
6月25日(土)2時開演 「海賊」 メトロポリタン・オペラ・ハウス
出演
コンラッド:マキシム・ベロツェルコフスキー メドーラ:ジリアン・マーフィ アリ:アンヘル・コレーラ
ギュリナーラ:シオマラ・レイエス、ランケデム:ゲンナディ・サヴリエフ、ビルバント:カルロス・ロペス
到着直後で時差ぼけもあって大丈夫かな〜と思ったけどこの演目の面白さには、眠気なんて吹っ飛んでしまう。金髪ですらりとしたマキシムが海賊らしいかどうかは謎だが、端正で美しく踊ってくれている。が、「海賊」って実は主役二人はそんなに目立たないバレエなのだ。まずぶっ飛んだのが、ランケデム役(DVDではマラーホフが踊っている)ゲンナディ・サヴリエフの1幕ヴァリエーションでの超絶技巧!サヴリエフがうまい人なのは前から知っていたし、風貌も奴隷商人向きなんだが、ここまですごいとは思わなかった。通常だと単なるジュテのマネージュで済ますところを、体を横向きにしての540度トゥール・ザン・レールでマネージュしちゃうのである。こんな大技、見たことない。会場内は大盛り上がり大会。
びっくりしていたら、次は2幕で噂のアリのパ・ド・トロワ。イーサン・スティーフェルの出演予定だったのが、イーサンの怪我の関係でアンヘルにキャスト変更。アンヘルのアリは散々DVDで見てきたわけなんだけど、それからの数年で彼は大きく進化している。コーダのところの伸縮自在のフェッテとか、床に穴があきそうな高速回転とか、観客がアンヘルに期待するもののすべてがここにある。でもテクニックをただ単に誇示するのではなく、アリという奴隷らしく、あくまでも控えめで従順さを表現しているところが、大人だ。悲鳴を上げる観客。まだ舞台の途中だというのに、嵐のような歓声。とにかくここのお客さんは熱狂的で、とんでもない盛り上がりだ。ところがビルバントが殺されるシーン、銃声が鳴らなくて、なぜビルバントが倒れているのかがちょっとわかりにくかったかもしれない。一人舞台に倒れたまま残されている彼がちょっとかわいそう。
逆にいえば、2幕が終わってしまえば「海賊」はもう見せ場がない作品である。パシャの王宮、パシャの夢の中で美しい女性たちが踊るだけだ。(後で、大きな声ではいえないが自分自身も夢の中に誘われてしまった)パシャの役ってかなりコミカル&間抜けなんだけど、なぜかABTでは若いダンサーが踊ることがある。この回も、Romain Zurbinというロシア系の若くて可愛い男の子が、おなかにアンコを入れて老けメイクをして演じていた。なぜかパシャのテーマ曲はいつまでたっても頭の中に鳴り響いて離れないから困ったものである。それだけ、印象的なキャラクターだったってことなのかもしれないけど。
いずれにしても、この作品は本当に楽しい!男性ダンサーの派手な見せ場てんこもりである。しかもキラ星のごときスターダンサーを贅沢に使っているのだ。DVDで観た時の100万倍くらい面白い。NYに来る前は、「海賊」なんて中身のないバカ作品だし、そんな何回も観たら飽きるよ絶対、と思っていたけど全然そんなことはなかった。今が旬の男性ダンサーを見るんだったら、これが一番。そして夜の回はもっと豪華なキャストが待っているってわけだ。
マチネですら、マックス、ジリアン、シオマラ、アンヘルとプリンシパルが4人も出演しているのに。