―COUNTERATTACK―2年目の逆襲
 〉〉第25話

1塁塁上には赤川が立っている。
先ほどライト前にヒットを打った。
孝市「まあバッティングはうまくないからまぐれと見てもいいがな。」
…だがどうやらまぐれらしい。
そう思っている…いや、思い込んでいる選手もいた。
外郎が、獅子狩の元へ歩いていったのだが…

獅子狩「…まぐれだよな…女子相手に、こんな事…」
外郎「そうだよ。き、決まってるじゃないか…」
…女子相手に、女子相手に完璧に打たれているのである。無理もない。

ウグイス「3番、センター、中塩さん。」
孝市「だが、こいつはうったらまぐれじゃ済まされないぞ…」
来真「?…それって、つまり?」

孝市「左対右では左の方が有利だし、
   バットをコントロールする後ろの手が利き手である左手というのも大きい。
   だが、この4ヶ月で一番バッティングが成長したのは中塩と秋村だろう。」
一応言っておくが中塩はサウスポーである。
ちなみに大会中の打率もしっかり3割は超えている。
孝市「中塩はいいバッターなんだ。まぐれ当たりはありえない。」
来真「で、打つと思う?」
孝市「可能性は打率に比例すると思う。」
電光掲示板には、.313と書かれている。
つまり、31,3%の確率で打つのである。
孝市「それで、あいつと秋村はパワーはないがクリーンナップにしているわけだ。」


獅子狩「1番と4番以外は春に野球を始めたばかりだとは聞いてるけど…
    でもクリーンナップって事は打つんだろうね…」
中塩(直球は鏡高君より速いみたいだけど…)
獅子狩はどれだけの力配分で投げるか、中塩は狙い球を絞っている。
獅子狩(まずはこいつで行くか!)
投げた。ボールを抜くように投げたのでチェンジアップである。
中塩の体がピクリと動いた。

審判「ストライーク!」
外郎(ピクリと動いたって事はチェンジアップ狙いだな。
   アウトローいっぱいだったから振らなかっただけか…ならば!)
獅子狩が振りかぶる。
中塩(わっ!)
インハイのストレート。102の表示に場内はどよめく。
中塩(…新飛さんに習った駆け引き、役に立つかな。)
中塩が構える。

外郎(チェンジアップでは動いたけど、ストレートでは石のようだ。
   …間違いなくチェンジアップを狙ってる。素人だから小細工はありえない!)
獅子狩が振りかぶる。さっきから、赤川を気にせず投げている。
アウトローよりのストレート。
中塩(狙ってたストレート!)

見事に三遊間へ流し打った。
中塩「へへへー。やったあ。」
新飛「狙い球を絞り、2ストまでは狙い球ではどんな球でも
   ピクリとも動かず我慢して、そうでなければわざとピクリと動く。
   そして2ストからは狙い球を打ちにいけばいい…」
孝市「どこまで女子軍団に入れ知恵してるんだ?」
新飛「本気でつぶしに行くよ。
   いつもの物静かな私とは、違うから。」
目つきを鋭くし、ブルペンからグラウンドを睨みつける。

そして、チャンスで4番に回ってくる。
ウグイス「4番、ピッチャー、鏡高君。」
新飛「3ランで突き放せー!」
大声で叫ぶ。当然のごとく、チームメイトは全員驚く。






富福「やれやれ…来真のやつ、朝早く俺が起きないうちから家を出て…
   今日は大事な決勝戦で、応援団作ってきたのに…」
後ろには、アカティーに学生服来た、リーゼントの不良軍団がいる。
…何か勘違いをしているような…
富福「団体入場券を。」
受付「は、はい…」

そして無人の外野応援席へと向かった。




 〉〉第26話

来真がバッターボックスに入ろうとする。すると…
「おーい、来真!」
内野席の方から、声が聞こえてきた。
来真「お父さん。」
富福「外野席見てみろ、俺が用意したものだぞ。」

見ると、外野席にあの不良応援団がいる。全員、応援用メガホンを持っている。
富福「今日一日雇った応援団だ。
   1人一万円ですんだぞ。」
…この父親は何を考えてるんだろうか…しかも、

応援団「ホームランホームラン ら,い,まー!」
まるでプロ野球の応援である。
とりあえず応援は禁止ではないが、こんなことするのはほかに誰もいない。
応援団「鋭いスイング!抜群のパワーと飛距離!
    ライートスタンドへ 場外ホームランー!」
…応援歌までつけている。プロ野球と勘違いしているようだ。

来真(かえって気が散るよ…)
獅子狩(やれやれ…それじゃあ行くか!)
獅子狩がクイックモーションで投げる。
来真(ストレートだ!)
完璧にはじき返した。打球はレフト前に。

崎「よーし左中間抜けるぞ!」
平居「まわれまわれー!」
ベンチはまわれまわれといっている…が、そのとき、
孝市「!!」
新飛「戻って!戻って!」
…しかし、周りの声にかき消されている。よって赤川と中塩に届いた警告は、
来真「も、戻れ!」
来真は気付いていた。
そして赤川たちもその声に気付いたが、状況がよくわからず走っていた。
来真(くそ、素人め!)

ベンチの警告はベンチの選手にかき消されている。そこで、
(いっせーのーれ!)
名井等「まわれまわれー!」


…なんと左中間を抜けようというあたりは、
レフト・寛「うおおおっ!」
寛が飛び込んだ。そして、右手にはめているグラブを審判に見せる。
審判「アウト!」

その時、ベンチの警告が赤川と中塩にやっと届いた。
新飛&孝市「戻れえええええええええっ!」
吉岡「!?」
ベンチが一斉に静まり、審判のアウトの声と共に警告が届く。
赤川「え?」
中塩「え?アウト?戻る?」
しかし、いまだ混乱している。
ボールのとんだレフト方向を見ると、寛がボールを投げるのが見えた。
中塩「え?」

それを見ても混乱が解けなかった。
ボールがセカンドへ、ファーストへと送られるのを、審判が2回アウトと言うのを、
審判「アウト!アウト!」
赤川はサードの、中塩はセカンドの近くで、
動く事も出来ずボールを目で追うことしか出来なかった。

応援団「あああ…」
応援団の指揮も下がる。
結局この回の得点は、新飛のソロの1点だけだった。



来真(さて…何点まで抑えられるかな…)
そう思いながら投球練習している。
田村(いつもどおり球が走っていれば、そうそうは点はとられない。
   …問題は、チェンジアップがどのくらい通用するかだが…
   鏡高君のよさであり、彼自身ストレートに自信持ってるんだから…)
直球主体で組み立てるつもりである。
…ただし、直球ばかりでは間違いなく打たれるのも確かではあるが…

審判「アウト!」
  「アウト!」
  「バッターアウト!」
毛利、吉川、小早川トリオを早々と討ち取った。そして…

獅子狩「もう点は取られない!」
審判「バッターアウト!」
  「アウト!」
  「バッターアウト!」
田村、崎、平居をしっかりと討ち取る。


そして、来真vs神道の戦いとなった。
来真「…。」
暁(…なんか、もう気迫で負けてるような…)
孝市(ものすごいやる気だな、来真は。)
来真が投げる。神道も必死にバットで応戦する。が…
審判「ストライック!」
  「ストラーイク!」
  「ストライーク!バッターアウト!」
暁「…速すぎる…
  球速以上にノビてるよ…」
いとも簡単に直球で討ち取った。

審判「アウト!」
  「バッターアウト!チェンジ!」
  「バッターアウト!」
  「アウト!」
  「バッターアウト!チェンジ!」
     ……………。
獅子狩も、来真も、1回裏以降完璧な投手戦を演じている。
3回裏まで両チームヒットは一本も出ず、
出塁も2回裏の崎のエラー1つだけである。

        123456 RHE
孝市リトル  100    131
脛リトル   000    000

獅子狩  投球数34 奪三振4 失点1
鏡高   投球数29 奪三振6 失点0 



 〉〉第27話

4回表…

獅子狩(投手戦とはいうが、投球数、奪三振、自責すべてむこうがいい…
    いやだねえ…)
1年に負けているというのは、なんともな避けない、そういう思いであろう。

審判「ストライーク!バッターアウト!」
  「ストライク!バッターアウト!」
2者連続三振。
常時100km超のストレートで快調に飛ばしている。

ウグイス「4番、ピッチャー、鏡高君。」
来真(そろそろ追加点が欲しいな…
   僕自身楽して投げたい…)
自分自身への援護…変な言い方だが、エースで4番なら当然の仕事である。
来真「でもさっきもちゃんとあわせて打ったし、今度こそは…!」

外郎(こいつは4番だ、さっきもあわやタイムリーの当たり…
   慎重に行くぞ。)
獅子狩(さっき油断して先制弾浴びたのは誰のせいだよ。)
外郎(…聞こえないふり…)
…何度も言うが、テレパシーではない。

獅子狩(それじゃあ行くぞ!)
来真(初球をたたく!)
獅子狩が投げた。来真は完璧なタイミングでバットを振った。
…もっとも、完璧なタイミングとはいえそれがストレートの場合ならだが。

来真(うわあっ!)
フォームを崩した。そう、この試合はじめての、チェンジアップである。
来真(この試合で始めて使ってきたか…厄介だな…)
獅子狩(狙い球を絞らせないようにすれば、討ち取れる!)

獅子狩は外郎のサインにうなずく。その時、
来真「タイムお願いします。」
獅子狩「何?」
審判「タイム!」
そういうと、ベンチに向かって走っていった。


孝市「どうした。」
来真「狙い球を…絞りたいんだけど…どっちにしようか…」
中塩「私が、いい作戦教えてあげようか?」
新飛「私の受け売りでしょ?」
中塩が照れ笑いする。
…だが、そんなのを尻目に、孝市が言った。

孝市「お前は1回、レフトフライに倒れたよな?」
来真「うん…」
心なしか小さな声で言った。
孝市「お前には、プライドはあるか?」
来真「うん。」
今度は大きな声で言った。
来真はやはり、エース4番の責任は感じている。

孝市「ならば、その1回の凡退の借りを、返せ。
   さっさとバッターボックスに戻るんだ。」
来真「うん…」
何一つ、質問に答えてないじゃないか。そう思いながら戻る。
来真(いったい兄ちゃんは、何を言いたかったんだ…)

そう思いつつ、来真が打席に向かう。
獅子狩(ここを抑えて、弾みをつける!)
第2球を投げた。
来真(速い!)
全く手が出ない。102の表示に、場内がどよめく。
来真(速い、困難じゃあ、タイミングあっても、
   フライに倒され……ん?)
来真がバッターボックスを外す。


来真(もしかして、兄ちゃん…)



 〉〉第28話

来真「ありがとう兄ちゃん…
   狙い球を絞れたよ!」
そういって構える。
外郎「どっちに絞っても、確率的にはおんなじだと思うよ。」
来真「…でも、過去を振り返って考えると、こっちに絞らなきゃなんないんだよね。」
外郎「?」
来真「いつもはサングラスつけてるけど、やっぱり無い方が打ちやすいや。
   お日様の光の力を借りて、しっかりボールを見て、バットでとらえるよ。」
いつもは試合ではサングラスをかけているが、
不思議と今日はかけていないのだ。
孝市(まあ、今日の相手に限っては強いから、
   あの打法を練習する余裕はないからなんだけど…)
もちろんあの打法とは対神道のときに使ったあれである。


獅子狩が振りかぶる。そして大きく足を上げた。
来真(来る!)
ボールはゆっくり向かってくる。チェンジアップだ。
次の瞬間、バットと軟球の衝突による音が響いた。

外郎「やばい!」
打球はぐんぐん伸びていく。ベンチは歓声を上げている。
平居「いったー!」
孝市(およ?来真のやつ、何を考えてるんだ。)
…孝市は嬉しさも感じずに打球を見送っている。

獅子狩「あぶなー。」
飛距離は文句ないが、ポールを大きくそれた。当然ファールである。
外郎(タイミングがずれたみたいだな…
   仮にチェンジアップを狙ったとしても、その前の速球の勢いで惑わされたのか。)

来真が構える。
獅子狩(ならば、第1打席で討ち取った、ストレートで!)
バックを信じているのだろう、しかし、来真の考えも同じだった。
来真(僕にもプライドがある。ストレートから逃げたくはない。
   だから、第1打席で討ち取られた、ストレートを!)
真逆の考え方だが、ある意味非常に似てもいる。

獅子狩(行くぞ…)
大きく振りかぶり、足をあげる。
ものすごいゆっくりとした動作である。しっかりタメるためだろうか。
獅子狩(フルパワーのストレートだ!)
今度はものすごい速さのストレートである。
来真(今度は左中間を破る…いや、スタンドを越えて見せる!)

フルスイング。
ボースはさっきと同じように左中間方向に飛んでいく。
夏見&寛(取れる!)
2人の距離がどんどん縮まっていく。そして、
夏見「オーライ…」
寛「頼むよセンター。」
夏見の足が止まる。そしてグラブを掲げた。
そこへ弾丸ライナーが飛んでくる…予定だった。

夏見「おい…なんか変だぞ…」
夏見の足が後ろ後ろへ下がっていく。
その足は歩き足からだんだん走り足へと変わっていった。
…すると、夏見の体に、何か当たった。
夏見「…な、フェンス!?
   冗談じゃない、ボールの落下点はここより…」

ボールは夏見の頭のすぐ上を、弾丸のように通過した。
夏見「さらに奥に…」
ぶつかったフェンスに気をとられていた。
ちゃんと腕を上げてグラブを掲げていれば何とか取れていたはずだった。だが…

寛「何してるんだよ、」
夏見「ごめん、フェンスに気を取られてて…でも…」
寛「でも、なんだよ?」
夏見「あれは弾丸ライナーじゃない、弾丸だ。
   ちゃんとボール見てても、マスクとプロテクターがなきゃ…」
寛「…え?」

そのホームランボールは、バットに当たって、あっという間にスタンド入りした。
観客もどよめく。
観客A「おい、なんだよあれ…」
観客B「本当に小学1年生か?」
観客C「バットに当たって…2秒ぐらいしか経ってねーんじゃねーか?」
もちろん、さすがに2秒というのは考えられない。
だがいずれにせよ、来真のバッティングは、特にパワーは間違いなく、


誰の目から見ても桁違いなのは変わらない。


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