バトル・ロワイアル

監督:深作欣二
出演:藤原竜也、前田亜季、ビートたけし、山本太郎、安藤政信、柴咲コウ

青少年による暴力が問題化しているとある国。全国の中学三年生から1学級を無作
為に選び、無人島に移送して最後の一人になるまで殺し合いをさせるという「BR法」
が施行された。今回選ばれた3年B組の生徒たちは自爆装置の付いた首輪をはめら
れ、地図と武器を渡される。そしてその理不尽さに怒りをたぎらせながらも殺し合いを
始めるのであった…。

冒頭、3年B組の元担任であった教師キタノが言う「この国はダメになってしまいまし
た。ダメな大人たちが、ダメな国にしてしまったのです」。これは、この映画の規制に
血道を上げた国会議員たちに対する強烈な皮肉となっている。そう、あんたたちが、
こんなもの子供に見せるな、と騒ぎ立てるものだから善悪を判断する力を奪われて
しまった子供たちが犯罪に走るんだよ。

全体的にアナーキーなトーンで物語が進んでいくのが素晴らしい。生徒たちの一人
三村が、古典的なゲリラマニュアル「腹腹時計」をお手本に爆弾を作るなんていうく
だりも、ちょっと笑ってしまうが、反権力志向が出ていて最高。ラスト、生き残ってお
尋ね者となった生徒二人が(誰が残ったかは伏せておく)渋谷のハチ公前交差点を
疾走する場面も含めて、齢70の深作欣二がバリバリ元気で骨があることを見せつ
けてくれる。

原作が多くの若い人に共感を得た理由の一つとして、42人もの生徒たちが一人一
人個性を与えられ、彼らの心情が事細かく描き込まれていたということで、どれか一
人のキャラクターには必ず感情移入できてしまうということがある。とこが映画だと2
時間という制限時間があるので、残念ながらそのあたりは割愛せざるを得ない。「奪
う方に廻りたかっただけよ」という印象的な台詞を残して散る女殺人鬼相馬光子や、
アナキストの甥でハッカーの三村といった特に個性的なキャラクターが十分描かれて
いないところはとても残念だが、仕方ない。42人の生徒の心情を描くどころか、2時
間で40数人死ぬところを描かなくてはならないのだから!この殺し合い自体は実に
テンポよく進んでいくが、一人一人の死に様はきちんと描かれていて、痛みを残す。
。中でも信じあっていたはずの女生徒たちが、疑心暗鬼の末血みどろの壮絶な撃ち
合いを演じる燈台のシーンが、強烈な印象を残す。

この映画が問題作とされる所以は、子供たちが殺し合いをするという設定にある。深
作監督は自分の戦争体験から、この設定は子供たちを襲った理不尽な戦争にある
とした。そして、その解釈はちゃんと生きている。生徒たちは支給された武器で殺し
合いをする。積極的に殺し合いに参加していく生徒もいれば、戦うことを拒否して自
殺する生徒もいる。団結して要塞を作り、外敵から自分たちを守って生き抜こうとす
る生徒たち、この戦いを指揮している権力に立ち向かおうとする生徒たち、ここから
なんとか脱出しようとする生徒たち。極限状態の中での子供たちの心理を細やかに
描いている。生き残るためには、自分の命を奪おうとする仲間を殺さなくてはならな
いこともある。だけど、それは自分が生きるという選択をした以上止むに止まれずに
行うことであり、人を殺すことに対する強い嫌悪感が同時にきちんと表現されている。
残酷な描写もあるが、それは、人を殺すことに対して、抵抗感を持ってもらうことを重
視したからなのであり、かえって痛みもなく簡単に死んでしまうことの方が問題なの
ではないかと思った。

何よりも、非常にポジティブなメッセージを私はこの作品から感じた。「生きろ」という
ことである。どんなに最悪な事態となってしまっても、一生懸命生きようとする人の姿
は尊いものなのだ。子供たちが殺し合い、しかもそれが仲の良かった同級生同士で
殺し合わなければならないなんてことは考えられる限り最悪の悲劇である。その悲
劇の中で、自分にとって一番大切なものを守ろうとしながら戦い、ある生徒は倒れ、
ある生徒は生き残る。時には、信じ合っていた親友に裏切られたり、ちょっとした信頼
が崩れたことでカタストロフィに至ることもある。そんな状況の下でも、それぞれのやり
方で最善を尽くして前向きに生き残ろうとする子供たちの姿は、美しい。彼らの一つ一
つのエピソードに、思わず涙してしまうほどだ。

時には、深作欣二70歳の力みが先走ってしまう場面が見られる。死んでいく子供た
ちの最期の言葉がテロップで現れ、そして最後には「走れ!」という檄文のようなメッ
セージが登場。子供とはかくあるべし、という彼の思いこみが青臭く表れていてちょっ
と気恥ずかしい。また、原作の教師役「坂持金発」(あの3年B組金八先生のパロディ
)を、存在感の塊のようなビートたけし演じる「キタノ」に改変し、娘に嫌われ、生徒に
嫌われている中年男としていることについては、果たしてこれで良かったかどうか難し
いところだ。このようなキャラクターにすることによって、彼と生徒たちとの世代間闘争
を明確にするという目的があったのはわかるが。(そもそも、原作になかった「BR法」
の成立根拠は甚だ弱い。原作の「プログラム」とは、国防シミュレーションの一環で
あった)

だけど、これだけ気合いを入れて、メッセージ性を強く打ち出している熱い作品は希
有な存在だと思う。今や、中高生に奉仕活動が義務づけられそうになったり、憲法
が改正されようとしたりして、世の中どんどんきな臭い方向へと進んでいる。こんな
無茶なBR法だって施行されないとは言い切れない。いつ何時、私たちは戦争に駆
り出されるかどうかわからないのだから。その前に、この作品のように決意表明する
必要があるのだ。私たちは自由を求めて、必要があれば権力に対しても戦いを挑む、
と。この作品は、どんどん若い人に見てもらうべき作品なんだと思う。賛成するも反対
するも自由だが、その前に、なぜこの作品はいいのか、悪いのか、考える機会を持つ
ことが非常に重要なのではないかと思う。

天国から来た男たち

監督:三池崇史
出演:吉川晃司、山崎努、大塚寧々、遠藤憲一、水橋研二

大手商社に勤める早坂は、出張先のフィリピンにて麻薬不法所持の冤罪で刑務所に
入れられる。意気消沈する彼だったが、刑務所の中で幅を利かせる吉田をはじめ、こ
こは一種のパラダイスだった…、

早坂という男はフィリピンで仕事をしながらも、メンタリティは完全に日本人であった。
ところが、いざ逮捕されてみると、日本の常識がことごとくここでは通用しないことを思
い知る。自分は冤罪なのだけど、そんな言い分がここでは通るはずもない。お金を山
のように積まないとここからは出られない。だけど会社は社員一人のために動いてく
れないし、妻もお金を作るためにマンションを売ることには気乗り薄。というわけで行き
詰まった彼だったが、刑務所で日本人専用の監房に収容されたことで、彼の運命は
変わっていく。そして、日本人というコダワリを脱ぎ去る日が来たのだ。

なんといっても凄いのが、ここで幅を利かせる謎の日本人吉田。彼はフィリピンで犯罪
を犯したわけではなく、やばいことをして日本を追われ、隠れるためにわざわざ刑務所
に入ったのだった。刑務所の中のホテルのような立派な部屋に住む彼は、この部屋で
ビジネスを行い、そればかりか平気で娑婆と刑務所を行き来できる。ビジネスで稼いだ
金を刑務所の署長にワイロとして渡しているのでできる芸当なのだ。吉田に見込まれ
た早坂も、吉田と共に刑務所を拠点に、あぶなそうなビジネスの片棒を担ぐことになる。
山崎努の怪しい存在感には凄みがあって最高にしびれる。この日本人用監房には、
他にも強烈な日本人服役者たちがいた。英語と日本語がちゃんぽんのマシンガントー
クを聞かせ、常にハイテンションの海野。般若心経をいつも唱えているフィリピン太郎。
ロリコン医師の坂本。そして、オンライン詐欺を働いて逃げてきた美人銀行員の三島。
刑務所の中ではあるが、彼らは独特の怪しいパラダイスを作り上げる。そして、いつし
か早坂もこれまでのプライドを捨て、彼らの一員としてここでの生活を謳歌し始め、つい
に日本での生活を捨て去って羽ばたくのであった。

三池作品独特の無国籍で猥雑な感覚が楽しめる一品。実際に存在する刑務所で、本
物のフィリピン人受刑者や看守が出演しているオールフィリピンロケの作品なので、生
のリアリティやパワーを感じることができる。難しい理屈は一切なく、潔くエンターテイン
メントに徹している作品だ。友情、裏切り、サバイバル、日本に住む妻や会社との訣別、
現地の人との心温まるエピソード。ライブ感がいっぱいで、終始ドキドキしながら見てい
ることができる。

日本では平凡な会社員で、フィリピンでは犯罪者の烙印を押された男が、日本に残し
てきたすべてのしがらみを捨て、まさしく捨て身の勝負に出る。その結果、大博打に勝
ってとてつもない大勝利を納めたところの爽快さといったら!きっと観た者すべてが唖
然とするような結末は、さすが三池らしい破天荒さだ。日本では見ることができないで
っかい夢が、ここにはあったのだ。おとぎ話ではあるのだが、気持ちよく嘘をついてくれ
る作品である。

出たな妖怪、という感じのコワモテ山崎努をはじめ、抜群の存在感を放つ吉川晃司、
ハイパーテンション野郎の遠藤憲一、幼女を観ては涎を垂らす最低な変態翁華栄、
ひたすら経文を唱え生き神様になってしまう水橋研二など、役者の魅力も最大限に
発揮されている。唯一大塚寧々が、こんなところまで流れてきてしまった女の業を十
分感じさせてくれなくて印象が弱い。

ウーマン・オン・トップ Woman On Top

監督:フィナ・トレス
出演:ペネロペ・クルス、ムリオ・ベニチオ、ハロルド・ペリノーJr、マーク・フェアースタイン

ブラジルの港町バイアに住むイザベラは、料理に才能を発揮し、愛する夫トニーニョと
レストランを開いて大繁盛だった。ところが、トニーニョはいつも女性上位でいたがるイ
ザベラに疲れ浮気をする。がイザベラにバレ、イザベラは家を飛び出す。彼女の行った
先は友人のオカマ、モニカが住むサンフランシスコ。やがて料理教室の講師となった
彼女は、テレビプロデューサーであるクリフの目に留まり、料理番組を持つことに。そ
の番組が評判を呼び彼女は人気者となるが、トニーニョが彼女を追ってサンフランシ
スコへやってきた…。

ボサノバのリズムに乗って、ペネロペ・クルスの愛らしい魅力が炸裂する映画。特に
サンフランシスコへやってきてからの彼女は、花が開いたように美しい。イザベラが海
の女神イマンジャに「トニーニョを忘れますように」と祈ったとたん、彼女は不思議な魅
力を発揮し出す。彼女に魅せられた男どもが何百人も後を付けていき、しおれかけた
花も再び開くというのは、ちょっと馬鹿馬鹿しいけど素敵な映画の嘘だ。冒頭から、彼
女がサンフランシスコに出てきてテレビ界でスターになるまではテンポも良く、本当に
楽しくて魔法にかけられた気分になる。イザベラの親友のモニカのキャラクターも、賑
やかで派手派手しく、番組まで一緒にでてしまう図々しさが逆にかわいくていい。

ただ、それから彼女の夫トニーニョがサンフランシスコまで追ってくるところから、急に
雲行きが怪しくなるのが甚だ残念。彼女が忘れられずに、「ブエナ・ビスタ・ソシアル・
クラブ」に出てくるようなミュージシャンたちを連れて失恋の歌を歌い、イザベラの出演
するテレビにまで強引に出演するまではいい。だけどあまりにもしつこくて、これではス
トーカーじゃない、うざいなあと思ってしまうのだ。いくら夫とはいっても、しつこい男は
個人的に嫌いなのだ。彼女を売り出したプロデューサーのクリフも、彼女のことが好き
だと見せかけて、結局彼女より自分の地位が大事な男だったりするのもつまらない。

彼女の番組は人気のあまり、全国ネットとなる。ところが、彼女のラテンフレイバーが
全国放送に合わないとキー局から路線の変更を求められてしまい、彼女はテレビ界
を去ることになる。そしてしまいにはまたイマンジャにお祈りして夫の元に帰ってしまう
のだ。せっかく彼女が大好きな料理の世界で、大きく羽ばたいていこうとしていたのに、
このような「元のさやに収まってめでたしめでたし」という展開はつまらない。女性監督
と女性脚本家なのに、よくもまあ女性を家に閉じこめてめでたしという結末にしたもん
だ。「ウーマン・オン・トップ」というタイトルが泣くではないか。前半のノリノリ加減から
楽しいクライマックスを予想していたのに、大きな盛り上がりもなく終わってしまうのも
イカン。

そういう物語上の欠点に目をつぶれば、ペネロペ・クルスは可愛いし適度なお色気も
あるし(ウーマン・オン・トップとは「女性上位」という意味があるので、濡れ場もちゃん
とある)、ボサノバの音楽も心地よくて楽しい映画ではある。イザベラの故郷バイアの
町が持つどこか神秘的な雰囲気も素敵。女神イマンジャにお願いをするために海の中
にイザベラが入っていくシーンの、海中撮影の美しさ、その深い色彩と光の効果には
思わず息を呑むし、水に濡れたペネロペ・クルスの美しさもみずみずしくて素晴らしい。
イザベラの料理の才能や人を強く惹きつける魅力が、天賦の才能や彼女の努力では
なく、女神様にお祈りした結果というのがちょっといただけないけど…。

ゴジラXメガギラス G消滅大作戦

監督:手塚昌明
出演:田中美里、谷原章介、伊武雅刀、星由里子、永島敏行

自衛隊の女性隊員辻森はゴジラに隊長を殺され、仇討ちを誓って対ゴジラ戦闘部隊
へ異動。ここでは人工的にブラックホールを造り、ゴジラを消滅させる実験が行われて
いたのだが、誤って巨大な古代昆虫メガギラスが誕生してしまった。メガギラスの卵が
渋谷の下水道に流れ込み、大量の虫が孵化して渋谷の街は水没してしまうのである
!そして、ゴジラが東京を目指してやってきた…。

ゴジラが来襲した日本は、一つのパラレルワールドになっていた。ニュース映画の映
像で、過去のゴジラの来襲が大まじめに報道されている。そして東海村がゴジラに襲
われ日本は原子力発電を放棄していた。首都は大阪になっている。それを聞いただ
けではピンとこない人もいるかと思うが、大阪城と国会議事堂が並んで建っている姿
には思わず大笑い。二つの強烈な建物の大きさもほぼ同じだったりする。

今回、ゴジラと戦う人々は、なんとブラックホールを生成するという技術を完成させる。
ゴジラを倒すために、ゴジラの力よりも圧倒的なものを創り出そうとしたのであった。
その試みは成功したように見えたが、副産物としてメガギラスという、ゴジラ以上に恐
ろしく人に危害を与えるものまで創造してしまったのだ。その上、ブラックホールを宇
宙から送り出すという実験を一度もやらないで、実用化してしまうという無謀なことを
しでかして、大失敗する。科学技術に対する過信、そしてそのことにより自らの手に
負えないものを創り出してしまったことが、恐ろしい結果を招くということを描いている
のだ。

にしても、ちょいと底抜け部分が多い映画ではある。ブラックホール実験を見ていた
ガキが、メガギラスの卵を拾ってきて下水に捨てることから大いなる災厄が始まるわ
けなのだが、あんな気持ち悪いくてでかいもの普通拾うか。このガキんちょ、途中か
らいなくなってどうしたんだろうと思ったら、エンドクレジットの後でしっかり再登場して
いた。放射能の塊であるはずのゴジラによじ登る田中美里…。その根性は買うけど。
ブラックホール生成装置を積んだ衛星が謎の落下をしたり、お台場でのゴジラ対メガ
ギラス決戦でまわりの建物は全部破壊されるのにフジテレビ本社は無傷。何より、た
った一機でゴジラと対決しようとする対ゴジラ戦闘部隊の戦闘機があまりにもちゃち
なのには思わず唖然としてしまった。

突っ込みどころは死ぬほどあるけど、そういうのを楽しむ余裕があれば楽しく観ていら
れる映画である。子供が観ていて飽きないように、テンポがよく飽きることはない。子
供の視点もちゃんとあるし、「秋葉原の部品屋にいる、科学に詳しいお兄さん実は天
才科学者」谷原章介は、子供たちの共感を得られる魅力的なキャラクターだ。ゴジラ
とメガギラスが戦い、ゴジラ危機一髪、倒れるゴジラの視点で画面が動くシーンでは、
思わずゴジラを応援したくなる。キリリとした、でも弱さもある辻森隊長もカッコイイお姉
さんとして描けている。渋谷の水没シーンでは、渋谷の街がとてもリアルに精巧に描
けていて(109にはあゆの広告があったりするし、シネマライズや、私が実際にこの
映画を観た渋東シネタワー(東宝マーク入り)まで映っている)、思わず目を瞠るし。

でも、ツッコミ入れるのが好きな私は、やっぱり笑っちゃうのだ。メガギラスが渋谷の
109のてっぺんや、お台場の観覧車の上にちょこんと止まっているところはなんだか
可愛くて間抜けで可笑しい。どう考えても最初からとっても怪しい伊武雅刀とか、冒頭、
ゴジラが壊した建物の下敷きになって殉職する永島敏行とか、キャスティングもちょっ
と狙いすぎ。(こういうのって好きなんだけどね)いや〜面白い映画ではあったからいい
んだけど。