幕末小説に出てくる着物と袴


 幕末を舞台にした小説を読んでいて、よくわからないことの1つに服装がある。中でも特に疑問を感じるのは袴で、人物や場面によって身に付けている袴の種類が違ったりすると気になって仕方ない。例えば「新選組物語」(著者:子母澤寛)の中に、「死に損ねの左之助」という話がおさめられており、その中で原田左之助の妻 まさが、「原田はいつも黒い木綿の紋付に小倉の馬乗り袴をはいて出動しました…」と語る場面が出てくるが、馬乗り袴を知らない私には、左之助の出動する姿が全く想像できない。ということで、幕末小説に頻繁に登場する着物と袴について以下に簡単に整理してみたのでお役立て下さい。


名称 解説
裏地をつけた着物。
単物
(帷子)
「ひとえもの」と読む。裏地がついていない着物。
鎖帷子 「くさりかたびら」と読む。帷子(鎖帷子の帷子は着物の形ではなく現代のシャツみたい形)に鎖を綴じつけた略式の防御具で鎧や衣服の下に着込む。
陣羽織 鎧、具足の上に着た表衣。袖のないものが多い。(袖のついたものもある)、絹、羅紗、ビロードなどで作り、刺繍などを施す。
馬乗り羽織
(ぶっさき羽織)
乗馬用の羽織。背筋をぶっさきにし、無地または小紋、紋付きで仕立てる。

<ぶっさき>
背縫いの下半分を縫い合わさずに裂けたままにしておく。刀の大小を携えて歩くのに便利
<小紋>
細かい模様柄
馬乗り袴
(マチ高袴)
乗馬用の袴で、袴のマチを特に高く裾開きしたもの(要するに馬に乗りやすいようにズボンみたいになってるってこと)。緞子(どんす)や紋織地で黒ビロードの縁をとったものや小倉木綿の竪茶縞(たてちゃじま)などを用いた。

<どんす>
生糸または練糸を用いた絹織物で生地が厚く光沢がある
<紋織>
紋を浮織にした布。
<小倉織>
木綿糸を会わせて博多帯のように織った布。小倉縞とも言う。
たっつけ袴
(伊賀袴)
旅行用の袴で、裾がひもでくくれるようになっている。通常の袴より細く、シルエットはモンペに近い感じで裾口は狭くなっている。
野袴 野装束や火事装束として着用した袴で、裾にビロードの広い縁がついている。緞子、綿、縞織物などを用いて作った。
行灯袴
(袋袴)
マチのない形が袴。形が行灯に似ていることからこの名が付いた。

近藤勇の鎖帷子(霊山記念館蔵)