鳶山崩れ(立山カルデラ体験学習・黒部トロッコ)
(2011.10.13〜15 前泊+一泊二日)
4年前の11月、由比の大崩海岸、山伏の大谷崩れ、富士の大沢崩れを見に行った。少し、あるいは遠く離れた所から眺めただけだったが、大地の内包する途方もないエネルギーの一端を知ることができた。
これは幸田文の『崩れ』に触発された旅であったのだが、この本にはまだ多くの『崩れ』の現場が記されている。その一つが『鳶山崩れ』である。
立山室堂から薬師岳への縦走路を歩きだすと浄土山、龍王岳、獅子岳を過ぎて道は下りになる。降り切ったところがザラ峠で、登り返すと五色ヶ原。その先にあるのが鳶山であり、この山の大崩壊の土砂がカルデラに流れて台地を作った。この泥は大変崩れやすく、常願寺川下流の富山平野に何度も大きな災害をもたらしたという。
100年以上前から土石流や洪水を防ぐための砂防工事が行われ、近年大きな災害は発生していないが、今も工事は続いている。危険もあって広い地域が関係者以外立ち入り禁止となっている。
そこに入って『鳶山崩れ』を見ることができるチャンスがやってきた。「立山カルデラ砂防博物館」の主催する体験学習に申し込んで当選したのだ。前日、仕事が終わってから午後4時半に出発した。一路車を飛ばし、富山駅前のビジネスホテルに9時半に着いた。翌日、7時半に宿を出て立山カルデラ砂防博物館に着いたのは8時15分だった。晴天だ。
立山カルデラ砂防博物館は、立山黒部アルペンルートの富山側入口の立山駅前にある。受付で資料をいただく。その中に「蜂さされ」についての注意書きがあった。
説明の後バスで出発する。中型のバス2台と先導車のワゴン車。私は2号車で15名の参加者と博物館の学芸員1名、ボランテイアの説明員2名。トロッココースの人たちは常願寺川・湯川に沿って真っ直ぐにカルデラに入って行けるようだが、私たちのバスは有峰口まで戻ってから有峰林道を通って折立から入って行く。大変な回り道だ。一時間ほど走って有峰記念館でトイレ休憩。薬師岳が見えた。まだ半分だ。
折立にはゲートがあって一般車は入れない。先導車から工事用車両とのすれ違いや、追い越させるための待機の指示がトランシーバーで伝えられる。工事用車両が優先だ。
途中に小さなプールがあって、バスはそこを通って行く。タイヤを洗って、地域外の種が入らないようにしているのだ。色の異なった岩が接している断層の露頭を眺めて、少し行くと検問所があってここからはヘルメット着用。
長いトンネルをぬけてバスを降り六九谷展望台に上がる。



鳶山の崩壊跡が壁のようにそそり立ち、崩れた土砂がそこに溜まっている。その溜まった先はさらにその下に向かって崩れ落ちている。大崩壊から150年経った今でも崩壊は休みなく続いているのだ。
バスに戻って多岐原展望台でバスを降りると目の前に幸田文の文学碑があった。ここはとんび泥がカルデラを埋めて平らになったところで、多くの砂防ダムや堤が眺められる。
ここからは歩いて泥鰌池に行く。工事用道路の側溝に面白いものを見つけた。小動物が落ちた時の脱出路とのこと。この辺は野生動物の宝庫なのだ。緊急避難用の道標が壊されているのもみられた。学芸員は、「変わったものができたので、熊が遊んで壊したのでしょう」という。
立山温泉跡でお昼にした。『点の記』では主人公・柴崎が県の役人に苛められたところだ。今は浴槽と一部の土台跡が残っているだけだ。
河原に降りて行くと温泉の噴出孔があった。



湯川に沿って下って行く。両側から崖が迫って、所どころに滝とも沢とも見える流れが落ち込み、崩れた土砂も積もっている。砂防ダムやえん堤が無数に並んでいる。スズメバチの大きな巣があった。離れているので危険はないが、多くの蜂が群がっている。
橋を渡ったところに風呂があった。もちろん温泉だ。工事の人たちの楽しみとのこと。足湯を使わせてもらった。
その少し先に白石砂防ダムがあった。8基のダムで108メートルの落差を持ち、カルデラの出口を守っているという。60年前に完成し、その後も常に保守補強の工事が行われている。



1858年4月9日飛越地震で崩壊し崩れだした土砂は4億立米余りと推測されています。その半分は長い年月の間に、時には大きな災害を伴う土石流となり、あるいは少しずつ流出したとみられています。従って現在も蓄えられている土砂の量は約2億立米。これは黒部ダムの満水の水量と同量だそうです。これが一度に流れだすと富山平野は1〜2mの土砂で覆われるといわれます。
そんなとてつもない災害を防ぐため、大勢の人が汗を流しているのです。
体験学習を終え、バスに乗って立山カルデラ博物館に無事到着。今日は隣の民宿に泊まります。
黒部峡谷トロッコ電車
立山駅前の宿を出て宇奈月に着いた時は雨が降っていた。平日で雨にもかかわらず、人の数は多い。私たちの乗ったオープン型の普通客車は4割くらいの席が埋まっていた。窓付きの車両のほうが混んでいたようだ。



宇奈月から終点の欅平までの20kmを1時間20分で走るのだが、全く飽きることはなかった。次々と現れる峡谷。山肌を流れ落ちる滝、色づき始めた木々、想像を超える景色だった。
いつか、ここからさらに奥深く、仙人池や下の廊下を通って黒部湖まで行く夢を描いて、帰りの列車にのった。
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