オール・アバウト・マイ・マザー All About My Mother

監督・脚本:ペトロ・アルモドヴァル
出演:セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス、アントニア・サン・ファン

マヌエラは臓器移植コーディネーターで、一人で息子エステバンを育てていた。エステバン
の誕生日に、大女優ウマ・ロッホ主演の「欲望という名の電車」を見に行った二人。その帰
り、ウマ・ロッホのサインをもらおうとしたエステバンは車にはねられて事故死。たった一人
の肉親である息子を失ったマヌエラは、彼が顔も知らない父親の消息を尋ねてバルセロナ
へ。そこで性転換して女になったアングラート、身重の修道女シスター・ロサ、そしてウマ・
ロッホに出逢う。これらの女たちは、この出会いを通じて女としての自分を取り戻すのであっ
た。

この映画は、「女であること」がテーマの作品である。登場する女たちは、女であるがゆえ
に心に傷を負ってきた。しかしながら、傷ついた女たちは、その傷をさらけ出し、連携するこ
とによって、心を癒し、自分を取り戻していく。このテーマの軸として機能するマヌエラの情
念、彼女の息子への思い、別れた夫への思い、そして友情をはぐくみ支え合う女性たちへ
の思いが痛いほど伝わってくる。

最愛の息子エステバンを失ったマヌエラ。事故に遭う前、彼は自分の父親についてマヌエ
ラに聞くが、そのことについて話す前に、エステバンは死んでしまう。エステバンが書き残
したノートの言葉がとても印象的だ。「ママが芝居をやっていたときの写真を見せてくれた
けど、半分に切られていた。僕の人生も半分失われている」と。マヌエラは、息子の父親へ
の思いを伝え、彼の父親を捜し出し、彼が亡くなったことを伝えることが自分の使命と考え
る。それはまた、自分の人生を振り返るための旅でもあった。

妊娠したが、子供の父親は行方知れずで、しかもその男性からHIVに感染してしまったのは、
修道女ロサ。エルサルバドルに奉仕活動のために旅立とうとしていた彼女の心を、贋作画
家である母親は全く理解できないし、父親はアルツハイマーで娘の顔も判別できない。そし
て大女優ウマ・ロッホは「名声には味も香りもない」と言う。彼女の恋人であり、「欲望という
名の電車」ではステラを演じる若手女優ニナは麻薬中毒だ。一方、元は男性だったのに性
転換して女になったのは、アングラート。恋人に全財産を持ち去られ、娼婦をしているが、極
めて明るく開けっぴろげに生きている。様々な女たちの物語が、交錯する語り口はとても鮮
やかだ。マヌエラ、ウマ、ロサそしてアングラートの4人が部屋で談笑する場面はとても楽し
げでいい感じ。

「オール・アバウト・マイ・マザー」というタイトルはとても象徴的なものである。もともとは、エ
ステバンが自分の母親であるマヌエラについて書いた文章が元になっているが、「母である
こと」という意味でもある。息子を失った母であるマヌエラ。同じようにお腹の子供の父親に去
られたロサ。娘ロサの心を解さないロサの母。彼女たちが母親であるのは当然のことではあ
る。しかし、この映画では、「母親」として見ているのは彼女たちだけでない。元は男性である
ことから子供を産む能力はないアングラートは、楽しいお喋りでまわりの女性たちを楽しませ
る存在。ウマはレズビアンだけど、若い恋人のニナには母親のような愛情で接する。そして
ウマの、自分にサインをねだったことで死んでしまったエステバンへの思い。実際に母でなく
ても、女は「母」になれるということを伝えてくれるものだ。母ではない私でも、自分の人生に
ついて思わず振り返らずにはいられない。そして、一つの死が、別の命を運んでくるというこ
の世の営み、その描かれ方の美しさと来たら…。

そして、ウマの舞台「欲望という名の電車」や、エステバンがテレビで見ていた「イヴの総て」
の巧みな引用の仕方も見事だ。女はすべからく女優であり、女であることを演じている、とい
うことも物語っている。アルモドヴァルによる、すべての女性たちへの讃歌と受け取ることので
きるこの作品は、じーんとした余韻を残し、たしかに素晴らしい。

風雲 ストームラーダース The Stormriders

監督:アンドリュー・ラウ
出演:千葉真一、イーキン・チェン、アーロン・クオック、クリスティ・チョン、スー・チー、
    アンソニー・ウォン、マイケル・ツェ

群雄割拠の戦国時代。天下を征服しようという野望に燃えている武術王雄覇(ホンパ)は、
「風」と「雲」という名前の少年が天下を取るだろう」という泥菩薩の予言を受け、少年たちの
親を殺害して二人を弟子にした。やがて彼らは成長するが、再び泥菩薩は予言する。風と雲
が力を合わせたら、雄覇は滅ぼされる、と。雄覇は、天下征服の悲願を達成するため、運命
にあらがい風と雲を滅ぼそうとする。

この映画を観るのは東京ファンタスティック映画祭に続き2回目。ファンタスティック映画祭で
観たのは「インターナショナル・バージョン」で、90分。こちらのオリジナル・ヴァージョンはな
んと128分とはるかに長い。たとえば、冒頭、雄覇が風と雲の父親を倒すエピソードが付け
加えられたり、かなり多くのエピソードが挿入されている。果たしてそれが成功しているかど
うか考えると、ちょっと疑問だ。インターナショナル・バージョンは時間が短い分説明不足の部
分があったように思えたが、今回のは細かいエピソードを詰め込みすぎた印象があってやや
冗長。かえってこれらがない方がすっきりしていて良かった気がする。

それはさておき、コミックスが原作ということもあって、心理描写とかは十分為されていない
作品なのだけど、それはそれで良いような気がする。千葉真一の濃〜い芝居と、イーキン、
アーロン、さらにはマイケル・ツェといった香港アイドルの、まるでマンガの登場人物のような
格好良く美しいアクションを観て目をハートにしてしまうための作品なのだから。中でも、クー
ルでストイック、青い髪をなびかせ美しく逞しい体を誇示するアーロンにはもう目が釘付けだ。
そして、売り物の、ワイヤースタントとSFXを多用したアクションシーン。たしかにすごいのだ
が、CGと実写の部分がうまく溶けこんでいないところがある。千葉真一の顔までCGに見える
のは彼があまりにも濃すぎるせいか?たしかに彼の悪役としての存在感はピカイチで、主役
にしか思えない。クリスティ・チョン、スー・チーの女性陣も、美しかったり可愛かったりして十
分目を楽しませてくれる。

映画としての出来はそれほど良くないと思うけど、何しろ目の保養にはなるし、香港お家芸
のワイヤースタントもたっぷり観られる、エンターテインメントに徹した作品ので、私的にはす
ごく気に入っているのである。
1回目の感想