
改訂版
西陣では「はたや」は織機のことで、機業家を言うときは「おりや」と称します。又単に「はた」と言えば織機に装置する仕掛け(綜絖)を意味します。
ところが部外の方々は、機業家のことを「はたやさん」と呼ぶのが普通です。最近は部内でも「織り屋」を「はたや」と称する人が増えて、殆どこの語は市民権を得ようとしています。
私は三十年ほど前、このことを憂えて、組合の機関誌「西陣たより」に「これではいずれ、西陣には『おりや(機業家)』が無くなって『はたや(織機)』だけが残る街になってしまうだろう」と風刺の一文を書いたことがあるのですが、その後バブル経済の破綻があって、今や言葉の上だけでなく、現実にその事態が到来しています。誠に心寒い次第であります。
国語の荒廃については、それを扱うメディアに責任の一端があろうと考えますが、しかし責めの大部分は、やはり一般大衆の無節操にあるでしょう。
京ことばの場合も、日常語の標準語化はやむを得ない趨勢ですが、みやびた京ことばを保存するには、市民全体が認識を新たにすることが必要です。
西陣には「織り屋」の他、それに関連した、糸・染め・整経・綜絖・紋意匠・金銀糸など、各種の企業が存在します。それら各業界は、いろいろの作業の情報やノウハウがいっぱい詰まった、多数の業界用語を持っています。各業界とも技術革新が進んでいますから、作業は簡略(短絡)化し、それら用語は死語と化しつつあります。今にして用語の保存に力を致さねば、結果だけ知ってそこに至るプロセスを知らぬ若い人が輩出することになりかねません。そしてその事業は、業界人自身がなさなくて誰が務めるでしょうか。

我が国最古最大の内需織物産地西陣で、日常使われている言葉は、所謂「京ことば」と共通すると考えてよく、従ってここに集めたことばの殆どは、西陣織の業界関連用語が主力となりました。しかし一般日常語に於いても、特殊なものは一部収録しております。
また、一般語のうち、西陣独自の意味を持つものは、その意味のみを表記しました。
見出し語の三角の付点はアクセント記号で、▲は高く、▽は低く発音します。
語義説明文中に「 」で囲んだ語は、その項を別に設けたことを示します。
編者のプロフィールついては、トップ頁から「自己紹介」をご参照下さい。
挿入写真のカラーのものは西陣織工業組合広報出版物よりお借りし、モノクロ写真は松尾弘子氏の提供によりました。
上掲写真の既刊書よりアクセント、解説文、挿入写真等、全面改訂いたしました。
参考文献 きもの文様辞典 婦人画報社:辞苑 新村 出:染織辞典 日本織物新聞社:染織どくほん 婦人画報社:
天狗筆記物語 駒 敏郎:ジャカード渡来百年記念誌 西陣織工業組合:
工事は完了しました。どうぞご利用下さい。
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