同級生 Get Real

監督:サイモン・ショア 
出演:ベン・シルヴァーストーン/ブラッド・ゴートン/シャーロット・ブリテン/ティム・ハリス 

イギリスの郊外の町で暮らす16歳のスティーヴンは、ゲイだが、そのことを知
るのは仲良しの隣家の女の子リンダだけ。学校では大人しくしている目立た
ない彼は、陸上部のエースで人気者のジョンに恋する。自分の性のアイデン
ティティに迷っていたジョンも、スティーヴンのまっすぐな気持ちに打たれ、彼
らは人目を避けて週末にデートを重ねる。しかし、ゲイであることを隠すことに
我慢できなくなったスティーヴンは、学校新聞に、ゲイであることを告白する匿
名の投書をして、それが思わぬ大反響を呼ぶのであった…。

ゲイであることを自覚し、カミングアウトするまでの少年の心の揺らぎを爽や
かに描いた、とてもかわいい青春映画。ゲイというテーマを扱っているが、ゲ
イに限らず、自分が一体何者で、どのように生きたいか迷える若者のみずみ
ずしい感情がひたむきに伝わってきて、普遍性がある。

スティーヴンは不細工ではないけれどもどちらかというと地味で、彼をゲイだ
と疑うクラスメートにいじめられたりしているのに対し、ジョンは学園のスター
で美人モデルの恋人もいて、「勝ち組」の少年だ。ジョンはスティーブンが彼
に寄せる想いに打たれて親しくなるが、反面、自分がゲイだと知られては困
るので、学校ではスティーブンとは口も聞かない。スティーヴンは熱い視線を
ジョンに送るだけ。写真を撮るのが趣味のスティーヴンが撮ったジョンの写真
が素敵だ。クリスチャン・ベールに似ていて決してハンサムとは言えないジョ
ンが、カルヴァン・クラインの広告写真に登場するアスリートのように、ギリシ
ア彫刻のような表情と筋肉に撮れていて美しいのである。スティーヴンの熱
い愛が伝わってくる、そんな写真だ。

「GetReal」という原題が示すとおり、ほんとうの自分の姿を知って欲しい、だ
けどそれによって愛するジョンが離れて行ってしまっては困る、とスティーヴ
ンは徹底的に苦悩するのである。恋の幸せな気分と、反面自分に正直に生
きていきたいという気持ちに引き裂かれるスティーヴンの姿は、とにかく切な
い。恋に悩み苦しむスティーヴンの感情を、ベン・シルヴァーストーンは実に
繊細に演じていて、思わず感情移入してしまう。その苦しみがあったからこそ、
彼は失うものもあったけれども、一回り大きくなり、そして「リアル」に生きて
いくことが出来るようになったのだ。それが青春ってものなんだ。

一方、人気者の座を失いたくなくて、学校ではスティーヴンにはつれなくする
ジョンの気持ちもわからなくはない。まだまだゲイというのは、マイノリティな
のであるし、彼は彼なりにつらいのだ。何しろ、こっそり公園のトイレで男性を
ナンパしちゃうくらいなんだから、彼も心と体のバランスがとっても危ういので
ある。ちゃんとジョンのほうの事情も描けているので、説得力のある話となっ
ている。

しかし、このようにけっこう深刻なテーマの作品なのに、すごく爽やかな印象
があるのは、彼の周りにいる女の子達のキャラクターが実に魅力的に描けて
いるからである。まずは、隣に住む太った女の子、リンダ。「恋はハッケヨイ!」
のキュートな太っちょさんで、性を超越した友達として親身に付き合っている
が、スティーヴンのことが本当は好きなのだ。そのあたりの乙女心が端々に
出てくるのがまた可愛い。そして、もう一人、スティーヴンがゲイとは知らずに
片思いするジェシカ。彼が実は女性に恋愛感情を持てないと知ってショックを
受けるけれども、でもスティーヴンのカミングアウトをサポートし、応援してくれ
るかけがえのない存在となる。ゲイをテーマとした映画だと、女性というのは
ともすればあまり重要性を持って描かれないのだけど、ここでの女の子達が、
とても力強くて、偏見から自由で、友達として最高の存在として描かれている
から、とても気持ちのいい作品となっているのである。

いじめられていて弱弱しかったスティーヴンが、卒業式でカミングアウトし、講
堂で万雷の拍手を浴びたとき、自信に満ちて力強く見えてこちらも拍手したく
なった。そして、彼のことをゲイ野郎とからかっていたいじめっ子達を一喝した
お母さんも、すごく素敵。たった今、彼がゲイであると知ってショックを受けてい
るだろうに、彼の生き方を認めて、応援してあげているのだもの。こんなにいい
お母さんだから、スティーヴンも強くて優しくて繊細な子になったんだろうな、と
思った。ラスト、リンダのオープンカーに乗ってスティーヴンとリンダがアレサ・
フランクリンの曲を歌うところの、自由な気分も最高。恋は失ったかもしれない
けど、この恋を通して、もっと大切な「自分らしく生きる」「自分を肯定する」とい
う大きな贈り物を得られたのだから!