ハムナプトラ2 黄金のピラミッド The Mummy Returns

監督:スティーブン・ソマーズ
出演:ブレンダン・フレイザー、レイチェル・ワイズ、ジョン・ハナ、アーノルド・ヴォスルー、
    オデット・フェール、パトリシア・ヴェラスケス、ザ・ロック

ハムナプトラでの冒険から8年。リックとエヴリンは結婚し、アレックスという男の子も生ま
れた。そんな彼らがエジプトから持ち帰ったのは、伝説の戦士スコーピオン・キングの腕
輪。ところが、この腕輪を使うと、スコーピオン・キングの眠る黄金のピラミッドのありかが
わかる。腕輪を狙う秘密結社には、あのイムホテップの恋人アナクスナムンの生まれ変
わりであるミラがおり、彼らはイムホテップを甦らせ、スコーピオン・キングと対決させて世
界を手に入れようとしていたのだ。ところが、アレックスが腕輪をはめたら、外れなくなっ
てしまった。秘密結社はアレックスを拉致して黄金のピラミッドに向かい、リックとエヴリ
ンは可愛い息子を取り返すために追いかける…。

いや〜バカな映画を観ちゃったわ、というのが正直な感想。A級の予算をかけた、B級大
バカ映画である。全編クライマックスの嵐で、「タメ」とか緩急なんてことは全く考えないで
突っ走ってしまうため、ほとんど思考停止の状態に追い込まれる。メリハリが無いので、
たしかに個々の場面が面白い割に、全体的に観るとこれでもか、これでもかというテンシ
ョンのあまりの高さにどーっと疲れるという欠点はある。もうお腹いっぱい、これ以上食べ
られません、だ。だけど、笑えるポイントはきっちり押さえてあるのはえらい。サービス精
神満点だ。

特に気に入っているのは、前半のロンドンでのアクションシーン。秘密結社のメンバーに
はあの大英博物館の館長がいて、博物館のミイラたちが甦って暴れまわる。4匹のミイラ
に追われたリックたちが乗り回すのは、ロンドン名物2階建てバスなのだ。やっぱりロンド
ンと言ったらダブルデッカーっしょ、という軽いノリが感じられて好き。しかも、このミイラに
よるチェイスシーンが実に秀逸。ミイラたちは途中コケたりしながらもしつこく追いすがり、
「マトリックス」ばりに壁走りをし、『グリーン・デスティニー』ばりにふわふわ飛ぶ。バスの
中の狭い空間での戦いのスリルは大したものだし、お約束通り、2階建てバスの2階部分
が低い橋に引っかかって吹き飛ばされ、ミイラがぐちゃっとつぶされた無残な姿をさらして
いるのも、妙におかしい。

お笑いポイントとしては、後は黄金ピラミッドを目の前にしての「地元の皆様」ことピグミー
ミイラとの対決であろう。ピグミーミイラはすごく強くて突然「出たぁ〜!」と出現して怖い
くせに、間抜けで、ジョン・ハナ演じるお兄ちゃん(パート1に続きこの映画でも美味しいパ
ートを独占)と『博士の異常な愛情』のパロディ的な勝負をしてやられてしまうわ、ダイナマ
イトを投げられては仲間に手渡ししているうちに橋が爆発してみんなでボトボト谷底に落ち
るわ。コミカルなんだな。

あと、椅子から落っこちるかと思うくらい笑ってしまったのは、ラスボスことスコーピオン・キ
ングの出現シーン。あんな『ワイルド・ワイルド・ウエスト』のケネス・ブラナーばりのお姿に
なってしまわれるとは、合掌。悪い冗談かと思ってしまったわ。おまけに顔はマンガみたい
だし。

これは徹底したB級バッド・テイスト映画だと言うのを実感したのは、古代エジプトのエッチ
な衣装に身を包んだキャット・ファイトシーンのところ。女同士のアクションであれだけ迫力
があるのを観たのは、『グリーン・デスティニ-』以来。だけどこっちのほうがB級感100倍増
し、である。しかし彼女たちの前世の因縁話は、m@stervision氏の言葉を借りれば「インド
映画もびっくり」だなあ。「1」ではレイチェル・ワイズは全然強くなかったのに、いつのまに
かこんなスゴイことになっているとは。

お話も何だかややこしいし、中身なんて無いに等しい映画だけど、それでも楽しめるのは、
前作のキャラクターがほとんど登場し、みんな例によって個性を発揮しているからだろう。
前述したように、相変わらずジョン・ハナのお兄ちゃんは最高。ロンドンのリックたちの屋敷
にお姉ちゃんを連れ込むところから、2階建てのバスの運転、黄金の槍を巡るエピソード、
ピグミーミイラとの対決、そしてラストの黄金のピラミッドのミニチュア奪取まで、大活躍。
アレックスとの軽妙なやり取りも楽しい。

アーデス・ベイ演じるオデット・フェールのカリスマ性あふれる魅力にはもうゾクゾク。馬に
乗って髪をなびかせ刀を振り上げ、スコーピオン・キングの無数の軍勢に凛々しく立ち向
かう姿を観られただけでも、入場料の元が取れた気がする。これこそが映画の醍醐味だ!
スコーピオン・キングという第二の敵役が出てきたことでやや影が薄くなってしまったけれ
ども、相変わらず印象的なイムホテップのアーノルド・ヴォスルー。彼は本当は悪い人では
なく、悪い人間たちによって甦らせられたかわいそうな人であり、ただ愛に生きていただけ
なのに…。最後の展開、愛に裏切られたところの涙目には思わず貰い泣きしてしまった。
その永遠の恋人アナクスナムン役パトリシア・ヴェラスケスの色っぽさには参ってしまった。
人妻になって色気が増したエヴリンとの対決、美しい女たち同士の戦いは目の保養になる
わ。その分、せっかくがんばっているのにすっかり印象が薄くなってかわいそうなリック、で
ある。さりげなくとんでもないアクションを見せているのに、前作のバカっぽさが抜けてしまっ
ているのが物足りないのだろうか。やっぱり人の親になると、少しはしっかりするってこと?

ポップコーン・ムービーとはまさにこのような映画のこと。細かい突込みをいれようと思ったら
いくらでも入れられるけど、こういう映画に話の整合性とか求めるのは野暮と言うもの。何も
考えずに楽しんだ人の勝ち、である。

Lies/嘘

監督:チャン・ソヌ
出演:イ・サンヒョン、キム・テヨン

女子高生のYは、同級生がファンだという彫刻家のJに、彼女の代理として電話で話したら
テレフォンセックスに発展し、会ったこともない彼のもとへ、処女を捨てに行く。ふたりはセッ
クスに熱中し、やがてJはYのお尻を棒や針金で叩くようになる。やはり芸術家であるJの妻
がパリに行ったため、Jもしばらくパリで暮らしたり、Yはソウルの大学に進学したりでしばら
くのインターバルがあるが、再びふたりはセックスを楽しみ、今度はJがYにぶってくれと言う
ようになる。Yのふたりの姉は二人ともレイプによって処女を失ったため、Yの兄は妹のことを
時々監視し、Jの家は放火されてしまう。住むところをなくしたJとYはホテルを転々とし…。

韓国で上映禁止となっただけあって、大半が性描写の作品である。初対面の相手である中
年男とといきなりアナルセックスまでしてしまう処女の女子高生。ヒロインは始めのうちは女
子高生というよりは、子供という感じで色気もあまりない。なのにあんなこととかこんなことと
かしちゃうのだ。しかも、男のちんちんとか金玉とかポロポロ見えているし。いやらしいといえ
ばいやらしいんだけど、なんていうか、情念とか、ドロドロしたものが全然感じられなくて、生
々しいんだけどクールだ。クールだからと言って、愛がそこにないというわけではなくて、ちゃ
んと愛はあるのだけど。セックスシーンのバックに流れるイ・パクサのポンチャック(韓国風テ
クノ)も、ポップな印象を与えるのに役立っている。

繰り広げられるのは、スパンキングを中心としたSM。Jはスパンキングを好むという性癖を持
っているため、妻を始めそれを嫌がった女性たちに逃げられてきたのだが、Yはそれを受け
入れる。「愛しているから、もっとぶって」と、お尻にミミズバレができても耐える。Jは針金と
か、パイプとか大小さまざまな道具を用意して(マニアックだ)ぶつわけだが、あんまりSMと
いう感じはしない。支配/被支配の構図は見えないし、おどろおどろしさとは無縁だ。お尻
をぶつという行為は、愛の行為のひとつとして機能しているに過ぎない。傷だらけになった
お尻をいとおしそうに手当てする場面も何だか微笑ましい。やがて、Yの方もJに求められて
スパンキングするようになり、スパンキングするための木の枝まで一緒に探しに行く始末。

観ているうちに気がつくのは、これは、確かにセックスを通しての関係を描いた映画なのだけ
ど、男と女の恋愛のプロセスと描いているとてもシンプルな話なのではないかということ。ただ、
恋愛が盛り上がった結果セックスに及ぶのではなく、セックスが先にあって、その先に恋愛と
なっていくだけのことなのだ。二人の愛の行為は情念とは無縁の世界であるように見えるけ
れども、それでも、嫉妬という感情が芽生えてくるところは描かれている。Jがパリに行ってい
る間、女子大生となったYが教授と寝たという話をすると明らかにJは動揺するし、久しぶりに
会った彼女が妖艶に成長しているというのでドキドキしている。Yの兄に放火されてJは家をな
くし、Yが兄の死を願った結果本当に兄が死んでしまったということもあり(そして全く悲しまな
いY)、Yは家族と大学を捨てる。大学に行って必死にYを捜し求めるJ。やっとめぐり合えた二
人はホテルを転々として愛欲の限りを尽くす。そんな二人にもやがて別れがやってくるが、そ
れは悲しい別れではない。美しく成長した一羽の鳥が旅立っていった様子を思わせる。

セックスばっかりしているから、不倫関係だから、年齢の差があるから、SMだから、ということ
でこの二人は不道徳だとするのはおかしい。Yは、二人の姉が強姦によって処女を奪われ、し
かもその一人はその後自殺してしまったということで、処女を捨てる相手は自分で決めたかっ
たの、と言う。自分の意志でセックスしているのだから、(しかも、援助交際ではないし)きわめ
て健全だ。大体、セックスなんて誰だってやっていることでしょ。これくらいで非難されてしまっ
たらたまらないと思うのだけど。

映画の最初で登場したときのYは、垢抜けなくてちょっとオヘチャという感じの女子高生。いつ
もジーンズで髪を結わえていて、とても地味な感じなのだけど、初めてJとホテルで会って服を
脱がされるとき、とても足が長くてスリムなことに気がつく。そして少しずつ大人っぽく、色っぽ
く成長していくのだ。女子大生になって初めて化粧して、制服以外でスカートを穿いて。J以外
の男ともセックスを経験して。別れる前、パリで会った彼女は髪を少年のように短くしているの
に、大人の女の憂いを感じさせてとてもドキドキさせてくれる。恋愛によって人が成長し、少し
ずつ変わっていくプロセスを如実に感じさせてくれるのだ。(それに対して、男のほうはなんだ
かしょぼくれていってしまうのが面白い。少女を女に成長させた役割が終わって用済み、とい
う感じがしてしまう)

登場人物の名前が「Y」や「J」と記号だったり、前半は擬似ドキュメンタリー形式を取っていたり
徹底的に記号化を図っているというのも、恋愛におけるある種の普遍性を描こうとしていること
を感じさせる。だから、クールだし、ポップだし、しかも爽やかさすら感じさせて、ユニークな映画
となっている。