パラサイト The Faculty

監督:ロバート・ロドリゲス
出演:イライジャ・ウッド、ジョッシュ・ハートネット、ローラ・ハリス、クレア・デュバル、
    ロバート・パトリック、ファムケ・ヤンセン、サルマ・ハエック、パイパー・ローリー

ロドリゲスの「デスペラード」はそのハチャメチャなパワーで強烈な印象を残し、
個人的には好きなアクション映画のベスト5に入るものである。その次の「フロ
ム・ダスク・ティル・ドーン」も犯罪映画が突如吸血鬼ホラーに変わるという突拍
子のない展開で度肝を抜かしてくれた。そのため、今回も大いに期待していた
のだけど、思ったより「普通」の映画に仕上がっている。

オハイオ州の小さな街にある高校。この街はアメフトの街で、高校のラグビー
部も強豪だ。その高校へメアリー・ベスという女の子が転校してくる。写真を撮る
のが趣味の内気ないじめられっ子ケイシーは、奇妙な生物をアメフトのグランド
の脇で発見する。
水槽に移した生物は突然変異を起こし、触れると二つに分裂して、噛みついた。
やがて、少しずつ学園の様子がおかしくなってくる。学校の教師たちは水をやた
ら飲んだり、スプリンクラーの水を浴びるようになる。そのうち、生徒たちも大量
の水を飲むようになり、まるで何かに取り憑かれたようになってきた。

この奇妙な現象に、「教師や生徒たちは得体の知れない何かに寄生されてい
るのかもしれない」という仮説を立てたケイシーは、留年生で麻薬密売をするジ
ーク、学生新聞の編集長デライラ、アメフト部の元キャプテン・スタン、SFオタク
のストークリー、そしてメアリー・ベスと水槽のあった教室に集まる。しかし謎の
生物は消えており、「それ」に乗っ取られた教師が彼らに襲いかかったのだ。

ホラー映画ということにはなっているけど、そんなにこわくない。キャラクターの
配置の仕方などは正当派学園ドラマに似ている。SFオタクが女生徒というの
はちょっと変わっているけど、「遊星からの物体X」や「ボディ・スナッチャー」へ
の言及があるくらいで、それほどコアではない。意外と破綻の少ない、まとも
な映画になっていて拍子抜けしてしまうくらいだ。

でも、笑える場面はけっこう用意されている。まずは、「T2」でのTー1000の
悪役ぶりが印象的だったロバート・パトリックが、アメフト部の監督役で登場。
どう考えても怪しいのが、ひとつのポイント。寄生体に取り憑かれた教師たちが
やたらエロっぽくなるのがおかしい。パイパー・ローリーのような年寄りでも妙に
色っぽいし、校長先生も胸の谷間を強調しミニスカート姿になっている。お堅く
て野暮ったい女教師役のファムケ・ヤンセンも突然色気づいて下品な台詞を吐
きながらジークに迫り、さらに首ちょんぱの強烈な見せ場を見せてくる。寄生体
がジークの手製麻薬に弱いことがわかり、仲間のうちで寄生体に取り憑かれ
た者がいないか麻薬を試してみてみんなラリってしまうのも笑える。

後半30分、寄生体がその正体を現してくるあたりからはさすがにすごく盛り
上がる。楽しい映画だが、もうすこしハチャメチャな展開になって欲しかったと
思うのは贅沢かな。

(つけたし)
ジーク役のジョッシュ・ハートネットは、ワルで劣等生だけど実はすごく頭が
良いという設定とクールさがいかしている。動いているととてもかっこよくてカ
リスマ性があって、要チェック!

ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ Lock, Stock and Two Smoking Barells

監督:ガイ・リッチー
出演:ジェイソン・フレミング、デキスター・フレッチャー、ニック・モーラン、
   ジェイソン・ステイサム、ヴィニー・ジョーンズ、スティング

ロンドンの下町に住むエディはちょっとカードゲームに自信があった。友人
たち3人から10万ポンドを預かり、ギャングの顔役ハリーと対決するが、
逆にイカサマにはめられ、50万ポンドの借金を背負うことになる。しかも
期日までに返済できないと、ハリーの手下によって4人とも指を切られ、さ
らにエディの父親JDが経営するバーまで借金のかたに取られるということ
だ。絶体絶命のピンチに陥った4人は、隣人ドッグが麻薬栽培をしているお
坊ちゃんウィンストンたちから麻薬を奪うという計画を聞き、ドッグたちか
ら横取りをしようと策略を練るのだが・・・。

エディら4人の仲間、隣人のチンピラども、ハリーとその手下たち、麻薬を栽
培するバカ息子たち、エディたちが奪った麻薬の転売先の黒人ロリーの一
味、とそれぞれの集団のキャラクターがとても面白い。とにかく、個性が際
だっている。まず一番美味しいのが、ハリーの手下の取り立て人ビッグ・ク
リス。こわもてだが、いつも子連れで取り立てを行い、子供の前で汚い言葉
遣いをした者には容赦しない。子供思いで律儀な性格が、とってもいい味を
出している。サモア風パブでいつもスポーツ中継に熱中していてすぐキレる
黒人麻薬王ロリー、頑固なエディの父親JD(スティングもいいオヤジになっ
てしまった)。登場人物が非常に多いので最初は混乱するが、かれらの性
格が巧みに描き分けられている。

そして、オフビートな笑い。隣人の麻薬専門強盗ドッグたちがウィンストンの
アジトを襲う場面なんてかなり間が抜けている。英語の字幕が入るくらい
のキツいコックニー訛。輸送車になぜか積み込まれてしまった交通監視員
への態度(交通監視員はみんなの敵だ!とボコボコにしてしまう)。クライマ
ックスにはメンバーの多くが撃ち合いをして血の雨が降る凄まじい場面も用
意されているのに、主人公たちは全く手を汚さない。そして、携帯電話を使
った最後のオチには、大笑い。映画自体は軽妙なタッチでスマートなんだけ
ど、登場人物はみんなちょっと抜けているのがいい感じ。

一見バラバラに見える登場人物が、物語が進んで来るに連れて関係が見
えてきて、パズルのようにぴったりとはまるという脚本が素晴らしく上手い。
50万ポンドの入ったかばんはウィンストンからドッグにわたり、ビッグ・クリ
スからハリーに渡る。骨董品の銃はドジな泥棒からエディたちに、そして
ドッグ、ビッグ・クリスから骨董品コレクターでもあるハリー、そして再びエ
ディたちの手に。物の流れを追っているだけでも面白い。

あまりにも物語のつじつまが合いすぎてこじんまりとまとまってしまった感は
あるけど、特に後半の凄まじい盛り上がり方には夢中になって手に汗を握
ってしまう、楽しくてちょっと皮肉で生きのいい映画だ。


黒猫・白猫 BLACK CAT, WHITE CAT

1998年フランス=ドイツ=ユーゴ
監督:エミール・クストリッツァ
出演:バイラム・セヴェルジャン/スルジャン・トドロヴィッチ/ブランカ・カティチ

95年の衝撃的傑作「アンダーグラウンド」を撮ってから引退宣言をしてしまって
残念がらせたクストリッツァが帰ってきた。しかも、この作品は強烈に面白い。
ブランクを感じさせず、生の喜びに満ちた独特の世界をパワフルに堪能させて
くれる。ずっと笑い通しだった。

ドナウ側沿いのジプシーの街。マトゥコは工場を持つ父ザーリェの期待に応えず、
博打好きで一攫千金の夢を追っている。彼は新興やくざのダダンに、列車で運ば
れてくる石油を奪って儲けるという話を持ちかけるが、ダダンに出し抜かれて借
金を背負うことになる。ダダンは、マトゥコの息子ザーレと、自分の妹を結婚させ
るなら、借金を帳消しにしてもいいという。しかしダダンの妹アフロディタは身長
が1メートルちょっとしかなくて太め、「テントウムシ」とあだ名をつけられている気
性の荒い娘。しかもザーレは酒場で働く娘イダと愛し合っている。孫思いの祖父
ザーリェは結婚式当日に死んで、結婚式を延期させようとするが、強行するダダ
ン。王子様の出現を夢見ていて、この結婚に気の進まない花嫁アフロディタも逃
げだそうとしていた。

ジプシー独特の音楽が騒がしく流れる中、奔放なイメージがハイテンションで
展開する。7人組のバンドがザーリェの退院祝いや祭り、さらには結婚式の雰
囲気を否が応でも盛り上げている。ドナウ川の美しい自然や、ひまわり畑での
ザーレとイダのラブシーン、それからいつでも出てくる家畜たちはカラフルで生
の歓びを感じさせる。いつもことの成り行きを見ているのは、黒い猫と白い猫。

素晴らしいのが出演者たちだ。イダ役のブランカ・カティチ他数名以外はみな
素人で、脚本もほとんど用意されていなかったとのことだが、このことが映画
に自由奔放なタッチを与えている。なかでもいいのが、ザーリェと、その長年
の友人の「ゴッドファーザー」グルガ。映画「カサブランカ」をこよなく愛するザ
ーリェはグルガに「われらの友情に乾杯」と台詞を引用してみせる。そして、孫
の幸せのためには死んでみたり、ダメ息子マトゥコを騙して見せたりするのだ。
そして、悪役のダダンも最高。かのスーパースター・ラジニカーントを思わせる
風貌の彼も最高にハイテンション。結婚式の時には、沈んだ表情の新郎新婦
とは裏腹に、銃を撃ちまくり手投げ弾で戯れ、ひとり踊り狂っている。肥溜めに
落とされてクソまみれになっても、家畜のアヒルで体を拭う姿は爆笑もの。

この上なく騒々しい結婚式から逃げ出したアフロディタが木の切り株の下に入
って森を駈けていく姿には笑ってしまうけど、その後の意外な出会いと、「ゴッド
ファーザー」グルガが運んできた思いがけない幸せには思わず「良かったね」と
言いたくなる。

友情や家族を大切にし、義理人情に厚いのがザーリェやグルガの世代。拝金
主義的なのが、マトゥコやダダンの現役世代。自由に生きるのがザーレやイダ
の若者たち。3つの世代がもつれ合う喜劇だが、現役世代が一番皮肉られて
いるのは、クストリッツァは現代を否定的に見ているからだろうか?でも、この
映画で全編にわたってほとばしっているのは、生の歓び、情熱、そして愛だ。

008(ゼロゼロパー)皇帝ミッション

出演:チャウ・シンチー、カリーナ・ラウ、ロー・ガーイン、ン・マンタ

大好きな香港電影界のコメディ王、チャウ・シンチーの爆笑作品。タイトルから
して007のパロディなのだが、実際にパロディとなっているのはタイトルバック
(これがまた大笑い)とテーマ音楽だけ。なんといっても、時代劇なのだ。

フゥは皇帝の住む紫禁城を代々警護する家系に生まれ、皇帝を守ってきたが
珍妙な発明をするばかりでまったくカンフーには励まない。皇帝を呆れさせた
彼は警護役をクビになり、産婦人科医になるように命じられる。医者としての
腕前は疑問だが、彼は恋女房のカーリーンと楽しい生活を送り、彼女を喜ば
せるためにいろんな発明をする。
あるとき、皇帝の命が妖怪によって狙われていることを知ったフゥは、皇帝が
招待されている医師の学会に乗り込んで妖怪と対決、彼の発明によって皇
帝は危機を逃れる。再び警護役に返り咲いたフゥは、皇帝にある命令を下さ
れる。娼館に入ってきた名うての美女について調べてきて欲しいというものだ
った・・・。

この映画はとにかくチャウ・シンチーの体当たりのギャグを楽しむための作品
だ。2枚目のクールな風貌には似合わない、下品でナンセンスなギャグはこ
こでも爆発している。しようもない発明の数々で悪者をやっつける姿には快哉
を叫んでしまう。本当に一生懸命笑わせようとしている姿には、惚れてしまう
ほどだ。いつも脇をかためているロー・ガーイン、ン・マンタもお約束のカツラ
ギャグなどで安心して笑わせてくれる。それと、この映画の素敵なところを
担っているのがカリーナ・ラウの可愛さ。買い物が大好きだったり、現実味
があるキャラクターだけど、このふたりのラブラブ加減は見ていてほほえましく
なってしまう。華があるし、本当に上手い女優さんだ。

この映画の面白さは、文章ではとても表現することはできない。機会があった
らぜひ劇場で見て欲しい。家に帰るときには、もうニコニコしていること間違い
なしだ。

アナザー・デイ・イン・パラダイス Another Day In Paradise

監督:ラリー・クラーク
出演:ヴィンセント・カーシーザー、ナターシャ・グレッグソン・ワグナー、
    ジェームズ・ウッズ、メラニー・グリフィス

16歳のボビーは自動販売機を荒らしながら生活するドラッグ中毒の泥棒。
愛しているのは、ロージーだけ。そんな彼がカレッジの自動販売機を荒らし
ていたところ警備員に見つかり、ボロボロに打ちのめされ、何とか反撃して
逃げ延びた。彼のひどい有様に友人は伯父で、軍医の見習いをしていたと
いうメルを呼ぶ。メルはコカインを使ってボビーを「治療」する。反撃して倒し
た警備員のことを気にも止めない「タフ」なボビーを見込んだメルは、ボビー
をプロの盗みに誘い、そしてボビーとロージー、メルとその愛人のシドの4人
は犯罪を繰り返す旅へと出かける。

両親の愛を知らずに育ったボビーは、いつしかメルとシドを本物の親のよう
に慕うようになる。最初の盗みが大成功し、得られたひとときの幸せ。しかし
そのパラダイスは壊れやすい。だんだんとエスカレートしていく犯罪行為。も
うひと儲けできたから、もうこんなことはやめよう、とボビーは思っていても、
犯罪に骨の髄まで浸かっていて一休みする事で不安になりさらなる犯罪へ
と駆り立てられるメルの習性には逆らえなくなる。自分を親と慕っているボビ
ーに情愛を感じながらも、その彼を利用し尽くそうとするメル。盗んだ薬を売り
さばこうとして銃撃戦に巻き込まれたロージーは、ボビーとの間にできた子供
を流産してしまう。そして、悲劇は加速していく。

世の中から見捨てられたような少年少女が肩を寄せ合う姿は、見ていて息
苦しくなるほどのせつなさを感じさせる。この世の中に、お互いしかいないよ
うなふたり。ボビーを演じるヴィンセント・カーシーザーの美しさは見とれてし
まうほどだ。キリッとしたまゆの下の、大きな瞳と柔らかそうな頬。こんなに
いたいけで美しい少年が、こんなギリギリのところまで追い込まれてしまう
ことへの不条理を感じてしまう。ロージー役のナターシャ・グレッグソン・ワグ
ナーも透明感のある、繊細な美しさを持っている。最初の犯罪が成功して、
激しくボビーを求める姿、赤いロングブーツが可愛かった。それと、流産した
ことの痛手から立ち直れず、嫌っていたコカイン注射でラリっていながらもボ
ビーに行かないで、とすがりつく姿、その後の変わり果てた姿との対比が
涙を誘わずにはいられない。

若いカップルとの対比で描かれる中年犯罪者カップルの描き方も秀逸。普
段は父親のように優しいメルが、キレたら歯止めが利かなくなり、さらに深い
泥沼にはまっていく。ジェームズ・ウッズのキレっぷりは生半可なものではな
く凄みがあり、筋金入りの犯罪者を体現している。
ボビーとロージーを母親のように温かく見守るのは、シド。犯罪が生活の一
部になって、もう抜けられなくなっていて、メルとも別れられない彼女は、若
いふたりだけは、自分たちのようにならないで欲しいと願っていて、メルに逆
らってでも、ふたりを守ろうとするのだ。もう若くなく美しさにも衰えが目立つ
メラニー・グリフィスのビッチだけど母性を感じさせる演技は素晴らしい。

ラストシーン、メルの元を逃れ、黄金色の畑を疾走するボビーの姿は限りなく
美しい。救いのない物語に残った、小さな希望。この先ボビーを待っているの
はどんな運命なのかわからないけれど、ここよりはもう少しましな、パラダイス
に違いない。