ワイルド・スピード The Fast and the Furious
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監督:ロブ・コーエン
出演:ポール・ウォーカー、ヴィン・ディーゼル、ジョーダナ・ブリュースター、ミシェル・ロドリゲス
ハイスピードのままトラックをジャックする連続ハイジャック事件がLAで発生していた。
ドミニクは、LAの街を自分の庭のように自在に走り回る、高性能マシーンのレーシング
・カーに全精力を注ぎ込んでいる。レースを挑んでくる連中を相手に、1度のレースで1
万ドルを稼ぎだす。夜になると街はレースに熱狂する人々で溢れかえる。そこへ、謎の
若い男ブライアンが、レースに挑んできた。実はブライアンは、ハイジャック事件の極秘
捜査に関わっていた囮捜査官だったのだ。ドミニクは事件の容疑者の一人であったが、
ブライアンは彼らと付き合ううちに、友情を感じていき、ドミニクの妹ミアを愛するようにな
るのだった。しかし…。
てな感じのお話は一応あるんだが、そんなお話には重要性はない。とにかくすんごい
改造車が大挙して登場して、すんげえ爆音を出しながら疾走している映画だ。特に冒
頭のレースのシーンは凄い。ポール・ウォーカー演じるブライアンがレースに挑むのに
使ったクルマには、ニトロ噴射装置(NOS)とやらが搭載されていて、パーツ屋でも「ん
なモノ載っけたら爆発しますぜ」なんていわれてしまうくらい。これをONにした瞬間の
瞬発力ったら、もうたまげたね、びゅーん!という弾丸のような感じで凄すぎる。運転
者の視界が、もう何も見えていないくらいなんだから。マジで興奮した。ハイジャッカー
の強奪シーンの迫力も凄い。車高の低いクルマなんだから、平気でトレーラーの下を
くぐったりしてしまうのだ。トラッカーの方も、過剰防衛で武装しているから、このあたり
の対決シーンはすげえ迫力。高速で疾走するトラックと改造車、ブライアントの三つ巴
の死闘にも、胃が痛くなるくらいハラハラ。私は運転もしないくらいで、さしてクルマに
は興味がないのだけど、このへんのバリバリ疾走感は気持ちよかった。
得てしてこの手の映画は「ノースター、低予算B級作品」として片付けられがちなのだ
が、出演者にも十分魅力があるのがいい。まずブライアンには、私が個人的に一押し
のポール・ウォーカー。金髪美青年だけどマッチョでなんとも微笑みが爽やか。対する
ドミニク役のヴィン・ディーゼル。やっぱりマッチョでスキンヘッドのコワモテなのだが、
笑うともうたまらなく可愛い。腕っ節が強く、レースは滅法強く、子分思いの頼れる兄
貴って感じでカリスマ性も十分。そりゃ、ブライアンでなくても惚れるわ。その彼女役が
『ガールファイト』のミシェル・ロドリゲスで、やっぱり腕っ節が強くて男でも平気でぶん
殴る姉御。子分の危機には、命を賭けて助けに行く侠気たっぷりのいい女だ。妹ミア
には、『パラサイト』の時の学園の女王役とはずいぶんと雰囲気が変わって、ラティー
ナ全開バリバリとなったジョーダナ・ブリュースター。
こうやって見てみると、ドミニクたちと敵対するグループはアジア系だし、主役のポール
・ウォーカー以外は全員ラテン系かアジア系だというのが面白い。ついでに言うと、登
場するクルマは日産車だったり三菱車だったりと日本車ばかりだし、ハリウッド映画に
も有色人種、特にラテン系が席巻する作品が出てきたのね、と感慨もひとしお。
ドミニクの台詞「「俺は人生を4分の1マイルずつ生きているんだ。その瞬間は他のこ
とはどうでもいい。10秒間だけ俺は自由なんだ・・・」という台詞はまあくさいことくさい
こと。ヤンキー度高すぎ、である。だけど、ヴィン・ディーゼルがこれを言うのは許せて
しまうんだよな。で、法の番人であるところのブライアンが、ドミニクへの友情ゆえに法
を破って彼を見逃してやるところは、果たしていいのかどうか、議論が分かれるところ
であると思うけど、この映画に関してはまあええんじゃないですか、と私は思った。
ほかにも、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるし、ポール・ウォーカーはかわいい
んだけど演技はまだまだこれからで、なんだかとっても安い感じはする。アッタマ悪い
映画といってしまえばそれまでだ。だが、観ている間はきっちりと楽しませてくれるこ
の映画は、貴重だと思うんだな。欲を言えばもっとカーレースの場面が見たかった気
もするが、トラックとの対決シーンのド迫力に免じて許しておこう。
監督:アントワ・フークア
出演:デンゼル・ワシントン、イーサン・ホーク、スコット・グレン
ベテランの麻薬捜査担当刑事アロンゾは、犯罪と戦う日々の中、刑事としての信念が
少しずつ崩され、今では法を破ってしまうことも恐れない生活を送っていた。そんな彼
の前に現れたのは理想に燃える新人警官ジェイク。ジェイクはアロンゾのもとで研修を
積むことになったのだった。ジェイクとアロンゾは、それぞれの相反する正義に従うため、
命を賭け、それまでの経歴を賭けて、悪にまみれた現実と向き合うことになる。
デンゼル・ワシントン様が悪い人を演じる!というのがビッグニュースになってしまった
映画。で、ここでの彼は、本当にノリノリで、実に楽しそうに悪い警官を演じている。い
やあ、またその悪役ぶりがセクシーでたまりませんわ。あの美しい瞳をひん剥いて、に
らみつける迫力。もっとイーサン・ホーク演じるジェイクをいじめて!とこっちまで凄くサ
ディスティックな気分になってしまうのだ。ちんけな麻薬を吸って悦にいっている学生を
さんざんびびらせて彼らのヤクを奪い、それを無理矢理ジェイクに吸わせるなんて朝飯
前。やりたい放題のデンゼルの凶悪さにしびれてしまう。
それに対する「良い子」のイーサン・ホークの精彩のないことといったら。もともと、いつ
も不景気で暗い表情ばかり浮かべている彼が好きじゃなかったのだけど、いつも青臭
い理想論ばかり並べている彼を見て、もうイライラさせられっぱなし。早くどこかに消え
て、と思ってしまうほど。だって、「キレイごとだけでは世の中の犯罪はなくならない。
狼から羊を守るためには自分も狼にならなくてはいけないんだ」ってほうがどう考えた
ってタフな犯罪都市LAでは説得力があるでしょ?なにいい子ぶっているんだよと思う
のであった。
途中まではこの映画はかなり面白い。ジェイクの麻薬課一日目の一日だけの出来事
が描かれていて、早朝から、夕日が傾き暗くなるまでの時間経過もよくわかる。これま
で正義感だけで突っ走ってきた若い警官が、カリスマ的な上司に出会って、価値観が
揺らいでいく葛藤を描こうとしている。アロンゾのように自ら犯罪にまで手を染めなけれ
ば秩序は守れないのか、これまで自分が学んできたことはなんだったのか、と彼は悩
むのである。アロンゾが悪魔のささやきをジェイクに吹き込むところなど、さすがにデン
ゼルの演技の上手さが発揮されていて、ゾクゾクするほどだ。これだけ強引に、でも巧
みに向上心やプライドをくすぐりつつ、悪への道に誘われたら、普通揺らぐよな。
そして、もう一つの妙味は、デンゼル・ワシントンがこれまで演じてきた「善良な人」の
イメージを利用して、果たしてこのアロンゾというキャラクターが「本当はいい人」なのか
「やっぱり悪い人」だったのかという謎かけである。ところが、かなり早い段階でアロン
ゾが「本当に悪い人」で、うぶな新人を罠にかけようとまでしていたのがばらされてしま
って、急につまらなくなってしまうのだ。わざわざ彼を罠にはめようと思い立った、そこま
での経過がわかりにくい上いささか唐突なのだ。さらに、危機一髪のジェイクが助かる
いきさつもご都合主義的。
一番いやだ、と思ったのが、アロンゾは悪い警官でした、彼の周りの人間も、結局はジ
ェイクの側につきました、そして悪い警官は死んでお終い、正義がやっぱり勝つ、という
終わり方。しかも、この悪の魅力に満ち満ちていたアロンゾと一日行動をともにしていた
ジェイクが、この一日の終わりに何も変わっていない様子だったということ。成長もなけ
れば、「正義を守るためには、いい子ぶりっ子しているだけではダメで、悪を知らなけれ
ばならない、自分も狼にならなければならない」という教訓も全く身にしみていない。「や
っぱり僕チンは自分の手は決して汚さずいい子ちゃんでいなくっちゃ」、というジェイクの
態度には、正直反吐が出る。あんな甘ちゃんは、次の日に捜査中にひどい目に遭って
しまえ。デンゼルが素晴らしかっただけに、この偽善的なラストはむかつく。