監督:石井聰互
出演:浅野忠信、永瀬正敏
電線用の鉄塔によじ登っているうち、高圧電流に打たれてしまった少年。彼はその電流
の一撃で、自らの中に潜んでいた「竜」の心を呼び醒ましてしまった。電気が体内に帯電
するような特異体質になってしまったのだが、エレキギターを手にしたとき、初めて電気パ
ワーが抜けていく気がした。彼、竜眼寺盛尊は爬虫類と心を通わせることが出来るという
特性を活かし、爬虫類ペットを探す専門の探偵として生計を立てている。
一方、ビルの屋上などに出没してアンテナ類を修理してまわり、左半身を仏像のようなメタ
ルカバーに覆い、そのありがたい外見から思わず老婆に拝まれたりもする男、雷電仏蔵。
彼は電波をキャッチし、電波を使って悪さをする連中をお仕置きしてまわっていた。
あるとき、盛尊の自宅は荒され、彼が愛し共に暮らしていた爬虫類はすべて殺された。そ
して愛用の蛇皮を張ったギターはバラバラに壊されてしまっていた。大事なものを奪われた
盛尊は怒り狂い、犯人を探す途中で、仏蔵に遭遇するのである。そして、二人の対決のと
きが!
なんかすごいものを見てしまったという感じだ。この作品、上映時間は55分。全編モノクロ。
終始、5.1chDTSで爆音が洪水のように鳴っている。上記にストーリーを紹介したけれど
も、ご覧のように単純なものだ。とにかく、この大音響に身を任せる快感を味わうまでだ。
「電気と感応しぃぃぃ、爬虫類と心を通わせるオトコぉぉぉ、竜眼寺盛尊んんーッ!!」「電気
を修理しぃぃぃ、怪電波をキャッチする謎の男ぉぉぉ、雷電仏像ぉぉーッ!」という、船木誠勝
による、まさにプロレスのリングアナが叫ぶが如くの大絶叫!これが脳髄にビシビシ響いて
くる。浅野忠信、永瀬正敏という当代2大人気俳優のガチンコ対決には、これくらいの大真
面目な馬鹿馬鹿しさが必要である。ちょうど、1ヶ月くらい前に同じシネマライズのレイトショ
ーでプロレスドキュメンタリー「ビヨンド・ザ・マット」を観たばかりだったのだが、この作品と
通じるものがある。傍から観ると芝居がかっていて大袈裟なんだけど、本人達は大真面目
なのだ。言葉にならない苛立ちをひたすらギターにぶつける盛尊の姿には、もうしびれてし
まうとともに、切なさも感じる。
同じように電気を感じ、放出する二人の男達の運命的な出会い。電気を放出する特異な体
質ゆえに孤独な人生を歩んできた竜眼寺盛尊。その彼と出会うために爬虫類たちを殺して
しまった雷電仏蔵との対決は、愛憎半ばの宿命というものだろう。特に、何よりも愛する爬
虫類たちを殺された盛尊の悲しみと怒りは、とんでもない電流となって、東京の街をバリバ
リ感電させる。凄い奴がいて、もう一人凄い奴がいて、凄い奴同士で電気をバリバリバリバ
リ〜何万ボルトも放出しあって、そしてもっと凄いことになってしまったよ、という単純で判り
やすくありながら、洗練されていて、なんとも斬新な映画に仕上がった。絶叫台詞のへたく
そな手書き文字までもがカッコイイ。
ロック、電気、絶叫、宿命のライバル、タイマン勝負と、男の子の夢を象徴するようなガジェ
ットがふんだんに詰まっていて、55分間ノンストップで疾走する。モノクロームの画面、盛尊
と仏蔵、ともに無口な登場人物たち。余計な台詞や説明は排除し、ストイックにただバリバ
リとした衝動が伝わってきて、爽快である。最後に仏蔵が残した「またな!」という書き置き
は否が応でも続編を期待させるものだ。待っているぜ!