「それで、これからどうするんだ?」
遠坂と親父の一騒動が終わってから、俺はそう切り出した。
情けないというなかれ。俺は聖杯戦争の事を今知ったわけだし、ある意味飽和状態だ。頭の中を整理しないと訳が分からないままだ。
「そうね……取り合えずこれから教会に行くわ」
「教会?」
「隣の言峰教会よ。そこに、この戦いを監督しているエセ神父がいるの。貴方も詳しい事を知りたいでしょうし、私も疑問があるわ。だから今から行くわよ」
「ふーん……ん?」
ふと親父を見ると、複雑な顔をしていた。
「親父?」
「ん……いや……凛ちゃん、そいつってもしかして言峰綺礼かい?」
「そうだけど……知ってるの?」
「うん、ちょっとあってね」
曖昧な親父の言葉。それから考え込んでしまう。
そんな親父を遠坂はいぶかしげに見るが、しょうがないとばかりにため息を付いた。
「むぅ……まぁいいわ。どうせ何を言っても言わないと決めた事は答えてくれそうにないし。それよりもセイバー、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「家に帰ってあの本を持ってきて欲しいの」
「あの本……ああ、マスター用のあの本ですね」
「そう。場所は分かるでしょ?」
「ええ。それで、後でですか?」
「ううん、今から。これから教会に行くけど、場所は分かるでしょ。あそこ集合って事で」
「……凛、それは」
「別に問題はないでしょ。この二人…………訂正するわ、士郎が裏切る事はないわ。それに、途中でサーヴァントが現れたとしても、切嗣がいれば逃げる事も出来る」
「まぁ……それは認めます」
と、いつの間にか話をまとめる二人。
「あの遠坂、その本ってのは何だ?」
「それは後のお楽しみね。ま、楽しみにしてなさい。私もある意味気になってるし」
「?」
よく分からないが……今何を言っても教えてはくれなさそうだ。仕方ない。遠坂のいう通り、後のお楽しみにしておくか。
「……分かりました。くれぐれも無理はしないでくださいね」
「分かってるわ。それじゃ、行きましょうか」
そして、遠坂の決定通り俺達は教会に向かうことになった。
衛宮さん家の聖杯戦争
第四話
対言峰綺礼編
たどり着いたのは坂の上にある教会。
「うわ……凄い」
そこには厳粛な雰囲気を漂わせる教会の姿。初めて来たためか、圧倒される雰囲気を持っている。
「さ、行くわよ」
「あ、ああ」
そんな俺の感想も、遠坂にとっては瑣末事なんだろう。そのまま歩を進める。
けど、
「僕はここで待ってるよ」
親父はそこで立ち止まった。
「親父は入らないのか?」
「うん」
「何よ、綺礼と知り合いなんじゃないの?」
「ちょっとね」
またしても曖昧な返事。遠坂は「むー」っと親父を睨み付けるが、まぁいいかとため息を付いて再び歩き出す。
「いいわ。貴方に無理強いする必要はないし、あいつには手の内全てを見せない方がいいだろうしね」
「そういうこと。それじゃ士郎をよろしくね」
なるほど。そういう考えもあるか。
俺もそれに付いて教会に入った。
「……さて、と。多分場所は変えているだろうけど、そう離れた場所には置くはずがない……なら、この教会の隠し部屋かな」
……? 親父、なにぶつぶつ言っているんだ?
そして―――出会ったのがこの男、言峰綺礼。
聖杯戦争の管理者にして、前回の聖杯戦争の参加者。
俺はそいつと話をして、ようやく頭の中が整理できた。
分かった事は、俺は聖杯戦争から降りるわけにはいかないということ。そしてこの男の性格は真っ黒だということだ。
「俺の答えは―――戦う、だ」
「ほう、そうか」
その言葉に、こいつは実に嬉しそうな笑みを浮かべてくれる。賭けてもいい、こいつは絶対俺の不幸を喜ぶタチだ。
「さて、今ので説明は終わりだが、質問があるかね?」
「ええ、あるわ」
その問いに答えたのは俺じゃなく遠坂だった。
「聖杯の中身に付いて何か知らない?」
「おい、遠坂」
「ごめん、ここは私に任せてもらえる」
俺に一瞬向けた視線、その鋭さに押され、俺は黙る事にする。確かに、聞かなくちゃいけないことはあるし、俺がそれを聞いてもあっさりと言い負かされると思う。
だから、俺は一歩引いて遠坂に任せる事にした。
「愚問を。あれは全ての望みを叶える力……だからこそお前達は奪い合うのだろう」
「そういう意味じゃないわ」
その答えに、遠坂は目を細めた。
「今回のサーヴァントに、この聖杯戦争に詳しいのがいてね……聖杯の中身に異常があるって言うのよ」
「……ほう」
綺礼も同じように目を細める。
「そいつが偽りを言っている可能性もあるが」
「事実を言っているかもよ?」
「どうかな。サーヴァントは従順に真実を語るとは限らない……それ故の令呪だ」
「そうね」
あっさりと頷く。しかし、ニヤリと笑うと、
「けど、そんな人間には思えなかったのよね」
言って、まっすぐに綺礼を見つめたまま黙り込んだ。
しばし二人は黙ったまま視線を合わせる。
……先に折れたのは綺礼の方だった。
「……認めよう。確かに聖杯は犯されている。その様子だとその元凶がアンリマユであることも知っているようだが」
「…………」
「どうした?」
「驚いてるのよ。そんなにあっさり答えるなんて思わなかったから」
「心外だな。お前の聞きたかった答えではないのか?」
「その通りだけどね」
まぁ、その気持ちは分かる。俺もそんなあっさりと答えるとは思わなかったし。
と、そう思ったのがいけなかったのか、綺礼は俺に目を向けた。
「しかし、衛宮士郎。お前にとっては喜ばしい事ではないのか?」
「む?」
そして嫌味な笑みを浮かべ、
「正義の味方は、対極にある悪と言う存在なくては意味がない。そして、アンリマユは最も強大な悪になりうる存在だ。お前にとってこれ以上の“理想の敵”はあるまい?」
「!」
反射的に言い返そうとして……止める。こいつに言い返しても無駄な気がしたからだ。
そんな俺を見て、一つ頷くと、今度は顎に手を当てて考え込む。
「しかし、それを知るサーヴァントか……そんなものがいるとは思わなかったな。少なくとも植えつけられる知識にはないはずだ。それは何故その事を知ったのやら」
「簡単よ。サーヴァントになる前に知ったそうだからね」
「何?」
遠坂の返答に、やや眉をひそめた。当然だろう、そんなこと本来ありえないんだろうから。
「それはどういう―――」
「―――つまり、僕が教えたってことなんだけどね」
そして、綺礼の後ろから聞こえた声。
その発生源に一瞬で振り向き、一瞬、大きく目を見開く。それこそ信じられないといった表情で。
そこには……いつの間に周り込んでいたのか、親父がいた。
「……ほう、なるほどな」
しかし、それも一瞬で消え、残るのは歪んだ歓喜の笑み。そう、断言できる。あいつは歪んでいる。親父を恐れ、その上で現れた事を喜んでいる。
「現世に迷ったのか」
「なに、色々あってね」
親父はゆっくりと俺達と綺礼の間に割って入る。
「あまり僕の息子をいじめないでくれないかな?」
「それは心外だな。私はお前が教えなかった事実を述べたまでだが……ああ、その真実をお前の変わりに教えてやったのだ、むしろ礼を言ってもらいたいものだが」
「礼、か……例えば、“また”銃弾をプレゼントしたほうがいいのかな」
うわ……すげぇ、空間が歪んでいるみたいに睨み合ってるよ。まさに天敵って感じだ。
けど、遠坂はそれにお構いなしに綺礼に話しかける。
「ま、そーいうことよ綺礼。彼は前回の聖杯戦争参加者。しかも私達が知らないって言う情報まで持ってる……貴方が私達に教えなかった情報もね」
「……なるほど。私が信じられないか」
「少なくとも信頼した覚えはないわね。大体、見事に隠し事をしていた人間が何を繊細ぶってるのよ」
「それもそうだな」
クスリと笑い、改めて親父と向きあう。
「さて、お前は何を考えているのだ、“正義の味方”」
それは皮肉なのだろう。正義の味方を目指し―――なれなかったと言った親父への。
癪に障り、俺は食って掛かろうとするが、親父に目で抑えられて、なんとか言葉を飲み込む。
「大した事じゃないさ。ただ、守りたいだけだよ」
「それはそこにいるお前の息子をか? それともこの街か?」
「両方……と言っておくよ」
「……両方か。それが出来ぬ故に切り捨てる道を選んだお前がが」
それは完全に親父を見下した視線。それでも、親父は冷めたまま答える。
「好きに言えばいい。僕達は似て非なる存在。癪はさわるけど、お前の言うことくらいは予想できる」
「確かに。だがそれ故に耐えれぬ事とてあろう」
しかし、そのまま綺礼は俺に目を向け、
「いずれまた、息子とて犠牲にするのであろう? いや―――その息子がお前を犠牲にするやもしれんな」
瞬間―――親父はそいつに刃を突き付けた。
黒光りを放つ、ナイフでもない、刀でもない、剣でもない、ただの刃。
ほぼ反射的にそれを解析すると、それは魔力と怨念の塊……固形化した呪いだった。
それは親父が言っていた、親父の身体を蝕んでいた呪いなのだろう。
物理的な存在ではなく、対魔武具、対霊武具と言っていい存在。霞のようでありながら、触れる魔術、霊体、そういった不確定な存在を切り裂く呪い。
あれで人の身体を傷つける事は出来ないだろう。いや、まずはその魂を傷つけ、そして身体がそれを本物と感じ、死に至る。そんな代物だ。
―――怖い。
それが俺の感想だった。アレをもし自分に向けられたら……そう思うだけで怖かった。だというのに、あいつはその絶望を向けられても眉一つ動かさないでいる。魔術を理解するものなら分からないはずが無いと言うのに。
あいつは―――自分の死すら恐怖を感じないと言うのか。
「……驚いた。聖杯戦争の頃とはやはり別人だな。衛宮士郎を育ててる間の衛宮切嗣として、父親として今ここにいるというわけか。しかし、それが有利に働くとは限るまい」
「そうだね。僕は前回と比べて弱みを持ってしまったかもしれない。けど、それは問題じゃない。僕は、もう間違えないことにしたから」
「そのお前の“正しい”という考えが本当に正しいのか、何をもって決めるつもりだ」
「答える義務はないと思うけどね」
黒光りを放つ刃を挟んで、お互いに一歩も引かない。
遠坂もあの刃の恐ろしさが分かったのだろう。一言も口にしない。
数秒……いや、数十秒が経って、引いたのは親父の方だった。
「……やはり、か」
「何を確かめたというのだ」
「大した事じゃないよ。どうしてお前が“生きている”のか―――今ので予想が付いただけだ」
「ほう?」
「毒蛇は自分の毒じゃ死なないって言うしね……なら、この刃をお前が恐れる理由はない」
「成る程……正解だ」
俺達には分からないやり取りだが、あの二人には通じているのだろう。少し疎外感があった。
「切嗣、結局どう言うことよ」
「大した事じゃないよ」
「貴方の言う事はことごとく大事になるんだけどね」
遠坂の突っ込みもさらっと流す辺り、あまり話したくはないんだろうか?
「しかし、裏でこそこそ企まれるのも鬱陶しいよね」
「そうね。綺礼……貴方変な事考えてないでしょうね?」
その問いに、含み笑いで答える綺礼。
あー……あれは絶対何か考えているな。遠坂も同じ事を感じたらしい、むぅ、といった感じで綺礼を睨んでいるが、全然効いていないようだ。
そして親父は……ん? なんか懐をゴソゴソと―――
「……あまり変な事されちゃうと、これがどうなっても知らないよ?」
そして取り出したのは一冊の本。
「―――貴様!」
それを見た瞬間、初めて烈火のごとく綺礼の表情が怒りで歪んだ。遠坂の驚き具合から見て、本当に珍しいんだろう。
「遠坂、あの本ってなんだ?」
「私にも分からないわ。けど、あいつ教会に属しながら魔術師なんてやってるし、教会にばらされたらマズイことが書かれている可能性もあるわね。もしくは、あいつの何かの研究書か」
「どちらにしてもバラされたらマズイ物ってわけか」
「でしょうね。あそこまで感情を露にする綺礼は初めて見るし」
俺達がそう話し合って目を逸らしたのは一瞬だった。けど、その一瞬で綺礼は動いた。
「ふっ!」
「ちっ!」
バシッ!
ぶつかり合う二人。綺礼の拳が親父の顔面へと放たれ、それを本を持った手で逸らす。拍子に本が飛ばされ、遠坂の足元に落ちた。
「なんなのよ、一体」
そして、拾い上げた時に遠坂は偶然開いていたページに目を通し―――びしっと固まった。そして、まるでブリキ人形のようにギギギと首を上げて綺礼を見る。
「ん?」
見ると、綺礼も唖然としたまま遠坂を見ていた。それはまるで決して見られてはいけないものを見られたかのように。決して知られてはいけない事を知られたかのように。
ドサ……と、音がする。
再び遠坂を見ると、また本を落としていた。しょうがないので俺が拾い、そのタイトルに目を走らせてみる。あまり褒められたことじゃないのは分かっているが、魔術師としての興味が勝ったのも事実だ。
そして……
タイトル―――
娘と私
「……………………………………………………………………………………え?」
泥に包まれたような……重い重い沈黙。
そして、ほぼ無意識に……俺は本を開いた。
『今日は凛の誕生日だったため服を贈った。しかし着てこない。これではあの服が年頃の我が娘に似合うかどうか確認が取れないではないか』
俺は無言でぺらぺらとページをめくる。
『再び送ったがやはり着てこない。ゴスロリというものはそんなにも嫌なのだろうか?』
『泰山の亭主に相談したところ、“チャイナ服”を渡された。もう凛は当てにならないので今度はそのまま娘の所に送ったのだが……それからしばらく手紙を送ってこなくなった。何か失敗だったのだろうか?』
『今日はいい物を購入できた。きっとこれなら娘も喜んでくれるに違いない。ああ、想像するだけでも頬が緩む。付けた写真を送ってくれと手紙に書いたが、送ってくれるのはいつの日か……楽しみだ。しかし、ねこみ……』
パタン
閉じた。
で、俺も先ほどの遠坂のように首を上げて綺礼を見る。そして……しゃがみこんで頭を抱えている遠坂に目を向ける。
「……私の人間関係って……私の価値観って……私の人生って……」
……不憫だ。
「あー……親父、説明を求める」
「ああ、以前の聖杯戦争の時に少し調べたんだけど、こいつ奥さんに愛想つかされて離婚されたようでね。その時に娘さんの親権もとられて、会うことが出来ないそうなんだよねーあははー」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
親父、心底楽しそうだなぁ……あ、綺礼は懺悔するみたいに男泣きしてる。
「ちなみにその本は地下聖堂先にある隠し部屋にあったんだけど、これがその部屋」
そう言って差し出した写真を見る。ポロライドカメラで今さっき撮ったらしい。いつそんなもの用意したのかはもう突っ込まないことにしたが。
うぁ……なんかすっごい愛らしく可愛い子の小さい頃から俺達と同じくらいの歳になるまでの写真が所狭しと壁、天井に張られまくっている。ちなみに最初の方はまだ写真目線なのだが、中盤から明らかに目線があってなかったり。
……盗撮? っつーかストーカー? それにこの子って本当にこいつと血が繋がっているのか? ってかこいつそもそも結婚することが出来たのか!?
疑問が付きないというか……知るのが怖いと言うか……
……ところでさぁ親父……正義の味方って言葉、どこにいったの?
そんな感じで、異様な雰囲気に包まれたが、その中で綺礼は遠坂よりも早く立ち上がる。
「ふっ、お前達に知られても問題は無い。気にしなければいいだけだ」
……立ち直り早いっすね。
「確かになぁ。娘さんに知られなきゃ問題は無いわけだ」
「そうだ。それに、お前が以前調べた時とは住所も変わっている。聖杯戦争中に探し出すのは無理だろうな」
「うーん、それは困った。これじゃこの日記も写真も意味は無いかぁ」
「ああ、この街にそれをばら撒かれたところで私は気にしない。脅しにはならん」
「そうかぁ……」
そして親父はやれやれと首を振り、
「……ところでここに君の娘さんの住所が書かれた、娘さん直筆であろうメモがあったりするんだけど」
「今後余計な手出しはしませんのでどうか知らせるのは勘弁してください」
「やだなー、もっと誠意って物を見せて欲しいなー」
……うん、もう何も言うまい。
親父、本当にあいつ嫌いなんだな……
「あ……あはは……綺礼が土下座なんかしてるー……おかしー……」
「……遠坂、目の焦点が合ってないぞ」
それから数分後、なんとか遠坂を正気に戻した時、背後でコトッと音がした。
「ん?」
振り向くと、そこにはセイバーの姿が。
遠坂はそのセイバーの姿をみてようやく本調子に戻ったようだ。まぁ、俺もあまり後ろは振り向きたくない。
「遅かったわね、セイバー」
「…………凛、貴方はもう少し整理整頓というものを覚えた方がいい。何故たった一日であそこまで部屋の配置が変わるのですか」
「あ……そーいえば調べ物してそのままだった」
「……もう発掘作業は遠慮したいものです」
そして、重いため息を付いた後、
「で、その後ろの光景はどうし……」
「聞かないで」
完全に目の据わった遠坂の答えに、セイバーは脂汗を流しながらカクカクと首を縦に振る。
英霊すら恐れさせる遠坂って一体……
「ではシロウ、これを」
俺に歩み寄ったセイバーは、一冊の本を俺に渡す。
「これは何?」
「マスター用に作られた書物です」
「それを使えば自分のサーヴァントのステータスが分かるのよ」
遠坂が補足する。
「ステータス?」
「要するに、彼の正式なクラスが分かるって事。私、結構気になっているのよね」
ああ、納得。
「ほう、それは興味深い」
……やや間を置いて振り返ると、何事もなかったかのようにたたずむ綺礼の姿。
なぁ……せめてその顔に落書きされた○×位は消してこようよ……っつーか親父、子供かい……
「まだ何かあるのか?」
「なに、その男の正式なクラスを知りたいのだよ」
……今更シリアスぶってもなぁ。
「クラスは本質にあったものが選ばれる。そしてイレギュラークラスではそれが顕著なのだよ」
「そーゆー事。とにかく、アーチャーか亡霊かそれとも全く違うものなのか、私もそれを知りたいのよね」
「つまり?」
「その男の本質がなんなのか、それを知りたいのだ」
綺礼が苦々しく表情を歪める。
「私は“正義”か“偽善者”かとさっきまでなら思ったかもしれんが……今は“盗賊”だろうかと思っている」
「あはは、それはどうかな」
「“脅迫者”じゃないの?」
「……“鬼”ではないのでしょうか?」
「あ……あはは」
なんというか……好き放題言われてるな親父。
「で、遠坂。どうすればいいんだ?」
「その本を見るだけでいいわ。そうすれば脳裏にデーターが表示されるから。慣れれば簡単よ」
「ふぅん」
言われて本を開く。
……おお、なんか凄いなこれ。
「ああ、他の情報を言う必要はないわよ。クラスだけでいいんだからね」
「ん、了解」
そして俺はその記入されているステータスに目を通す。
「えっと、クラスは……」
探しながら思う。
さっき皆が色々といっていたが、どれも違うと思う。
―――思い出すのは始めて親父に会った時のこと。
“僕はね、魔法使いなんだ”
あの時のことを覚えている。
俺の命を救ってくれて、俺の生きる道しるべになってくれた。
その時から、親父は俺にとって間違いなく“魔法使い”になったんだ。
そして、俺はクラスを読み上げる。
そう、親父の……俺の尊敬する“魔法使い”のクラスは―――
“遊び人”
「……あれ?」
「なんだよそれー!?」
なのだそれは!?」
なのよそれって!?」
なのですかそれは!?」
―――そして、俺達四人の絶叫が教会に響き渡ったのだった。
「……うん、納得」
「するな親父!!」
……あはは……俺、きっとさっきの遠坂と同じような目をしているんだろうなぁ。
ステータス更新
黒刃
呪いの塊。遠坂家の使うガンドが弾丸なら、これは呪いを固形化した刃である。切嗣が死後使えるようになった唯一の武器。
生命全てを呪うものであり、魔術的で強力な防壁でなくては防ぐ事が出来ない。
ただ同じ呪いの心臓によって生きながらえている綺礼にとってはさして恐れるものではない。同じ毒を宿している者には効果がない故に毒蛇に例えたあの会話があったのだ。その為あそこまで余裕だったのだが……哀れ。
直感スキルA
これは相手の秘密、弱みがどこにあるのか感覚的に分かるという、敵にとってある意味最悪のスキルである。
だからといっていつでもこんな結果が出せると言うわけではなく、前回の聖杯戦争で相手の事を調べた情報があったため、それを元にプロファイリングして今回は知ったわけである。もっともそれでも十分未来予知……というか正確なダウジングにはなる。
今回で例えるなら、地下聖堂先にある隠し部屋の本棚に隠された隠し戸の、その中ではなく戸そのものに仕掛けられたカラクリ引き出しの中に入っていたメモをあの短時間で見つけたり。
……もはや勘の領域をやすやすと越えているように思えるのは気のせいだろう。
付け加えるなら、綺礼は他の人間に住所を知られない為にメモ等を作らず覚えていたのだが、そのメモは娘さん直筆だったため残しており、今回見つけられたらしい。
別名、盗賊スキル
クラス
“遊び人”
イレギュラークラス故に、切嗣の本質があらわされたクラスである。
……他に説明のしようがない。
……親父増殖中……な、何故だ(汗
そして、ようやく今回謎だったスキルが判明しましたー……ああ、投げる石はせめて小石に!
いや……納得出来ない方、います?(爆
感想は掲示板かメール、または下のWeb拍手ボタンでお願いします。