのか、白装束は満足げに手にした横笛で肩を叩いた。
「ここで散らせるには惜しい才能…」
「……それだけではない」
「……?」
 黒装束が洩らした呟くような言葉に興味を引かれたのか、白装束は黙ってその先を促した。
「彼等ならば…真にこの現世の為に戦ってくれよう」
 覆面が外され、艶やかな黒髪が風に靡いた。
「世捨て人の貴方が、そう感じると…」
 真意の掴めない口調で白装束が言った。
「俺が棄てたのは現世ではない…」
「成る程……そうでしたね」
 空間に歪みが生じた。夢の終わりは近い。
「俺はもう行く。助太刀してくれた事……礼を言うぞ」
 黒装束は振り返らずに歪みの中に消えた。
「いえいえ」
 白装束も笑いながら歪みに足を踏み入れる。
「私も…この世の行く末に興味がありますから」
 男の姿は歪みと共に消え、再び平和な光が差した。