彼女を見ればわかること THINGS YOU CAN TELL JUST BY LOOKING AT HER |
監督・脚本:ロドリゴ・ガルシア
出演:グレン・クローズ/ホリー・ハンター/キャシー・ベイカー/キャリスタ・フロックハート/エイミー・ブレナマン
/ヴァレリア・ゴリノ
ロサンゼルス郊外、サン・フェルナンド・ヴァレー。そこに暮らす女性達の5つの物語。自殺し
た女性カルメンを軸に、痴呆症の母親の介護に疲れ気味の産婦人科医、不倫相手の子供
を妊娠したキャリアウーマンとホームレス女性、近所の小人にひとめぼれをしてしまうシング
ルマザーの絵本作家、瀕死の恋人を看病するレズビアンの占い師、男に縁遠い女刑事の
姉と盲目だがモテモテの妹という女性達の群像が展開する。
レイモンド・カーヴァーの短編集でも読んでいるような味わい。女刑事は冒頭、自殺したカル
メンの死体を検死し、最後のエピソードではその妹が、キャリアウーマンの同僚の男性とデ
ートをするがその彼は女医と最後にバーで知り合う。女医の元を訪れるのが占い師といった
感じで登場人物はそれぞれ接点があったりすれ違ったりしているのが面白い。知らず知らず
のうちに、人間には縁というものがあるということを暗示していて、そんな縁が偶然幸せを運
んできてくれるという希望を感じさせてくれる。と同時に、ごくごく平凡な人生を生きているか
のように見える、偶然すれ違ったような人にも、ささやかなドラマがあるんだということも表現
している。
エピソードは5つあり、それぞれの物語は短くてサラリとした描き方になっているのだが、脚
本はよく出来ていて、軽い余韻を残しながら人生の断片を切り取っている。冒頭に死んだカ
ルメンという女性は、たった一人で死に、それぞれのエピソードの中で涙を流しながら街を一
人でさまよい歩いている。女刑事は捜査に携わる人間であると同時に、この孤独に死んだ
女性の名乗り出た、たった一人の知り合い。とはいっても、高校の同級生でもう18年も会っ
ていないというからどれだけカルメンが一人ぼっちだったかがわかるという切ない話だ。泣き
ながら歩いている以外には死体としてしか登場しないカルメンに象徴されるように、一見幸
せに暮らしていながらも女性がふと、孤独を感じる瞬間を掬い取っている。
ただ、登場人物そのものに感情移入できるかどうかはまた別の問題。というのは、登場す
る女性は全員独身で、仕事を持っていて、強がっているように見えて恋愛至上主義者であ
り恋に臆病なのである。もう少し違ったパターンの登場人物を出してもよかったのではない
か、と思ってしまう。登場人物が多いのだが、共感できる人と出来ない人がいたり。
たとえば、ホリー・ハンター演じるのは銀行の支店長を任されているバリバリのキャリアウ
ーマンだが、あんなエッチな格好をしている支店長というのはありえないと思う。それに、
恋人がいるのに同僚と浮気をして、それで妊娠したというので一人で堕胎しに行き帰りに
そっと泣き濡れるのだが、それは思い上がっていた自分が悪いのでは?彼女のヘタレぶ
りは、ホームレス女に見抜かれていたし。シングルマザーゆえか、やたら思春期の息子に
ベタベタする母親というのはちょっと気持ち悪い。キャメロン・ディアス演じる盲目の美女も、
姉にずっと世話されてきたのでずいぶんと傲慢な性格だ。反面、姉の刑事のほうは、障害
者ゆえに仕えてもらって当然といった態度で遊びまわっている妹の世話のために恋愛をす
る機会もなく人生をちょっとあきらめている感じがするのだが、一生懸命仕事をして妹の世
話を不平不満も言わずにやっている姿には共感できるわ。人生って、恋愛だけが大事じゃ
ないと思うのに、みんな孤独だ、寂しい、恋をしたいと叫んでいるというのは、ちょっと違う
んじゃないかと思う。
面白いのが、現代のサバービアに住む中産階級の人間の孤独を描いているにもかかわら
ず、ちょっと設定が変わった登場人物がいることだ。たとえば絵本作家のシングルマザー
が恋に落ちるのが小人だということ。しかも、この小人はやたら魅力的で自信満々なイケ
メンだというのが珍しくてユニーク。監督/脚本のロドリゴ・マルケスは有名な作家ガルシ
ア=マルケスの息子だということもあって、なんとなくラテンアメリカ文学の香りがする。登
場人物のエキセントリックさ、孤独でさみしいのと言ってばかりいることにはついていけな
いが、本当は普通ではない人を普通っぽく見せてみせたりすることや、細かい心理描写の
巧みさ、人生の断片の切り取り方の手腕は新人とは思えないうまさがある。
どうでもいいけど、この映画でのキャリスタ・フロックハートはあまりにも痩せすぎていて骸
骨のようで気持ち悪い。「アリーmyラブ」のように予算がふんだんにあるテレビでは、女優
はきれいに撮られているんだと実感してしまった。