アルナーチャラム踊るスーパースター

監督:スンダル・C
出演:ラジニカーント、サウンダリヤー、ランバー、センディル
昨年「ムトゥ踊るマハラジャ」で日本をインド化してしまったスーパースター・
ラジニカーントの、待望の新作。期待に違わず、相変わらず濃〜い存在感を
発揮しながら、極楽気分を味わせてくれた。一見ただのおっさんに見える彼
が見れば見るほどいい男に見えてきて、色気を放っていく、その底知れぬ魅
力を改めて実感。

村の富豪の長男として育ったアルナーチャラムは村の人々に尊敬され、ふ
たりの弟と一人の妹には頼れる兄貴として幸せに暮らしていた。しかし、妹
の結婚式に招待された親戚の娘ヴェーダヴァッリと恋におちて、結婚話が
浮上したとき、彼の出生の秘密が明かされる。その秘密にショックを受けた
彼は大都会マドラスに出てくる。そして、思わぬことから巨額の遺産が転が
り込むことになったのだが、その遺産を手に入れるためには、30日間で3億
ルピーという大金を使い切らなくてはならないのだ。

この映画は、まず、導入部がとてもうまい。ヴェーダヴァッリの一家が駅に
到着してアルナーチャラムの家に着くまでに、道中会った人々からいかに
アルナーチャラムがすごい人か聞かされて、否が応でも彼に対する期待が
高まる。そして、さんざんじらされた上で、例によってド派手なアルナーチャ
ラムことラジニカーントの登場シーン、「いよっ!待っていました」って感じだ。
しかしながら、唯一ヴェーダヴァッリはアルナーチャラムを、「ムトゥ」でもお
なじみの太っちょセンディルと勘違いしたりしておかしい。人違いギャグや、
偶然交わしてしまうキスという、ラブコメディの王道を走ってくれるのも嬉しい。

そして繰り広げられる3億ルピーのスーパー無駄遣い作戦。「父親のわか
らないような男に娘はやれない」と一度はアルナーチャラムを追い返した
ヴェーダヴァッリの父親の家に、数十台の高級車で乗り付けたアルナーチ
ャラムの扮装ったら!ちょっと歪んでいるサングラスと白いスーツという、出
来損ないの香港のノワールみたいな格好で、大笑い。さらに、アルナーチ
ャラムの実の父親の肖像画はアルナーチャラムに白いひげをつけただけ
だし。(このあとすぐ休憩、というタイミングも絶妙!)

というわけで、けっこうハラハラドキドキしながら観てしまうのだったが、それ
でも安心して観ていられるのはさすがインド娯楽映画。166分の長さをまっ
たく感じず、笑いながら、そしてちょっぴり感動しているとあっという間に終
わってしまう。マサラムービー独特の、あの衣裳をとっかえひっかえのハデ
ハデ群舞シーンも、見慣れてきたとはいうものの、やっぱりすごい。頭の中
は極楽浄土に飛んで行ってしまう。この過剰なまでの娯楽性、好きだ。

細かい部分で「アレ?」と思ってしまったり、洗練されていない部分はある
ものの、理屈抜きで楽しめる映画。

マトリックス (2回目) The Matrix


丸の内ピカデリー2での先行オールナイト、立ち見が出ている中、
2回目の鑑賞となった。

何故私はこの映画に惹かれるのか。それはもう映画が始まった瞬間で
決まったようなものだ。漆黒の闇の都会、翔け抜けるトリニティのし
なやかな体。このビジュアルイメージだけで、ぐいぐい引き込まれて
いく。そして、雨。さらには、雨のように降り注ぐ緑色のコンピュー
タの文字。寝静まった都会と、雨、そして黒衣の女。現実のような、
悪夢。すでに道具立ては揃っている。黒に映える緑や青みを帯びた
映像の美しさ。金属的でありながら、ぬめぬめ感のあるオブジェたち。
涎が出そうなくらい。

初めてこの映画を見たときは、完成披露試写会ということもあって、
事前に情報はほとんど入手していなかった。そのためか、観たときの
インパクトたるや、大変なものだった。小説や、コミックスや、アニ
メでは見ていた世界。プロット自体は目新しいものではない。でも、
このビジュアルイメージをここまで完璧に、しかも美しく映像化でき
るとは!痺れっぱなしであった。アドレナリンが放出されっぱなしで
興奮したまま観ていた。

さすがに、2回目となると、初回のインパクトはえられない。しかしな
がら興奮のあまり見落としてしまったディテールが目に入り、台詞が
耳に入ってくるようになる。そして、あらゆるところに伏線が張ってあ
り、隠喩がこめられていることに驚く。まず印象的だったのが、預言
者の言葉。話の方向性を知った今、彼女の全ての言葉に深い意味が
あることを知る。また、彼女の部屋でスプーン曲げをする子供の台詞
も重要だ。どうしてスプーンは曲がるのだろうか?

さらには、「不思議の国のアリス」や「オズの魔法使い」からの引用。
ここぞ、というシーンに使われているので注目。宗教的なメタファーも
キリスト教だけでなくチベットの「死者の書」から引用されていたりする。

細かいところでつじつまが合っていないところも発見してしまう。しかし
ながら、そんなことはこの際どうでもいいように思えてくる。観ている
だけで酔える映像の、圧倒的なパワー。時空を超えたスピードの表
現。落下しつづける薬莢の、半端ではない数量。ヘリコプターが衝
突したビルの壁が波打つ表現の美しさ。一つ一つのディテールを分
解して観たくなるほどだ。

そして、エンディングにかぶさるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの
「Wake Up」が、身震いさせられるような効果を上げていることも忘れ
てはならない。



ノッティング・ヒルの恋人 Notting Hill

監督:ロジャー・ミッチェル
出演:ヒュー・グラント、ジュリア・ロバーツ、リス・エヴァンス

ウィリアムはロンドンの西、ノッティング・ヒルという街に住み、売れない
旅行書専門の書店を経営している。数年前に、「ハリソン・フォードに似
た」男性の元に妻が走り、現在はスパイクというファンキーな男性に部
屋を貸して、同居している。

平凡な彼の生活に、ある日一つの奇跡が起こった。新作映画のプロモ
ーションでロンドンに滞在していた人気絶頂のハリウッド・スター、美し
いアナ・スコットが彼の店で本を買い、さらに偶然道端で彼にぶつかっ
て服を汚してしまったのだ。やがて恋におちるふたりだが、まったく違っ
た生活をしている彼らの恋は前途多難で・・・。

「ローマの休日」をほうふつさせるようなロマンティックな(ちょっと使い
古されたような)ストーリー。この作品の魅力を作っている要素の大部
分は、舞台となっているノッティング・ヒルと、ウィリアムをはじめそこに
住む人々である。

特に、ウィリアムの友人たちは素敵だ。同居人のスパイクは何しろ強
烈に個性的で、いつも髭ボーボー、裸で部屋の中をうろついている。し
かもエッチな文句が書かれているTシャツを着てデートに臨もうとする
イカレたやつだけど、気はいい。他の友人たちー親友マックスと、ウィリ
アムの元彼女で、今はマックスと結婚し、事故で車椅子の身となった
ベラ、さえない証券マンのバーニー、ウィリアムのパンクな妹ハニーな
ど、同年代の若者たちが温かく暮らしている様はとてもいい感じ。マー
ケットがあったり、公園があったりするノッティング・ヒルの街もとても素
敵なところ。

妹ハニーの誕生パーティに突然アナがやってきて、最後のブラウニーを
巡って参加者たちが不幸自慢をし合う。大スターのアナだって、デビュ
ーしてからずっとダイエットをさせられていていつもお腹が空いていたり、
男運が悪かったり、美しさを保つため2回も整形手術を受けたり、決して
ずば抜けて幸せではない、ただの一人の女性であることが印象づけられ
る。そして、アナは彼らとの楽しい時間に、これまで感じることのなかっ
たやすらぎを見出すのだった。
そして、アナを振ってしまったウィリアムをけしかけて、記者会見場に乗り
付ける彼ら友人たちの結束力とパワーには、えらく感動してしまった。
かっこわるいはずの彼らが、すごくキラキラして見えたのだった。

反面、アナがなぜウィリアムに恋し、ウィリアムがなぜアナに恋したの
かが十分描かれていないような気がする。なんとなくアナは気が強く
てちょっと気取った女、という感じだし、ウィリアムはいいやつなんだけど
気が弱い。
観客の大部分はきっとウィリアムに感情移入することだろう。ヒュー・グ
ラントがこのキャラクターにぴったりということもあるし、恋しているけど、
大スターを前にちょっと気後れしている普通の誠実な男を好演している
からだ。情けないところもあるけど、いつの間にか彼と一緒に一喜一憂
している自分を発見してしまう。まさに等身大のキャラクターだ。
記者のふりをしてホテルに潜り込んだため、急にインタビューする羽目
になってしどろもどろになるところなんてとてもおかしいし、汚した服を
着替えるためにやってきたアナに、得々とハチミツ漬けの菓子について
語ってしまって後で後悔したりするのも、いかにも彼ならやりそうな感じだ。

ジュリア・ロバーツは確かにかわいいしスターのオーラもあるけど、第2
のヘップバーンというのは持ち上げ過ぎでしょう。ナンバーワン女優とい
うわりには、変な宇宙服着せられたりしているし、オスカーも取ってしま
うなんて役所にはちょっと役不足かもしれない。でも、血の通った人間
であるというところは、後半になるにつれて表現されてくる。スターだって、
一人の人間なんだから。

結末は見え見えだけど、アンナが泣きそうになりながら微笑みつつ告白
するシーンやラスト近くの記者会見にはジーンとしてしまった。もっと面白
くなる余地はあったと思うけど、でも、ロマンティックな気持ちには十分さ
せられる。まさに、デートムービーにはぴったり。
何よりも、脇役の良さと、ロンドンという舞台が、この映画の欠点を補い、
好感度を押し上げている。

オースティン・パワーズ・デラックス Austin Powers: The Spy Who Shagged Me

監督:ジェイ・ローチ
出演:マイク・マイヤーズ、ヘザー・グラハム、エリザベス・ハーレー、ロブ・ロウ、
    ロバート・ワグナー

前作でめでたくヴァネッサ・ケンジントンとゴールインしたオースティンは、ハネ
ムーン・スイートで甘い時を送っていた。そこへ思わぬ事態が起こり、ヴァネッサ
はいなくなってしまう。ところがオースティンはまた独身に戻ってこれ幸い、と
表向きの顔であるところのファッション・フォトグラファーをして知り合ったロシア
人モデルとベッド・イン。が、冷凍保存されている過去のオースティンから精力の
源である「モジョ」がドクター・イーブルの手下によって盗み出され、オースティ
ンは大ピンチ!この「モジョ」を取り返すために、オースティンは自分のもともと
いた時代であるところの60年代にタイムマシーンで逆戻り。セクシーなCIAの
女スパイ、フェリシティ・シャグウェルとともに「モジョ」を取り返そうとする。

冒頭の「007」モロパクリの音楽。そしてタイトルバックにてスッポンポンのオース
ティンがホテルの中を飛び回り、大事なところをソーセージやフランスパンで隠す
下品さ満開シチュエーションは最高。その次、カウンセリング番組でDr.イーブル
の息子とDr.イーブルが対面して番組がむちゃくちゃになるところも大爆笑。でも
このへんくらいまでがむちゃくちゃ面白かったけど、話が進んで行くに連れて
ちょっと笑いのテンションが落ちる。同じ質問を3回されてしまうと答えてしまう
間抜けな暗殺者のムスタファや、ちょっと意地悪なDr.イーブルの8分の1クロー
ン「ミニ・ミー」というキャラクターも楽しい。Dr.イーブルが「実は僕はおまえの父
親だったんだ」なんて告白して「言ってみただけ」なんてところもすごく面白い。
ただ、ギャグのテンポが全体的にもたついているような気がする。何かが物足
りない。

要因として考えられるのは、一に前作に登場した「フェムボット」というバカバカ
しいお色気ムンムン殺人アンドロイドが出てこないこと。二つめに、元ネタがわ
からないと笑えないギャグがいくつかあること。三つ目に、前作の面白さという
のが、60年代のスパイが90年代にやってきて時代のギャップに戸惑うという
ところにあったのが、もともといた60年代に戻ってしまったこと。4つ目は、あま
りにも下ネタ爆発でHなギャグはいいにしても糞尿がらみとあのデブはさすが
に辟易してしまったこと。下ネタ以外のアホらしいギャグがもっと見たかった。一
生懸命笑わせようと無理して作っている気もする。ヒロイン役のヘザー・グラハ
ムもとっても可愛いしスタイルもいいんだけど、女スパイというには迫力が足り
ないかもしれない。

しかし、笑いどころが山のようにあって楽しい映画であることには違いない。ス
トリートでいきなり演奏を始めるコステロ&バート・バカラックの場面はとても素
敵。さらにはカメオ出演のウィリー・ネルソンやウディ・ハレルソンが登場する場
面にも笑わせられる。「デラックス」と銘打つだけあって、いかにもヒットを狙った
楽しくゴージャスな作品に仕上がっている。(反面、前作のあまりにも馬鹿馬鹿
しい部分が影を潜めているかな)