穂高岳
2004.9.26〜29 三泊四日
コース: 上高地⇒岳沢ヒュッテ(泊)⇒前穂高岳⇒奥穂高岳⇒穂高岳山荘(泊)⇒涸沢岳⇒北穂高岳
⇒涸沢ヒュッテ(泊)⇒横尾⇒上高地
穂高に行くのは三回目になる。二回とも涸沢からザイテングラードを登ったので今度は岳沢から登ることにした。私の住む宇都宮を朝出発すると、上高地に着くのが11時ころになる。となるとその日に涸沢まで行くのは難しい。横尾に一泊し翌日穂高岳山荘に入るには標高差約1400mを登ることになる。ところが岳沢に泊まれば初日に700m、翌日は奥穂高岳まででも1000m程度登ればよいことになる。二日に分けて登ったほうが楽だろう。そんなに単純に考えられないことは分かっているが、試してみる価値はありそうだ。
今回はもう一つ課題があった。北穂高岳に行きたかった。前の二回とも、北穂高岳に登る計画もあったのだが、天候やタイムスケジュールがうまく合わず諦めたのだ。
いつもの仲間3人(穂高は始めての女性たち)と出発した。

大正池でタクシーを降り、観光客に混じって河童橋に行く。五千尺ホテ
ルの食堂で腹ごしらえをしてから岳沢をゆっくりと登る。今日は日曜日、
下山する人たちとのすれ違いが多い。
岳沢ヒュッテは空いていたが、ヘルメットを着けて長いザイルを背負い
腰の周りで金具をジャラジャラさせているグループがいく組か到着した。
翌朝出発時は曇り空ながら西穂高の稜線がはっきりと見えた。不揃いの
鋸の歯のようだ。ジグザグの登りが傾斜を増し「カモシカの立場」を過ぎ
るころから雨が落ちてきた。一時は止んだがまた降り出すと次第に強くな
っていく。雨で滑り易くなっているハシゴや鎖や岩を慎重に登って行くと
雷鳥広場に出た。視界が開け前穂高への道に登山者の姿が見える。
一枚岩の長い鎖を登ると紀美子平に飛び出した。
降り続く雨の中、ザックをデボし、軽装になって前穂高に向かう。大き
な岩がごろごろしている所をマーキングをたよりによじ登る。
前穂の頂上は雨とガスで何も見えない。紀美子平に戻って、雨の中、岳沢ヒュッテで作ってもらった弁当を開ける。その中に雨が容赦なく入ってくる。早々に出発する。
吊尾根を奥穂高に向かうと、少しずつ雨も止んでガスの合間に上高地が見下ろせるようになってきた。

道は主に吊尾根稜線の岳沢側についているが、時々稜線に上に出ると涸沢が見える。ガスが晴れ一瞬薄日も射してきた。涸沢は美しい紅葉の中にあった。涸沢ヒュッテと涸沢小屋の赤い屋根が見える。かわいいテントが並んでいる。ザイテングラードに取り付く大勢の人たちが小さく見える。歓声が上がる。
長い鎖場を登り少し行くと祠のある大きなケルンと展望指示盤のある奥穂高岳山頂に着いた。13時30分。岳沢ヒュッテを出発してから7時間半が過ぎていた。
ガスが濃くなって展望はなかったが、満ち足りた気持ちで互いに握手で健闘をたたえあった。
穂高岳山荘もガスの中だった。早々と床に就いた。
翌朝は雨が降っていたが天候は急速に回復し、出発する頃にはガスも薄れ青空が広がりだした。



階段状の道を15分ほどで難なく涸沢岳に着いた。しかしそれから北穂高岳までの3時間、私たちは岩場の怖さを思い知った。
涸沢岳から道標に従って北穂高に向かうと、いきなり長い垂直の鎖場になる。やっと下りることが出来たと思うと、こんどは岩をよじ登り、後ろ向きになってひとつひとつ足場を探しながら下りていく。今度は天空にかかるハシゴだ。ホッとする間なんてまったくない。白いペンキの矢印と丸いマーキングに導かれて進んで行くだけだ。「なんという所にきてしまったのだ、連れてきてしまったのだ」とつぶやく。
しかし、私が不安になったら後の人たちに伝染してしまう。たとえ外見だけでも自信あるように落ち着いて見せなければ。安全な所にたどり着き、振り返って後続の人たちにコースと足場の指示をする。カメラを向けるとなんと笑顔でVサインまで作って見せるではないか。彼女たちのほうが、よほど肝が据わっていたようだ。
腰を落ち着けることの出来る場所を見つけ、穂高岳山荘で作ってもらった朴葉に包んだおにぎりで、朝食にする。
やがて、テント場のある北穂と涸沢の分岐までたどり着いた。普通の登山道を少し登って北穂高岳の小広い山頂に立った。
ガスが流れていく。楽しみにしていた槍は見えない。すぐ下に大キレットが見える。あんな所を歩こうなんて正気の沙汰じゃない。

北穂からは、紅葉の涸沢を見下ろしながら
歩く楽しい下りだった。涸沢の紅葉があまり
にも美しいので、いつまでも眺めていたくな
った。今日は横尾まで行く予定だったのだが、
涸沢に泊まることにする。涸沢小屋でソフト
クリームを食べ、涸沢ヒュッテには14時前
に着いた。部屋に荷物を置くと早速テラスで
おでんと生ビールで乾杯。
苦労して越えてきた涸沢岳と涸沢槍を眺め
ながらのビールは格別の味がする。

翌日は、朝から雨が降り続いている。一向に止む気配はない。台風が来ているようだ。天気が良ければ、パノラマコースを行って屏風の頭からクライマーたちを見下ろしてみたかったのだが断念し、横尾に向かった。
激しくなる雨の中、無事、上高地に帰り着いた。