映画界へささやかなリクエスト


一映画ファンとして、映画業界でこんなことをしたら、もっとお客さんが増えるんじ
ゃないか、映画ファンにとっても、もっと映画をたくさん観られるんじゃないかという
ささやかな要望を書いてみました。

1.最終回が早すぎる。最終上映時間を遅くして欲しい。


日本の映画館の多くは、最終上映の時間が早すぎます。大体7時前後で、早い
場合には6時20分、なんていうのがあります。ほとんどの会社では定時は6時だ
というのに、どうやって上映時間に間に合うことができるのでしょう。しかも、不景
気を反映して残業が増えている会社も多いはずです。平日の夜に映画館に行っ
ても、会社員らしい男性はほとんど見かけず、OLなど女性ばかりなのもうなずけ
ます。せめて7時半くらいからにしてほしい。

2.レイトショーが少ない。ぜひ増やして欲しい。


ニューヨークやロンドンに行って見ると、レイトショーの充実振りに目を瞠ります。
大体最終回は10時台まであります。東京の場合、終電の時間などの関係もあ
って10時台は難しいとは思いますが、レイトショーを増やして欲しいです。それも、
レイトショー専用の番組だけでなく、昼間も上映している作品を夜もやってもらう
と、忙しい社会人でも足を運びやすいし、食事をした後に、映画を観ることができ
ます。シネコンではレイトショーを実施しているところも多いですが、都心のロード
ショー劇場では昼番組のレイト興行が少ないため、家や会社の近所にシネコンが
ない私は、拡大ロードショー系の作品を見逃すことが多いです。


3.そのためには、終電の時間を繰り下げて欲しい。


映画界だけに関係がある話ではないですが。
レイトショーにお客さんが集まらない原因の一つとして、最終電車の時間があると
思います。私が利用している電車は、終電が一番混雑しています。それも、山手
線の駅からの終電が0時10分という驚くべき早さだからです。レイトショーだけでな
く、映画や演劇を楽しんだ後ゆっくり食事やおしゃべりもできないというのはつまら
ないです。ニューヨークのように終夜運転は無理にしても、終電の時間を繰り下げ
ることで、飲食店の利用も増えるし、景気の牽引になるんじゃないかと思うのです
が。


4.映画館の売店の飲み物が高い!もっと値下げして欲しい。


有楽町のマリオンの日劇が改装され、日劇PLEXという名前になり、シネコン的な
雰囲気に変わってきたのですが相変わらず売店の飲み物が高い。同じマリオンの
中でも松竹・東急系の丸の内ピカデリーはペットボトルのドリンクは150円で売って
いるのに、日劇は紙コップに入っていて250円。紙コップのウーロン茶というのは、
氷も途中で溶けてくるし非常にまずい!これでは、外で飲み物を買ってきて持ち込
めと言っているようなものです。


5.映画館の場内の明るさを暗くして欲しい。


途中入場する人のことを考えてか、特に予告編上映中の場内がとっても明るくて
画面に集中できないことがある。それどころか、本編が始まっても非常灯などで明
るい劇場がある。このあたりは改善して欲しいものです。


6.映画館のロビーを広くして欲しい。


東京の高い土地代だと難しいところなんでしょうけど、混雑している映画館でロビー
が狭いと並ぶのが本当に大変。夏は地獄のようになります。整理券制をとってもら
うと非常にありがたいところなんですが、整理券制はある程度ロビーの広さがある
劇場じゃないと難しいということもあるようです。(時間になると人が群がるわけで)
せっかくの息抜きに映画館に行くわけですから、ロビーにゆとりがあって欲しいもの。


7.観客のマナーの啓発をお願いしたい。


特に中年女性の多い単館系の映画館では、映画の最中にお喋りする、音を立てて
食事をする観客が多く、困ったものです。逆に男性客の多い映画では、痴漢や女性
一人客をナンパする男性客がいたりします。映画館の人は、このような人をみかけ
たら注意して欲しいもの。それと、映画館での携帯電話の利用は当然問題外だけど、
時計代わりに携帯電話の液晶を点灯させる人も困ります。バックライトの明るさは立
派な上映妨害ですから。こういうのは、映画館からも注意を喚起していただきたいで
す。


8.欧米との公開時期のタイムラグを解消して欲しい。


東京はニューヨーク、パリやロンドンと並び、おそらく世界で一番いろんな国の映画
が観られる都市の一つだと思う。そんなありがたい環境の中であえて文句をいうけ
ど、公開時期がずれ過ぎ!一番酷いのは「マイノリティ・リポート」だがアメリカでは
6月に公開され、たとえば東京のように映画館がたくさんあるわけでもない韓国でも
7月に公開されているのに、日本での公開は12月だ!そりゃ、夏休みは「エピソード
2」という大作の公開があるので、かぶらないようにしたいという配給会社の都合は
あるんだろうけど、それにしても半年も遅らせるのはいかがなものか。確かに夏休み
とお正月という2大掻き入れ時に公開したいんだろうけど、観客の都合は無視してい
ない?

9.単館系劇場の絶対的なスクリーン数の不足(映画館の数ではなく)。


8.に関連してですが、
単館でかかる作品については、ヒットするとみるみる公開期間が延びてしまい、(と
いうのも、映画館の数は多いんだけどミニシアターでシネコン的にスクリーン数が多
いところが少ないため、ヒットしてスクリーンの数を増やすということができないので)
次の作品の公開時期がずれ込んだりして、日本で観られる時期が諸外国に比べて
大幅に遅れてしまうのも困ったもの。しかも、ミニシアターになると1年近く先の公開
作品まで決まっているというから、タイミングとか時代の流れとかを反映した公開に
しにくくなってしまうですよね。配給側にしてみても、先まで上映スケジュールが埋
まっているためブッキングに苦労するところです。
できれば、ミニシアターも複数のスクリーンを備えて、柔軟にスクリーン数を増やせ
るようにすればいいな、と思います。(そんな簡単なことではないと思いますが)


10.まともな映画批評の不在を何とかして欲しい。


ロンドンやニューヨークに行くとまず絶対買うのが「Time Out」という雑誌。これは日
本でいえば「ぴあ」的な情報誌で、イベントからテレビの番組表、アート、演劇、グル
メなどの情報が網羅されています。しかし「ぴあ」と違うのは、映画や演劇について
はほぼ全作品について批評が掲載されている点。ピックアップされた5,6作品につ
いては相当中身の濃い評論が掲載されているし、それ以外の作品についても、単な
る作品紹介に留まらずきちんとした評価が書かれているのです。(日本でいえば「プ
レミア」の作品評価レベルのが、全作品について書かれているようなもの)
しかし、それを「ぴあ」や「東京ウォーカー」に望むべくもないというのが日本の現状で
あり、またおそらく日本の読者はそのようなものを求めていないのではないかと思っ
てしまいます。
新聞も、かなり映画の批評にページを割いており、日本のように申し訳程度に夕刊
に週1〜2回掲載されるのではなく、きちんとした批評をしかるべきライターが行って
います。
素人の感想や、プレス丸写しの作品紹介ばかりがあふれ、まともな映画評を身近な
媒体で気楽に読むことが出来ないということが、日本ではいい映画がヒットしにくい、
いい映画はマニアしか観ない、宣伝や流行だけで映画がヒットするという現状を招い
ていると私は思っています。映画評論家を名乗る人間が宣伝に登場するのもいかが
なものだと思うのですが。

11.名画座や二番館の充実をお願いするとともに、良い映画館には足を運んで欲しい。


忙しい社会人にとって、期間が限定されるロードショー作品をどうしても見逃してしま
うことはままあります。いくらビデオが出るとはいっても、映画館の暗闇で映画を観る
のと、家のテレビの画面で観るのとでは全然違います。また、生まれた年代の問題
もあり映画史に残るような素晴らしい作品をスクリーンで体験する機会が減っていま
す。ぜひとも、二番館や名画座は頑張って欲しいし、旧作を見る機会は増やしてほし
いものです。
そんな中で、新文芸坐のプログラムの充実振りは特筆物です。個性的な企画上映も
他の映画館の追随を許しません。周辺環境は決してよくありませんが、映画館その
ものは非常にきれいですし、料金体系や会員制度も良心的。年齢層の高い映画ファ
ンの憩いの場所にもなっているようです。ぜひ、この劇場には頑張ってほしいもので
すし、多くの人に足を運んでもらいたい場所です。若い人より高齢者の姿が多く見ら
れるのは、良いことでもあるのですが、やはり若い人にきてもらいたい所です。


12.入場料金の問題。


避けては通れない問題です。日本の映画料金は高いと常々言われていて、たしかに
アメリカよりはずいぶん高い気がします。アメリカだと平日の昼間は3ドル50セントなど
と破格の値段で映画が見られるので、それは羨ましいです。が、下記のロンドン、
Curzon Sohoなどは8ポンドで、現在のレートだと円安もあり1600円くらいとそれほど
日本とは変わりません。ロンドンは物価が高いところですが。
いずれにしても、今の若い人たちは1800円払って映画を観るよりも、携帯電話の通話
料やパケット料に使ってしまう人が多いと思うので、安くするというのは観客を増やす
方法の一つとして有効なのではないかと思います。水曜日のレディスデーや映画サ
ービスデーなどで1000円で観られる日の賑わいを見ると、特にその思いは強くなりま
す。しかし、映画会社にとっては、採算ラインとの兼ね合いもあって、全体的な値下げ
は非常に難しい問題でもあることでしょう。私も明確な結論には到達できないでいます。

たとえば当日学生料金を設定する、ミニシアターでは割引会員制度を充実させるとい
うのは必要な手段でしょう。映画館に行く習慣をつけてもらうことで産業が潤い、それ
によってマイナーでも良い映画をたくさん入れてもらえることが、映画ファンには大事
なことだから。

あと、500円で映画を観ることができる国立近代美術館フィルムセンターにほとんど
若い人の姿が見られないのは嘆かわしいことです。こんなにきれいで設備の整った、
しかも良い作品ばかり上映している素晴らしい場所を、高齢者ばかりに独占させてな
るものか!フィルムセンター自身ももっと広報活動をするべきということなのですが。

13.本当に良い作品に観客がちゃんと入るよう、映画業界は努力すべき。そして
   それだけの問題には留まらないほど、根は深い…。


悲しいかな、日本では良質の作品、面白い作品でもスターが出ていない、有名な監督
の手によるものではない作品、もしくは流行に乗ったような作品でない限り、ヒットする
のが非常に難しいです。どんなに心に残る、感動する作品や、楽しく笑える作品でも、
地味だったり、出演者が地味だとヒットすることは稀です。「泣ける」「癒される」という
陳腐な切り口の作品だけがヒットしているのが現状です。

映画祭で賞をもらっていたり海外でヒットしていても、人間ドラマやコメディは興行的に
苦戦するし、それどころか日本公開すら危ぶまれます。「天才マックスの世界」「ハイス
クール白書・優等生ギャルに気をつけろ」などアカデミー賞にノミネートされたような傑
作でもビデオスルーになりますし、やはり「Pollock」「Sexy Beast」「Topsy-Turvy」など
はオスカーにノミネートされたのにビデオすら出ていません。愛と暴力が激しく渦巻く韓
国映画の大傑作「バッド・ガイ」は、国際的にも評価された作品なのに売値が高く、韓
国映画がヒットした例が少ないということで、買い手がつかず日本で公開される予定は
ありません。

またかつてはデレク・ジャーマン、ピーター・グリーナウェイといったアート系の作品はシ
ネマライズなどミニシアターでもステイタスの高いところで上映されたものですが、今は
観客動員で苦戦しており、レイトショーに追いやられています。映画業界に入りたいと
言っているような人たちでさえ、アート系の作品、作家性の強い作品はゴダールくらい
しか観ないのです。映画はいつしか「コンテンツ」であり使い捨てられる流行性の「消費
財」になってしまいました。

でも、海外に行けば、よい作品にはちゃんとした観客がついています。日本映画でも、
海外で日本国内での上映館数よりも多くの映画館で公開される作品があります。海外
の映画ファンは良いものを見分ける嗅覚が発達している、というわけです。欧米では映
画ジャーナリズムがちゃんと存在していて、一般の人でもクオリティの高い批評に触れ
られるということが大きいのではないかと思います。

ただし、世界中の映画を観られるという意味では、日本は非常に素晴らしいところです。
一部の熱心な人たちの情熱は他の国の人たちには決して負けていないということです。
また、日本映画の中には抜きん出てクオリティの高く、個性的な作品がたくさんあるの
は、周知の事実でしょう。日本では自主映画も多く制作されているし、発表する機会も
多いのではないかと思います。そういう意味で、日本の映画環境が特別悪いというこ
とではありません。

映画業界は、本当に良い作品の良さをちゃんとアピールできるように、マーケティング
をきちんとして作品の宣伝をするべきでしょう。良い作品は、やっぱり多くの人に観ても
らうべきものなのです。そして、一方、マスメディアも、良いと思ったものはちゃんと良い
ものとして、自分達の言葉を使って情報を流通させてほしいものです。プレスの丸写し
のような紹介記事にはもううんざりです。映画業界も、マスコミも自分達本来の役割を
認識すべき時がきたのではないかと思います。

映画が文化ではなく消費財となってしまった大元の原因は、おそらく教育にあるんじゃ
ないかと思います。この問題は、もはや映画だけの問題ではなくなってしまっています。
本を読む若い人が減り、学力は低下し、テレビも低俗な番組ばかりやっているようなと
ころでは、文化は衰退していく一方でしょう。(実際に私も、インターネットを始めてから
本を読む量が減ってしまったわけですが)。無料同然で美術館や博物館に入れるイギ
リスのような国とは、文化の基礎体力が違っているといわれても仕方ありません。日本
では名画座が少なくなり、本当の意味での名作に触れる機会が減ってしまったことも一
因だと思われます。

だけど、今は、映画業界が自分達で出来る企業努力をしていかなければならない時な
のではないかと思います。さもないと、本当にクソみたいな映画ばかりを見せさせられ
る時代になってしまいます。


映画ファンにとって夢のような映画館:ロンドンのCurzon Soho



ロンドンのソーホーにあるCurzonという劇場は実に素晴らしいです。3スクリーンあって、
アート系の作品を上映していました。私が行った時には、オーストラリア映画Lantanaと
ペドロ・アルモドヴァル監督の新作「Talk To Her」ほか1本を上映。何が素晴らしいかと
いうと。

・全館THX認定。当然、音は素晴らしいです。映写の質もよい。
・全席指定。全席指定については好き嫌いはあるとは思うけど、シネコン的なサービス
でよろしいかと思います。電話で席の予約も可能。
・上映作品のチョイスが素晴らしい。
・上映作品について、オリジナルの詳しい解説チラシを配っている。
・日曜日には特集上映で、旧作・名作を上映している。
・1階にはカフェ、地下1階には入場者のみが利用できるバーが用意されている。非常に
お洒落で和める空間。
・なんと「ドニー・ダーコ」のポスターを無料で配っていた!

というわけで、情報誌Time Outではロンドンのナンバーワン劇場に選ばれたというのも
納得の、アート系映画ファンの理想に近い映画館なのではないかと思います。
日本にもこんな劇場ができないかしら。