ブリジット・ジョーンズの日記 Bridget Jones's Diary |
監督:シャロン・マグワイア
出演:レネー・ゼルウィガー、ヒュー・グラント、コリン・ファース
出版社に勤務する32歳の独身OLブリジットは、今年こそは体重を減らし酒量を控えめに
して禁煙しようと誓う。新年、実家のパーティで親に紹介されたのはマーク・ダーシーとい
う有能な弁護士だったが、初対面の彼にこき下ろされるという幸先の悪い年始。一方、プ
レイボーイの上司ダニエルとはいきなりベッドインして、一瞬有頂天となったブリジットだっ
た。が、彼がアメリカから出張してきた美女とよろしくやっているところへ鉢合わせし、辞表
をたたきつけてテレビのレポーターに転職。そして、マークはブリジットのことが終始気に
なり、彼女の仕事のピンチを救い、ひいては「ありのままの君が好きだ」と告白。ところが、
実はダニエルとマークは昔からの知り合いで因縁があり…。
この役柄のために6キロ太り嫌いなタバコを我慢して吸っていたというレネー嬢が、ここでも
キュートな魅力を発揮。イギリスアクセントもばっちり身につけ、ムチムチの体をバニーガー
ルの衣装に押し込み、デカパンを着用したりテレビカメラの前に巨大なお尻を披露したり、
最後は寒空の下パンツ一丁で走り回るという捨て身の演技で取り組む姿には、女優根性
を感じさせる。立派だ。
しっかし、この役、他の女優が演じていたら、こんなにもOLの皆様には共感されなかった
に違いない。だって、ブリジットは、アリーなどと違って向上心もなければ羞恥心もなく、「
痩せなくちゃ、タバコ止めなくちゃ、そうして素敵な王子様をつかまなくちゃ」と考えている
だけのバカ女だもの。そんな彼女が、テレビレポーターの職をつかみ、マークの助け舟に
よって仕事上でも成功し、さらには、ルパート・エヴェレットとコリン・ファースという二人の
当代色男に愛され「今のままの君が素敵だ」と言われるんだもの。世の中、そんなに甘い
わけはない。太っていても、酒乱でも、可愛い(そして、天下のハリウッド女優の)レネー・
ゼルウィガーだから魅力的に見えて当たり前なのだが、これが普通のOLだったら、周り
中の女性を敵に廻しているよ、きっと。いい年して自分を磨かないで白馬の王子様を夢見
ているんだもん。そんな映画の中のブリジットに自分を投影しているみなさん、現実をちゃ
んと見ようね。私も原作を読んで「ブリジットは私そっくり(タバコは嫌いだけど)!」と思っ
てしまったほどの、どうしようもないOLだけど、「今のままの私ではイカン」と思っているし、
もう少し向上心はあるよ。映画でのブリジットは努力も成長もしないのにおいしい思いをし
ているけど、だからといって、「私も今のままでいいんだ」と思わないように。そんな王子様
は現実には絶対いません。
私は原作の愛読者で、3巻全部持っているのだけど、この映画でのブリジットの描かれ方
には不満。原作のブリジットは、たしかに自堕落な生活を送っているどうしようもないゆる
い女なのだけど、インテリジェントで、英国人特有のウィットに富んだ切り返しが得意な女
性。ゲイの楽しい友人がいたり、頼りになる同性の友達に助けてもらったり、いろいろと頑
張ろうとしていたり、非常に魅力的で、これだけ頭がよければ許す、という感じなのだ。し
かし、ここでは平気でスケスケの服を職場に着てきたり、かなり鈍感で頭が悪いくせに、
そして努力もしないくせに、仕事も恋も結局は思いのままじゃないか。レネーが魅力的に
演じてくれるから、まあ怒りはしないけど。それに、原作だとブリジットの日常生活の細か
い描写が楽しいのだが、映画では(時間も限られているので仕方ないとは思うが)恋愛の
みに焦点が絞られているのも不満が残る。
原作にはない、ダニエルとダーシーの因縁の関係、二人の男がブリジットを取り合うとい
う構図には少々興ざめしてしまった。原作では、ブリジットとダーシーがくっつくのにも相
当長い時間をかけてウダウダしているし、その後もくっついたりはなれたりするのが可笑
しいので、あんなに簡単に、ハリウッド映画的に美しいハッピーエンドが待っているとちょ
っと拍子抜け。なんか平凡なのだ。
どうしようもないプレイボーイだけど、崩れ加減がたまらなくセクシーなヒュー・グラント、
ハンサムなのに堅物で、母親に着せられたトナカイのセーターには思わず大爆笑のコ
リン・ファースというキャスティングは文句なし。映画としてはちょっとアレだけど、とにか
く主要キャラを演じる三人の俳優が非常によかったので、とても楽しく観ることはできた。
キス・オブ・ザ・ドラゴン Kiss of the Dragon |
監督:クリス・ナホン
出演:ジェット・リー、ブリジット・フォンダ、チェッキー・カリョ
中国人ギャング、ソングの逮捕のため、北京からパリにやってきたのは捜査官のリュウ。
ホテルでフランス側のリチャード警部に会うが、リチャードはリュウの銃を預かる。やがて
ソングが現れ、2人の女性があてがわれる。そして片方の女がソングを殺害し、慌てて駆
け寄ったリュウの目の前でリチャードはその女をリュウの銃で射殺。リュウはリチャードの
罠にはめられたのだった。リュウの滞在先である海老チップス店に現れたのは、現場に
いたがトイレにいたため難を逃れたもう一人の女、ジェシカ。彼女は幼い娘をリチャードに
奪われ、麻薬を打たれて娼婦として働かされていた。そしてリュウはジェシカの娘をリチャ
ードの手から救うために、そして自分の潔白を彼女に証言してもらうために、異国の地に
て命がけで戦うのであった…。
リュック・ベッソンの映画がしょうもない映画の代名詞になってしまったのはいつからなん
だろうか。『レオン』も初めて観たときには泣いてしまったけど、今観るとなんて陳腐でご
都合主義の映画だ、と思ってしまう。それだけ自分がひねくれてしまったということなの
かもしれないが…。本作も、荒唐無稽なことおびただしい。そもそも、なぜパリにリュウが
やってきたかという説明もほとんどなされない。リチャードは自分の犯罪行為をリュウに
全てなすりつけようとするのだが、なぜリュウに罪を着せようとしたのか、どうして悪徳
警官になってしまったのかも全くわからない。そんなむちゃくちゃな人物に、従う連中が
たくさんいたりするのもすごく謎。ラスト、リュウが警察署に向かうシーンはさすがにしび
れるほどカッコイイのだが、しかし警察署にいる人が全員リチャードの指令を受けている
のはなぜだ!リチャードは一警官であり、署長でもなんでもないのに。リチャードの行動
には一ミリも説得力がないので、「なんとしてでもリュウを潰す!」と吼えているところな
んて見てしまった日には、「あほくさ」としか言いようがないのだ。
リチャード役のチェッキー・カリョの、『ドーベルマン』の悪徳刑事役から全く進歩していな
いオーバーでヒステリックな演技には目を覆いたくなる。キャラクター的にも、『レオン』の
ゲイリー・オールドマンとほとんど一緒で、たかが一人の娼婦、一人の中国人を捕らえる
のに海老チップス店を徹底的に破壊し尽くしたりブチ切れたり。ベッソンはよほどフランス
の警察に恨みでもあるのだろうか?主人公の境遇は出来るだけ厳しく悲惨なものにして、
悪役は徹底的に悪くて強大で、というベッソン作品のコンセプトはよくわかるのだが、これ
ではマンガよりもひどくてリアリティはゼロである。
ジェット・リーことリー・リンチェイ自身はいうまでもなく素晴らしい。アクションも健在で、
警察署の中で50人くらいの黒帯と対決するところは面白いし、ホテルの中で、ビリヤー
ドの球を空中に飛ばして蹴り相手を倒すというアイディアも、香港映画っぽくて楽しい。
でも、香港時代のリンチェイのアクションからすると、どうということはなくて、これを凄い
と誉めている人には、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズでも観てから
言え、と言いたいのだが。もちろん、凄いことは凄いのだが、キャメラが引くことを知らず、
アップを使いすぎているし、彼の動きに全然追いついていないのだ。アクションだけを取
れば、まあ『ロミオ・マスト・ダイ』よりはましかな、という程度。
一方、リンチェイのキャラクター自体は非常に魅力的である。寡黙で仕事一筋に生きて
きたストイックな男だが、心は優しい。言葉の通じない異郷フランスで(その割には、リチ
ャードらフランス人が英語を喋っているのが違和感なのだが)心細く感じも非常によく出
ている。そこで出会った、やはりアメリカ人という異邦人の不幸な女性と親しくなる。たま
に見せるはにかんだ笑顔がたまらなく可愛いし、大怪我をしたジェシカを抱き上げて
「Somebody Help Me!」と叫ぶシーンにはクラリときてしまったほど。しかし、東洋系人種
と白人と言うのは、映画の中では未だにキスシーンもさせてもらえないのね。必殺技と
して、箸を投げて突き刺すのとか、つぼに鍼を刺すというのを持っているのは笑える。
相手役ブリジット・フォンダはちょっと老けてしまったのに娼婦の格好をさせられて、かな
り痛々しさを感じさせるが、さすがに演技力はしっかりとしたものを持っているのがよくわ
かった。
だから、これだけ魅力的、素敵、アクションも素晴らしいリンチェイなのに、脚本がここま
で無茶苦茶だと、やっぱりクソ映画としかいいようがなく、残念でたまらないのだ。いや、
リンチェイの奮戦のおかげで、つまらない映画にはならなくて済んでいる。だから、脚本
さえまともだったら、かなりいい映画になったに違いないのだ。いい加減、リュック・ベッ
ソンはゴミみたいな脚本を書くのをやめて他の人に書かせて、自分はプロデュース業に
専念しなさい。