一番の見所が井脇さん、木村さん、後藤さん、大島さんのスペインの踊りだったとは(泣)。井脇さんの背中の柔らかさを生かしなおかつダイナミックな踊りは絶品。木村さんもちょっと悪っぽくてかっこよかった。
とりあえずしばらく上野水香のクラシックは観る気がしない。この情感のなさは一体何。止まっているところは綺麗だしもちろんスタイルは抜群だしバランスも良いのだが、バレエというのは動いているからバレエなのであって、いくら体が柔らかくて脚が上がるからって、機械仕掛けのようにカクカクとした動きではオデットにならないんだってば。生身の魅力に乏しく表情のバリエーションも少なく、なぜ王子があんなに彼女に恋するのか全く理解できない。(そういう意味では、まだオディールのほうがまし) 踊りは多分踊っているうちにこなれてきてもう少しなめらかになるとは思うのだけど、演技力がないのはいかんともしがたい。技術はあるんだから経験を重ねて演技力をもう少しつけてほしい。マイムもうまくないので、オデットの気の毒な身の上も伝わってこない。
マラーホフも哀しいことにどんどん踊れなくなってきている。三幕のヴァリエーションではへばっていた。とはいっても、ラインの美しさはやはり絶品。お尻がほっそりとしてきゅっと上がっていて見とれてしまった。その上、水香から演技を引き出そうと一生懸命魂を込めて踊っているのはよくわかる。三幕のマザコンうぶ王子演技はかなりコミカルで観ていて楽しめた。役柄を自分のものにしようという気概が漂ってきている。4幕で調子を取り戻していて素晴らしかった。時々、演技から醒めて先生モード入るんだよね。
大嶋正樹の道化。大嶋さんは不調だったらしいけど、演技で補っていて最高にチャーミング。グランフェッテではがんばってガンガン回っていて魅力的。後藤さん、佐野さん、高村さんののパ・ド・トロワは良かった。もちろんラテン系ノリの高岸さん演じるロットバルトは、アップリケの衣装を着ていても素敵だった。三幕の髭も濃い顔立ちに良く似合う。東京バレエ団はずいぶんと退団してしまった人がいるが、コール・ドは揃っていてまずまず。足音の大きさを除けば。あと、演出の問題なんだろうけど2幕の白鳥の群れが登場するところが、ドタドタドタ…と勢いがよすぎて儚げな白鳥というよりは野性化した鳥の群れという感じだった。
それと、やはり衣装があまりにも古びているのは切ない。新国立劇場の豪華な衣装を観た後では、特に。1月に新国立劇場の白鳥の湖を取ったのだが、こちらのプロダクションと衣装は楽しみなのだ。
オベロン:イーサン・スティーフェル
タイターニア:アレッサンドラ・フェリ
パック:エルマン・コルネホ
ボトム:フリオ・ブラガド=ヤング
ハーミア:ステラ・アブレラ
ライサンダー:カルロス・モリーナ
ヘレナ:マリアン・バトラー
ディミトリアス:イーサン・ブラウン
NYに行ったときに買ってきたアメリカン・バレエ・シアターのThe Dream 真夏の夜の夢を観る。日本盤もリリースされたばかりなのだけど、アメリカ盤も実はリージョンフリー。
METで観た時ももちろんこの目でその凄さを確認したんだけど、パックを演じたエルマン・コルネホは世界中のキャラクター・ダンサーの中でも最高峰であることを実感。小さな体で本当によく跳ねて重力の存在を忘れさせてくれる。彼が登場すると、その場をさらってしまうのがわかる。そしてくるくる変わる表情と愛嬌!まるで妖精そのもの。
イーサン・スティーフェルは青い目がひときわ澄んでいて、人間離れした端正さがおとぎ話の主人公にぴったり。相変わらずラインは美しいし、細かくて難しいパも易々とこなして、この人の実力者振りを思い知らされる。。フェリは愛らしくて軽やかで優雅。とても40歳近いとは思えない。
恋人たちを演じているのが、ABTを去ってしまうカルロス・モリーナとイーサン・ブラウン。モリーナはとてもハンサムなのが却ってコミカルさに味を加えている。イーサン・ブラウンもしなやかな動きで、この間引退したとは思えない、円熟味と若々しさがあってやっぱりもったいない。ステラ・アブレラはやっぱり凛としていて気品があって素敵。ロバを演じているのがフリオ・ブラガド・ヤングだがやっぱりニコラス・ケイジに似ている。コール・ドとは思えないくらい巧い。
メンデルスゾーンの音楽もファンタジックだし、時間も55分とコンパクトだし、ついでに前口上はなんとピアース・ブロスナンだし、エンターテインメントとしてのバレエとしては最高の一枚!繰り返し見ても楽しめそう。
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「ドン・キホーテ」は楽しくて派手でお気に入りの演目の一つ。東京バレエ団版は、去年の世界バレエフェスティバルでゲストにウヴァーロフ、ステパネンコをゲストに迎えたのを観ていて、高岸直樹のエスパーダの演技がとても気に入ったので、楽しみにしていました。
やっぱり高岸さんのバジルは最高に魅力的で、本当に濃ゆくてよく回っていて明るくて楽しかったです。背が高いから映えるし、彼の陽性のキャラクターに良くあっていたと思うのでした。勢い余っているところもあったけど元気が良くて観ていて気持ち良かったです。サポートにやや不安ありだけど。
上野水香は、前回のガラのときよりは全然良かったけど、手のへんなアクセント装飾がやっぱり気になるし、あとキトリっぽくないというかきりっとした部分が足りない、お目目パチクリの媚び媚びの感じがいけすかないというか。可愛らしいのだけど子供っぽい感じがしてしまったのが難だったような。軟体動物のような柔らかさ。脚はさすがに良く上がっていたし、バランスもちゃんとしていたけど。大きな失敗はなかったし無難なスタートではあると思うけど。これから頑張って味をつけていってね、という感じでした。 去年のステパネンコのシャープなフィッシュ・ダイブはさすがに望めませんでした。
井脇さんのメルセデスは凛として華やかで美しく、背中を大きくそるところの妖艶さと力技には驚嘆。吉岡さんのジプシーもとてもドラマティックでよかったと思います。晴雄さんのエスパーダ、マント使いでちょっと失敗していたけど全体的には良かったし。
もちろん、飯田先生のサンチョ・パンサもくるくるよく回っていて最高。
というわけで、1部がちょっと長いけどとても楽しめました。B席は全体がよく見えて値段も安かったのでお得感あり。端に昨日バジルを演じた木村さんの姿も見えたりして、主役意外でも見所の多い、充実の舞台。
10月16日(土) ライモンダ:吉田都 ジャン:イーサン・スティーフェル、アブデラーマン:イルギス・ガリムーリン
10月17日(日) ライモンダ:スヴェトラーナ・ザハロワ ジャン:アンドレイ・ウヴァーロフ アブデラーマン:ロバート・テューズリー
10月22日(金) ライモンダ:吉田都 ジャン:イーサン・スティーフェル、アブデラーマン:イルギス・ガリムーリン
事前にボリショイのグリゴローヴィッチ版を予習してきたのだけど、それに比較してアブデラーマンもジャンも踊るシーンが少ない。しかし!素晴らしい舞台だった。16日は吉田都さんの品のある、音楽が聞こえてきそうな美しく繊細な踊り。特に3幕のヴァリエーションは見ごたえありで、瞬きするのも惜しいほど。よくガラ・コンサートで踊られるライモンダのピアノ曲のソロはもともと好きなのだ。あの細やかなポワントワーク、さざなみのようになめらかな上半身の動きは息を呑むほど。イーサン・スティーフェルのサポートのうまさも光っていた。イーサンがこんなにノーブルに見えるなんて驚いてしまう。足先まで本当に美しかった。コール・ドもがんばっていた。満足度非常に高し。
日曜日はザハロワとウヴァーロフ。ウヴァーロフは身長が高いだけにダイナミックで、跳躍が高くて素敵。ザハロワは体型の美しさはもういわずもがなで、多分今現役の主役級のバレリーナの中でも一番綺麗な脚の持ち主ではないか。足の甲の高さも信じがたいほどだし、上半身も美しい。演技の面では経験の差もあり都さんが圧倒的だけど。ジャンとアブデラーマンの対決はイーサンVSガリムーリンに軍配が上がる。イーサンは勢いがあって華麗。ファイトシーンは6月のニューヨークでのロミオとジュリエットでも上手だった。ウヴァーロフはどうもままごとっぽい戦い方で、アブデラーマンをやっつけるときも脳天に正面から一撃、だもの。ロバート・チューズリーのアブデラーマンがとてもセクシーでギラギラしていて魅力的だった。ほっそりしているのに筋肉質の性的魅力にあふれた体。ライモンダに恋しただけなのに殺されちゃうなんて可哀相。
そして22日に再び都さんを観に。今まで観たバレエの中でも一番素敵なものを見せてもらったと思ったほど。都さんの気品、輝き(graceとかdelightfulとか英語の表現しか思いつかない…)感動。3幕のソロのときの会場の水を打ったような緊張感の中で、ものすごく丁寧で流れるような上半身の動き、難しいポワント運びを易々と滑らかに決める様子は究極の美といってもいいほど。手の打ち鳴らし方は小気味よく、ハンガリー風腕を交互に頭に当ててポーズを取る時の曲線の絶妙さ。ホール・ド・ブラの柔らかでしなやかな美しさ。音楽性。彼女自身が音楽と言ってもいいかもしれない。
天皇陛下と皇后さまが土曜日、3幕だけ観に来られていたのはびっくり。アナウンスもあり、3幕が始まる前に入場されて拍手で出迎える。思わずオペラグラスでも見てしまった。テレビなどで見かける天皇陛下と同じだった(あたりまえ)。劇場の各フロア、全方向に向けて満遍なく手を振られていて、たいへんだなあ、と思ったりして。
「ばらの精」ルジマトフ
「海賊」ルジマトフ
「ダッタン人の踊り」レニングラード国立バレエ
「アダージェット」ジュド、ルブロ
「ライモンダ」マハリナ&シショフ
「レクイエム」ルジマトフ
「海」クチュルク、ミハリョフ
「シルヴィアPDD」ドヴォロヴェンコ、ベロツェルコフスキー
「ムーア人のパヴァーヌ」ルジマトフ、ジュド、ルブロ、フランシオジ
今回のガラはは色んな意味で面白かった。
ルジマトフはなんだかんだいってやっぱりすごいダンサーだと思った。「薔薇の精」のピンク色全身タイツを余裕で着こなしてしまい、指先や手のねっとりとした表現は官能的。「海賊」の時の背中の反りとか力強い跳躍とか。ルジを前に観たのはもう12年くらい前だが、あんまり変わっていないかも。パワフルで濃厚で、彼ならではの個性が満開。
今回のお目当て、ABTのマックスとイリーナ夫妻はさすがの安定感で、「シルヴィア」のイリーナのフェッテのテクニック、突き刺さるようなポワント使いも惚れ惚れした。いつ見てもこのふたりはうっとりするほど美しい。可憐でありながら女王のように艶然と微笑むイリーナ。ほっそりとして理想的な王子様のマックス。でも、ステージを降りたマックスのシャツは派手な顔のイラストが描かれていて趣味悪かったけど。
シャルル・ジュド様も素晴らしかった。踊りがとても端正で綺麗。優しい微笑みの素敵なおじさまだった。小柄ながらもスタイルがいい!そしてあのお年とは思えないくらいの健在振り。「アダージェット」と「ムーア人のパヴァーヌ」を踊っ
たのですが、複雑なりふとをこなしたアダージェットよかった。思わず世界に引き込まれた。
ライモンダを踊ったキーロフのシシェフが超!がつくほどかわいかったのも収穫。背が高くて顔が小さく、恵まれた身体。マルセロ・ゴメスをロシア人にしたという感じで要注目。
あと、「ダッタン人の踊り」弁髪ヅラをかぶって踊っている人がいて、笑いをこらえるのが大変だった。ロサリオ・カストロの華麗なフラメンコが登場するとはちょっと驚きだったけど、これまた世界を作り上げていて見事。盛りだくさんの趣向を凝らし、ルジマトフ目当てじゃなくてもお釣りが来る位楽しめたのであった。
9月23日(木) ニューヨークシティバレエBプロ(オーチャードホール)
「セレナーデ」「ポリフォニア」「ウェスト・サイド・ストーリー組曲」
9月24日(金) ニューヨークシティバレエCプロ(オーチャードホール)
「ストラヴィンスキー・ヴァイオリン・コンチェルト」「ハレルヤ・ジャンクション」「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」「フー・ケアーズ」
9月26日(日) ニューヨークシティバレエAプロ(オーチャードホール)
「コンチェルト・バロッコ」「デュオ・コンチェルタンテ」「アゴン」「スターズ&ストライプス」
“物語”とエモーションが好きな自分としては、もともとバランシンをはじめとするアブストラクト(抽象的)バレエはそれほど好みではなかったりする。そもそもバランシン作品はガラで一部しか観たことなかったわけだが。改めて一つ一つの作品を全体で観るとなかなか面白い。23日のBプロは3回の一番後ろで観た訳だが、『セレナーデ』は高い位置で全体を観られて良かったと思う。(同時に、コール・ドが揃っていないこともわかってしまうけど)
でも振付でいえば、バランシンではなく、クリストファー・ウィールドンによる『ポリフォニア』(ほんの少しユーモラスで、斬新かつアクロバティックな作品)や、ピーター・マーティンス振付の『ハレルヤ・ジャンクション』(ミニマルなピアノ曲にあわせて、これまた複雑で超絶技巧で飛ばしまくっていて、クラクラ酔わされる斬新な一作)がものすごく面白かった。
もちろん、バランシンの『アゴン』はさすがに傑作といわれるだけのことはある美しさと緊張感が漂う作品。
これが楽しみだった『ウェスト・サイド・ストーリー組曲』は『マリア』とか『トゥナイト』などがなかったり、痛ましい事件の後でいきなり和解していたりと映画版から入った人間としてはあれれ、と思うところもあったが。でもバレエでありながらダンサーがしっかり歌うのは面白い。リフ役のニコライ・ヒュッベにとても存在感があり、歌もなかなかうまい。
『スターズ・アンド・ストライプス』は楽しかった!ガラではたいていパ・ド・ドゥしかやらないけど、おもちゃの兵隊のような男性群舞は最高に盛り上がったし、3部のソロを踊った小柄なトム・ゴールドが良かった。相手役のソフィアン・シルヴはラインの綺麗なダンサー。コーダの女性コール・ド脚あげまくりもノリが良くてアメリカーンな感じ。ラストの星条旗のところは、さすがにここまで能天気でよいのだろうか、と思うけど。
『フー・ケアーズ』は6月のルグリのが良すぎて今回はあんまり感心せず。ニラス・マーティンスがダンサーとしてありえない体型でドン臭くて…。全体的にNYCBの男性プリンシパルはみんな太めで重たくて今ひとつだった。基本的にスター不在のカンパニーだけど、男性ダンサーは、ホント、ヨーロッパやABTのスターを見慣れている目にはつらい。『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』もいつもガラでトップ男性ダンサーの踊りを観ているから、今回のチュ−ズリーのピンチヒッターだったらしいスティーヴン・ハンナは冴えなく見えた。
反面、女性プリンシパルはかなり良い。『アゴン』『ポリフォニア』『ストラヴィンスキー・ヴァイオリン・コンチェルト』のウェンディ・ウェーランの驚異的な脚の長さと優雅さ。『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』のアレクサンドラ・アンサネッリの愛らしさ。『デュオ・コンチェルタンテ』のダーシー・キースラーの年齢を経た成熟、とそれぞれ魅力的。
今回、新日本フィルの演奏もかなり良かったのだけど、個人的なヒットは『ストラヴィンスキー・ヴァイオリン・コンチェルト』『デュオ・コンチェルタンテ』でソロを弾いたカート・ニッカネン。北欧系の美形でヴァイオリニストにしておくにはもったいないほど。もちろん演奏も良かったけど、けっこうオペラグラスで姿を追ってしまった。『デュオ・コンチェルタンテ』では舞台に上がったし、ダンスなしで演奏が続くところがあるので、お姿を堪能。
いろいろと文句を垂れてしまったけど、やっぱり生の舞台はいい!音楽と美しい舞台に酔いしれることができたここ数日。日曜日の終演後マークシティ内の中華料理店でウェンディ・ウェーランとトム・ゴールドを見かけたけど、ウェンディの脚の長さと美しさといったらもう!