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「シネマ」は、サティ最後の作品となる、刹那主義的バレエ「本日休演」の幕間に上映される無声映画の伴奏音楽である。
原曲はオーケストラ曲。MIDIで演奏しているものはサティ自身によるピアノ独奏版で、このほかにダリウス・ミヨー編曲のピアノ連弾版(1926年出版)もある。
映画のシナリオはバレエ台本と同じく、ダダの詩人で画家のピカビアが書いた。
ストーリー性のない、ナンセンスな映画となっている。
演出は当時まだ無名だったルネ・クレールが担当。音楽担当のサティ、台本担当のピカビアも画面に登場するほか、当時のダダのメンバーたちも総出演している。例えば屋根の上のチェスゲームのシーンで対戦しているのがマン・レイとデュシャンだったり、棺おけの中から飛び出す死人がジャン・ボルランだったり…。
サティは映画音楽を作るにあたり、イメージを説明したりする表現を一切廃した“家具の音楽”の思想で作曲している。
特徴的なリズム構造をもった単純なフレーズを繰り返す音楽には、ドラマティックな展開はない。
葬送のシーンではショパンのソナタ2番の、あの「葬送行進曲」のモティーフを用いているが、そこでも同じモティーフを8小節単位で微妙に変化させて繰り返すだけで、音楽的展開を持たない、単なる「葬送」を表す記号的なフレーズにしている。
ルネ・クレール監督の回想によると、サティは映像の各シーンごとに細かく時間を計り、映画のシングル・ショットのひとつ分の長さにうまく合う時間単位の枠として、8小節という単位を用いてフレーズを作曲したらしい。
音楽はフレーズごとに分断されるため、音楽的な流れの分かりづらい作品ではあるが、随所に遊び心のある音楽である。
是非一度、映画の伴奏音楽として聴いてみたい。
本来は全体を通して演奏されるものだが、各シーン毎(譜面上に書かれたシーン名ごと)のMIDIも用意してみた。どのシーンにどんなフレーズが使われいるのかが分かり易いと思う。