団長BNR32物語
第2章
- 前夜
- その日の夜、私は会社の新人歓迎会に出席していた。出席したくはなかったが、新人歓迎会は新人の顔を覚える為に重要な行事なので仕方が無い、これも仕事の内。
面白く無いので1次会だけでとっとと帰宅した。
家に帰って、いつもの様に風呂に入り、いつもの様に寝た。眠れないような事はなかった。何故だか、明日の事を考えてもワクワクしないし、ドキドキもしない。以前はRB26DETTを言う文字を見るだけでドキドキしたものだ。でも、明日になればドキドキするかもしれない。
- 納車
- 目が覚めた、眠い、もう少し寝ていたい。誰もが朝に思う事。でも、私にとって今日は特別な日。起きなくては....。でも眠い。
もっとワクワクしてもいいはずなのに冷めている。自分ではハイテンションな一日になると思っていたのだが何故だろう?内心他人事の様だ。130納車の時はものすごくハイテンションだったのを覚えている。130を買うのも苦労した。130の時は短期集中型だったが、苦しんで手に入るのは同じはずなのに....。
中古車屋に電車で向かう。中古車屋で少し待たされた後、私のRが目の前にやってきた。そう、これが私のR。キーを渡してもらう。保証などの一通りの説明を受ける。Rに乗り込みキーをひねると一発始動。当たり前か....感動が無い。
行くところも無いのでそのまま自宅へと向かう。車の中は殺風景である。当然飾りものも無ければ缶ホルダーなども無い。コックピットは130の方がスパルタンだったよな〜、などと思う。助手席側のミラーが遠いと感じた。流石に130Zより車幅はある。ハイキャスによる曲がり方に違和感を感じる。アクセルを踏む量がイメージより多い。車が重く感じる。前の車の感覚が残っている様だ...。ルームミラーが見にくい、リアウイング邪魔だな...。運転席側のピラー邪魔、初めて86に乗ったときもそう思ったな...。たばこに火を付ける。最高の一服かと思うがそうは感じない。
帰宅後すぐに洗車道具を買いに出た。前の車で使っていたものが残っているのだが、洗車道具くらいは新しくしてあげよう。昔、良く行っていたカーショップに行った。このショップ、あまり変わっていない。洗車道具を買った後、ガソリンを入れ、昼食をして家に帰った。
しばらくして友人宅に行った。勿論Rを見せびらかしに。でもテンションは上がらない。友人が「ドライブに行こう」と言い出した(勿論Rで)。全然OKだが、テンションは上がるどころか、なんだか体調悪い...。「後で連絡する」と行って家へ帰った。帰って寝た。目を覚ますと日が暮れていた。体調は戻っている。友人に電話した。
- 不安
- Rで夜のドライブ。途中で全開してみる。余り速く無い。280psじゃこんなもんかな〜。所詮ノーマルだし...。と思う。友人は「前に車がパワー有り過ぎたんだよ」なんて言うがその通りだとは思う。車から異音は無い。加給も掛かっている様だ。エンジンはレッドゾーンまで問題無く回る様だ。メーター類は異常無しを示す。でも何かが不安。私は他のRには乗ったことが無い。運転した事が無いだけじゃなく、動いているRに乗ったことが無いのだ。乗った事があるのはこのRだけ。試乗も含めてこのRだけ。それが不安を呼ぶ。このR、本当に正常なのか?。この車本当に2600ccあるのか?タービン2個付いてるのか?よくみるとタイプMだったりして?なんて思ったりもする。もう少し慎重に選ぶべきだった...。
- 乗り比べ
- 次の朝、別の友人がやってきた。彼が来る事は予定に入っていた。しかし、関東に住んでいた彼には私が車を買った事を知らせてなかった。ただ言う機会が無かっただけ。彼は驚いた様子だった。
そのまま彼を乗せて、ST205(セリカGT-FOUR)乗りとの待ち合わせ場所に向かう。
205と私のRを比べてみる。場所的にスピードを出して比べる事はできないが、明らかに205の方がトルクフルに感じる。205はマフラーとエアクリーナーを交換してあるが、2000ccのシングターボ。カタログ値ではトルク的もパワーもBNR32が上。まあ、205の方が車重は軽いけど。このR、何かおかしい所があるのでは無いか?ますます不安になる。
その帰り突然助手席側のミラーの開閉ができなくなった。ショックだったが走りの性能には関係無いので大した事は無い。ドアミラーは保証の対象になっていないが中古車屋行く。新品交換はできないが中古で完動品を貰えるとの事(実は貰った後に問題無く、動く様になって、今もそのまま)。割と親切。まあ、中古だし、トラブルは少しずつ出ると思っていた。でも、こんなに早く最初のトラブルが出るのは予想外だった。
広い道で、全開にしてみた。助手席の友人は速いと感じるらしい。確かに彼のR31に比べれば速いだろうな。
- テスト走行
- 翌日、会社の先輩が「Rどう?」なんて聞いてくる。私は「なんかパワー有りませんね」と言うと、「前の車がパワー有りすぎたせいだよ。」と言う。「お前はアールアール言ってたし、自分の中で誇張評価されてんじゃないの〜」と言われたが、そんな事は無い。
その日、仕事から早く帰って、昔よく行っていたコースに行ってみる事にした。そこはよく知っているから、アクセルを踏めるし、余裕があるから、レッドゾーン近くでのブースト圧などじっくりチェックできる。
一発だけ走ってチェックする。ノーマルブースト計は読み取り難いがカタログ値は出てるようだ。タービンに問題はなさそう。パワースライドしそうでしない。これがアテーサE-TSか?
レッド近くまで回っている時の体感パワーは、300は超えてないとしても250は超えている様だ。ならばカタログ通りである。でも納得できない。
RB26DETTは高回転型エンジンと言うのは知っている。でも、中低速域からアクセル全開にした時のトルクの薄さはどうも納得できない。加給の立ち上がりが遅い様に思う。
- 粗が目立つ
- しばらくの間不安は消えなかった。でも、次第に私自信がRに慣れていった。
燃費が悪い。街乗りのリッターあたり6〜7km。ちょい乗りが多いと5kmを切る事もある。高速道路でも10kmいかない。前に乗っていた130Zは3Lターボ400ps(推定)仕様だったが、街乗り7km、高速11km位だった。排気量もパワーもトルクも上なのに燃費までも良い。それに比べてこの車は何だ?パワーは無いし、燃料はガバガバ食うし。燃調濃いんとちゃうの〜。
タイトコーナーでは足の弱さが気になる。クリップから出口へ向かってアクセルを開けていくとロールが戻って来ない。いつまでたっても全開できない。直線に入ってもカウンターを当てたまま。その内2速がふけきりそうになる。仕方ないのでステアリングを左右に振ってロールを戻してシフトUP。ダサダサである。まあ、ノーマルの足はこんなもんかもしれない。中古だし抜けてる可能性もある。お金できたら、まず足だ。
- 流石アテーサ
- ある日、信号待ちをしていると、車線を間違えている事に気が付いた。直進したいのに右折車線に居たのだ。左には大きなトラック。「信号が青に変わったらダッシュだな」。少し回転を上げてタイミングを計る。信号が青に変わる。一瞬ホイールスピンの音がしたかと思った瞬間シートに押し付けられる様な感覚。その感覚は私のイメージより鋭かった。「お?この車結構やるやん、流石アテーサS!!」、130Zを超えている部分を知った瞬間であった。
- 国産最強
- 当時の私は仕事での出張が多かった。一年の内の3分の1位は埼玉県に住んでいた。出張先へは新幹線や電車を乗り継いで6時間位かかる。いつも移動の時は車の雑誌を買って乗るのだが、その日は電車に乗るまで時間があったので本屋で本を物色した。面白そうな本が見つかった。BNR32の開発時のエピソードなどが書いてある本。以外にも私が抱いていた不安の答えがその中にあったのである。
私のBNR32は正常だ。中低速は凄くかったるい。これがRB26DETTなのである。高回転では他のエンジンを寄せ付けない性能を誇る。これがRB26DETTなのである。
RB26DETTはレースで勝つ為に作られた国産最強エンジン。
第2章完
戻る