今月のピッカイチ!     


banal
似内隆継






僕はぼんやりしている
通り過ぎていく人たちの中に立って何も分からずに口を開けたまま
女の子に電話をかけたのは退屈だから
一緒にいれば何かを話してくれる
何か新しいものを見せてくれる
だけど僕はぼんやりして窓の外ばかり見ている
当然相手も愛想をつかす
僕は初心者向けのブービー・トラップだ
そこにある対象に対してどういう反応を示したらいいのか分からない
まごついてしまう
綺麗な人たちのする話が理解できない
口説いたりする意義が見当たらない
誰が誰と寝ようと僕には全く関係がない
      
小説を広げて青山通りのウェンディーズの2階で煙草を吸っている
全く読みすすめない
ズボンの縫い目を全てホッチキスで留めた浮浪者がチビた煙草を旨そうに吸っている
のを見ている
人は一日走ったり殺したり捕ったりする代りに
今は煙草や酒を使って自分の体を一日分痛めつけて眠ろうとする
僕は昨日二日分飲んだので今日はもう動けない
無意識に火を着けた煙草を、そのまま揉み消した
突然不機嫌になったりハイになったり
ぼんやりしてたり聡明になったり
僕は忙しい、人間と動物の狭間で
このガラスを通して青空の街を眺めているように
他人行儀に世界が流れている
いつも他人は愚者の群れだと思って来たけれど
愚者は僕だ、尻餅をついて笑いを誘う
全てのものに対する怒りが僕を咆哮させる
大真面目になればなる程笑ってくれる
人々の悲しみを真に受け
拳を振り上げた時本人はどこかで酒を飲んで笑っている
僕のか弱い叫びは暗い町に飲まれた
          
多分知恵おくれなんだ
他の人が分かることが僕にはどうしても分からない
当たり前のことが当たり前にできない
ぐったりとベッドに倒れこんでいると
大丈夫、大丈夫だよと二度
知らない女の囁き声が聞こえた
目を塞がれたあの天使がついにやって来たのかと思った
子供の名を久しぶりに思い出した
何が大丈夫なのか教えて欲しかった
話し掛けたのが誰なのか知りたかった
目を開いても当然誰もいなくて
そんなものが聞こえるなんて
僕もいよいよおかしくなってきた
      
最近何も覚えていない
何も思い出さない
楽しい色を見ればにこっとし
悲しい色を見れば涙を流す
子供か、犬か、そんなようなもんだ
君の電話にはきちんと受け答えしたけど
僕は今そんな感じだよ









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