2004年11月1日、原子力委員会の新長期計画策定会議(新長計)は、使用済み核燃料を全量再処理処分する方針を固めた。従来からの方針の堅持を意味することになる。 検討の過程では、原子力発電に使った核燃料をそのまま地下深くなどに棄てる直接処分が再処理処分よりも安く済むというコスト試算が初めて提出された。「直接処分と再処理処分とのコスト比較をしたことはない」と、政府がデータを隠していたことが明るみに出る騒ぎもあったが、新長計は直接処分を“安い以外に利点が少ない”として選択しないと結論づけた。 ここでは、まず@国内のコスト比較問題の火付け役にもなった米国二大学のレポートの概要を紹介する。さらにA核燃料などの価格について歴史的な変動を明らかにするほか、B再処理処分で必要になる18・8兆円というバックエンド費用の中身にも踏み込む。 以上の観点を考慮してもなお、国策として再処理処分を進める大きな理由の一つは、ウラン燃焼後のプルトニウムを準国産エネルギーと位置付けざるを得ない日本の資源の乏しさがあるとみられる。 原子力委員会での新長計策定に向けた議論は、まだまだ続く。 コスト問題の火付け役・ハーバードとマサチューセッツ工科大学(MIT)のレポート2003年8月と12月、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学が、核燃料廃棄物の直接処分と再処理後処分との経済性評価をまとめたレポートをそれぞれ発表した。再処理後処分が直接処分より割高になるという従来の常識を覆す報告で、新長計など日本での核燃料サイクル事業の見直し議論にも影響を与えた。 ハーバード大学は再処理後処分の経済的な意義の無さに特化して報告した一方、MITは地球温暖化の進行を遅らせるエネルギーの一つとしての原子力の観点から、直接処分と再処理後処分のコスト評価を実施した。ここでは2つのレポートの概容を明らかにする。
) ハーバードレポート(概要)
) MITレポート(コスト比較部分の抜き出し概要)
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ウラン価格の低迷が続いている。ウラン需要が予測より低下し、ウラン資源の長期的な確保の見通しがたったからだ。これまで、価格の上昇を背景にウランの安定供給に務めてきた各供給会社は余った在庫の整理のため、値下げなど価格競争にしのぎを削りだした。一方、実用化の不確実性、様々な社会的背景などから明確な価格が設定できず、競争相手もない再処理に関わるMOX燃料加工などの価格は、時代の経過とともに上昇の一途をたどる。 ここではウラン精鉱費、ウラン燃料加工費、MOX燃料加工費などの歴史的な価格変動に迫る。また、歴史的な変動で特徴的なウラン燃料加工費とMOX燃料加工費については、グラフ(下図1)も示している。
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図1 ウランとMOXの燃料加工費比較 (数値を示した表はこちら) |
| 参考資料には、米国フォード政権時代(1976年)の「プルトニウム利用に関する評価研究(GESMO)」、OECD/NEA(1984年および1994年)による「核燃料サイクルの経済性評価」、「ハーバード大学による報告書」(2003年)を使用した。 |
経済産業省の諮問機関・総合資源エネルギー調査会電気事業分科会は2004年1月、核燃料サイクル計画に伴う再処理、放射性廃棄物処分など後処理(バックエンド)費用が18兆8000億円になるとの試算を発表した。電気料金に組み込んで消費者から徴収する制度からの電力会社の積み立て分が10兆1000億円で、残り8兆7000億を新たに負担する仕組みが必要になることが分かった。 8兆7000億円を加えて原子力発電の発電コストを計算すると、単純計算で1kW時あたり6円台前半と、火力発電より高くなる。ただ、電気事業分科会は、8兆7000億円のうちMOX燃料加工費、使用済み燃料の中間貯蔵費の約3兆7000億円はバックエンドのために必要な経費ではないとし、約5兆1000億円が新たに負担する仕組みを必要とするとした。 ここでは、明らかにされたバックエンド費用の中身を明らかにする(下図2参照)。ただ、使用済み核燃料の再処理は青森県六ケ所村の再処理工場の本格操業が始まる2006年7月から40年(2046年末)、使用済み核燃料の再処理量は約3・2万トンとするなど様々な試算範囲の前提条件があることなどを考慮することも必要になる。試算範囲は、使用済み核燃料の輸送、中間貯蔵、再処理、MOX加工、操業で発生する廃棄物の処理・処分、海外から変換される廃棄物の貯蔵と処分、ウラン濃縮施設の廃止措置、廃棄物の輸送である。
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図2 原子燃料サイクルバックエンドの総事業費(18兆8000億円)内訳 (数値を示した表はこちら) |
参考資料:日本原子力学会誌 2004 Vol.46 No.8
知恵蔵2005