少林サッカー  SHAOLIN SOCCER/少林足球

監督:チャウ・シンチー/リー・リクチー、脚本:チャウ・シンチー、ツァン・カンチョング
出演:チャウ・シンチー、ン・マンタ、ヴィッキー・チャオ、ウォン・ヤッフェイ、モー・メイリン、
    テイン・カイマン、チェン・グォクン、リン・ツーソォン、パトリック・ツェー

サッカーの元スター選手ファンは、かつて「黄金の右脚」と呼ばれたが、八百長事件
が元で失意の底に。20年後、ライバルだったハンの雑用係に成り下がったファンは、
不思議な青年シンに出会う。シンの無敵の脚力を見たファンは、サッカーへの情熱を
取り戻し、サッカーチームをつくることをシンに持ちかける。敬愛する少林拳を広めるき
っかけだと考えたシンは、かつて共に少林寺で修行した兄弟をスカウトして回った。特
訓の末大会に出場した彼らは、人間離れした奇想天外なプレーで勝ち進み、決勝戦
に進出するのだが、ハンはハイテクトレーニングやドーピング゙を施したデビルチームで
彼らを待ち受けていた!


理屈抜きに楽しい映画について、延々と論じるのもどうかな、という気がする。でも、
この映画については、観てしまったからには語らずにはいられない映画なのだ!

「少林サッカー」については、キーワードは「敗者復活戦」と「燃える!」の二つだと
思う。

冒頭に提示される「黄金右脚」ファンの転落がそれを象徴している。かつては栄光を
誇った男が、「男たちの挽歌」のチョウ・ユンファ演じるマーク同様、脚を引きずりなが
ら、憎たらしい男の雑用係に転落している。そして、シン始め6人兄弟の少林隊もま
たほぼ全員が負け犬状態。主人公シンは、あんなに凄い脚力があるのに、ボロボロ
の靴を履いていて仕事はゴミ拾い。長兄「鋼鉄の頭」はキャバレー勤務で妻子持ちだ
けど、鋼鉄の頭なのをいいことにオーナーに毎日殴られている。次兄「駿風脚」は「
校も行かないで修行しても、今の俺にできるのは皿洗いしかない
」し、しかも髪が哀し
いほど薄くなっている。三兄の「鋼の肌」は証券マンとしてそこそこは成功しているけ
ど、ブルース・リー似の四兄「魔の手」は半年も無職だし、六弟「水渡り」はスーパー
の店員をしているものの、食欲が止まらなくなってしまって激太り。しかも、全員30歳
はとうに越えているし、なかなか人生をやり直そうと思い切れない。必死に少林寺で
修行したのに現実の世界では全く役に立たず、すっかり自分自身に対する自信を喪
失してしまっているのだ。

でも、彼らは不死鳥のように甦る。サッカーチーム作りをあきらめかけたシンたちのも
とに集結する5人のカッコいいこと!ジョン・ウーの映画のように、ガウンやスカーフ、
バスローブで思い思いに着飾り、サングラスをかけてスローモーションで屋上に上が
っていくところはしびれたね。普通だったらカッコ悪い連中が、どんな色男よりも美しく
颯爽として見えてきちゃったよ。

練習試合では、「鋼鉄の頭」が敵にパンツを頭から被らされるという屈辱に耐えたと
ころで、ついに奇跡が!一人一人が炎に包まれ、ついに眠っていた彼らの力とプラ
イドが復活するのだ!そうして自信を取り戻し少林寺の誇りを胸に、男たちはズタボ
ロになっても闘いつづける。う〜んカッコいいぜ。彼らの瞳の中には、星飛雄馬よろし
く炎が燃えさかり、まるで伝染病のように、一人また一人と炎がともる。観ているほう
もメラメラと燃えるのだった。そして彼らがボロボロになればなるほど、燃えてくるし同
時に泣けて泣けて仕方ない。いつしかサポーターよろしく歓声を上げてしまうのだ。


もちろんチャウ・シンチー映画だから、バカバカしいまでのギャグもてんこもり。饅頭
屋の前の、一人一人の目が漫画よろしくメラメラと燃える謎のミュージカルシーンと
か、キャバレーで坊さんの扮装をしたシンと長兄が歌うとてもうすら寒い「少林寺最
高」の歌とか、バナナの皮に躓くというあまりにもベタベタなところとか、もうやめて
くれ〜と思うくらい可笑しい。ゴールキーパー「魔の手」がブルース・リーにそっくりで、
トラックスーツでキメているということだけでも、ブルース・リーマニアのシンチーらし
いな、と思うし、「食神」で発揮した「本当はとても綺麗な女優さんを徹底的にいじる」
ところも、本当にとことんまで容赦なくやっているのが、楽しい。「火星人みたいだ、
火星に帰れ!」なんてコテコテのギャグを平気で、あんな美人相手にやっちゃうん
だから。

もちろん、CGとワイヤーアクションを融合した、今まで観たことのない人間離れした
サッカーが凄いというのはあるけれども、それだけじゃあない。徹底した笑いとエン
ターテインメント性の中に、人間、いつやり直しても遅くはないんだ、自分に自信を
持てば何事も叶う、というメッセージが含まれているのが素晴らしい。まあ、こんな
文章を読んでいる暇があったら、とにかく何回でも映画館に足を運んで笑え!泣け
ってことだね。