1、はじめに
相続とは、故人(被相続人)に属していた財産等が、故人の死亡により故人と一定の関係に
ある親族等(相続人)に継承される(引き継ぐ)ことです。日本の相続制度には、法定相続と
遺言相続(指定相続)があります。すなわち、遺言が存在する場合には遺言に基づいて相続
しますが、遺言が存在しない場合には民法の規定に基づいて相続します。最近では遺言を
書く人も増加していますが、わが国の相続の圧倒的多くは法定相続と言われています。
2、相続の種類
相続の方法には単純承認、限定承認、相続放棄の3つがあり、相続開始を知った時から
3ヶ月以内にどの方法を取るかを決めなければなりません。(民法915条)
民法915条;相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内
に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
@単純承認
相続人が故人(被相続人)の財産を全て相続します。この場合は被相続人の負債(借金
など)も全て相続することになります。
注意!
民法921条;次の揚げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
2 相続人が第915条第1項の期間内(3か月間)に限定承認又は相続
の放棄をしなかったとき。
3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産
の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを
相続財産の目録中に記載しなかったとき。
A限定相続
相続人が故人(被相続人)の財産に負債(借金など)がある場合に、相続により得た財
産の限度においてのみ負債を負う(借金を返済する)方法です。
B相続放棄
相続人が全ての相続財産を放棄することです。この場合、始めから相続人で無かった事
になります。
注意!
民法940条;相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財
産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注
意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
3、相続財産(遺産)にはいるもの
@土地
評価=路線価×奥行価格補正率×地積
※小規模宅地等の評価の特例があります。
A家屋
評価は固定資産税評価額そのままです。
B家財
家屋評価額の20%程度が目安
C自動車
D預金
金融機関毎に残高証明を取ります。
E現金
F生前贈与
相続開始前3年以内の贈与
G株券等有価証券
H美術品
I生命保険金等(非課税金額を引いた残り)
非課税額=500万円×法定相続人数
J負債(マイナス財産)
住宅ローン等借入金を控除する。
〔参考1;特別受益者〕
民法903条;共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組の
ため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の
時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、
前三条の規定によって算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、
その残額を以てその者の相続分とする。
〔参考2;寄与分〕
民法904条の2;共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産
上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増
加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した
財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財
産とみなし、第900条から第902条までの規定によって算定した相続分に寄与分を
加えた額をもってその者の相続分とする。
4、相続人の範囲
故人の配偶者は必ず相続人になります。夫が亡くなった場合には妻が、妻が亡くなった
場合には夫が相続人になります。配偶者以外の人は次のように配偶者と一緒に相続人に
なります。
@夫婦に子どもがいる場合 配偶者と子ども
A夫婦に子どもが無い場合 配偶者と直系尊属(故人の両親)
B夫婦に子どもが無く、被相続人の両親が生存していない場合
配偶者と被相続人の兄弟姉妹
5、法定相続分
@配偶者と子どもが相続人である場合
配偶者は2分の1
子どもが2分の1
(子どもは1/2を分ける。)
A配偶者と直系尊属が相続人である場合
配偶者3分の2
直系尊属が3分の1
(直系尊属は1/3を分ける。)
B配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者は4分の3
兄弟姉妹が4分の1
(兄弟姉妹は1/4を分ける。)
子ども、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けま
す。なお、民法で定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意が出来なったとき
の遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではあ
りません。
〔参考3;遺留分〕
民法1028条;兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に
応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
1、直系尊属のみが相続人である場合(※親だけの場合等)
被相続人の財産の3分の1
2、前号に掲げる場合以外の場合(※配偶者や子供の場合等)
被相続人の財産の2分の1
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
民法1029条@;遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額
にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定す
る。
6、遺産分割協議書
遺言状が無い場合は、前述のように民法上は法定相続分が規定されています。単純に現
金だけを相続するのであればわかりやすいのですが、実際の相続においては、土地、貴金
属、有価証券等物理的に分割しづらいものがある場合が多く、ここに遺産分割協議をして、
誰に何を分配するのかということを話し合う必要性が生じてきます。そこで相続人の間で、
財産をどの様に相続するかを相談して、話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成し
ます。
→遺産分割協議書は、相続登記や預貯金の名義変更時の必須書類となります。
〔参考〕農地と相続
農地の売買には農地法の規制があり許可が必要とされますが、相続は対象外です。
すなわち相続の場合は他の相続財産と一緒に遺産分割の対象となります。
(遺産分割協議書で分ければよい)
しかし一旦相続した後にその農地を売却等する場合は農地法の許可が必要となること
に注意しなければなりません。従って農業後継者でない方等は「代償分割」等の方法も
検討すべきでしょう。
※「代償分割」
土地等の相続者から金額に換算した割合を現金等で相続する方法
7、相続税は意外とかからない!
相続税がかかるか、かからないかは、基本的に遺産の額と相続人の数によって決まりま
す。
★計算式は
〔5000万円+1000万円×法定相続人の数〕 が基礎控除額です。
つまり、遺産が5000万円未満の場合は相続税が掛かりませんし、
遺産が5000万円以上の場合でも、法定相続人の数により、上記式内は非課税です。
例えば、妻と子ども2人が相続人なら(法定相続人3人)
5000万円+1000万円×3=8000万円 まで非課税となり、遺産総額が1億円なら
残り2000万円について課税されます。
つまり、余程の資産家でもない限り相続税はかかりません。統計によると、日本の死亡者
数は年間約90万人ですが、そのうち相続税を支払ったケースは5%程度だそうです。
○養子縁組をして相続人を増やせば、相続税から逃れられるのか、という質問もありそうで
すが、実子のある場合は1人、ない場合は2人までしか認められません。
●相続人が配偶者だけの場合、金額に関係なく、相続税はかかりません。
〔参考4;相続時精算課税〕
対象者 ;65歳以上の親(住宅所得資金なら親年齢に制限無し)から
20歳以上の子
届出の有無;非課税でも贈与あるごとに必要
非課税枠 ;累積2500万円
(住宅取得資金なら3500万円、20007年12月末まで)
贈与税率 ;非課税枠を超えた金額は一律20%
〔参考5;通常の贈与〕(暦年課税)
対象者 ;特に指定なし
届出の有無;非課税枠なら不要
非課税枠 ;1年につき110万円
贈与税率 ;非課税枠を超えた金額に応じて10〜50%
8、土地・建物の評価
〔土地〕
土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2通りがあります。
どちらに該当するかは税務署で教えてくれます。
@「路線価方式」では、道路に面する標準的な土地の1平方メートル当たりの価格(税務署
の路線価図に掲載)に面積を掛けて評価額を計算します。
A「倍率方式」では、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算します。
宅地、田、畑、山林などによって、また場所によって倍率が異なります。
倍率は税務署の「評価倍率表」でわかります。
○小規模宅地の場合
亡くなった人などが事業や住まいなどに使っていた土地のうち200平方メートルまでの
部分については、次の割合で減額されます。
(一定の事業用・国の事業用の土地の場合は400平方メートルまで、一定の居住用の
土地の場合には240平方メートルまでが減額されます。)
・居住用・事業用・国の事業用で一定の要件を満たすもの----80%
・上記以外-----------------------------------------50%
〔建物〕
固定資産税評価額がそのまま評価額です。
9、相続登記
@登記申請の期限
特に制限は無いが、権利関係を明確に登記簿に反映させるためにすみやかに申請すべ
きです。
A必要書類
・登記申請書
・申請書副本
・生まれて入籍した当時の戸籍(除籍)から死亡するまでの
戸籍(除籍)謄本の全部
・相続人全員の戸籍謄本又は抄本
・相続人全員の印鑑証明書
・相続する者の住民票抄本又は謄本
・委任状
※相続人自身が法務局に来て申請するのが原則、代理人を立てる場合
・固定資産の評価証明書(年度内のもの)
B登記に必要な費用
登録免許税は、不動産の固定資産評価額の0.2%です。
(収入印紙で納めます。)
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