ザ・ミッション/非情の掟   鎗火

監督:ジョニー・ト-
出演:フランシス・ン、アンソニー・ウォン、ラム・シュー、ロイ・チョン、
    ジャッキー・ロイ、サイモン・ヤム、エディ・コー

黒社会のボスであるブンが何者かに狙撃された。彼は弟のフランクに組織の中からボ
ディガードの召集を命じ、5人の凄腕の男たちが集められる。今は美容師をしているグ
ァイ、銃のエキスパートであるフェイ、クラブのオーナーである射撃の名手マイク、そして
店を経営しながら現役の黒社会組員であるロイ、さらにロイの弟分で二枚目のシンだ。
彼らはブンの身辺の警護をしながら、彼の命を狙う犯人は一体誰なのかを探し当てると
いう任務を負わされる。

わずか81分という時間に凝縮され、いささかもだれることのない、緊張感バリバリのハ
ードボイルド・アクションの金字塔である。「しびれる」という言葉がこれほどまでに似合
う映画もないのではないか。映画は、いきなり黒地に白の縦書き筆文字のオープニング
クレジットで始まる。勇ましいテーマ音楽をバックに流れるそれは、まさに昔の日本映画
そのものであり、ここでまずハートを鷲掴みにされるのだ!

ストーリーは非常に単純である。ただただ、5人のプロフェッショナルたちが、ボスを守る
ために戦い抜き、組織の非情の掟の中でも友情を育んでいく、というそれだけの話。そ
れだけの話が、どうしてここまで胸を熱くさせるのだろうか?それは、プロに徹しながら
も人間性を失わない男たちの熱い心意気が、クールに、スタイリッシュに描かれている
からだ。いわゆるスター俳優はひとりも出ていないのだが、それぞれが最高に魅力的な
面構えをしている、個性的な名優ぞろいというのも、いい。

この映画には、クライマックスとなる銃撃戦が3回ある。いずれの銃撃戦も、ただただ渋
くて手に汗を握るものだ。ジョン・ウーの映画に見られるようなダンスのような華麗なアク
ションはここにはない。二丁拳銃を手に怒りを爆発させるチョウ・ユンファもいないし、ワイ
ヤーで吊り下げられるキアヌ・リーヴスや壁を駆け上るジャッキー・チェンもいない。ガン
アクションそのものは、きわめてストイックで地味なのであるが、まさにプロの技としか言
いようのない、的確で重みのある動きが見られる。

状況を的確に把握し、敵の位置を測り、そして最も効果的に、確実に、銃弾を撃ち込む。
素晴らしいのは、5人の男たちの位置関係が一目瞭然で見渡せるような、画面に奥行き
を感じさせる配置と撮影だ。特に2回目で最大のクライマックスとなる、閉店後のショッピ
ングセンターでの銃撃戦、5人が一体となったフォーメーションの美しさといったら、これま
で見た映画の中でも一、二を争うものである。エスカレーターの上下の動き、吹き抜けを
使った立体感のある画面の中で、男たちは自分たちの定位置をいち早く探し当て、両手
でしっかりと銃を握り微動だにせず、無駄弾は撃たない。彼らが放つ銃声が、重く、そし
て高らかに鳴り響くこのシーンのピリピリとした雰囲気には、何回観てもしびれてしまう。
最後のクライマックスでも、スナイパーとの対決のとき、一発撃ったら反撃されないように
すぐに場所を移動するところに、彼らのプロ意識を感じることが出来る。

5人は、以前から付き合いのあるグァイとフェイ、そして兄弟分であるロイとシン以外は、
面識もなく寄せ集め集団である。お互いのことをよくわかっていない段階では、敵意も生
まれたりする。「氷の男」と異名をとるグァイと、弟分思いの熱い男ロイはことあるたびに
反目するが、ロイの店を荒らした男をグァイはそっと消す。ボスの事務所で紙くずをサッカ
ーボールに見立てて蹴りあう場面や、タバコに花火を仕込んだいたずらなど何気ない場
面で、彼らの友情が深まっていくのがわかる。

そして、なんといっても私たちの胸を熱くさせるのが、ボスの襲撃犯を倒して仕事が終わ
った後のエピソードだ。一番若くてハンサムなシンが、ボスの妻と寝たことがフランクに知
れた。組織の掟を破ったシンへ、死の制裁を加えるよう依頼されたのはグァイ。そのことを
知った残りの男たちは、グァイは心まで凍っていると批判するが、もし組織の掟に反したシ
ンをかばったことが判明すれば、残りの4人まで消されるのである。シンを台湾へ逃がそう
としながらも、泣きながら彼に銃を向け、そしてやっぱり撃てないマイク。親分ブンを説得し
ようと、タクシーの中で何回も説得の練習をするフェイ。5人の男たちの最後の晩餐の場面。
友情を育んだはずの男たちはお互いに銃を突きつけあい、そして嵐のようにとどろく銃声、
後ろに倒れこむシン。残り4人の男たちは散り散りに散開するが、そのときに、ひとりでシン
を消すことを主張したグァイが、フェイに向けて見せたとびっきりの笑顔…。そのとき、私た
ちは、彼らの命を張った心意気のカッコよさに、胸を熱くして、心の中に興奮を隠し切れな
いまま弾んだ気持ちで、震えが止まらないまま家路につくことが出来るのである。生死を
ともにしたプロである仲間との友情のためには、命を賭ける。男の中の男とは、彼らのよう
な奴らのことを言うのだ!

耳に残るテーマ曲の使い方も最高にしびれさせてくれる。銃声が轟いた後、一瞬の静寂の
後高らかに鳴るテーマ曲は、場面のインパクトをいつまでも胸の中に残しておいてくれるの
だ。このテーマと、5人の男たちの物語はいつまでも、香港アクションファンに語り継がれる
ことになるだろう。