hierograph HOME

おもしろ言語


Aはなぜ「エイ」とよむのか、
「武蔵」はなぜ「むさし」か、
「エッグ」は「タマ語」か、
ヤキイモとヘソクリの関係は?
などなど、
知っていると、ちょっと楽しい言葉の雑学、
まずは目次・索引を御覧になって、お好きなところからお読み下さい。

最近の話題:シロカネは白金にあらず:銀の名前
      ホワイトゴールドが白いわけは?


タベルナで食べてもいいの?

ギリシャやトルコでは料理店をタベルナといいます。まるで「食べるな」と言われているみたいですね。他にもなんとなく日本語に聞こえてしまう外国語の表現があります。

ヘンダワネ

ペルシャ語「スイカ」

アルンダワヨ

朝鮮語「美しいですよ」

ヤッタナー

ビルマ語「宝石」

次の例などは、日本語とそっくりで信じられない程ですが、これ、本当だそうです。

ソウ

英語、「そう思う」の「そう」

ナーメ

ドイツ語「名前」

ババ

ルーマニア語「おばあさん」

アンタ

アラビア語「あなた」

タント

イタリア語「たくさん」

コレバカリダ

バスク語「ほんのこればかりだ」

シオタラン

ハンガリー語「塩気が足りない」

( Dec. 2002)

参考文献:
言語学大辞典(三省堂)
日本語「らしさ」の言語学(城生佰太郎、松崎寛、共著、講談社)

目次・索引へ


翡翠って飛ぶの?

「翡翠」という漢字を見れば、ほとんどの方は「ひすい」と読んで、宝石の翡翠を思いうかべることと思います。ところが、実は、「ひすい(翡翠)」とは本来「カワセミ」のことなのだそうです。ですから、「カワセミ」は漢字で書けば「翡翠」です。
    「空飛ぶ宝石」と呼ばれるカワセミですが、宝石の「翡翠」のように美しいから「翡翠」という字を当てたのではなく、全く逆に「ひすい(=カワセミ)」のように「青い」宝石が「ひすい」と呼ばれ、「翡翠」と書かれるようになったのです。
    国語辞典を見ても、「ひすい」の説明は、1にブッポウソウ目カワセミ科の鳥の総称、2にカワセミ、3に宝石の翡翠となっています。漢和辞典によると「翡」は雄のカワセミ、「翠」は雌のカワセミを意味するのだそうです。
    カワセミ科の鳥にはカワセミの他に、アカショウビン、アオショウビン、ヤマショウビン、ヤマセミなどがいます。漢字ではそれぞれ赤翡翠、青翡翠、山翡翠、山翡翠と書くそうです。ヤマショウビンとヤマセミは見掛けはかなり違う鳥ですが、漢字では同じになってしまいます。(注:カワセミは川蝉、魚狗とも書かれ、ヤマセミは山魚狗とも書きます。)(
カワセミの学名へ

参考文献:
けさの鳥(山岸哲、2003年6月25日付け朝日新聞朝刊)
日本の野鳥590(大西敏一解説、真木広造写真、平凡社、2003)

目次・索引へ

あるときは鳥、あるときは草、そしてあるときは?

時鳥、杜鵑、不如帰、子規、田鵑、蜀魂、杜宇、郭公。
驚くことに、これらはすべてホトトギスと読むのだそうです。(注:「郭公」はもともとは「カッコウ」ですが。)
  正岡子規、次いで高浜虚子が主宰した俳句雑誌「ホトトギス」、や徳富蘆花の小説「不如帰」を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょうが、ホトトギスと言えば、たいていは鳥のこととだと思いますよね。

ところが、ユリ科の多年草にもホトトギスというのがあって、近年、園芸関係で広く知られるようになっているそうです。

また、なんと貝にもホトトギスというのがあるということ。これ、御存じでしたか。( Mar. 2003)

参考文献:
虫の名、貝の名、魚の名(青木淳一、奥谷喬司、松浦啓一編著、東海大学出版会)
大辞泉(小学館)

目次・索引へ

ヤキイモとヘソクリの共通点は?

貝と言えば、じつにいろいろな名前の貝がありまして、前項に挙げたホトトギスの他、ゴイサギ、ミヤコドリという鳥のような名前から、コオロギ、マツムシといった虫みたいな名前、ハマユウ、オミナエシ、カキツバタといった植物のような名前の貝もあるそうです。

その他、列挙しますと、
ヤキイモ、ヘソクリ、クチベニ、キンギョ、ササノハ、ビワノタネ、ツボミ、オチバ、などもあるとのこと。

これではまぎらわしいから、なになにガイと呼ぶようにしてはという意見があり、新しく命名されるものは、そういう名前が多くなってきたそうですが、別に厳格な決まりがあるわけではなく、ウミネコはいちいちウミネコドリとかウミネコカモメとか言わないのに、どうしてウミウサギはウミウサギガイと言わねばならないのか、とかいう反論もあるようです。ウミウサギなどという貝もあるんですね。( Mar. 2003)

参考文献:
虫の名、貝の名、魚の名(青木淳一、奥谷喬司、松浦啓一編著、東海大学出版会、2002)

目次・索引へ

イン語は寿司屋の言葉かな?

イカ、サバ、ブリ、タイ、トロ、並べるとまるで寿司のネタのように聞こえますが、実はこれ、すべて言語の名前なのです。 カバ、トラ、リス、ロバ、ダニ、バカ、ワル、ゲタ、も同じです。

その他、イン語、エド語、カンレン語、シ語、タマ語、ダン語、ワ語、ゴゴ語などという言語もあります。
まるで、『隠語』『江戸語』『関連語』『私語・死語』『玉子』『団子』『和語』『午後語』などに聞こえるところが面白いですね。

子供の遊びで、「ストローベリーはナニゴ?」というのがありますね。「英語さ」と答えると、「違うよ。イチゴだよ。」と言われてしまいます。同じようにして、「エッグはナニゴだ?」とやることもできますが、タマ語というのが本当にあるので、ちょっと困ってしまいますね。( Dec. 2002)

参考文献:
 三省堂「言語学大辞典」
 日本語「らしさ」の言語学(城生佰太郎、松崎寛、共著、講談社)

目次・索引へ

「知らない語」なんてあるの?

インドには非常にたくさんの言語があります。いったい、いくつあるのでしょう。車で1時間走ると言葉が変わるなどとも言われています。本によって260と少なめに見積もったものから、845としているものもあります。また、ある時の国勢調査では1600以上の言語が申告されているそうです。

雑誌「言語」によれば、インドでは正確な言語調査が行われていないのだそうです。一つには予算の問題で、もっと生活に関わる調査のほうが優先されてしまうとのこと。もう一つは、カーストの問題で、一般に他のカーストに対する関心は低く、特に低いカーストに属する人々の言語を調べようとする姿勢は生まれにくいのだそうです。

国勢調査の時の言語調査では人々が自己申告したものをそのまま記録するということで、極端な場合、「あなたの言語は」との問に「知らない」と答えれば、そのまま「知らない語」と記載されるのだそうです。実例として、インド諸言語中央研究所刊行の「言語分布一覧」に、ガワリとかアヒーリとかいうのが出て来ますが、これは言語名ではなく、単に「村」の言葉、「アヒール(カーストの名前)」の言葉という意味だそうです。( Dec. 2002)

参考文献:
大修館書店「言語」(1999年、7月号、長田俊樹)

目次・索引へ

「いずみ」はなぜ「和泉」と書くか?

「和泉」と書いて「いずみ」と読むことを不思議に思ったことはありませんか。「泉」だけでもよさそうなものなのに、なぜ「和」を付けるのでしょう。

これは和銅6年(713年)に出された「地名には二字の好字を用いよ」という政令に由来します。つまり、本来は一文字の地名でも、見栄えの良い二文字を使って書き表せということです。これによって、和泉(いずみ)、大和(やまと)、近江(おうみ)などという書き方が行われるようになりました。

「やまと」は「和」だけで良いはずですが、ほめことばとして「大」を付けました。また「おうみ=あはうみ」は「江」だけで良いはずですが、遠江(とおとうみ=とおつあはうみ)と対照させて「近江」としました。

また、「むさし」は日本書紀に「旡邪志」として出ていますが、「武蔵」と書かれるようになったため、文字としては「むさ」しかないのに、無理に「むさし」と読むことになりました。

上野(こうずけ=かみつけ)、下野(しもつけ)の場合はもっと複雑です。この2つの地方はそもそも、毛野(けぬ)の国と呼ばれていたのが上下に分かれたものです。それで「上つ毛野(かみつけぬ)」「下つ毛野(しもつけぬ)」となったものが、前記の政令によって「上野」「下野」と書かれるようになりました。一方、言葉としては「ぬ」を呼ばずに略称したため、「毛」は無いのに「け」を読み、「野(ぬ)」は有りながら読まないという奇妙なことになったのです。( Dec. 2002)

参考文献:
日本語の認識( 関根俊雄著、教育出版センター、1981)

目次・索引へ

飛鳥はなぜ「あすか」と読むのかな?

飛鳥は「飛ぶ鳥の」という枕詞に由来します。これが「明日香」に掛ることから、いつのまにか「飛鳥」だけで「あすか」と読まれるようになりました。「猿の小便」と言っただけで「気に掛る=木にかかる」を連想させるのと通じるところがありますね。

春日を「かすが」と読むのも同じです。これも本来は「春日(はるび)の箇須我」のように「かすが」に掛る枕詞だったのです。 ( Dec. 2002)

参考文献:
日本語の認識( 関根俊雄著、教育出版センター、1981)

目次・索引へ

「いわゆる」はなぜ「所謂」と書くのか?

漢文で「所」は受け身の助動詞として使われます。「謂」は「言う」の意味ですから「所謂」は現代語で言えば「言われる」という意味です。「世間でよく言われる」ということです。

ちなみに英語では what is called と表現します。例えば「いわゆる紳士」なら
what is called a gentleman
となります。「世間で紳士と呼ばれているもの」というわけですね。

「いわゆる」は古代の日本人が「所謂」を訓読したものです。つまり「言ふ」の未然形「言は」に受け身を表す古代の助動詞「ゆ」の連体形「ゆる」が付いたものなのです。平安時代になると受け身の助動詞は「る」ですから「言はるる」になるはずですが、「言はゆる」は古事記の時代の表現が化石のように残ったものと言えましょう。

「かわせ(為替)」という言葉にも古い日本語が残っています。中世には「かわし」と言っていましたが、これは「為替す(かわす)」という動詞の連用形が名詞化したものです。「為替す」は中世後期の文書の中に「為替に組む」という意味で使われているそうですが、これは「交わす」と同源で、「交う」に使役の助動詞「す」が付いたものです。
  下掲「日本語の認識」には、「為替」を「かわせ」と読むのは「為」が使役の助動詞のはたらきをしているからである、とあります。(残念ながら、私自身は、使役の助動詞としての「為」を漢和辞典などで確認出来ませんでしたが、「替わりと為す」と訓読する可能性を考えれば「使役のはたらき」と言うこともできるかと思っています。)( Apr. 2003 )

下母澤寛の書いた「新選組始末記」に、近藤勇が池田屋事変のあと養父周斎その他の人に書き送った手紙があり、「手疵為負候者四人」という部分の「為負」に「おわせ」とルビが振ってあります。( Mar. 2004 )

参考文献:
日本語の認識( 関根俊雄著、教育出版センター、1981)
日本国語大辞典(小学館)
新選組始末記(下母澤寛著、中公文庫、2002)

目次・索引へ


犂耕体ってどんな書き方?

英語を書く時はページの左側から始めて右に向かって書いていきます。次の行も左から始まります。英語に限らずフランス語やドイツ語なども同じです。日本語も横書きする時はそうですね。
  これに対してアラビア語やヘブライ語は右から始めて左へ向かって書いていきます。次の行も右から始まります。

  日本語でも、戦前は、商店の看板などで横書きのものは右から左に書いてありました。「屋百八」などという具合です。今でも寺院の山門などで、古い額に右から左に向かって書いてあるものを見ることがあります。ただし、これは必ず1行だけです。何行も書いてあることはありません。これはむしろ、1行を右から左に書いたというよりも、1文字からなる行を数行書いたと考えるべきなのだそうです。縦書きの場合、行は右から左に進みますよね。
(注:
モンゴル文字では縦書きの行が左から右へ進みます。アラビア語、モンゴル語、英語、ヘブライ語の順で 「こんにちは」「さようなら」に当たる言葉を御覧下さい。)
  現在でも、自動車の右側には、商店名などを右から左へ書くことがあります。自動車の進行方向を前にしたいと思うのかもしれませんが、これは滑稽だとは思いませんか。読む人は走ってくる車の前の方から読んでいくわけではありません。ぱっと見た時に「グンニーリクイラド」って何だろうなどと思ってしまいます。

さて、表題の犂耕体(れいこうたい)ですが、これは1行ごとに書く方向を反対にする書き方です。つまり、1行目を左から始めたら次の行は右から、またその次の行は左からというように、ちょうど牛が犂を引いて畑を耕す時のように行を進める書き方を言います。英語では boustrophedon と言いますが、語源はギリシャ語で、bous (牛)と strophein (向きを変える) から作られた言葉だそうです。(日本語では「犂耕書式」や「牛耕式」などと呼ぶこともあります。)

この方式で書かれた言葉としては、初期のギリシャ語やヒッタイト象形文字の文書がありますが、エジプトのヒエログリフ(聖刻文字)にもこのように書かれたものがあるそうです。おもしろいことに、左から書かれる文字と右から書かれる文字は、鏡文字のように反対向きになっていて、人や動物の顔が左を向いていれば左から、右を向いていれば右から読みはじめます。( Jan. 2003)

参考文献:
ヒエログリフ入門(吉成薫著、六興出版)
Reading the Past, Egyptioan Hieroglyphs ( by W.V.Davies, British Museum Press)
文字の歴史(ジョルジュ・ジャン著、矢島文夫監修、知の再発見双書、創元社)
失われた古代文字99の謎(矢島文夫著、産報)

目次・索引へ


% はなぜパーセントって読むのかな?

%という記号は「100」あるいは「/100」をデザインしたものだそうです。たとえば、2%は「2/100」と同じです。「/」は分数の横棒と同じですから、2%はつまり、「百分の2」と同じなのです。

一方、「パーセント」という言葉は英語の percent(又は per cent)から来ました。「パー( per )」は「〜につき、〜あたり」を意味し、「セント」は「百」を意味しています。ですから、たとえば、「2パーセント」とは「100につき2」または「100あたり2」という意味なのです。

「もしも世界が100人の村だったら」という本があります。もしそうだとしたら、そのうちの57人がアジア人で、というような興味深いことが色々載っています。世界の人口の「100人につき57人」がアジア人だと言っているわけで、これはすなわち、世界の人口の「57パーセント」、または「百分の57」がアジア人であると言っているのと同じですね。

2%を日本語では「2パーセント」と読みますが、「百につき2」とか「百分の2」とか読んでも良いはずです。現に、中国語では「百分之二」と言いますし、トルコ語では yüzde iki と言います。つまり「百に2」と言うのです。( yüz は「百」、iki は「2」、de は「家に、家で」の「〜に、で」に当たります。注:yüz の ü は u にウムラウト[¨]が付いた文字で、唇を丸く突き出したまま「イ」を発音します。)

日本でも「百分の〜」と読んでいたら、小学生にも理解しやすかったのではないかと思います。なぜ「パーセント」と読むようになったのかは分かりません。「インフォームド・コンセント」や「ドメスティック・バイオレンス」などと同じく、それまでの日本語になかった概念だったのかもしれませんし、単に日本人の外来語好み、カタカナ語好きのせいかも知れません。

英語では、2%は two percent の他に、two per hundred、two parts per hundred、two in a hundred とも読まれます。どれも、「100につき2」を意味し、英語国民にとってはごく普通の表現です。

英語では per や cent は日常語です。「〜につき」という per は、多少かたい表現ではあるものの「1キロにつき5ドル」などと言う時に five dollars per kilogram と使います。(もっと会話的な表現では five dollars a kilogram。)
  また、kph( kilometers per hour 毎時〜キロ)や、rps( revolutions per second 毎秒〜回転)、ppm( parts per million 百万あたり〜、百万分率)などにも使われています。「毎時」や「毎秒」は、もっと会話的な表現では per の代わりに a を使って 50 kilometers an hour(時速50キロ)などと言いますが、言葉の順序や、「〜につき」という考え方はどちらも同じです。
  また、cent はアメリカの貨幣単位(100 cents で1ドル)であるのを始め、century(百年間)、centennial(百年祭)、centipede(百足、ムカデ)などの語にも使わており、子供でもすぐに理解できる言葉です。(Apr. 2003)

参考文献:
中国語辞典(倉石武四郎著、岩波書店)
標準日中辞典(上野恵司、顧明耀、編、白帝社、1997)
トルコ語文法入門(竹内和夫著、大学書林、1977)

目次・索引へ


Aはなぜ「エイ」と読むのか?

Aの字は、英語では「エイ」と読みます。しかしながら、英語と同じアルファベットを使っている他の言葉を調べてみると、Aの字は「アー」と読むのが普通です。

たとえば、ABCは、フランス語ではアー、ベー、セー。ドイツ語ではアー、ベー、ツェー。イタリア語ではアー、ビー、チー。ラテン語ではアー、ベー、ケー。トルコ語ではアー、ベー、ジェー、などと読まれますが、最初の文字Aについて言えばすべて「アー」です。「エイ」と読むのは英語だけなのです。

実は、英語でも始めは「アー」と言っていました。始めというのは、イギリス人の祖先たちが、古代ローマ人に教わったアルファベットを使いはじめてから、14世紀くらいまでのことです。ところが、14世紀の中ごろから18世紀に入るくらいの頃にかけて、英語の中で非常に大規模な発音の変化が起こりました。これを大母音推移と呼びますが、この結果、今まで「アー」だった音が「エイ」に変わり、「エー」は「イー」に、「イー」は「アイ」に、などと変わってしまったのです。要するに、なまったわけですね。

もっとも、この変化は一足飛びに起こったわけではありません。たとえば、「名前」をドイツ語では Name と書いて「ナーメ」のように言うのに対して、英語では name を「ネイム」のように読みますが、古英語ではドイツ語と同じように「ナーメ」でした。
   この最後の母音は / e / ではなく、「ア」のような「エ」のような、「ウ」のような、いわゆる「あいまい母音(
シュワー)」なのですが、それが、英語では12〜15世紀の間に消滅し「ナーム」のようになり、しかも「アー」の母音が少し狭くなって / æ: / のようになっていたのが、大母音推移の過程でさらに狭くなって「広いエー ε:」、さらに「狭いエー e:」へと変わり、それが18世紀に入って二重母音化して /ei / になったのです。

「イー」も大母音推移の過程で、始めの「イ」が少し広くなり同時に少し奥まって、シュワーになり、「エイ」のような「ウイ」のような二重母音になったものが、18世紀になって / ai / に変わりました。この結果、古代では wif(ウィーフ)、tima(ティーマ)とか言っていたものが現代では wife、time となったのです。
   他の言語では「イー」と読むiの字を、英語に限って「アイ」と読むのも、この大母音推移の結果です。今日の英語を話す人々にとって、iは「アイ」と読むのが普通なので、日本ではニコンと呼んでいる Nikonのカメラも、イギリスやアメリカでは「ナイコン」と呼ばれています。
関連項目:π はなぜ「パイ」と読むのか?

「子供」の複数形 children が「チルドレン」なのに、単数形 child が「チルド」でないのも、大母音推移の結果です。「子供」は古英語では cild(チルド)でしたが、8世紀末から9世紀前半に起こった変化(ld、rd、nd、ng、 mb、などの前の母音の長化)によって「チールド」となり、それが更に大母音推移の結果、今日のように「チャイルド」と発音されるようになりました。一方、複数形の方は cildru(チルドル)という形で、i が ld ではなく ldr の前にあったという微妙なところで長化されず今日に至ったのです。
   注:cildru はすでに複数形であったのですが、他の複数形との類推でさらに複数の語尾 en が付けられ、最終的に今日の形になりました。古英語では、複数の語尾がいろいろあり、たとえば、「名前」nama が naman、「星」stan が stanas、「船」scip が scipu、「贈り物」giefu が giefa などと変化しました。

ついでながら、オーストラリア英語では「イー」が、大母音推移の後のように「シュワーで始まる二重母音」で発音されます。ですから sea は「セイ」のように、feel は「フェイル」のように聞こえます。オーストラリア英語はロンドンのコクニー英語と同様に、say を「サイ sigh」、 today を「トゥダイ to die」のように発音するのでよく知られていますが、そのうち sea も「サイ」になってしまうかもしれません。
(Feb. 2004)

参考文献:
英語アルファベット発達史(田中美輝夫著、開文社出版、1981)
Reading the Past, The Early Alphabet ( by John F. Healey, British Museum Press, 1993)
ラテン語とギリシャ語(風間喜代三著、三省堂、1998)
英語の歴史(中尾俊夫著、講談社現代新書)
図説英語史入門(中尾俊夫、寺島廸子著、大修館書店、1988)

目次・索引へ

Aはなぜ「アー」と読むのか?

英語やフランス語で使っている文字のことをアルファベットと言います。ギリシャやロシアで使っているアルファベットと区別して、ラテン・アルファベットあるいはローマン・アルファベットと呼ぶこともあります。元々がラテン語の文字であり、古代ローマ帝国で使われた文字だからです。

ラテン語を使っていた古代ローマ人は、最初の文字 Aを「アー」と呼んでいました。(なぜ、その後が「イー」「ウー」「エー」「オー」と続かないのかは、また別の項でお話します。)そして、後になってアルファベットを使うようになった人々(今のイギリス人やフランス人などの祖先)も、Aを「アー」と呼ぶようになりました。それでは、そもそもなぜ古代ローマ人たちはこの字を「アー」と呼んだのでしょう。

実はラテン・アルファベットは古代ローマ人たちが発明したものではありません。彼らはローマの北にあった先進国エトルリアからアルファベットを習ったようです。そして、そのエトルリアはギリシャ人の使っていた文字を取り入れたと思われます。

ギリシャ語のアルファベットはA(アルファー)、B(ベーター)と始まります。「アルファベット」という名前もこのギリシャ・アルファベットの最初の2文字に由来します。しかし、古代ローマ人やエトルリア人にとって、「アルファー」とか、「ベーター」とかいう名前は何の意味もありませんでした。ただの記号に過ぎないのだから、もっと簡単な名前が良いと思ったのかもしれません。そこで、「アー」「ベー」と言うようになったのだろうと思われます。(最初に簡単にしたのがエトルリア人であったのか、それとも古代ローマ人であったのかはわかりません。)

それでは、ギリシャ人にとってこれらの名前は意味があったのでしょうか。実はギリシャ人にとっても意味のない言葉でした。ギリシャ人はアルファベットをフェニキア人から教わりました。そして、一つ一つの文字の名前もそのまま取り入れたのです。

フェニキア人にとって、これらの名前はちゃんと意味がありました。 フェニキア文字は「アレフ」「ベート」「ギーメル」「ダーレト」と始まります。ギリシャ文字のΑ(アルファ)、Β(ベータ)、Γ(ガンマ)、Δ(デルタ)に当たりますが、ギリシャ人にとって無意味なこれらの言葉も、フェニキア人にとっては、それぞれ「牛」「家」「ラクダ」「ドア」を意味していました。そして、それぞれの言葉の最初の音をその文字の音としたのです。

注意:古くからの伝承によってフェニキア文字がギリシャ文字の源であると言われていますが、確定はできません。ただ、フェニキア語やヘブライ語などが属していた北セム系統の言語の文字であることは確実視されています。また、フェニキア人はセム系民族の中では際立って活発に航海した交易民族でしたので、彼らがギリシャ人に文字を伝えたということは大いにあり得ることです。
   この文字はセム語族の人々によって発明されたようです。セム語族というのはフェニキア語の他、アッシリア語、バビロニア語、古代ヘブライ語、キリストも話していたアラム語、アラビア語、エチオピア語、現代ヘブライ語などを含む言語のグループです。フェニキア文字の名前は現代ヘブライ語のアルファベットにも受け継がれており、名前の意味は、大部分ヘブライ語やアラビア語で理解出来ます。ちなみに、現在のアラビア語でも家のことを「ベート」と言いますし、キリスト生誕の地ベツレヘム Bethlehem はヘブライ語で「パンの家」という意味です。( Jan. 2004)

参考文献:
英語アルファベット発達史(田中美輝夫著、開文社出版、1981)
Reading the Past, The Early Alphabet ( by John F. Healey, British Museum Press, 1993)
ラテン語とギリシャ語(風間喜代三著、三省堂、1998)

目次・索引へ

AIUEOはどうして「アイウエオ」なの?

フェニキア人は、文字の名前の最初の音を、彼らのアルファベットの音として使いました。 Beth(ベート)という名前の文字は b、Gimel(ギーメル)は g、Dalet(ダーレト)は d、という具合です。こういうやり方をアクロフォニー(acrophony 頭音書法)と言います。たとえば、「蟻」の絵で a を表し、「苺」で i、「キリン」で k を表して、「キリン、蟻、キリン、苺」と並べて「kaki (柿、牡蠣)」を表すというような方法です。

ただし、フェニキア文字が、その名称が表す物の絵から出来たと考えるのは必ずしも正しくありません。たとえば、Beth(ベート)という文字は「家」を意味していますが、別に「家」の絵が元であったわけではないようで、むしろ逆に、b を表す文字を、覚えやすいように Beth(ベート)と名付けただけと考える方がよいようです。つまり、アクロフォニーの原理を逆に利用したわけです。もっとも、文字の形が「家」を連想させたということはあるかも知れませんが。
  こういう命名法はニモニッックの一種と言えます。子供用の「ひらがなの本」に「アリさんのア」「カニさんのカ」などと書いてあるのと似ています。「鳴くよ(794)ウグイス平安京」などのように、意味のない記号などを覚えるための工夫(記憶法)をニモニック(mnemonic)と言います。

ところで、 フェニキア文字はギリシャ人にとって不便なことが一つありました。それは、母音を表す文字がないということです。
  フェニキア語は、現代のヘブライ語、アラビア語と同様、セム語族の言葉です。セム語族の言葉では3つの子音で語の基本的な意味が決まります。どういう母音が入るかは文法的に決定できるので、母音を書く必要がありません。たとえば、KTBという子音群は「書く」ことに関係しています。文章を読む人は、たとえKTBとしか書かれていなくても、前後関係から適当な母音をあてはめて、「書いた」「書かれた」「書くこと」「書記」「手紙」などと読み取ることができるのです。
  ところが、英語やフランス語と同じく印欧語族に属するギリシャ語では、そうはいきません。同じ子音をもった語でも母音によって全く関係のない言葉になってしまいますから、どうしても母音が必要なのす。

そこで、ギリシャ人は、 フェニキア文字の中で自分達には必要のない子音の文字を、母音の文字として使うことを思い付きました。
  しかし、フェニキア・アルファベットの順番はそのまま保ったので、母音を表す文字( A、E、I、O、U )があちこちに散らばることになりました。「あいうえお」から始まる日本語の五十音図とは大きく違いますが、それはこういう事情によるのです。

  まず、最初の文字A(アレフ)ですが、これはフェニキア人にとっては母音の「ア」ではなく、声門閉鎖音( glottal stop )という子音で始まっていました。現在でもアラビア語の第一字「アリフ」、現代ヘブライ語の第一字「アレフ」は声門閉鎖音を表しています。
この音は、喉のところにある声門を一瞬閉じた後、急に開いた時に出る子音ですが、自分の言語にこの音がない人には聞き取れません。ですから、ギリシャ人はこの音を無視してA(アレフ)を母音の「ア」の文字にしたのです。

次に、 フェニキア文字第5番目の「ヘー」はE(エプシロン)として「エ」の文字にしました。「ヘー」は、hに似た音を表していました。古代ギリシャ人は始めの頃、hの音を使っていたのですが、だんだんと使わなくなってきたために、hを表す文字はことさら必要ではなかったようです。「へー」という名称が何を意味していたかは不明ですが、ギリシャ文字の名称「エプシロン」(epsilon)は simple e (単純なe)という意味です。長音「エー」を表す αι や ει という綴りと区別してそう呼んだようです。
  ついでに フェニキア文字第8番目の「ヘート」も広めに口を開けて長く発音する「エー」の音にしてしまいました。これがギリシャ文字H(エータ)です。フェニキア文字の「ヘート」はドイツ語 Bach(バッハ)の ch のような喉を強く摩擦して出す音でした。

  同じギリシャ人でも西の方にいた人たちは、東部のギリシャ人よりも長く h の音を保っていたようです。ですから西ギリシャ人のアルファベットを受け付いだ古代ローマ人はHの文字を子音の[h]として取り入れました。
  ところが、やがてローマ人たちもこの子音を発音しなくなってしまいました。その結果、ラテン語の子孫であるフランス語やスペイン語では hが書いてあっても発音しません。本田のオートバイはフランスでは「オンダ」と呼ばれます。本家本元のイタリア語では hは書かれさえもしなくなりました。例えば、英語のhistory、horrible、heroic は、イタリア語では istorico、orrible、eroico(または eroica ) です。ベートーベンの交響曲第3番「英雄」も、英語で言えば the Heroic Symphony ですが、一般にはイタリア語で la Sinfonia Eroica 「エロイカ」として知られています。

さて、次に、 フェニキア文字第10番目の「ヨード」は「手」を意味し、英語のyoung、yard、year などの最初の子音 [ j ] を表していました。日本語の「ヤ、ユ、ヨ」の最初の音です。古代ギリシャ人はこの音も早い段階で使わなくなり、必要ありませんでしたので、この文字はI「イオータ」として、母音「イ」のために使うことにしました。

  古代ローマ人は子音 [ j ] が必要でしたが、アルファベットを受け入れた時には既に [ j ] を表す文字はありませんでしたので、Iを母音 [ i ] と子音 [ j ] の両方に使いました。そのため、ジュリアス・シーザーの Julius は Iulius、イエス・キリストの Jesus は Iesus と書かれました。
  やがて、I の変形として J が生まれ、16世紀頃からはぼつぼつと、母音と子音の書き分けが行われるようになるのですが、それまでのかなり長い間、しかも子音の発音が「ヤ、ユ、ヨ」の音から「ジャ、ジュ、ジョ」の音に変わってからも、I が兼用されていました。フランス語を通じてラテン語の単語を取り入れた英語でも、1623年発行のシェークスピアの戯曲の中に、iealous や iudge などの綴りが見られます。

次に、母音Oの文字は フェニキア文字第16番目の「‘アイン」から作られました。「‘アイン」は「目」という意味です。この文字が表す子音は喉を強く摩擦する音で、まるで浪曲師が絞り出す声のような、また、少しひどい例えですが「ゲー」と物を吐き出すときの音ような印象があります。この子音はアポストロフィー(’)をひっくり返した姿の記号 [‘] で表されます。
  いずれにせよ、ギリシャ人にとってこの音は不要でしたので、母音Oとして使うことにしました。始めこの文字は短い「オ」だけでなく、2種の長音(口を狭く開けた音と広く開けた音)にも使われていましたが、後に広い口の長音を表すためにOを変形してΩ「オーメガ(大きいO)」が作られたことから、Oは「オーミークロン(小さいO)」と呼ばれるようになりました。

最後に、 フェニキア文字第6番目の「ワーウ」から [ u ] を表すための母音Υ(ユプシロン)が作られました。「ワーウ」は「鈎(hook、peg)という意味で、子音の[ w ] を表す文字でした。
  それではなぜ、Υはギリシャ・アルファベットの6番目ではなく、20番目にあるのでしょう。それは、「ワーウ」が既に子音 [ w ] を表す文字として採用されていたからです。「ワーウ」は Yやカラスの足跡のような形をした文字ですが、ギリシャ人はそれを少し変形させて、F(またはその鏡文字)のような形にし、digamma(ディガンマ)と呼びました。2つのΓ(ガンマ)という意味です。
  というわけで、6番目の位置は既にうまっていましたので、新しく作った母音Υ(ユプシロン)は、フェニキア文字の最後にあった「ターウ」(ギリシャ語のT)の後に置くことにしたのです。文字の形は、最終的にはΥになったものの、時期や地方によってYや、それを単純化したVの形も使われていました。ローマにはVが伝わりました。

Υ(ユプシロン)の発音は始めのうち [ u ] でしたが、やがてアテネを中心とするアッティカ方言では [ y ] に変わりました。これは現在のフランス語の u と同じで、唇を丸めて突き出したまま「イ」を言うようにすれば出ます。日本人には「ユ」のように聞こえます。
  「ユプシロン upsilon 」という名前は simple u (単純なu)という意味です。紀元前2世紀のギリシャ語で οιの綴りが [ y ] と読まれるようになったため、それと区別してこう呼ばれるようになりました。

ローマ人はVの形を受け継ぎ、母音 [ u ] と子音 [ w ] の両方に使いました。3世紀になるとV が丸められて U が出来ましたが、長い間、V と U は区別なく使われていました。そのうち語頭には V を、語中には U を使う、という慣習が生まれ、やがて、V は子音に、U は母音に、という書き分けが行われるようになりました。

ラテン語の子音 [ w ] はしだいに [ v ] に変わり、7世紀、ラテン・アルファベットがイギリスにもたらされた時、V と U は区別なく、母音 [ u ] または子音 [ v ] を表していました。しかし、イギリス人の祖先たちは、Fの文字を [ f ] の音だけでなく、[ v ] の音にも使いましたので、V と U はもっぱら母音 [ u ] を表すために使われるようになりました。そして、小文字としては、 u の方だけを使っていました。
  ところが、11世紀になると、フランス語を通じて、子音 [ v ] に V を使う書き方が入って来たことから、本来同じ文字である u と v の使い方に混乱が生じ、17世紀始めまで、この2つの文字が区別なく子音 [ v ] と母音 [ u ] の両方に使われれようになりました。1623年に発行されたシェークスピアの戯曲には vs (us)、vpon (upon)、vnderstand (understand)、haue (have)、loue (love)、giue (give) などの綴りが見られるそうです。

一方、「ワーウ」から作られた子音、F(ディガンマ)の方ですが、ギリシャ語では、やがて子音[ w ] が使われなくなったために姿を消しました。しかし、ラテン・アルファベットには残り、後に [ f ] の子音として使われるようになりました。
  ギリシャ・アルファベットには [ f ] を表す文字がなかったため、始めローマ人は FH の綴り(文字通りには [ wh ] の音)を [ f ] の代用としていたようです。そしてやがて、H を省いて F だけで [ f ] を表すようになりました。

また、ローマ人は、ギリシャ語からの借用語を書き表わすために、母音 [ y ] の文字を必要として、Υ(ユプシロン)を取り入れました。これがラテン・アルファベットの Yで、ローマ人はこれを「ユー[ y ]」または「ユプシロン」と呼びました。Yは現代のドイツ語でも「ユプシロン」と呼ばれています。また、フランス語では、母音 [ i ] を表し、「イグレック(i grec)」つまり「ギリシャ語の i 」と呼んでいます。現代ギリシャ語でも、Υは [ i ] の音に変わり、「イプシロン」と呼ばれています。( Apr. 2003 )

参考文献:
英語アルファベット発達史(田中美輝夫著、開文社出版、1981)
Reading the Past, The Early Alphabet ( by John F. Healey, British Museum Press, 1993)
ラテン語とギリシャ語(風間喜代三著、三省堂、1998)

目次・索引へ

B はなぜ「エブ」でないのか?

英語のアルファベットの名前をよくよく考えてみると不思議なことがあります。エイ、ビー、スィー、ディー、イー、エフ、ジー、と唱えてみると、最初の「エイ」は母音だからひとまず措くとして、残る子音のうち F だけが何か他と違います。「フィー」なら揃うのですが。
    あるいは逆に L、M、N(エル、エム、エヌ)と続くのだから P は「エプ」となっても良さそうなものなのに、そうなっていないのはなぜでしょう。B だって、「エブ」でもよさそうだとは思いませんか。

他にも、H はなぜ「エイチ」か、とか Y はなぜ「ワイ」か、などいろいろ謎がありますが、これも措きます。英語の名称には英語独自の変化があり、話が複雑になります。詳しくは参考文献をごらんください。

ここでは、B、C、D、G、P、T、など母音 / i: / で終わるものと、F、L、M、N、S、など母音 / e / で始まるものを考えます。まずは、英語の名称の元となったラテン語を見てみましょう。ラテン・アルファベットの名前は下のようになっています。

a アー、be ベー、ce ケー、de デー、e エー、ef エフ、ge ゲー、
ha ハー、i イー、ka カー、el エル、em エム、en エヌ、o オー、pe ペー、
qu クー、er エル、es エス、te テー、u ウー、ix イクス、y ユー、zeta ゼータ

ラテン語の C は英語やフランス語などと異なり常に K の音です。X は始め S と同じように ex であったのが後に ix に変化したものと思われます。K は「ケー」になってもよかったはずですが、たぶんギリシャ文字の kappa に引きずられて ka になりました。H が「ハー」なのはその K に影響されたものと思われます。後子音(喉の奥の方で作る子音)である K と H は後母音のアー(舌を奥に引いて発音するアー)と相性がよいということも関係あるかも知れません。Y はフランス語の u、ドイツ語の ü(ウムラウト U)、発音記号の / y / を表す母音です。現代英語のように you / ju: / の / j / を表すような子音(半母音)ではありません。

ギリシャ・アルファベットが基本的にフェニキア文字あるいは、それに類するセム系統の文字の名称を引き継いでいるのに対し、ラテン・アルファベットは原則としてその文字の音価をそのまま名称としています。(ギリシャ文字、フェニキア文字などの acrophonic name に対し、こういう名称を phonetic name と呼びます。)

御覧の通り、母音はその発音のままに a アー、e エー、i イー、o オー、u ウー、y ユー、です。子音のうち、L、M、N、R、F、S は母音と同じように息が続く限り継続して出せる音ですから、始めはその音の / l:、m:、n:、r:、f:、s: / がそのまま名称になったと思われます。子音だけですからカタカナで書くのは無理がありますが、強いて書けば「ルー、ムー、ヌー、ルー、フー、スー」という感じです。そして、やがてその前に母音 / e / が添えられて上の名称になりました。また、B、C、D、G、P、T などのように破裂させたら終わりで継続できない音は、後に母音 / e: / を付けて言いやすくしました。

このような命名法は非常に単純で合理的です。軍事や土木に代表される実用技術に長けたローマ人ならでは、と言いたくなるところですが、実は単に、エトルリア人が既に命名してあったものを、文字ともども引き継いだだけのようです。また、こういう phonetic name(音韻的名称)は既にギリシャ文字のΦ や Χ にも見られます。

英語では大母音推移などの音韻の変化によって、古英語の「アー、エー、イー、オー、ウー」が現代英語ではそれぞれ「エイ、イー、アイ、オウ、ユー」のようになっています。(英語で A、K を「エイ、ケイ」と呼び、I を「アイ」と読むのもこの結果です。)
    したがって、最初に挙げた疑問は「B、C、D、G、P、T、など母音 / e: / で終わるものと、F、L、M、N、R、S の母音 / e / で始まるもの」について、ということになります。

さて、前置きが長くなりましたが、いったいなぜ F、L、M、N、R、S は「フェー、レー、メー、ネー、レー、セー」ではないのでしょう。あるいは逆に、なぜ B、C、D、G、P、T は「エブ、エク、エド、エグ、エプ、エト」などではないのでしょう。( L と R が同じになっていますが、これは今さらお話しすることもないと思います。)

実は答は単純で、それが言いやすく、手間が少ないから、ということになります。
    F、L、M、N、R、S のような継続音は発音に先立って息の流れが止められることがありませんので、子音が出てくる前から息が流れ始め、何らかの母音が無意識に発音されます。それがやがて / e / になったというわけです。子音が出てからまた何かの母音を発するのは余分なエネルギーが要ります。
    一方、B、C [ k ]、D、G [ g ]、P、T のような閉鎖音あるいは破裂音は一度息の流れを止めますので、何かの母音を発した後で閉鎖をするよりも、その閉鎖を解いて破裂するのと同時に母音を発音する方がエネルギーが少なくてすみます。

注:イタリア語では F、L、M、N、R、S を「エッフェ、エッレ、エッメ、エンネ、エッレ、エッセ」と読んで、御丁寧なことに子音の後にも母音を付けます。イタリア人はエネルギーが余っているのでしょうか。
    また、フランス語でも F、L、M、N、R、S の「エフ、エル、エム、エヌ、エル、エス」の後には有るか無いかという程度に軽くシュワーのような母音が入ります。(この点では英米人よりも東日本の日本人の方がフランス語っぽく聞こえるかも知れません。関西の人は母音が強すぎるからダメです。)
    また、アイスランド語では母音こそ続きませんが「エフー、エルー、エムー、エヌー、エルー、エスー」というような感じに子音を長く伸ばします。

しかしながら、B、C、D、G、P、T などの前に母音を付けて「エッブ、エック、エッド、、、」などと呼んでいる言語は私の知る限りありません。誰もそんな余分なエネルギーを使いたくはないのでしょう。
    イタリア語でも「ビ、チ、ディ、ジ、ピ、ティ」と呼びます。「チ、ジ」の子音は摩擦音であり継続できますから「エチ、エジ」となっても良かったはずですが、ラテン語の「ケー、ゲー」以来の歴史を引きずって現在のままになっています。

H の名前
H のラテン語名は「ハー」ですが、これはセム語名が「ヘート」だったのに加えて、後続の K「カー」に影響されたものと思われます。
    しかし、H は摩擦音であり、継続できる音ですから、他の文字と同じく音韻に基づいて命名するならば、前に母音が付いて / eh / となるはずでした。そのためか、後期ラテン語になると aha と呼ばれるようになり、さらに ahha、 accha となりました。
    この cha は軟口蓋摩擦音(ドイツ語 Bach の ch の音)だろうと思いますが、K とかなり近い音ですから、これが現代のイタリア語 acca(アッカ)に変わっていったのはごく自然なことだと思います。(結果的には破裂音の / k / の前に母音があることでイタリア人に余分なエネルギーを消費させることになりました。ちなみに、イタリア語では K を kappa「カッパ」と言います。)
    また、ラテン語では / k / の音は、後ろに / i / や / e / などの前寄りの母音が続くと / t∫ /(英語の church の子音)に変わっていきました。その影響で現在のスペイン語では H を ache と綴って「アチェ」と呼びます。
    またフランス語ではこの / t∫ / がさらに / ∫ / に変わり 、現在は H を ache と綴って「アシュ」と呼びます。
    英語には中英語の時代に古フランス語から ache の形で入りました。これは「アーチェ」と読んだのだろうと思いますが、英語の中の音韻変化の法則に従って「エイチ」になりました。現代英語では H の名前を aitch と綴ります。(
Aはなぜ「エイ」と読むのか?を御覧下さい。)

というわけで、英語、仏語、伊語、西語では H の名前には / h / の音がどこにも含まれていない、という興味深い結果になりました。もっとも、こういうことは H に限りません。英語で言えば、W と Y もそうですし、イギリス英語では R も / r / を含みません。また、G や X などは、名前に含まれない/ g / や / z / などをも表し、不完全な面を持っています。
    長い歴史の中での変化のためとは言え、文字の名称とその表す音とが必ずしも一致しない英語など(とりわけ英語)は、音韻に基づいた命名をしたラテン語や、現代に至るまで頭音書法(acrophony )の原則を維持しているギリシャ語、名称の変化に応じて文字の音を替えまでしたルーン文字などと非常に対照的です。

文字遊び
さて、ここでちょっと、アルファベットの名前を使った遊びを紹介しましょう。IMBZ などとおっしゃらずにおつきあい下さい。

まず、まじめな話ですが、アルファベットの使い方には大きく分けて2つあります。一つはもちろん、言葉を綴るという本来のものですが、もう一つは initialism と呼ばれるものです。(注:研究社の中英和では initial word となっています。)
    USA、NATO、IOU などがその例ですが、そのうち、USA、UNHCR、BSE などのように、そのまま「ユー・エス・エイ、ユー・エヌ・エイチ・スィー・アー、」などとアルファベットの名前のまま読むものを、単に initialism(イニシャリズム、かしら文字略語)と呼びます。
    TGIF ( = Thank God it's Friday! ) とか MYOB ( = Mind your own business. )、XYZ ( = Examine your zipper. = Your flies are undone. ) など、文を表すもののあります。

これに対し、NATO、UNESCO、AIDS などのように「ナトー、ユネスコ、エイズ」と一つの言葉のように発音できるものを、特に acronym(アクロニム、頭字語)と呼びます。また、radar(レーダー)、laser(レーザー) のように頭字語であることを忘れてしまいそうなものもあります。

MC(= master of ceremonies 司会者)は initialism で「エムスィー」ですが、emcee とも綴られるなど、もう、一つの言葉と呼んでもいいくらいです。
    また、イタリアの名車フィアットの名前
fiat も頭字語ですが、これは「かくあれかし」というラテン語にもなっています。
    ACTH(= adrenocorticotrophic hormone 副腎皮質刺激ホルモン)は「エイ・スィー・ティー・エイチ」とも「アクス / ækθ /」とも読みます。
    また RBI あるいは rbi( runs batted in 打点)は「アール・ビー・アイ」とも読めば、「ラビ(研究社大英和 / ræbi /)」、「リビ(研究社リーダーズ)」とも読まれるなど、acronym になりつつあります。ある日の朝日新聞の英語版には RBIs の他に ribbies とも書いてありました。

ところで、IOU(= I owe you. 借用証書)のようにアルファベットの名前で読みながら、一つの文章になっているものは何と呼んだらよいのでしょう。acronym でしょうか、それともやはり、initialism でしょうか。

何と呼んだら良いかは分かりませんが、これは面白いですね。 I。U. などの変形もあります。ICU(International Christian University)の学生さん達は I see you. を意識しているのでしょうか。)他に実用になっているものがあるかどうか知りませんが、単なる文字遊びとしても面白いと思います。
    この項の冒頭に出した IMBZ はちょっと苦しいですが、I am busy. と読めます。RUBZ? の方がまだきれいですね。イギリス英語になりますが、URXQZ はどうでしょう。You are excused. にするにはちょっと苦しいでしょうか。OIC と言っていただけるようなものを考え付けば良いのですが。YDDU...? と怪訝な顔をされるようなものしか思い付きません。まあ、これはただのお遊びとして御容赦を。何か綺麗なものを御存じでしたら教えていただければ幸いです。

( 5 Apr. 2004 )

参考文献:
英語アルファベット発達史(田中美輝夫著、開文社出版、1981)

目次・索引へ

キバさんって誰?

私たちは地名や人名を英語で書く時、普通ヘボン式ローマ字を使います。これはアメリカ人の ジェームズ・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn)が考案したものです。(女優の Audrey Hepburn の場合は「ヘップバーン」と読まれていますが、「ヘボン」の方が正しい発音に近いです。)

ヘボン式ローマ字では、子音の読み方を英語に倣っていますので、英語以外の言葉を使う人が読むと、違ったふうに読まれてしまう可能性があります。

フランス語

しば

イタリア語

きば

ドイツ語

ひば

中国語

ちぱ

たとえば「千葉」は Chiba と書きますが、これは他の言葉では右のように読まれてしまいます。「千葉さん」はイタリアに行くとスィニョール・キバと呼び掛けられるかもしれませんね。

注:中国語の chi は舌を反らせて舌先の裏側を口蓋(口の天井)に付けて発音します。しかも、かなり強く息を吐きながら発音しますので、日本語「チ」とはかなり違います。また ba は逆に呼気を抑えて発音する「パ pa」で、日本人には「バ ba」に聞こえることもあります。

Sa、si、su、se、so で何が悪い?
ヘボン式ローマ字では「さ」行を「sa、shi、su、se、so」と書きます。小学校で習う訓令式ローマ字と違って、「し」が「si」ではなく、「shi」となっています。たいていのかたは英語を勉強しはじめた頃これを習いますので、なるほど「si」と書いたのでは「スィ」になってしまうから、「shi」と書くのはもっともなことだと、納得されたのではないでしょうか。
    確かに、英語では「shi シ」と「si スィ」の区別は不可欠です。これを間違えては、seat(席)が sheet(一葉の紙)となり、shin(向こうずね)が sin(罪)となり、一口すする(sip)つもりが ship(船)となってしまいます。「座っている」つもりで、I am shitting. と言ったら大変です。

しかし、日本語を書き表わすためのローマ字なのだから、日本人が区別していないものまで書き分ける必要はない、と考える人もいます。日本語にはもともと「スィ」という音がありません。最近では、英語教育の成果か、日本語の中でもこの音を使う人が出て来ましたが、それでも「シーズン」や「シート」「シスター」を英語っぽくseason、seat、sister と言っている人は多くないだろうと思います。
    確かに、「し」の子音と、「さ」行の他の段(さ、す、せ、そ)の子音は、異なっていますし、英語国民にはそれが気になるでしょう。しかし、大部分の日本人にとっては、これが違うと言うことのほうが、むしろ驚きのはずです。ですから、「さ」行のローマ字は、訓令式の「sa、si、su、se、so」で十分だし、むしろその方が、文字の経済にかなうという考え方もあるのです。
    同様に、「た」行、「は」行も、「ta、chi、tsu、te、to」や「ha、hi、fu、he、ho」でなく、「ta、ti、tu、te、to」 、「ha、hi、hu、he、ho」で良いはずだという考え方もできます。(「は」行については、また後ほど書きます。)

フランス人がローマ字を作ったら?
ヘボン式ローマ字では「シャ、シ、シュ、シェ、ショ」を sha、shi、shu、she、sho と書きますが、これは英語の書き方を基準にしたものです。もしフランス人が、日本語を書き表わすためのローマ字を作ったとしたら、cha、chi、chu、che、cho としたことでしょう。フランス語では chanson(シャンソン)、chic(シック)など、「シャ」行は ch で表します。Chance もフランス語では「チャンス」ではなく「シャーンス」のように発音します。

厳密に言うと、フランス語では、 u は「ウ」ではなく「イュ」のように聞こえる音です。「ウ」は ou と書きますから、「シュ」は chou と書いた方が良いかもしれません。「シュークリーム」の「シュー」はこう書きます。ただ、これも厳密に言うと日本語の「ウ」よりも、かなりきつく唇を丸めて突き出すようにして発音しますので、日本語とは響きが違います。結局は、文字の経済も考えて、chu に落ち着くでしょう。
    そもそもアメリカ人ヘボンが、英語に倣って母音「あ、い、う、え、お」をローマ字にしたら、「a、i、u、e、o」とはならなかったでしょう。これらの文字は、英語では普通「エイ、アイ、ユー、イー、オウ」と発音するからです。Taro、Jiro、Saburo も英語国民が見れば「テイロウ、ジャイロウ、セイビュロウ」と読むかも知れません。
    英語式に「あ、い、う、え、お」を書けば、「ah、ee、oo、eh、oh」のようになるかもしれませんが、これでも確実ではありません。なにしろ、英語の母音の読み方は一通りではないからです。それに、これでは書くのにも面倒です。やはり、文字の経済から言っても「a、i、u、e、o」のほうがスッキリしていますね。

Gni はなんて読む?
もしフランス人がローマ字を作ったとしたら、「な」行は na、gni、nu、ne、no となっていたかも知れません。フランス語では ni と gni は違う音です。子音 [ n ] は舌の先端を上の歯茎に付けて発音しますが、日本語の「に」の場合、舌の先端だけではなく、かなり広い部分を口蓋(口の天井)に付けます。フランス人には、日本語の「に」は「ニャ、ニ、ニュ、ニェ、ニョ(gna、gni、gnu、gne、gno)」の gni のように聞こえます。Magnitude(マニテュード)の「ニ」は日本語式でかまいませんが、manifeste(マニフェスト)の「ニ」には気を付けて下さい。幸い、全く違う言葉になってしまうということはありませんが、フランス人にはかなり奇妙に聞こえると思います。
    英語には ni と gni の区別がありませんから、ヘボン式ローマ字では「に」を ni と書きます。しかし、英語の ni はやはり日本語の「に」と違いますので、たとえば need などを発音する場合、気を付けないと、かなり訛っているという印象を与えるかもしれません。

「ふ」は、なぜ hu でないの?
ヘボン式ローマ字では「は」行を「ha、hi、fu、he、ho」と書き、「ふ」のところだけ f を使います。日本人の中には、「は」行の子音はすべて h だと思っている人が多いかも知れませんが、アメリカ人ヘボンは、「ふ」だけが唇を使って出す音で、「は、ひ、へ、ほ」の子音である [ h ] とは違うということに気付いたのです。
    「は、ひ、ふ、へ、ほ」を注意深く言ってみると、「ふ」だけは唇をすぼめて発音することに気付くでしょう。「ふ」の子音は「両唇摩擦音」と言って、ロウソクを消す時のように、丸めた唇の隙間から息を吹き出して出す音です。発音記号では [ Φ ] のように書きます。英語では what や where の wh を発音するのに、この音を使う人もいますが、どちらかと言えば、まれな音です。
    もちろん日本語の「ふ」の子音は英語の/ f / とは違います。/ f / は「唇歯摩擦音」と言って、上の前歯で下唇を押さえるようにして、その隙間から息を吐き出すことで出す音です。ヘボンは、これが下唇だけとは言え、唇を使って出す音だということで、妥協して「ふ」を fu としたのでしょう。ドッグフードの「フード」は、日本人が普通に発音すると、決して英語の food と同じではありません。
    英語の hu は「ふ」とは更に違った音です。英語の h は喉の奥のほうから出る音です。「は」や「へ」「ほ」を強調して言ってみてください。喉の辺りで摩擦が起こっているのを感じるでしょう。 英語の who(誰)や hood(頭巾)は「フー」や「フード」ではありません。発音記号では / hu: / や / hud / と書くように、h の音なのです。英語の who などを発音する時は、唇を使わずに、「ほ」の時と同じく喉の奥を摩擦させるように注意して下さい。(関連項目:
「ふ」が濁るとどんな音?

ドイツ人がローマ字を作ったら?
ところで、もしドイツ人がローマ字を作ったら、「は」行はどうなったでしょう。「ふ」が fu となることは同じですが、さらに「ひ」は chi になっていたかもしれません。ドイツ人の耳には、日本語の「ひ」の子音は、英語の hit や heat の / hi / とは違うように聞こえます。日本人も英語国民も気付かないことですが、実は日本語の「ひ」の子音は [ h ] ではないのです。

英語やドイツ語の / h / の音は、前に書きましたように、喉の奥の方が空気で摩擦されて出る音です。もっと正確に言うと、「声門摩擦音」と言って、声門のところで肺から送られて来た空気が摩擦を起こして出る音です。日本語の「は」「へ」「ほ」の子音は [ h ] です。
    ( 声門というのは喉頭にある声帯のすきまのことです。喉頭というのは気管の上部で、ちょうど、のど仏のところにあります。この中に声帯と呼ばれる2つの膜があり、門のように開いたり閉じたりして、肺から出る空気の流れを制御します。空気が通る時にこの声帯が震えると、その振動が声となります。)

一方、日本語の「ひ」の子音は、「ひゃ、ひ、ひゅ、ひぇ、ひょ」の子音で、舌の前の方のかなり広い部分を、硬口蓋(口の天井の前より部分)に近付けて、その狭い隙間で息を摩擦させて出す音です。発音記号の [ ç ] に近い音です。「へ、ひ、へ、ひ、へ、ひ」とくり返して言ってみると、「ひ」の時にはかなり舌が上がるのを実感できると思います。(参照:「ひ」はなぜ「ひ」?
    この子音は英語にはありませんので、英語国民は気がつきませんが、ドイツ語では「私」というときの ich(イッヒ)の「ヒ」がこれに当たります。「序列」を意味する Hierarchie(ヒエラルヒー)の最初の「ヒ」と後の「ヒ」は違います。その他、「中国」を意味する China(ヒーナ)、「カイロプラクティック」の Chiropraktik(ヒロプラクティーク)などの「ヒ」も英語の [ hi ] ではなく、日本語の「ひ」と同類の [ çi ] です。
    逆に英語やドイツ語の hi を発音する時は気を付けて下さい。「歴史」を意味する history や Historie(ヒストーリエ)の「ヒ」は日本語の「ひ」ではありません。舌を上げ過ぎないように、まず「へ」と言ってみて、その口の構えを崩さないようにしたまま、喉の奥のほうから [ hi ] を発音してみて下さい。(関連項目:「ひ」が濁るとどんな音?
(Apr. 2003)

参考文献:
日本語の音韻(日本語の世界7、小松英雄、中央公論社、1981)
国際音声記号ガイドブック(竹林滋・神山孝夫訳、国際音声学会編、2003)

目次・索引へ




元素の名前」更新中

最近の話題:シロカネは白金にあらず:銀の名前
      ホワイトゴールドも白金ではありません

目次:

名前について
翡翠って飛ぶの?
あるときは鳥、あるときは草、そしてあるときは?
ホトトギスって貝だっけ?
ヤキイモとヘソクリの共通点は?
イカ、トロ、ブリ、トラ、ダニの共通点は?
イン語は寿司屋の言葉かな?
「エッグ」はタマ語?
鉛筆は鉛の筆?
高貴なる気体とは?
メガの千倍はギガ、ではその千倍、百万倍は?
ミクロの千分の1はナノ、ではその千分の1は?
%はなぜ「パーセント」と読むのか?
Aはなぜ「エイ」と読むのか?
Aはなぜ「アー」と読むのか?
B なぜ「エブ」でないのか
H はなぜ「エイチ」なのか?
メルセデスもラテン語?
アウディもラテン語?
ボルボもラテン語?
フィアットもラテン語?
ギリシャ文字の名前
キー? ヒー? カイ? ギリシャ文字 X の名前
発音記号の名前
æ って何て字
シュワーって何?
学名って何?
ピロリ菌の学名
ガイウスを C. と略すのはどうして?
ユリウスを Iulius、イエスを Iesus と書くのはなぜ?
世界で2番目に長い地名
スー・チーを Suu Kyi と書くのはなぜ?
「盧武鉉」は何故「ノ・ムヒョン」か?
ペ・ヨンジュンはなぜ Bae Yong Joon か?
アジ化物は「アジの化け物」じゃないよ。
アンモニアの起源はエジプトの神様?
化学名、-ide、-ite、-ate
ホワイトゴールドは白金じゃない?

いろいろな言葉
「知らない語」なんてあるの?
タベルナで食べてもいいの?
「シオタラン」は「塩足らん」?
現代ギリシャ語の標識
現代ギリシャ語の挨拶
悉曇学って何?
ラテン語ってどんな言葉?
ブルータスよ、お前もか
来た、見た、勝った
我思う、故に我あり
彼の老婆は20才? 似て非なる中国語と日本語
ベトナム語の中の漢語
韓国語の漢語
「約束」は「ヤッソッ」?:韓国語
元素名の中国語
「水兵リーベ僕の船」を英語では?
山のあなたの空遠く
実は舶来の歌でした
歌謡曲よ、お前もか
もとは日本の歌でした
「武蔵」はなぜ「むさし」と読むのか?
春日はなぜ「かすが」と読むのか?
飛鳥はなぜ「あすか」と読むのか?
「為替」はなぜ「かわせ」と読むのか?
「いわゆる」はなぜ「所謂」と書くのか?
「いずみ」はなぜ「和泉」と書くか?
「おうみ」はなぜ「近江」と書くか?
acrophony(アクロフォニ)って何?
acronym(アクロニム)って何?
mnemonic(ニモニック)って何?
ロータシズムって何? S が R に変わる時
イオタシズムって何? ケがキになる時

文字について
犂耕体ってどんな書き方?
ヘボン式ローマ字の不思議
五十音図の不思議
ビルマ文字はなぜ「か、さ、た、な」?
悉曇ってどんな文字?
デーヴァ・ナーガリってどんな文字?
キリル文字を作ったのはキリルじゃない?
ロシア文字ってどんな文字?
蒙古文字の行は右に進む?
モンゴル文字ってどんな文字?
フェニキア文字ってどんな文字?
ギリシャ文字ってどんな文字?
ルーン文字ってどんな文字?
クォック・グーってどんな文字?
「エング」ってどんな字?
Aはなぜ「エイ」と読むのか?
B なぜ「エブ」でないのか
Aはなぜ「アー」と読むのか?
AIUEOはどうして「アイウエオ」なの?
Z はなぜアルファベットの最後の文字か。
C は G のお母さん? で、Γ はおばあさん?
F と Y って兄弟だったの? それどころか・・・・
H が「エー」だったり「エヌ」だったりする理由
ボルボはウォルウォー?
キバさんって誰?
ふざけた万葉仮名
ルーン文字がまだ使われてる?
「李」さんは「イ」さん?
キガマエに「メ」は「気」。では「亥」では? 「炎」では?
チェ・ジウはなぜ Choi JI Woo か?
「スー・チー」はなぜ Suu Kyi か?

発音について
もしもフランス人がローマ字を作っていたら
もしもドイツ人がローマ字を作っていたら
「ひ」はなぜ「ひ」?
なぜ「ひ」は hi でないのか?
なぜ「ふ」は hu でないのか?
「ば」はなぜ ba と読むのかな?
「ひ」が濁るとどんな音?
「ふ」が濁るとどんな音?
有声音と無声音
原始、母は Papa だった
母は「ふぁふぁ」と呼ばれた
万葉仮名の「は」行
は行転呼音って何のこと?
半濁音って何?
半濁点はどこから来たか?
大母音推移って何?
なぜ children は「チャイルドレン」でないのか?
なぜ women は「ウィメン」か?
無声音の R ってどんな音?P の発音
無声音の L ってどんな音?
四声:北京語の声調
ベトナム語の声調
「ロー」氏とは俺のことかと「ムヒョン」言い。
Aung San Suu Kyi はなぜ「アウン・サン・スー・チー」か?
「冷麺」はなぜ「ネンミョン」か?
「十分」は「じゅっぷん」か「じっぷん」か?

元素の名前
元素記号:金が Au で 銀が Ag のわけは?
ハロゲンライトは造塩電球?
フロンとテフロンの関係?
ネオンが無くてもネオンとは如何?
ムカデ vs. ヤスデ、足が多いのはどっち?
ライムライトは石灰光?
石灰、生石灰と消石灰、どっちがどっち?
チョークって山から採れるの?
アルカリ土類って土なの?
キドカラーのキドを漢字で書くと?
メッキって日本語?
ステンレスの正体は?
ニクロム線はなぜニクロムか?
6価クロムの6価って何?
遷移元素って何?
電子軌道の名前
マンガン団塊って何?
緑青って何もの?
銀と言っても銀じゃない
ダイオードって真空管だったの?
元素の世界の月、地球、太陽
ブロマイドは臭化物?
4つの元素名を生んだ村

意外な関係
ネオンとネオコンの関係?
カロテンとベンゼンの関係は?
豊胸手術に半導体?
チタンとタイタニックの関係
チタンと眼鏡フレームの関係
チタンと化粧品の関係
刀とバナジウムの関係
アメフラシの色とバナジウムの関係
ルビーとクロムの関係
ルビーとルビジウムの関係
乾電池とマンガンの関係
コバルトとニッケルは悪餓鬼どうし?
テクネチウムとテクノロジー

文法について
格変化って何?
定冠詞の働き
総称の the
「総称の a」
無冠詞の総称
a のない男は人類?

これからの予定

ページ・トップへ

ご意見・ご感想は ntomioka$mbj.nifty.com へ



last updated