Mt.デリシャス(マウントデリシャス)First Album
『夜明けのドラゴン』
1.ガケっぷち 2.SOLOR COASTER 3.SEA GULL FLY 4.蜂と少年

5.HUNTER 6.光の海 7.夜明けのドラゴン 8.ララバイ


 「大自然との共存」……言うは易く行うは難し。自然は決して、人間に都合の良い癒やしの道具ではない。時には、人間なんてちっぽけな存在に思えるほどの猛威をふるうこともある。大雨、嵐、雷等々。しかし、やはり自然が残っている場所へ行くと、母胎の中にいるような安らぎを感じるし、人間が作ったどんなテーマパークよりも楽しい。
 現在、本当に自然との共存を実践している木暮“シャケ”武彦が、新バンド、MT. DELICIOUSのファースト・アルバム『夜明けのドラゴン』を完成させた。本作は正に、自然が持つ両方の側面を音楽で表現した、渾身の力作だ。

 ここ数年のPSYCHODELICIOUSでも、シャケは、大自然のスピリットに根ざした壮大なサウ ンドスケープを創造してきた。しかし、このMT. DELICIOUSで、彼は更なる高みに達した。自然の描写が、極めてリアルなのだ。厳しさを持つ曲と、楽しい(または優しい)曲が交互に登場する様は、常に姿を変えていく自然の営みそのものである。
 まずは、序曲「ガケッぷち」。自由奔放なスライド・ギターが唸りをあげるが、決してツボを外さず、聴き手の快楽中枢をダイレクトに刺激する。狙った獲物は絶対に逃さない猛獣のように。そして、そこに絡んでいくラブリーレイナのスキャット・ヴォーカルも、美しさだけでなく、鬼気迫る緊張感も合わせ持つ。エンディング近くの、怒号のようなベース・ソロも凄い。何かが始まることを期待させてくれるオープニングだ。
 続く「SOLAR COASTER」は、本作の中で最もキャッチーなロック・ナンバーで、ピースフルな空気に包まれている。天空から差し込む光のシャワーを全身に浴び、歓喜のダンスを踊るかのようだ。
 3曲目は、ファンにはお馴染みのバラード「SEA GULL FLY」の再演。PSYCHODELICIOUSのヴァージョンも、空間を感じさせる素晴らしい出来映えだったが、ここでは、よりリアルに転生している。シャケとラブリーレイナのツイン・ヴォーカルが溶け合い、大空の中、たった一羽で飛ぶカモメの姿が、羽毛一本一本に至るまで浮かんでくるのだ。ギター・ソロも、ピーンと張り詰めた美しさを湛えている。シャケの更なる成長と、ラブリーレイナの加入が相乗効果となって生まれたマジックである。
 それから、アコースティカルで軽快な「蜂と少年」へ。木々の中をてくてく散歩しているようなイメージが喚起される。ヴォーカル・アンサンブルも、とってもピュアで優しげだ。落ち着いたトーンだが、ワクワクするような佳曲。
 後半戦の幕開けは、地を這うようなベース・ラインがバンドを牽引するジャム・セッション的なナンバー、「HUNTER」。トライバルなリズムと、変幻自在のギターやスキャットが、聴き手を広大な森の奥地へと誘う。ちょっと恐ろしげなムードも漂うが、同時に冒険心も煽られる。ある意味、MT. DELICIOUSを象徴する1曲だ。
 そして、いかにもシャケらしい幻想的なアルペジオが響く「光の海」。この曲も、「SEA GULL FLY」と同じく、PSYCHODELICIOUS時代に生まれていた曲だが、やはりこの4人のケミストリーは圧倒的だ。ヴォーカルといい、ギター・ソロといい、心地好く幽体離脱できそうなほど、神秘的で美しい。
 アルバムも大団円に近付く。稲妻の如く激しい「夜明けのドラゴン」だ。しかし、剥き出しのパワーだけでなく、ポジティヴなメッセージも持ち合わせている。今日に、そして明日に感謝して生きていく……。人生、時として閉塞感が付きまとうこともあるが、この曲に身を委ねて全身の細胞を躍動させると、心がとても強くなる。
 最後を飾る「ララバイ」は、各パートの残響に至るまで、じっくりと耳を傾けたくなる曲だ。まるで、このスピリチュアルな世界との別れを惜しむかのように。そして、あまりにも優しい余韻を残して、この素晴らしき音世界は終幕。

 RED WARRIORSで最高のロックン・ロール・ギターを聴かせてくれたのが20年前。その後も音楽的冒険を恐れず、年輪と共に深化を続けてきたシャケが、今、これほど強力なバンドを結成したことは、本当に感慨深い。
 『夜明けのドラゴン』からは、プログレッシヴ・ロック的な匂いも感じられるが、決して古き良きプログレの再生産ではない。MT. DELICIOUSの音楽は、内面世界やファンタジーやオカルトに籠もるのではなく、外に向けてオーラを放射している。そのスケール感たるや、(音楽性は全然違うが)今をときめくCOLDPLAYとも十分勝負できるほどだ。そして、彼らのオーラは、生を肯定した、とてもポジティヴなパワーを持つ。人間の生、動物の生、植物の生、地球の生。そのオーラを心と体で受け止めた時、あなたはきっと、何らかの形で人生が変わるはずである。
 どんなに文明の利器に慣れてしまっても、我々は「Mother nature's son」なのだから。

 池田洋行(音楽療法士)

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